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2004年9月定例県議会を終えて
2004年10月19日
日本共産党福島県議団
団 長  神山 悦子
長谷部 淳
 はじめに

 9月5日投票で行われた県知事選挙は、現職で5選をめざした佐藤栄佐久候補に対し、「みんなで新しい県政をつくる会」から出馬した小川英雄候補は、大幅に投票率が低下する中、41市町村で前回票を上回り、12万4,179票(得票率15.0%)を獲得した。逆に佐藤知事は90市町村の全てで減票となり、目標とした80万票には遠く及ばない70万4,220票にとどまった。小川候補は、県都福島市で22%を超える得票率となったのをはじめ、原発立地自治体の双葉町、大熊町で得票率20%前後、有権者得票率でも10%を超える得票となった。

 これらの結果は、小川候補を先頭に訴えてきた「県民につめたい県政から全国一あたたかい県政への転換」への支持、原発問題でも連続する重大事故のもとで安易な運転再開を認めてきたことへの批判の明確なあらわれである。かかげた公約の実現めざして、県民と力を合わせて「全国一あたたかい県政」への転換に全力をあげるものである。

 9月6日には政調会、9月9日には佐藤知事に「9月定例県議会に関する要望書」を提出した。党県議団は、県知事選で明らかになった県民につめたい県政をあらため、暮らしの予算を増やすことなどを強く求めた。

 9月21日と9月22日には来年度予算に対する「要望をお聞きする会」を開催した。県難病連、県私学連、県保険医協会、県農業会議など各分野の30団体から来年度の県予算に対する要望を受けた。県が財政難などを理由に福祉、医療、教育分野の予算を減らす動きがある中、重度心身障がい者医療費補助を削らないでなど各団体から切実な要望が出された。

 県民生活の深刻さは、有効求人倍率は全国平均以下、県内の勤労者所得も農業所得も減少し続けていることに表れている。県は来年度予算から「枠配分方式」をとるとしているが、全国に比べておしなべて低い本県の医療・福祉・教育水準がさらに後退させることになりかねない。

 佐藤知事5選後初議会となった9月定例県議会は、9月30日〜10月18日までの19日間の会期で開かれた。知事提出議案は45件、議員提出議案は7件であった。60億300万円の補正予算案の特徴は、豪雨で被災した災害復旧などに29億円弱、緊急雇用対策、老朽化が激しい会津児童相談所の整備、若松乳児院床暖房改修などに3億円余を計上した。しかし、一方で小名浜東港の人工島づくりに当初予算を上回る3億6千万円の予算を盛り込み、トラハイの事業の進度を早めること、首都機能移推進など、知事選後も大型プロジェクト推進の姿勢を明確にした。

 なお、県職員の寒冷地手当支給削減を12月議会で実施することを前提にした今年度分の支給を引き延ばしする3議案については、10月5日に分離して採決し、共産党のみが反対で可決。最終日に、9月補正予算案と談合疑惑がある工事請負契約2件についても共産党のみの反対で、知事提出議案36件、議員提案7件が可決された。

1、佐藤知事の所信表明と他会派質問の特徴

 佐藤知事は所信表明で、5期目の県政に臨むに当たっての5つの基本的な考え方を強調しその中で、県民一人ひとりの立場に立つ県政をめざすとしながら、県職員削減、公社等外郭団体や県立病院事業の統廃合、県立医科大学や会津大学の法人化の3大切りすての具体化を言明。

 9月定例議会は、佐藤知事が県政の基本としてあげた「県民一人ひとりの立場に立つ」、「県の役割は地域住民と市町村を守ること」、また選挙での投票に示された批判を「真摯に受け止める」という姿勢が具現化されるかが問われる議会でもあった。

 他会派の質問では、佐藤知事への「絶賛」が続いた。自民党は「知事を支える与党としてよろこ」ぶ、公明党は「県政史上初の5選に心からお祝い申し上げ」、県民連合に至っては「佐藤知事に深甚なる敬意を表す」とした上で、全国知事会の次期会長職に「佐藤知事が最高の器かと自負しております」などともちあげ、県政をチェックする県議会の役割を投げ捨てる深刻な与党病の症状をあらわにした。

