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2004年2月定例県議会を終えて
2004年3月19日
日本共産党福島県議団
団 長  神山 悦子
長谷部 淳
はじめに

 2月定例県議会に先立ち、「04年度予算編成にあたっての要望事項」(第二次)を1月22日に提出。申し入れ書では、財政構造改革プログラムの破たんとその見直しを強調し、大型プロジェクトの削減・中止によって、厳しい県民のくらしと市町村を支援するよう48項目にわたり要望した。

 新年度の県予算案を審議する2月定例県議会は、2月19日に開会し、3月19日までの30日間の会期で開催された。一般質問に神山悦子議員が立ち、総括審査会では長谷部淳議員が質問を行った。

 なお、一般質問については、2人が質問通告し、議会運営委員会で他会派と攻防の末、1人にしぼられたため、党県議団を代表して神山議員が30分間の一般質問に立った。また、知事答弁についても、今議会から増やすはずであったが、他会派が行わないことを理由に退けられた。今後もねばり強く要求していく。

 2月26日、佐藤知事は自民党の代表質問に答える形で、9月の知事選への5選出馬を正式に表明し、日本共産党県議団はこれに対するコメントを発表した。3月3日、神山議員の一般質問でも、佐藤県政の4期16年間を財政運営、産業政策、県民生活、公正公平の4つの角度からただした。

 3月18日の総括審査会では、長谷部淳県議が一問一答方式の質問に立ち、「いのち・人格・人権の尊重」の具体化と“社会情勢の変化”を根拠とした「3大切りすて」への批判や「原発行政」についてただした。東電のプルサーマル導入計画については、「白紙撤回されており、今後のことは一切考えていない」との知事答弁を引き出した。

 3月19日の最終日には、当初予算等に対する反対討論に神山議員が立ち、当日提案された人事案件14件を含め99議案の採決が行われ、当初予算案など8件(人事案件2件を含む)に反対した。意見書7件は全会一致で採択。党県議団が紹介議員となった請願は4件だった。

 なお、02年度決算に神山議員が、03年度補正予算に長谷部議員が討論を行った。

1、2004年度県当初予算の特徴と問題点

 新年度当初予算は、プログラム策定前の01年度比で民生費が50億円の削減の662億円、衛生費は33億円減の169億円、教育費は170億円減の2,354億円となった。一方、歳入面では厳しい県民生活を反映して個人県民税が予想以上に落ち込んだことや、地方交付税と臨時財政対策債の交付金が285億円削減されることが確実となり、財源不足は270億円となる見込みとなったことから、2月整理予算では、事務事業の見直しと称して各部から予算を引き上げ、それを基金に繰り戻し穴埋めした。

 私たちは、昨年1年間で自殺者が過去最高の661人にものぼったことに表れているように、経済・雇用の悪化が県民生活を直撃していること、「三位一体の改革」による被害は市町村にも多大な影響をもたらしていることを指摘し、広域自治体として県が積極的役割を果たすよう求めた。

(1)県財政構造改革プログラムの破たんと重大なさらなる「行革」

(1)佐藤県政の4期16年間は、浪費型の大型開発事業優先、県民生活後回しの財政運営で借金を増大させてきたが、01年度の未来博が終わると一転して「財政構造改革プログラム」を立て、緊縮財政をとってきた。しかし、大型プロジェクトの見直しについては一定のメスが入ったとはいえ徹底見直しをしなかったばかりか当初予算計上内容を含めて引き続きトラハイ、小名浜人工島、首都機能移転などを進める姿勢であるとした。

(2)そのツケを県民や県職員の人件費削減に向けた。県職員定数と給与の削減目標は、3年間で60億円であったが、それを2年で154億円も削減し、目標を超過達成したほどである。

(3)しかし、もともと年間予算を大幅に超える1兆1,000億円余の累積赤字、県民1人あたり52万円にのぼる借金をつくったもとで、わずか5年間、あるいは集中期間の3年間で立て直すこと自体無理だったわけで、結局私たちの指摘どおり、「財政構造改革プログラム」の見直しをせざるを得なくなった。県は、破たんの原因を政府の「三位一体の改革」のせいだとしたが、それだけに解消できない県自身の財政運営のあり方については何ら反省がないところに問題がある。

(4)今後、医療・福祉・教育分野の「3大切りすて」をすすめ、県民サービスの後退と県職員の大幅な定員削減を強行しようとするとんでもない「行財政改革」方針を明らかにした。

(2)県民と市町村に冷たい県政

 佐藤県政は、県民向け予算には冷たい姿勢を基本としている。その典型が、市町村国保事業へ県独自の助成をまったく行っていない全国9県の1つであること。介護保険の基盤整備の遅れと保険料や利用料への助成に見向きもしない県政であること。障害者福祉の遅れも深刻である。これは結局市町村の困難を見て見ぬふりをしていることであり、決して「イコールパートナー」とはいえない県政の重大な問題点といえる。

