05年11月臨時議会・職員給与引き下げ議案に対する反対討論
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2005年11月22日 長谷部淳 |
日本共産党の長谷部淳です。日本共産党を代表し、議案に対する討論を行ないます。
県人事委員会が10月6日に勧告した内容は、本年度の県職員の手当を含む月額給与を行政職で0・35%、平均で1,400円引き下げること、また、給与構造の抜本改革と称して、来年度以降五年間かけて平均4・8%引き下げることが柱になっています。
議案第一号から第四号は、そのうち、今年度分の給与改定を勧告通りに実施するというものです。具体的には、今年度の給与を手当を含めて月額0・35%引き下げ、期末・勤勉手当を0・05か月引き上げ、行政職の平均モデルでは年間7,396円、0・11%の引き下げで、約8千万円を浮かそうというものです。
これらの議案に反対する理由は第一に、この勧告そのものが、人事院勧告制度の役割を放棄していることです。いうまでもなく人事院勧告は、公務員労働者の労働基本権を奪っている代償措置として、労働者の利益を守る役割をもっています。すなわち、人事委員会は、公務員労働者の労働基本権の代償機関であり、県との関係では労働者・労働組合の代理人としての役割を負う組織であります。マイナス勧告が労働者の要求と意見に背を向け、利益をそこねていることは明らかです。
労働者の利益を守る本来の役割を果たす改善勧告ができないのならば、勧告などする必要はないのであって、労使の交渉にゆだねるのがスジではないでしょうか。
知事は、改善にならない勧告をする人事委員会に対し、県の仕事を日々になう職員の顔を目に浮かべ、改善勧告となるよう、勧告すべきであります。
昨年の手当削減議案の際にも指摘しましたが、働くものに不利益を押しつける勧告は、国際的に見ても正当性をもっているとはいえません。
反対の第二の理由は、不利益不遡及の原則を平然とふみにじる点です。そもそも、正常な労使関係を前提にすれば、賃金のマイナス改定はできるだけさけることが常識であり、仮にマイナス改定が決まったとしても、すでに支払った賃金分をはぎとるような改定などあってはなりません。
ところが4月にさかのぼって賃下げするというのですから、最高裁判所の判例として確立した不利益不遡及の原則を破る重大な権利侵害であります。しかも、その違法性をめぐる裁判が進行しているさなかに、不利益遡及をくり返すことは、まったくの不当行為というほかにありません。
そのことを自覚してか、勧告は、「遡及することなく」「調整措置を講ずる」などとしています。意味不明で、子どもにすら説明できない言葉遊びで詭弁を弄する姿は、独立した機関としての役割放棄の居直りとしかいいようがありません。
反対の第三の理由は、この削減が県職員の暮らしを直撃するだけではなく、県民の暮らしの悪化、県内経済の悪化にもつながる点です。
今年は、春闘における賃上げにおいても、地域別最低賃金の目安ならびに改正決定についても、4年ぶりに引き上げとなりました。民間賃金が改善傾向にあるなか、しかも県内景気動向について、県自身が「緩やかな持ち直しの動きが続いているものの、個人消費がやや弱含んでいる」と評価しているなか、さらに個人消費を冷え込ませるようなマイナス勧告は、社会の流れに逆行するものといわざるをえません。
先の議会で神山議員が指摘したように、小泉内閣は総選挙前までに、定率減税の半減、配偶者特別控除・老年者控除など各種控除の縮小・廃止、個人事業者に対する消費税免税点の引き下げなどで、国民に対して合計3兆5千億円もの大規模負担を強いています。その一方で2兆2千億円の大企業減税を実施しておきながら、郵政民営化一本だった総選挙が終わると、大企業減税には手をつけないまま、庶民大増税と、医療改悪をはじめとした社会保障大改悪に手をつけようとしています。
国によるこうした悪政が、国民の消費・購買力を低め、家庭消費の低迷という長期不況の最大の原因をつくっていることは明らかです。こうしたときに、民間労働者の賃下げにつながりかねない今回の勧告は、実施すべきではありません。
反対の第四の理由は、今議会の議案が、単に今年度にとどまるものではない、という点です。そもそも勧告が、来年度からの給与改定にもふれているように、いわゆる「構造改革」を国民に無理やり押しつける手段として利用されているのではないでしょうか。
「構造改革」の考え方に共通するのは、国民のなかに「対立」をつくり「分断」をはかることです。「公務員労働者と民間労働者」、「労働者と自営業者」、「働く女性と専業主婦」など、意図的に「対立」をつくり、くらしを壊す政治に反対する勢力や運動を、「既得権益」を守るための「利己的」行動とえがいて攻撃することが常とう手段です。
「小さな政府」の掛け声で進められている公務員攻撃のねらいも、住民サービスの切り捨てとともに、民間労働者との賃下げ競争を加速させること、さらに大増税への地ならしであることが重大問題です。
それは、財界の意向を国家政策に貫徹させる役割をになっている経済財政諮問会議のメンバーである日本経団連の奥田会長の言葉でも明らかです。すなわち奥田氏は「歳出カットの目玉として公務員の問題が残っている。それに早く手をつけ、歳出削減の余地がなくなれば、消費税(の引き上げ)に手をつけないといけない」(日経新聞05年1月25日)と、公務員の人件費削減と消費税増税がセットであることをあけすけに語っています。
今回の勧告は、総人件費削減・成果主義を強調するこうした経済財政諮問会議の動きを先取りする役割を果たしており、この点でも本来の役割を放棄していると言わざるをえません。
私は県が、「住民との連帯」「民間との連帯」を言うならば、文字通りパートナーとしての公務にたずさわる県職員の立場に立ち、公務員労働者攻撃の本質を明らかにし、反撃する立場に立つべきだと考えます。
以上の理由から、議案第1号から第4号に反対を表明し、討論を終わります。 |
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