2、日本共産党県議団の論戦の基調

(1)神山悦子県議の一般質問

 一般質問に立った神山悦子県議は、「三位一体改革」、県財政、水道事業、原発・火発問題について県当局の姿勢をただした。神山県議は、小泉政権の「三位一体改革」が、政府の借金のツケを地方に押しつけることがねらいで、全国知事会が義務教育費を含む国庫補助・負担金を削減するとしたのは、地方自治体にとって自殺行為と指摘し、義務教育費を一般財源化すれば、教育水準の低下を招きかねない事態をどう県民に説明するのかと迫った。

 また、石川町の今出ダム計画について、不必要なダム建設が市町村の財政負担と住民の水道料負担増につながることを指摘し、河川改修での治水なども含めた今出ダムの事業全体像の見直し、給水事業へ県が直接責任を持って関与するよう求めた。県は関係市町村の判断を尊重するとの答弁を引き出した。

 新地火力発電所の配管破裂事故について現地調査をもとに、原発行政に比べ火発の方は事業者まかせという国・県・事業者のズサンな体制を指摘し、県の窓口の体制が確立、「火力発電所の定期点検指針」の見直しを求め、県のチェック体制をただした。原発と火発の点検作業など危険な仕事は下請けに出すなど、コスト優先では県民の安全・安心は得られないこと。安易な「維持基準」を導入したことが問題であり、県も県議会もこの維持基準の導入に反対してきた経過をふまえ、安易な再稼動を認めるべきではないとした。また繰り返される事故をみても「老朽化」は否めないことから「廃炉」を県から提言するよう求めた。

(2)長谷部淳県議の反対討論

 10月5日に採決となった県職員の寒冷地手当削減に関する議案と、最終日の18日には補正予算案、公正取引委員会から談合是正勧告を受けた企業が受注している工事請負契約1件、人事案件3件の計8件に反対し、長谷部淳県議が討論に立った。

 長谷部議員は、補正予算案は、豪雨で被災した国道・県道や河川、砂防施設などの補修、農業災害対策など災害復旧が計上され、緊急雇用対策や、会津児童相談所整備、若松乳児院床暖房改修などを評価した上で、県の財政運営において、累積赤字を約1兆2,000億円にもふくらませた政治責任を自覚し、抜本的なメスを入れる姿勢がないことが最大の問題であることを指摘。借金のツケを県立病院・県立社会福祉施設・県立大学など、県の医療・福祉・教育にとりくむ姿勢が問われる分野に押しつけたり、県職員をさらに削減したりすることなどで乗り切ろうとする姿勢は、本末転倒であると批判した。

 10月15日、公正取引委員会が、全国の地方自治体では本県だけで橋りょう建設工事をめぐる談合を認定し、是正勧告を行なった。疑惑がある以上、勧告を受けた2社による共同企業体の工事請負については、入札のやり直しが筋である。落札率90%以上は談合の疑いが濃いというのが日弁連の指摘でもあり、入札制度については、電子入札の導入を含め、いっそうの透明性、公平性を図り、公共事業費の縮減に努めるべきと指摘した。

 寒冷地手当削減にかかわる議案に対しては、反対の理由の第1に、この削減が県職員ばかりか県財政や県民の暮らしを直撃すること、第2に、この手当て削減の理由に道理がない、第3に、勧告が人事院勧告制度の役割の放棄といわざるを得ない、第4に、この問題が、公共サービス縮小の一環としてとらえられることの4点を指摘し、寒冷地手当の削減は不当であることを主張した。

 なお、長谷部県議の反対討論に対し、最終本会議で与党各会派からの賛成討論は一切行われなかった。また、県内紙の報道も反対討論があった事実さえも報道しない異常な報道姿勢をとった。