 また、県は市町村合併について、これまで合併しても合併しなくても同じように支援すると表明してきたが、新年度からは、合併する市町村へ1億円ずつ財政支援を行うとして予算を計上した。これは知事が従来の姿勢を変更し、合併推進に踏み出したことを示すものである。

(3)県の責任を放棄する「3大切りすて」

 県は、04年度から県立病院に地方公営企業法を全部適用、さらに2年後に県立社会福祉施設の一部を民間社会福祉法人へ委譲、県立大学の独立行政法人化など医療・福祉・教育分野の「3大切りすて」の方向を明らかにした。県は、行財政改革について、「聖域なく」、「時代の要請や変化に柔軟に対応」できるためとして民間委譲を推進する。これは、県が直接サービスを提供することから手を引き、負担を県民におしつけるものである。

 すなわち県立病院については、医療事故防止のため医療の質の向上、南会津での精神科設置や過疎地医療、小児科医師配置など医師数の充実や配置、土曜診療など県民要望に応えられるように充実することが先決であり、県立病院として各地域、または全県的医療供給水準を総合的に充実するとりくみがないまま、経営形態だけ変えてもその充実が図れないことは明白である。

 県社会福祉審議会が県立社会福祉施設の「民間」(社会福祉法人)への委譲を意見具申したが、介護保険制度や支援費制度のもとで、社会福祉法人のあり方も変容を強いられ、社会福祉の担い手というよりは、事業者・経営体としての側面が全面に出てくるのは必然である。「小泉改革」のもと、社会福祉法人も営利法人も区別がつかなくなる。民間委譲ではなく、県の責任で老朽施設の改築や質の充実こそが求められている。

 また、医大と会津大の県立大学を独立法人にすれば、期間が6年の中期目標を知事が定め、大学が作成する中期計画は知事の認可が必要となり、同じく年度計画は知事への届出が義務づけられる。こうしたしくみのもとで教育内容の自由は保障されるのか、県が設置する評価委員会によって大学の教育内容に踏み込んで、大学の自主性を侵す恐れがないのか、運営費交付金の交付についても恣意的に左右されないか、などが危惧される。

 いずれにしても、県の財政支出を抑え、職員を大幅に削減することがねらいである。

2、2月補正予算について

 事務事業費の削減などで、主要4基金のうち財政調整基金に60億円、減債基金に57億5,300万円を繰り戻すという、大きな問題点を含むものであった。

 年度当初にきびしい予算を組んだにもかかわらず、さらに2月の整理予算で各部軒並みの減額では、減額を見込んで水増し計上し、基金作りためのかくし財源にウエイトを置いた年度間の予算運営ではないのかと指摘せざるをえない。

 一方で、県自身が「大規模事業の見直し」として進度調整している事業に当初よりも多額をつぎ込むいびつなものとなった。小名浜東港には、当初予算3億円だったが、さらに3億6,000万円が追加計上された(このうち県の借金が2億4,300万円)。このお金でケーソンを3個作り、2個を海にすえつけるというものだが、県民の暮らしの実態から見て緊急性があるものとは言えない。切れ目のない公共事業発注を口実に、トラハイにもゼロ県債を設定した。しかも今回の補正で、福島県道路公社へ赤字の穴埋めとして貸付金2,521万8,000円が計上され、この4年間の累計額は2億2,800万円にのぼる。さらに、米沢・福島間の東北中央自動車道への高速道路国直轄事業負担金もまた不要不急の負担を県民に強いることになる。

 また、県の行う建設事業等に対する市町村の負担については、「三位一体改革」のもと市町村が予算を組むこと自体に悲鳴を上げているときに、さらに負担を強いるものであることを指摘し、以上の理由から長谷部議員が討論を行い、補正予算に反対した。他党は討論なしで賛成の態度をとった。

3、県民要求の実現めざすとりくみ

 1月30日、「みんなで新しい県政をつくる会」(代表・亀田英俊県農民連会長)は、新年度県予算への要望事項をまとめ、対県交渉を行った。この交渉には党県議団の神山悦子、長谷部淳両県議も同席した。交渉の中で、県議会が全会一致で決議を上げている30人学級の拡充や福島市で昨年10月から実施されている乳幼児医療費社保窓口無料化は県がやる気になればすぐにできるものであると主張し、また、市町村国保会計への県としての財政支援などを強く求めた。なお、保健福祉部については、1月16日、個別に部長交渉を行った。

 今議会で県文化振興条例が制定された。党県議団は、2月定例議会に先立ち、2月7日に県内の文化団体の関係者との懇談会を持った。参加者から、県民や関係者の意見を条例案に反映させる姿勢の不十分さや短期間の審議で条例案をまとめてしまった感がいなめないなどの意見が出された。今後の振興ビジョンに反映できるよう引き続き求めていく。

 その他、以前から取り上げてきたDV被害者の「女性のための相談支援センター」が4月にオープンとなる。県の入札制度についても改善されることになり、新年度から第三者機関の監視委員会を新設し、予定価格の事前公表をすべての工事で実施する。条件付一般競争入札の対象工事発注額を5,000万円以上に引き下げ、指名入札については指名業者を事後公表に切りかえる。

