<三位一体改革について>
日本共産党の神山悦子です。
11月30日、来年度に向けた「三位一体改革」が政府・与党間で合意され、今月1日国と地方の協議の場で、03年度から始まった第一次改革が決着しました。知事は、この内容に不満を唱えながらも「地方分権推進の歴史に残る大きな風穴を開けることができた」と評価していますが、本当に地方自治体の財政基盤が安定するのか、知事が評価しているように本当の地方分権につながるのか、これは大いに疑問です。知事は、国庫補助負担金の削減による財源の移動が「分権」だという単純化によって、小泉内閣の国から地方への財政支出総枠削減という「三位一体改革」の本質を見ようとしない点で、弱点となっているのではないでしょうか。
実際、今回政府与党が決めた内容は、約6,540億円の国補助削減に対し、税源移譲は6,100億円でしかありません。もちろん、地方自治体や国民からの批判を受けて生活保護の国の負担率引き下げを見送ることになったのは当然としても、その代わりに、児童扶養手当や児童手当の国庫負担率が引き下げられ、特養ホームなどの介護施設の施設整備費の補助金や介護施設でのサービス提供にあてる施設介護給付費補助金を削減するのですから、これでどうして評価できるといえるのでしょうか。カットされた分を県が確実に補てんできるのでしょうか。もしそうだとしても、国の基本的な役割を放棄することには変わりがありません。あらためて今回の三位一体改革による本県の新年度予算への影響額とともに、知事の見解をお尋ねします。
さらに問題なのは、義務教育費国庫負担の削減です。全国知事会において、知事はこのことを強く主張してきましたが、来年以降の第2期改革においては、義務教育費国庫負担金の全廃を掲げています。しかし、その分の税源移譲は定かでありません。そもそも教育は、国の責任において行うべきものであり、地方自治体の財政力によって教育水準に格差を生じさせてはならないものです。実際、40道府県で財源が不足することが明らかになっていますが、知事の裁量や時々の財政状況によって教職員の人件費が削減がされかねず、その結果、教育の質の低下を招くおそれがあると思いますが、知事の見解を伺います。
<医師不足問題について>
県内の医師不足は深刻です。本県の医療施設に従事する医師は04年末3,601人で、人口10万人あたり171人、全国平均の201人と比較し約600人不足しており、全国からみても医師が少ない県となっています。加えて、昨年から医師の卒後研修が義務化されたことから、医師の多忙化に拍車がかかっていることもあってか、このところ、県内の公立や民間の病院では、勤務医の病院離れが続き深刻な事態となっています。須賀川市の国立病院機構福島病院では、今年9月末に内科常勤医師3人が全員退職したため、10月から仙台市の医療機関と県立医大からは非常勤医師が週2日派遣されています。社会保険二本松病院では、2年前から医師の退職が続き、今年4月からは皮膚科が休診、10月からは小児科の常勤医師が退職したため、来年3月末までの予定で県立医大から週2日派遣されましたが、二本松・安達地方で唯一の小児科の入院施設はなくなりました。さらに、国見町にある公立藤田総合病院では、内科外来の非常勤医師が9月末退職、10月末には常勤医師2人も退職しました。
県立医大付属病院では、へき地や県内の各病院へ派遣が続き、そのうえ卒後臨床研修の義務化も伴い、いっそうの医師不足が伝えられており、また、県立医大を卒業しても県内にとどまる率は半数に満たないという状況で、その理由の1つに、女性医師が増えているのに、勤務環境が整っていないことなども指摘されています。そこで、医大の医師確保の現状と、今後、県内の医師不足にどのように対応されるのか、医大学長にお尋ねします。
それにしても、もはや医大まかせでは県内の医師不足問題が解決しないことは明白です。県民がどこでも誰もが安心して医療を受けられるようにする責任は、県にあるのです。県は、公立・民間を含めて、全県的医療提供体制の将来設計をどう描いているのか示して下さい。また、救急医療をはじめ、小児医療、周産期医療、がん医療、高齢者医療、慢性疾患医療などの充実を盛り込んだ計画を県民に示すべきではないかと思いますがいかがでしょうか。さらに、これら医療提供体制づくりに必要なスタッフの養成と確保についても、県として責任ある計画をもち、系統的な取り組みが必要と考えますが見解をうかがいます。そして当面、県内各地の病院勤務医確保のために、知事を本部長とする特別対策をとるよう提案しますが、知事の考えをうかがいます。
<学校内での事故防止策について>
先月から今月にかけて学校の下校時に小学生が殺害される事件が広島県、栃木県と2件もあいつぎました。こうした悲惨な事件がおきないような地域づくり、まちづくりがいっそう求められています。同じように、学校内での事故や災害に対しても万全の対策を講じる必要があります。
