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知事提出議案第14・15・16号(寒冷地手当)に対する反対討論
2004・10・5 長谷部淳
 日本共産党の長谷部淳です。

 私は、知事提出議案第14号から16号の、県職員に対する本年度からの寒冷地手当を削減することを前提とした、「当面、寒冷地手当を支給しない」とする条例改正案に反対する立場で討論をいたします。

 今回の勧告の内容は、寒冷地手当支給対象地域を、市役所や役場所在地の冬場の平均気温零度以下、かつ平均積雪量16cm以上を基準に、現在の支給地域90市町村を58市町村に減らし、1人当たり支給額を約4割引き下げ、これが完全実施されるならば、現行支給総額22億円のうち、6割から7割程度削減する、というものです。

 反対の第一の理由は、この削減が県職員の暮らしを直撃するだけではない、という点です。

 昨年は、大企業が大リストラに加えて賃下げ攻勢を強めているなか、2年連続のマイナス勧告を人事院が行ない、公務員の平均年収は5年連続ダウン、年収のマイナス額は約16万円と勧告制度が始まって以来、最大となりました。その影響が、地場賃金におよぶばかりか年金給付額の引き下げにも連動しました。これが、景気悪化の原因である個人消費をさらに落ち込ませ、地域経済ひいては日本経済を深刻化させていることは火を見るよりも明らかです。

 そのうえ、寒冷地手当の削減は、生活保護費基準、公営住宅建設費補助算定基準、地方交付税交付金にも連動し、自治体財政にも深刻な影響を及ぼします。このように、住民の暮らしにも直結するこの県職員寒冷地手当削減は、慎重な検討と、住民への十分な説明が必要です。それがなされているとはいえません。「異例の勧告」というならば、「重く受け止める」だけではいけません。県民・住民の暮らしにどう影響を及ぼすかを慎重に検討し、県民に説明する努力が不可欠です。「国から市町村と県民を守るのが、県の仕事」という県政の姿勢は、ここではひとかけらも見えません。

 反対の第二の理由は、この手当て削減の理由に道理がないことです。

 勧告は、平均気温と最深(さいしん、もっとも深い)積雪という二つの気象データをもっともらしく持ち出しています。しかしながら、気温と積雪という関連性のないデータを直結していることや、誤差の多い積雪データの絶対化などの問題点・矛盾点が指摘されているものの、これにはなんら答えていません。平均気温が零度以上でも雪が深い地域への配慮、山間部の積雪の多さや風の強さなどによる必要な生活諸費用負担や通勤困難性などの生活実情への配慮がないのです。まして、生活費補てんの性格をもったこの手当てを、その実情を無視し、ただ総人件費削減の手段として強行するなど許せるものではありません。財政グループによる「財政構造改革プログラム」が、人事領域の寒冷地手当について、その削減を、当然のごとく位置づけるなど、言語道断というほかありません。

 反対の第三の理由は、この勧告そのものが、人事院勧告制度の役割の放棄といわざるを得ない点です。

 いうまでなく人事院勧告は、公務員労働者の労働基本権を奪っている代償措置として、労働者の利益を守る役割を負っています。マイナス勧告や削減勧告のどこが労働者の利益を守っているのでしょうか。

 2年前の11月、ILO=国際労働機関は、日本政府が進めようとしている「公務員制度改革大綱」を再考し、「公務員労働者に労働基本権を付与すべきだ」と求める勧告を出しました。これに対し政府は、人事院勧告がほぼ完全に実施され、スト権を含む労働基本権を制約する代償措置は適切に機能しているとの「追加情報」を出しました。日本政府によるこの主張が昨年6月、ILO理事会によって、再び却下されたのです。このように、国際的に見ても、働くものに不利益を押し付ける勧告は正当性をもっているとはいえません。

 反対の第四の理由は、この問題が、公共サービス縮小の一環としてとらえられる点にかかわります。

 私は、公共サービスの供給・企画立案主体としての行政の役割の限界を自覚し、さまざまな住民組織やNPOなどにその代替を求めることを一概に否定するものではありません。このことが、住民の多様な意思を行政に反映させる議会制民主主義の機能をより充実させることと同時にすすめるならば、大いに議論できるところです。

 しかしこの間の「官から民へ」の大合唱、公務員の人件費削減の動きは、当局による借金財政の責任をあいまいにしたうえで公共サービスを切りすて、なおかつ、住民・NPO・企業など多様な主体の参加と意思決定を強調するあまり、議会制民主主義を無力化することにつながらないか、と強く懸念を持たざるをえません。

 以上、反対の理由を申し上げました。この手当削減が、公務員の暮らしに打撃を与えるだけにはおさまらない、自治体財政、ひいては住民の暮らしにも直結すること、議会の多元的意思を反映させる機能が問われている問題としてもとらえられることに目を見開き、先輩議員のみなさんはじめ議員各位の多くのご賛同をいただけることを訴え、討論を終わります。



日本共産党福島県議団
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