◆委員会で取り上げたこと、論戦について

商労文教常任委員会

 神山議員は、不況の長期化とともに県立高校の授業料未納者が増えていることから、県立高校の減免基準緩和策を求めてきた。私学の減免基準にも連動することもあって、私学の父母からも要望されていたもので、今年4月1日から基準額が生徒の世帯構成に応じて、年収の免除基準額を10%程度引き上げることになり、4人世帯では従来の「247万2千円以下」から「269万3千円以下」に拡大される。

・若年者の就業支援については、新年度にいわき市にも就職支援センターが設置されることになり、県内では郡山市、福島市、いわき市の3カ所に。

・県内4カ所の水力発電所の電気事業すべてを東北電力に譲渡することが明らかになった。04年度中に売却予定。

・教員不祥事問題への対応について、1月16日の臨時常任委員会が開かれ、2月の委員会では「基本的には、氏名公表する」ことで一致し、委員会として意見を県教育委員会に申し入れた。

・再発防止策についての意見では、服務倫理委員会の設置は対症療法にすぎないこと。抜本対策のためには、県教委自身の反省が必要なこと。現場の声を十分に聞き、(1)教職員の多忙化解消、(2)人権意識の向上、(3)金銭取り扱い業務の見直しなどの条件整備を求めた。さらに、子ども、父母、地域住民に開かれた学校づくりをすすめること、教育基本法と子どもの権利条約を教育現場に生かすよう求めた。

企画環境常任委員会

 長谷部議員は、ユニバーサルデザインについて「だれでもが暮らしやすい環境を整備すること」を確認し、道路や交通手段など、高齢者・障害者・子どもが移動しやすい街づくりをどう進めるか、バス路線維持の実効ある対策のために補助条件を緩和すべきと主張した。

 また、原発問題について、第二原発3号機の残されているひびや再循環ポンプ大破損時の残滓が残っている問題、第一原発4号機の圧力容器が製造時の違法矯正で「安全性に不安」と元設計技師がいっていること、第一原発2号機が二度にわたって緊急炉心冷却装置が作動している問題、シュラウドが交換されていて装置の一貫性が破れ、その寿命が論議されていることなどを指摘した。県当局は、「専門家にも入ってもらって県独自に検証作業をしている」と答えるだけであった。

ともに生きる福祉社会・地域医療対策特別委員会

 長谷部議員は、介護保険が、当局のいうような「その定着が着実に進んでいる」とは言えないことを利用者や事業者の具体的な“悲鳴”を紹介して指摘し、とくに介護支援専門員への県としての具体的な支援を求めた。

4、この間の原発運転再開問題について
 第二原発3号機は、今年1月16日、原子力安全・保安院が「安全宣言」をしていたさなかに、残留熱除去機器冷却系での水漏れを起こした。東京電力が事故をすみやかに報告しなかったことにより、保安院は異常なのに「安全」と宣言した。しかも水漏れの原因が「貝が付着したこと」とされているが、運転19年目のこの号機の老朽化の兆候である。この号機は、1989年正月早々に起こった再循環ポンプ大破損による金属片あるいは金属粉がすべて回収されず、安全面でも不安要因をかかえたまま今に至っている。13か所のひびのうち3か所しか補修せず運転するということは、県も県議会も受け入れていない「維持基準」を、東電と国が一体となって強行に導入する態度である。

 県議会の代表者会議(自民・県民連合)は、3月3日の第二原発3号機に続いて、3月16日には第一原発4号機の運転再開を容認し、県当局も容認した。党県議団は、議長に対し、それぞれについてコメントを発表し、運転再開を認めず議会で十分な議論をするよう求めた。

 3月2日の県議会のエネ協では、「今後はエネ協で議論せず、代表者会議での確認だけで議会としての対応とする」と決めた。他会派は、本会議や総括審査会でも、原発の運転再開や安全性の確保についてほとんどふれることはなく、議会としての役割が放棄された状態となっている。

 3月18日、総括審査会で質問に立った長谷部議員は、東電による不正事件発生後の県の姿勢と再稼働問題をただした。また、福井県のプルサーマル計画容認の報道を受け、東電福島原発でのプルサーマル計画導入について知事に質問した。佐藤知事は「白紙撤回したので、その後のことは一切考えていない」と答弁し、プルサーマル導入については受け入れないという態度をあらためて明確にした。

5、紹介議員となった請願書、意見書について

・「点字等による選挙公報の発行に関する規定の公職選挙法への設定」を求める国への意見書(県視覚障害者協会)は全会一致で採択となった。

・県労連から提出された「県最低賃金の引き上げを求める意見書」は趣旨採択。「雇用確保を求める意見書」は継続扱いとされた。

6、県議会の海外視察の中止申し入れ

 3月16日、公費を使っての海外視察については中止すべきとして議長に申し入れた。県民生活の実態から見ても、県議会の海外視察は決して県民の理解が得られるものではなく、日本共産党県議団としては海外視察には参加しないことを表明した。

以 上



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