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2005年2月県議会知事提出議案第1号ほか反対討論
2005年3月17日
長谷部淳
 日本共産党の長谷部淳です。
 議案にかかわって意見を述べさせていただきます。
 議案第一号・新年度予算案のなかには、小・中学校全学年における30人程度学級の実現へ向けた経費を始め、障がい者グループホーム整備のための経費、総合的な水管理計画策定のための経費など、十分でない点を含みつつも、県民生活を応援するものが入っていることを否定するものではありません。
 こうした内容を前提としつつ、問題点を指摘したいと思います。

 第一の大問題は、来年度予算案に盛り込まれている県民への冷たい仕打ちです。
 ひとつは重度心身障がい者医療費補助事業において、10月から入院の食事にかかる費用をはずしてしまうことです。平年ベースで4億円の削減です。一般質問でも指摘しましたが、政府も同じ時期に、精神障がい者の通院医療費への助成、身体障がい者を対象とした「更生医療」、18歳未満の身体障がい児の「育成医療」の3制度で、入院時の食事代を含めて自己負担を導入しようとしています。とくに精神障がい者の長期入院者には、深刻な影響を及ぼすことに心を寄せるべきです。
 ふたつは、敬老祝い金の廃止です。1958年から県民の長寿をささやかに祝う事業として続けられてきましたが、財政構造改革プログラムに基づいた、県民生活応援の視点を欠いた、削減のための削減というほかありません。昨年度と今年度は88歳のかたに1万円、99歳のかたに3万円の祝い金で、今年度は6,000人ほどを対象に、約6,600万円です。
 みっつは、県立高校授業料などの値上げです。新一年生だけでも年間6,152万円の新たな負担であります。
 知事は、県政において「思いやりの心を具現化する」、「大切なのは人間の安全保障」、「共生の論理に導かれた社会」を強調し、「いのち・人権・人格の尊重」をとなえますが、県民の暮らしのすみずみ、とりわけ障がい者や高齢者という社会的弱者に痛みを押しつけるこのやり方は、言っていることとはさかさまと言わざるをえません。

 第二に、財政運営です。
 その大前提となるのは、県民の暮らしがおかれた実態がどうなっているか、またどうされようとしているか、であります。
 知事が今議会冒頭で県内景気動向に触れ、「楽観を許さない状況も見られる」と指摘していました。総務省の「家計調査」による「勤労者世帯平均年収」を見ても、内閣府の「国民経済計算」の「雇用者報酬」を見ても、国税庁の「民間給与の実態」の「民間給与総額」を見ても、どのデータも家計収入は毎年減り続けています。
 実を言えば、1997年の橋本内閣当時、これらのデータのどれをとっても家計収入は増え続けていました。橋本内閣は、「97年度は実質1.9%成長」という見通しのもと、消費税増税で5兆円、定率減税打ち切りで2兆円、合計7兆円の大増税という大失政をしました。その結果、成長率は前年度の実質3.6%から0.5%へ、98年度はマイナス1%へと急落しました。
 この二の舞以上の深刻な事態がつくり出されようとしています。小泉内閣のもとで、3年前の10月からの高齢者医療費窓口負担原則1割と雇用保険料引き上げを皮切りに、年金給付の削減、発泡酒・ワインの増税などすでに実行した負担増・給付減は4兆円です。
 これに加えて来年度と再来年度の2年間で定率減税を縮小・廃止して3.3兆円の増税を押しつけ、さらに07年度には消費税を増税するシナリオに基づいて、来年度予算案には定率減税の半減が盛り込まれています。さらに負担増は、年金課税強化、介護保険のホテルコスト導入、障がい者医療への自己負担強化など国民の暮らしの隅々に及んでおり、今後2年間のこれらの合計は7兆円にもなります。
 まさに小泉内閣による「勝ち組・負け組」政治により、個人消費はますます冷え込み、橋本内閣以上の大失政となる危険性がきわめて高いといわなければなりません。
 県財政の運営にあたっては、こうした政府動向と県民の暮らしの実態をふまえれば、住民の福祉の増進を主軸とした重点政策に思い切った予算配分をし、県民に安易な負担を求めず、県民の暮らしに密接な事業の切り捨ては中止するなどの財政構造改革プログラムの柔軟な見直しが必要です。

