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2005年9月定例県議会を終えて
2005年10月13日
日本共産党福島県議団
団長 神山 悦子
長谷部 淳
はじめに

 8月4日に郵政民営化法案の参議院での否決を受け衆議院が解散され、9月11日投票で総選挙が行われた。総選挙の結果、小選挙区では自民党が47.8%の得票率で73%の議席を占めたが、これは小選挙区制の非民主的性格を端的に示すものとなった。

 総選挙後の新しい政治情勢は、小泉・自公政権の憲法改悪や大増税などの反動的暴走への危険が強まっており、民主党は、総選挙後に憲法9条の改正を正面にかかげる前原新代表となって、自民党に対抗するために「改革」のスピードを競い合うなど、自民党以上に財界よりの主張をするなど国民との矛盾がいよいよ深刻にならざるを得ない状況になっている。

 総選挙の結果を受けて、自民党県議でさえも「自民党は勝ちすぎた。小泉改革によって地方の切り捨てがいっそうすすめられるおそれがある」などと言う状況になっている。

 党県議団は、9月7日、9月定例県議会にむけた「知事申し入れ」を行ない、社会保険加入世帯の乳幼児医療費を窓口で無料にする市町村が77%になっており、早期に県として実施すること、市町村国保への県独自の支援、土砂災害の未然防止、アスベストの使用実態調査と除去作業の計画の策定、大規模集客施設の出店規制など9項目について要望した。

 党県議団は、9月20・21日に「要望をお聴きする会」を開催し、13団体から県政への要望を受けた。

9月定例県議会について

 9月定例県議会は、9月27日〜10月13日までの17日間の会期で行われた。総額24億8千万円の補正予算案など知事提出議案39件と議員提出議案7件の計46議案が可決され、企業会計に関する5議案は継続審議となった。

 議案の中では、全国初の「福島県商業まちづくりの推進に関する条例」案が提出された。商労文教常任委員会の審議の中で条例案に示された規制対象面積は、規則で6千u以上とすることが表明され、最終日に全会一致で可決となった。

 党県議団からは、10月4日に一般質問に長谷部淳県議が立ち、最終本会議の反対討論は神山悦子県議が行った。

 日本共産党県議団は、補正予算案と指定管理者制度の導入に関する条例案、県単建設事業への市町村負担の追加に関する議案などの計6件に反対した。また、意見書7件が採択された。

一般質問について

 10月4日の一般質問に長谷部議員が登壇し、県の行政改革や防災計画、介護保険、県警の捜査費など20項目を質問した。

 地域防災計画の「災害時要援護者予防対策」では、市町村へ必要な補助や助成措置を求め、住宅の耐震化や土砂災害未然防止策として、人家裏山の急傾斜地対策を一戸から採択対象として防災事業ができるように基準の緩和が必要だと県の対応を質した。現在の事業対象となる5戸以上の箇所の整備率が昨年度末27.2%であり、基準の緩和は困難という答弁であった。

 介護保険では、これまでの実施状況が県内の65歳以上の被保険者(県内で47万人)のうち要介護認定者が14%程度でしかないうえ、要介護認定者の2割が利用していないこと、居宅では支給限度額の4割程度しか受けていないなどの実態を指摘し、サービスの地域格差の是正、施設入居者の定員増、10月からの食費や居住費の新たな負担への県独自の助成措置を求めた。県の答弁は、他会派の議員が「冷たい」と口にするほど、問題を認識していないものだった。

 また、県警の捜査費については、国費と県費を合わせて、00年度と比較すると04年度では6割以上も減っている事実を答弁させ、「捜査費が大幅に減少したのは、裏金問題が噴出し裏金づくりができなくなったからではないか」と県民から疑問の目が向けられており、県民に納得のいく説明と調査が必要ではないかと迫った。県警本部長は、「事実を把握しておらず調査は不要」と居直り答弁を3度繰り返した。

 他党の質問で、自民党の質問者は、冒頭で総選挙の結果を「小泉改革路線」への支持が寄せられた結果であるとの認識を共通して示した。その他、県立病院廃止自治体への支援、商業まちづくり推進条例の店舗面積、国保調整交付金への今後の対応などについての質問があった。

反対討論について

 10月13日、神山県議が議案への討論に立ち、「商業まちづくり条例」については、長年待たれていたものであり、市町村とも協議しながら深夜営業問題や身勝手な閉店・撤退をさせないなどの地域貢献活動を求めるなど、審議会の委員や審議内容などを広く県民と共有し、県民・地域住民・市町村の意見を反映させ、実効ある条例となるよう望むと表明した。