(3)常任委員会での論戦

①商労文教委員会

<商工労働部>

  • 緊急雇用対策事業については、今年度で打ち切りの方向が出されているため、国へ「継続」をするよう求めた。雇用創出については、山形県では県が予算を計上し実施している「若年者常用雇用促進奨励金」を活用したトライアル事業を本県でも実施するよう求めたが、消極的だった。
  • 大型店出店問題については、福島大森・信夫地区に進出予定のマックスバリュー立地届の例をあげ、交通渋滞・騒音・子どもの非行問題など住民の要望へどう応えていくのか、「商調法」の活用についての考えなどを質問。県は、大森店については住民の要望があがっていないとしながらも、24時間営業ということなので、住民や市町村の意見をふまえて県も意見を言っていくとし、「商調法」については申し出があれば検討していくと答弁。

<教育委員会>

  • 全国知事会が決めた「義務教育費国庫負担の削減」について、教育長は本会議での主張をくりかえしたが、「最終的には国が責任をもつべきと考える」とも答弁。
  • 高校の購買部の課税問題については、収益を目的にしているのではないので、NPO法人化にするとかで非課税扱いとなるよう国に働きかけることを求めた。

②企画環境委員会

<生活環境部>

  • 地震などの災害時の自治体指定避難所について、公共的施設の施設数と、そのうちの学校数、指定の基準、耐震化されていない施設の割合などを示すよう求めた。避難所に指定されている小・中学校の耐震化率は約12%、高校は約18%であり、大変に心もとない状態であることが明らかになった。
  • 阿武隈川、五百川合流点近辺のカワウの生息地現地調査を行った。カワウの繁殖により、鮎や養殖鯉の稚魚が食べられる被害や多量の糞が環境汚染となっている実態が明らかとなった。しかしカワウは保護鳥であり、「保護」と「駆除」をどう整理して対応するかは今後の課題である。

<企画調整部>

  • 過疎の実態が集落単位に進み、市町村単位での過疎対策には矛盾があることを指摘し、集落単位の支援策、集落単位での主体者づくり支援策、また、一次産業と医療・福祉・教育の社会保障とを雇用政策・産業政策の柱と位置づけるべきことを強調した。
  • 首都機能移転事業について、他会派の委員は、執行部からあらためて推進する答弁を引き出したり、推進を激励する質疑を行った。それに対し、県自身が「効果が乏しい事業については廃止する」としていることとの関係を県民にどう説明するのかをただした。当局は一般の事業と違って国家100年の大計だからすすめると強弁した。

③ともに生きる福祉社会・地域医療対策特別委員会

 富山型小規模多機能デイサービス事業を県として支援する場合、何が課題かを明確にするように迫る。また、第二次障がい者計画にかかわってケアマネジメントについて、介護保険と違って位置づけがないままに支援費制度が始まり、制度の柱でありながら「無報酬」であることを指摘。県は養成研修するものの財政支援はむずかしいとの答弁に終始した。

 県立病院では、改革審議会が猪苗代病院の廃止の方向を出した後に、町長も町議会も反対していることを示し、県としての進め方をただした。県は審議会に「白紙委任」で答申を待つという無責任な姿勢を示した。

3、県議会内の各協議機関設置される

 県議会は長期計画など県行政の基本計画に対する議決権拡大をめざして検討するために各派政策責任者会議を設置し、神山悦子県議が構成メンバーに入った。

 また、市町村合併に伴う県議選挙区の変更について検討する協議機関が各会派からメンバーを出して構成され、05(平成17)年2月末までに条例化を進める作業を進めることで設置された。神山悦子県議が構成メンバーに入った。

 さらに、過疎・中山間地振興条例を議員提案で制定することをめざして「議員提出条例案検討会」を設置し、条例案の名称など基本事項について合意した。長谷部淳県議が参加し、休会中の協議も含めて作業を進めることで合意した。

 また、政務調査審議会は交渉会派だけで構成し、原則非公開とされてきたが、会派間の調整をのぞくという制限付きであるが、原則公開とすることが決められた。

4、請願・意見書への態度と結果

 党県議団が紹介議員となって提出した新規請願は8件、意見書は4件だったが、農民連から提出された「BSEの全頭検査制度の堅持を求める」意見書1件が「趣旨採択」となり、他は継続審査とされた。他会派からの意見書6件のうち5件は全会派一致で国に提出された。

 また、今後の意見書の取り扱いについては、政務調査審議会で継続審議になった場合でも年度末には結論を出す「年度内処理方式」の導入を決めた。

以 上



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