 第三には、予算編成にあたり、予算抑制策でしかない枠配分方式の問題です。
 枠配分方式について当局は、現場の創意工夫で自らの財源を生み出し、県民ニーズにこたえる施策をとることで、これまで以上に政策形成に効果がある、と答弁されました。これによれば、現場の工夫により、重度心身障がい者の医療費補助制度において入院時の食事に要する費用を10月から自己負担させ、また、敬老祝い金を廃止して財源を生み出し、県民ニーズにこたえる、というのであります。なにをかいわんや、というほかありません。
 一般質問でも指摘いたしましたが、県の借金に責任がない障がい者のみなさんに、入院時の食事に要する費用を新たに求めることは、やめるべきです。
 最小の経費で最大の効果をあげるという税金の使い方からいえば、県が発注する工事の平均落札率を引き下げる努力こそ重要です。今年度12月までの1億円を超える土木部での工事入札50件の平均落札率は94.7%、そのうち80%の2件を除くと95.3%、同じく農林水産部では13件の平均が93.09%、70%台と80%台の2件を除くと95.6%、教育庁では4件の平均が95.7%で、圧倒的に95%を越えているのが現実です。
 かりに土木部発注の1億円超の工事で入札率が平均80%になったとすれば、それだけで20億円を超える財源を生み出すことができるのです。
 2001年に発覚した、県発注の航空写真測量業務について、談合と認定された期間の平均落札率が95.97%、談合排除後の同種の平均落札率が72.64%と、23.33ポイントも引き下がった経験を生かすことこそに力をそそぐべきです。

 第四は、大規模事業の徹底した見直しです。小名浜人工島とトラハイの残事業費はあわせると1,000億円近くあります。財政困難なおり、県民の暮らしと地域経済、また市町村の大変さに目を向けるならば、90年代半ばから続くこれらの事業に借金までして県費をつぎ込み続けることが、県政にとって喫緊の課題であるとはおよそ考えられません。
 来年度もまたトラハイに44億円、人工島にも国直轄分への負担を除いても3億9,000万円を計上しています。その一方で敬老祝い金の廃止で7,000万円弱、重度心身障がい者への入院時食事代を自己負担させ、平年ベースで4億円を浮かそうというのですから、知事の政策判断の大きな誤りと指摘せざるをえません。
 あわせて、国会等移転法に照らしてみても、移転の意義はもはや失われている首都機能移転のために、土地調査費を含めて2,500万円も計上し、累計で8億2,000万円を超える支出を続けることも、県民の暮らしに目を向けているとは言えません。

 こうして編成された来年度予算案は、「財政健全化債」という名の借金を100億円発行し、基金から154億円を繰り入れてのやりくりであります。
 目的別の歳出内容を、財政構造改革プログラムのとりくみをはじめる前年度の2001年度当初予算と比較すると、衛生費は40億円のマイナス、労働費は15億円のマイナス、商工費は55億円のマイナス、教育費は160億円のマイナス、民生費は国保の県による新たな負担という特殊要因を除けば、介護保険2年目の01年度よりも51億円のマイナスです。借金の返済である公債費が252億円ものプラスであり、その構成比率16.1%は、民生費と衛生費を加えたものの1.6倍にのぼっています。
 「少子化対策の推進」など5つの「重点推進分野」に重点的・優先的配分を徹底するといっても、その規模は予算全体の3%にもなりません。
 01年度決算の全国比較で見ると、本県の民生費割合は7.11%で、全国平均の8.34%よりも1.23ポイント低くなっています。01年度決算総額は1兆261億円でしたから、本県は全国平均より約126億円少ないということであり、そのレベルが毎年続いています。その結果、特別養護老人ホーム待機者1万人、国保事業への県独自助成ゼロ、共同作業所や学童保育への助成の少なさ、市町村が保育所運営に50億円持ち出し、料金も国基準より16億円軽減していても県は見て見ぬふり、といった遅れを生んでいます。子育ても高齢者福祉も、県が言っていることと実際の姿はかい離しています。その01年度よりも民生費が減少していることは、県民に対していかに冷たい県政かを物語っているというほかありません。

 以上の理由から、議案第1号、また、来年4月から県民に一律1,000円の税負担を求める議案第27号(県森林環境税条例)、県立学校などの授業料などを引き上げる議案第33号(県立総合衛生学院)、第34号(県立会津若松看護専門学院)、第36号(県立職業能力開発校)、第37号(県立農業短期大学校)、第42号(県立高等学校)、さらに県職員定数を削減する議案第49号も容認できるものではありません。