 補正予算については、県の財政が厳しいにもかかわらず、小名浜人工島づくりやトラハイなどムダな大規模公共事業に相変わらず税金をつぎ込んでいることを批判し、さらに、福島空港は各種助成措置をとりながらも路線廃止が続き、利用者数がさらに落ち込んでいることから、福島空港の存廃問題を真剣に議論すべき時期にきていることを指摘した。

 太陽の国と県老人福祉施設飯坂ホームの施設入所者に対し、利用者に食事代と居住費を全額負担させることは大変な負担増となり、県独自の軽減策を図っていくべきと指摘した。

 「県自然の家」を財団法人から指定管理者制度へ移行することについては、公的な教育・福祉施設についてはそもそも経営優先が求められる指定管理者制度を導入すべきでなく、さらに新たな利用料金の徴収は制度導入に合わせた改悪であると指摘した。

 最後に、PC工法の橋りょう工事契約の案件について、契約の相手方が2社とも1年前の昨年10月半ばに公正取引委員会から独禁法違反で排除勧告を受けた業者であり、これらの業者への発注の中止を求めた。

 与党会派からの賛成討論は行われなかった。

委員会審議について

【商労文教委員会】

<商工労働部>

 「県商業まちづくり条例案」に審議が集中した(傍聴者あり)。6月の委員会では、県が示した4月の条例案の対象面積1万5千uでは広すぎるため、5千u以上にすべきと主張し、委員長報告にも付帯意見がつけられていた。ところが提案された条例案には、規制対象の店舗面積が明記されなかった。これには自民党も反発をみせ、事前に自民党や県民連合と協議を重ね、面積を引き下げ数字を明示させることで合意した。

 神山県議は、面積以外の項目では、(1)対象を商業施設だけとせず特定集客施設とすること、(2)地域貢献については、身勝手な閉店・撤退をさせないルールづくりや青少年・雇用に問題を起こす深夜営業の規制を、(3)審議会の委員に公募委員を加えること、(4)条例施行が来年10月1日では、かけこみ出店の危惧があるのではないか、などを質した。

 県は、細かい内容は規則で定めることや、基本方針については審議会に諮問し、2月県議会前に原案を示し、年度内の策定をめざす。市町村との協議や周知期間をみるとそれから半年間はかかるとした。

 他の委員からは、大店立地法第13条にある「需給調整」に抵触しないかとの質問があった。これに対しては、法律の専門家と検討を重ねてきたうえ、「まちづくり」という観点で広域的に県が調整するので、法的にはクリアできるものとの見解を示した。

 また、全会派が一致して規制対象面積を明示するよう当局に求め、3時間休議となった。再開後に「対象面積を6千u以上とする」との部長答弁を引き出し、全会一致で条例案を可決した。

<企業局>

・ 原町工業用水道事業の資産処分にかかる補正予算が計上され,これにより11月末日に譲渡が完了となる。また、これに関わる条例が改正された。

・ 電気事業の譲渡後における残務整理関係の増額補正。

・ 工業団地の分譲にあたってリース制度を創設したが、こうした誘致企業への優遇制度による効果への疑問をのべた。富士通の工場閉鎖問題を例にあげ、むしろ地域貢献を求めるべきではないかとただした。

<教育委員会>

・ 06年4月からの「県自然の家」の指定管理者制度導入と新たに利用料金を徴収することに反対した。利用料金の年間収入見込みは、わずか1,600万円にすぎない。

・ 来春の高卒見込み総数は22,621人で、そのうち就職希望者は6月末で6,936人(30.6%)となる。

【企画環境委員会】

<企画調整部>

・ 核燃サイクルをめぐる推進派、慎重派を混じえた県主催のシンポジウムで明らかになった論点は、は安全性、経済性、高速増殖炉実現可能性、エネルギーセキュリティーなどであり、国民的議論が必要であるとの県の認識を示した。

 総合安全管理に関しては、県内市町村における災害時の装備援助協定をはじめとした地域間交流の実態調査などをふまえ、その理念づくりに取り組んでいるとのことである。

 知事所信表明の「歩いて暮らせるまちづくり」を受け、新長計でのユニバーサルデザインにおける交通体系の構築の必要性を質したが、商工労働部と相談してすすめたいということであった。

