はじめに
10月28日公示、11月9日投票で行われた衆議院選挙は、自民・公明の小泉政権への批判が高まる中で、財界が危機感をあらわに選挙戦の前面に出てきたのが特徴的であった。財界は、マスコミを使い“自民対民主”の二大政党の政権対決という偽りの構図を描き出し大キャンペーンをはった。しかも政治を金で買収する政治献金を復活し、財界の思惑を政策に具体化するマニュフェスト選挙を行った。自由党と民主党は財界の音頭で合併に合意し、10月5日の合併大会を皮切りに選挙戦に入った。その結果、新民主党は改選前の議席を大きく伸ばし、72議席を得て議席・得票率ともに自民党を上回った。与党は、公明党が自民党との選挙協力を積極的にすすめて議席を増やし、かろうじて過半数で政権を維持した。
わが党は、01年参院選よりわずかに増やし比例で458万票、7.8%の得票したが、改選前の20議席から9議席に大きく後退した。その中で東北ブロックでは、松本善明議員の貴重な1議席を守り高橋千鶴子さんに引き継ぐことができた。東北で313,000票、福島県で71,879票。
わが党が選挙中に明らかにした自衛隊のイラク派兵と憲法改悪問題、年金制度改悪とその財源とする消費税大増税計画などは今後の県民生活に大きな影響を及ぼすものである。こうした情勢のもとで11月下旬に臨時県議会、12月定例県議会が開催された。
1、臨時県議会について
12月県議会を目前にして11月25日、職員給与引き下げに伴う臨時県議会が開かれた(会期は1日)。県人事委員会の勧告が出され、それを受けて県職員給与、特別職、県議報酬の引き下げの条例案が出され、(1)12月1日から一般職員の給与を引き下げること、 (2)4月に遡って基本給の減額分を12月のボーナスから差し引くという内容であった。
私たちは、特別職と議員報酬の引き下げには賛成であったが、一般県職員の給与引き下げについては神山議員が反対討論を行った。総額42億8,000万円もの減収はさらに景気を悪化させ、民間賃金の引き下げを招くこと。4月に遡っての減額は、「不利益不遡及」の最高裁判決にも背くものと反対の意見を述べた。一方、県民連合は、付託された総務・商労文教常任委員会の委員長報告に、「減額調整措置については、今後、システムを構築すべく検討してほしいとの意見が出された」との意見を盛り込ませそれを成果として討論に立たず、結局わが党以外の賛成多数で可決した。
これによって、今回期末手当は0.25ヶ月、5年連続の引き下げとなり、基本給は行政職で1.09%、2年連続の引き下げになった。41歳の行政職、配偶者、子ども2人のモデルケースでは、年間17万6,197円の減収で、95年の給与水準に戻されたことになる。
2、12月県議会について
12月定例県議会は、12月4日から22日まで19日間の会期で行われた。政府による憲法違反の自衛隊イラク派兵問題、地方自治体への補助金削減となる「三位一体改革」、年末に向かう中で県内景気・雇用情勢の悪化、過疎地域の医師不足、原発施設での異物混入多発問題などに対する県のとりくみが問われた。
12月補正予算については、104億5,600万円の減額補正となったが、その主なものは、減債基金へ30億円の繰り戻しと県職員給与の引き下げである。一般職員の給与引き下げで42億8,000万円減額した。職員の退職金と特別職の退職金の引き下げも行い、知事の退職金は1期4年間で約5,000万円を4,000万円へ減額し、1,000万円引き下げた。
その他、中小企業への制度資金貸付金として26億4,900万円、異常気象に関しては、約3億5,400万円が計上された。異常気象に対する天災融資法の発動は、東北地方の農民団体とわが党東北・北海道ブロック国会議員の粘り強い政府交渉の成果によるものといえる。また、わが党が再三指摘してきた生活に密着した公共事業については、「特枠」として県の維持補修基金から5億円繰り出し予算化された。突如、今議会に来年度上海市に県事務所を開設するための準備経費が計上されたが、今後の検証が必要である。
一般質問には長谷部議員、予算の反対討論に神山議員が立った。
3、質問と討論
12日の一般質問には、長谷部議員が登壇し、イラク派兵問題、国民保護法制に対する認識、原発問題、来年度の予算編成のあり方、医師不足問題、後発薬品の利用促進、乳幼児医療費助成や30人学級について質した。
イラクへの自衛隊派兵について知事は、「憲法の理念を踏まえて、現地の状況を見極めた上で派兵は慎重に判断すべき」との認識を示した。原発施設での異物混入問題では、再度インシデント報告制度の確立を求めたが、事業者自身の取り組みを厳しく見ていくにとどまった。また、医師不足への対応については、医師確保のアクションプログラムを年内に策定することが表明された。県立病院の改革については、病院職員の資質改善や後発薬品の積極的な利用促進などが改革の前提であると提案したが、2004年度から地方公営企業法の全部適用の導入を行う立場に変わりがないとした。後発医薬品の利用については、前向きの答弁があった。
社保の乳幼児医療費窓口無料化については、レセプト1件につき35円分を県が全額負担したとして、昨年実績値で4,100万円になると試算結果を答弁したが、県の予算規模からすればわずかな金額である。しかし県は、市町村が実施自治体として補助は考えていないこと。30人学の拡大についても、05年までの県の少人数教育プランを楯に従来の見解を述べるにとどまった。
県内では、船引町自衛隊父兄会から出された派兵中止求める意見書が町議会で採択されたとの情報が寄せられた中で、最終日22日に神山議員が討論に立った。補正予算については反対、県立病院の全適とする条例案については、時期尚早であるとして見直しを求め、政審会がイラクへの自衛隊派遣中止を求める意見書を「継続」としたことを批判した。
採決では、40件提案された議案のうち、12月補正予算、一般職員の給与引き下げに関する議案、県の行う建設事業の市町村負担を求める議案、収用委員会の再任など12件に反対した。新規請願のうち1件(小3、中2年への30人学級拡大)についてはわが党だけが賛成した。
4、請願・意見書について
わが党が紹介議員になった請願は、教育3000万実行委員会からの16件を含め21件であったが、そのうち「小学3年生、中学2年生への30人学級拡大」の請願1件を商労文教常任委員会で多数で不採択とし、本会議でもわが党以外で不採択とした。昨年、県議会として同じ請願を採択しているのに、県民のせめてもの願いに背を向けた他党の態度が問われる。
また、意見書については新規で5件、「イラクへの自衛隊派兵の中止を求める」意見書4件と県民連合からの意見書意1件が提出された。当初、県民連合は本会議で討論する方針をとっていたが、政審で自民党に「それでも討論するなら政審をこわす」と言われて討論を取りやめた。結局、派兵中止を求める意見書は、5件とも「継続」扱いにし、事実上廃案とされた。一方、わが党が紹介議員となった、政府の三位一体の改革にともなう義務教育費の国庫負担制度の堅持と公的保育制度の堅持を求める2件の意見書は、「趣旨採択」となった。
5、議会改革について
知事の本会議での答弁項目をふやすことについて、私たちは「一般質問が一項目だけ」と決めているのは全国で本県だけという調査資料を示し、議長への申し入れや議会運営委員会でも改善を求めてきたが、ついに12月22日の議運で「政策的に重要な課題を中心に、知事が答弁する」ことを正式に確認した。2004年2月県議会から実施する。
この問題を一貫して取り上げてきたのはわが党だけであったが、今期になって議運の論議の中で自民党と他の会派も一致し、知事に対し議長を通して2回申し入れを行い実現したものである。ようやく議会の民主的改革が一歩前進した。
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