 次に、議案第61号と62号についてです。
 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律の規定にもとづくとされますが、地方自治を侵害するきわめて重大なものです。
 第一点は、どういう事態が前提とされているか、という問題です。私は国民保護法制問題について、おととしの12月議会で質問しました。その際、当局は「事態の想定が具体的に示されていない」点を指摘していました。
 今月4日に政府が示した「国民の保護に関する基本指針」案は、冒頭で「我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下している」とわざわざ言っています。そうであれば、国民保護法制が発動される事態は、日本が攻められる事態以外、すなわち、米軍が日本を足場に先制攻撃の戦争を仕掛ける場合がもっとも可能性が高いといわなければなりません。
 これが政府によって「武力攻撃事態」と認定され、その認定に基づいた作戦に政府機関・自治体・民間企業・国民を動員するのが「国民保護法」の中身です。
 第二点は、こうした「武力攻撃事態」を前提に、「国民の保護に関する計画」策定が自治体に義務づけられ、「平時の有事化」を進め、「訓練」などを通じて戦争遂行を可能にする自治体や国民をつくることが目的である点です。
 「基本指針案」は、全自治体に当直制の導入・強化など平時から有事に即応するための態勢確立を求め、日常的な自衛隊との連携強化を打ち出しました。また、放送・通信、運輸や医療などの「指定公共機関」に対し情報収集や運送・通信の確保など「平素からの備え」を求め、さらには「平素から教育や学習の場も含め様々な機会を通じて広く啓発に努める」と、学校教育の利用も打ち出しています。
 第三点は、もともと武力攻撃事態法では、その第15条において、内閣総理大臣が知事を飛び越えて、代執行・直接執行することになります。県管理の道路をアメリカ軍車両が通行することを拒否するとか、核積載のアメリカ軍艦船の入港をさせないとか、これまで自治体がしてきたことを最初からさせないことが前提となった法制度であることです。
 議案で提案されている協議会や対策本部の会長・本部長には知事が就くということですが、ここで計画がどう答申され、実行されようとも、こうしたしくみになっている以上、協議会にせよ、対策本部にせよ、国から見れば、たんに形だけのものであり、最終的には中央集権的に動かされる機関にすぎません。
 知事は、現行憲法について、「真の地方分権の確立や、更にそれを推し進めた住民主役の地域づくりが求められる中、今なお揺るぎない存在意義を有している」とし、「『平和主義』、『国民主権』、『基本的人権の尊重』という基本原理は、戦後の我が国の方向付けをしっかりと果たすとともに、国民の精神的支柱となっている」とも評価されました。
 この基本原理を内側から掘り崩そうというのが、武力攻撃事態法にもとづく一連の有事法制度にほかなりません。知事の憲法認識を真っ向から踏みにじるものです。
 災害対策基本法、災害救助法に基づいた対応を充実・強化することでできることを、わざわざ内閣総理大臣の権限強化のしくみまでつくって、地方を動員しようとする意図を見抜かなければならないと思います。

 さて、地方の自立と裁量の拡大を実質的に伴う地方分権を進めようとする知事の立場からすると、今年4月施行の新合併特例法に基づく合併構想策定に対する知事の姿勢も問われます。来年度予算案にはその経費が115万円弱計上されていますが、いわゆる今回の「平成の大合併」は、国にとって金のかからない地方制度づくり、そして財界にとっては「効率の悪い」地方の市町村を合併し、そこから財源を引き上げて都市に集中することがねらいであることは明らかです。それは総務省が「市町村合併は画期的な行政改革」、「市町村合併すれば安上がりになる」と繰り返し明言していることで裏づけられます。
 4月施行の新たな「市町村合併特例法」は基本的に現行法の延長ですが、5月にも総務相が策定する「基本指針」に基づき、各都道府県が、人口1万人未満の市町村や、政令市、中核市、特例市をめざす市町村などのなかから、県が「自主的合併推進の必要がある」と判断した市町村を構想に盛り込むこととなっています。
 すでに全国の県知事のなかには、「市町と対等な県が、構想を策定するのは適当でない」、「現行法の下で市町村が判断しているはず」として、合併構想の策定を見合わせる知事がいることも報道されています。住民の利益と住民の意思が大前提ですからあたりまえのことです。私は知事が、合併構想は策定しない立場を明確にすべきだと思います。

 また、日韓友情年にかかわってひとこと申し上げます。今年は日本と韓国の国交正常化40周年の年であり、両国政府が決めた「日韓友情の年」であります。県としても韓国文化交流事業の経費として5,000万円を計上しております。私は、両国が、歴史に対する正しい理解のもとに友情を深めることが肝要だと思います。その点で、2001年に、日本の文科省が「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を検定合格させたことに対し、韓国で強い批判が起きたことを直視しなければなりません。同じことを繰り返してはなりません。今月11日、韓国の市民団体である「アジア平和と歴史教育連帯」は、「つくる会」主導の中学校歴史教科書改訂版の内容を公表し、きびしく批判しました。韓国政府も公式に「遺憾の意」を表明しました。韓国国会議員102人による「正しい歴史教育のための議員の会」は、今年の友情の年が、このままでは「見せかけの展示行事になる」と警告をしています。
 私はこの教科書採択問題を通して、韓国の人びとの日本に対する不信を深めるようなことがあってはならず、県が十分な配慮をされるよう、強く要望しておきたいと思います。

 以上、知事提出議案第一号ほか、9件に反対を表明いたします。

 最後に請願についてです。受理番号32(2年課程通信制の看護師養成所配置を求めることについて)、72(市町村国保に対する補助を行うよう求めることについて)、73(市町村国保税・窓口一部負担金の減免制度の整備を援助することを求めることについて)、74(国保で傷病手当、出産手当を実現するよう県独自の努力を行うことを求めることについて)、83(安心して受診できる国民健康保険の実現を求めることについて)は、准看護師の看護師への道の切実な希望や、県民世帯の過半数であり、県民医療の最後のとりでである国民健康保険の充実、とりわけ安心して医療機関を受診し、信頼される制度とすることを求めるものであります。
 いずれも県民の福祉の向上には不可欠なことであり、不採択とする道理はかけらもありません。
 以上の5件の請願は採択すべきことを申し上げ、討論を終わります。


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