日本共産党の神山悦子です。
日本共産党県議団を代表しまして、議案第1号2004年度当初予算案、ならびに条例案等について意見をのべさせていただきます。
提出された予算案の中身や条例案の多くは、県民のくらしや市町村を応援する点で評価できるものであることはいうまでもありません。例えば、リストラなどによる経済的な理由で高校授業料の滞納が年々増えていますが、高校授業料については値上げをせず据え置きにしたことや、小中学生や高校生の就学援助や授業料の免除基準の枠を、4人家族の場合年収240万円以下を260万円以下に広げ、新たに教材や給食費の教育扶助費枠を設けたこと。雇用問題については、本会議での質問が多く出されたように、県内の雇用環境は大変厳しいものです。特に、若者については、正社員になりたくてもなれないアルバイトやパートなどの不安定雇用、いわゆるフリーターが全国で417万人(01年)にものぼっています。銀行系の調査研究機関によれば、平均年収が正社員387万円に対しフリーター106万円と3分の1未満で、それが消費に影響を与え、GDP(国内総生産)を1.7%も押し下げる結果となっているという調査リポートが発表されました。県も全国で初めてフリーターの実態調査を行い、県内の15才から34才の労働者36万人のうち2万5千人から3万人、派遣労働者も加えると4万2千人から4万7千人という推計値を公表しました。このとりくみに基づいて、県内に3ヶ所の若年者の就職サポートセンターを設置したことなど、こうしたとりくみを大いに評価するものです。県としては、このようにさまざまな分野で県民の実態をつかむよう努力し政策に生かしていくという、いわゆる現場主義を、さらに実行することが大切だと考えます。
以上のことを前提としながら、いくつかの問題点を指摘するものです。
その第一は、やはり財政面です。県は、2001年度からすすめてきた財政構造改革プログラムの見直しをせざるをえなくなりました。
財政破綻の原因の1つが、政府の三位一体改革による地方交付税と臨時財政対策債の大幅削減にあることは、私たちも認めるところです。特にその影響をもろに受けたのは市町村であり、大変深刻な状況になりました。市町村への地方交付税と臨時財政対策債を合わせると、今年度比総額369億600万円の減額、10.8%の減となる厳しいものです。総務部長が述べたように「新年度は、何とかやりくりできた」とはいえ、来年以降はもっと厳しいことが予想されます。そうやって市町村合併に仕向けようとする政府の意図がありありです。県が合併する市町村に対し、新年度から1市町村1億円の財政支援をするのは、一般質問でも指摘したように、こういう地方自治体いじめともいえる政府のやり方を県自ら後押しすることになります。
政府の三位一体改革が、いよいよ実行に移されます。今月17日の国会で、義務教育費の国庫負担を削減することが与党賛成多数で可決され、教員の児童手当と退職手当が対象からはずされました。保育所運営費の国庫負担金についても、県はその影響分は、税源移譲や地方交付税が配分されるからといいますが、それは当面のことであって、入所児童数によって大きくかわるものでもあり、不確かな要素は大きいといえます。それなのに県が市町村のことだから直接関係ないとしているのだとしたら、広域自治体である県の姿勢としては問題です。特に町村の保育所がなくなればますます過疎化に拍車をかけることになるのではないでしょうか。
第2に、私たちが再三指摘している大型事業の見直しについてです。
新年度の県の借金返済額は、予算全体の14.6%を占め、民生費と衛生費を合わせた予算の1.58倍です。私たちは、公共事業すべてを否定する立場をとっていませんが、一般質問でも明らかにしたように、県民には不要不急のムダな大型事業に県民の税金をつぎ込み、これだけの借金をつくったのです。決して国の経済対策の公共事業に呼応してきたために増えたという理由だけではありません。答弁では、「見直しをはかり、いっそうの重点化・効率化をはかる」としながら、長谷部議員も指摘したように、ゼロ県債まで設定し、切れ目なく事業を推進するとし、当初予算では、あぶくま高原道路・トラハイに道路橋梁費の13%を占める48億円、小名浜人工島づくりに3億円、木戸ダムに50億円、加えて、知事が粘り強く取り組むと強調した首都機能移転に2千万円計上など、これらは県民からみて納得されないものばかりではないでしょうか。
ところが、県の財政が厳しいからとして見直しの対象としたのは、「いのち、人格、人権の尊重」を掲げる県の姿勢とは矛盾するような、県立病院、県立大、社会福祉施設の3大切り捨て策です。総括審査会での答弁でも、行財政改革本部長である副知事は、「経済性・効率性を図るため」として、地方公営企業法の全部適用や独立行政法人化をすすめるとし、これによって、いかにも経営改善が図られ県民サービスが充実するかのような説明でしたが、真のねらいは、県の歳出をいかに抑えるかという点にあります。これは、政府の民営化推進路線で自助・自立をうたい、医療・福祉・教育の切り捨てをすすめる政策と全く同じやり方です。しかも県立病院については、長谷部議員が総括審査会で指摘したように、医療事故の再発防止のための医療の質の向上、南会津での精神科、全県的な小児科医の不足、土曜診療の実施など県民要望に応える総合的なとりくみが遅れたままで全適に移行するのは、やはり時期尚早というものです。
ところで、福島県は、全国からみれば、それぞれ1人あたりの児童福祉費が47位、老人福祉費は41位、民生費は40位、特殊学級費は41位となっています。また、保育所数は41位、一般病院常勤医師数は46位、身障厚生援護施設は47位、老人ホーム定員数は42位(01年度統計で見る県のすがた〜総務省)とおしなべて全国最下位クラスなのです。この指標からみても県民の医療・福祉・教育にかかわる分野の底上げが県政にとって最大の重点課題といえるのではないでしょうか。
次に、手数料、利用料の見直しについてですが、議案第27号は、保育士試験の手数料を8,900円から12,700円に引き上げるものですが、安易な値上げと言わざるを得ません。また、議案第34号は、小名浜港での岸壁の特別利用料を減額するものですが、限られた業者しか利用しないものです。空港利用促進として運行経費や夜間駐機の航空会社への助成を行っていますが、路線が廃止されるなどして、必ずしも空港路線の維持にはつながらなかったことからみても疑問を持たざるを得ないものです。議案第39号は、県営住宅等条例一部改正し、過去に県民税滞納や家賃の滞納がないことを入居資格の条件にしようとするものですが、公営住宅法の第1条に掲げる目的に照らしても行き過ぎと考えます。
以上、申し上げまして、議案第1号の予算案には反対、関連して27号、34号、39号、45号、57号について同意できないことを申し上げまして討論を終わります。
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