<生活環境部>

・ 補正予算に計上されている「環境放射能測定機器等の整備」8,000万円強の箇所数について原発周辺地域の放射線監視測定局舎22箇所分である。また、アスベスト被害への対応について、18年前にも県は「吹きつけ石綿使用状況調査結果」を出し、その後の対応と今回の事態との関係を質したが、含有率などの基準が違い今回はあらためての点検と対応をしているとの答弁であった。

 土砂災害防止の危険箇所管理の一元化や、地域防災計画の全庁的推進システムの構築にかかわり、地域防災計画の推進の実質的調整者はだれかを質したのに対し、「防災会議のトップは知事だが、直轄理事のもとに動く」と明確な答弁は得られなかった。委員会での採択日、生活環境部長から防災計画については、生活環境部が責任を持つ旨の補足説明がされた。

【次世代育成支援対策特別委員会】

 「多様なニーズに応じた子育ての支援」に関わる51事業について保健福祉部と教育庁からの説明があり、質疑に入った。0〜2歳児が家庭にいる比率は、0歳児はほぼ9割、1歳児は76%、2歳児は70%が家庭にいるとのデータからどのような支援策が必要か、幼稚園の預かり保育実施率は私立が8割、公立が5割となっているが、父母の要望に応えているかの検証が必要であることを主張した。また、学童保育も小学校数の半分にも満たないし、設置運営基準も考えられていない、不登校児のフリースクールへの支援も具体的でないなど課題山積となっていることを指摘した。

【県立大学法人化調査検討委員会】

 知事が策定する各法人化大学の「中期目標」についての調査検討を進める議会内の委員会のもとワーキンググループが設置され、党県議団から長谷部県議がメンバーに入り、学問の自由と大学の自主性を大前提にした検討を進めるべきであり、大学側意見を十分に取り入れるようすりあわせをすべきことを強調した。

 ワーキンググループとして「大学の自主・自立性の尊重」「県民の目線は地域貢献」「結果重視の数値目標」を基本視点に検討を進め、意見をまとめた。それは10月12日に検討委員会としての意見として議長に提出され、翌13日は議会の意見として議長名で知事に提出した。

「福島県商業まちづくりの推進に関する条例」の成立について

 今議会で全会一致で可決された「福島県商業まちづくりの推進に関する条例」は、規則で店舗面積6,000u以上の大型店出店に対し、県が意見を述べられるなど都道府県段階では全国初の画期的な条例となった。施行は06年10月1日からである。

 1999年に安達町と伊達町のイオングループ出店計画が明らかになり、県北地方を中心に「大型店出店とまちづくりを考える会」が発足した。これは周辺の商工団体、住民、労働組合、日本共産党議員などで構成され、自治体や県への陳情、署名行動、学習会などが取り組まれてきた。

 そうした中で、県は01年に中心市街地だけでなく「まちづくり」の観点に立った「まちづくり懇談会」を実施するなどの取り組みをすすめ、さらに03年「福島県広域まちづくり検討会」を副知事の諮問機関として設置し、「まちづくり」の観点から大型店の立地調整を行うことを打ち出した。また、県が実施した05年4月に実施した条例案への意見公募には約1,500通もの意見が寄せられ条例制定が待たれていた。

 日本共産党県議団は、住民運動と呼応して県議会で早くから取り上げ、県が示していた15,000uの対象店舗面積の引き下げを求め5,000u以上とすべきと主張してきた。9月県議会にて案された条例案の審議でも、商業施設だけでなく集客施設も対象とすべきことや、大型店の地域貢献については身勝手な撤退に歯止めをかけるようにすべきと提案し、06年10月の施行では駆け込み出店の危惧を指摘した。

「木造住宅耐震化促進事業」について

 03年9月議会で長谷部淳県議が一般質問で取り上げて創設にいたった制度であり、国の制度に基づいて、県が要綱をまとめ今年6月から施行された。市町村が個人木造住宅の耐震診断に有資格者を派遣する場合に助成を行うものである。

 9月現在では、新地町で制度が創設されている。今後、市町村での制度の創設をすすめることが課題となっている。

請願、意見書について

 党議員団が紹介議員になった「妊婦健診の無料化を求めることについて」(新婦人県本部)の請願1件は「継続」とされた。
 意見書6件は、党県議団も賛成し全会派一致で採択された。「道路特定財源の確保に関する意見書」の採択にあたって党県議団は退席した。

以上


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