独立行政法人日本スポーツ振興センターの学校災害の給付状況によれば、03年度だけでも事故発生件数は全国で約122万件、そのうち死亡事故は119件で、授業や部活動、野外活動など、学習中の事故が多いのが特徴です。子どもの数が減っているのに、事故発生件数は逆に増えているのです。
県内では、01年〜03年の3年間に小中高で6人も死亡しています。特にここ数年は事故があいついでおり、02年9月、県立石川高校で授業中の水泳・潜水テスト中に、当時3年男子生徒が溺死した事故や、03年10月、須賀川1中で柔道の部活練習中、当時1年生の女子生徒が倒れ、今も意識不明の重体になっている事故や、04年4月、矢祭中で部活中に背負い投げされた1年生が眼底骨折の重症、同年8月、県立いわき湯本高校の1年生の投手が、練習試合中胸に打球を受け死亡するなど、痛ましい事故が発生しています。
子どもも教師も「安全、安心に生きる権利」があり、子どもには「安全に教育を受ける権利」が保障されなければなりません。教育行政はこの権利を保障するために、安全な教育条件を整備する義務を負っています。学校保健法では、「学校安全管理」と「安全点検」が法制化されていますが、「安全基準」と「学校安全」については、責任主体が曖昧にされたまま法制化されたため、事故発生時やその後の対応をめぐって、学校と保護者とが対立し、時には裁判で争うということが少なくありません。
県教育委員会は、事故を未然に防ぐために、単なる「通知・通達」で終わらせるのではなく、事故につながる危険な事例を全教職員に徹底させることが必要であり、そのための講習会等を開くことや、特に体育関係の指導については、科学的なトレーニング方法を身につけさせることも大切と思いますがいかがでしょうか。
また、万一事故が発生した場合は、事故原因をあまいにせず、第三者機関を置いて原因を究明するとともに、その内容を被災者の保護者をはじめ関係者に情報公開することを求めますが考えを伺います。
また、県教育委員会として事故の再発防止のための「安全基準」ともいうべき基本方針をもち、各学校に徹底させるべきではないかと思いますが、教育長の見解を伺います。
ところで、事故が発生した時は、まずは被災者救済です。ところが、すぐに救急車を呼ばなかったというのが、96年の日本教育法学会・研究特別委員会の調査で20校に1校あったとされています。学校では、救急車を呼ぶことがためらわれる雰囲気があるようですが、こんな対応では命は救えません。また、緊急の救命方法についてですが、突然死やボールを胸に受けて心臓震とうなどの事故に有効だとされ、普及してきているのが自動体外式除細動器(AED)です。今年は、夏の甲子大会会場で導入され、愛知万博では3人の尊い命が救われました。1台当たりの経費は、30〜50万円程度です.子どもや教職員の尊い命を1人でも多く救うために、県内の小・中・高の各学校に1台はAEDを設置すべきと思いますが、県の考えを伺います。
<農業振興策について>
小泉内閣は、農業分野でも「構造改革」をすすめ、今年3月には今後10年間の農政の方向を示す新「食料・農業・農村基本計画」を決定しました。これは、農産物の輸入自由化を前提に、大多数の家族経営を排除し、農村の崩壊、ひいては県土の荒廃をもたらしかねない危険な内容です。10月25日に、農水省が発表した07年度から実施する「経営所得安定対策等大綱」は、それをより鮮明に具体化したもので、農水省が「担い手の対象を絞り・・・転換をはかることは戦後農政を根本から見直すことになる」と自ら述べているように、本県の農業振興になるのかは、甚だ疑問です。
品目横断的経営安定対策の加入対象者は、一定の要件を満たす「担い手」に特化するとし、面積が都府県では4ha以上、特定農業団体等は20ha以上としているため、9割以上の農家が切り捨てられる大変な政策です。
本県でこの基準をクリアできるのは、10%にすぎません。さすがに規模拡大が難しい中山間地等には、「経営規模要件の特例」が設けられましたが、どこまで政府が認めるのかは明確にされていません。本県は、平たん地だけでなく中山間地をかかえる地形的な特徴や気象条件の違いから、水稲と野菜、果樹、花き、などの園芸作物や葉たばこ、養蚕、畜産などの組み合わせによる複合型経営が行なわれてきました。こうした中で政府がすすめる規模拡大や農地の集積は、本県のような農業条件を無視した無謀なものといわざるを得ません。県は政府の品目横断的経営安定対策をどう受け止め、また「経営規模要件の特例」については、どう検討され具体化をはかるつもりなのか伺います。
また、問題は「担い手」を誰にするのかです。農業従事者の半数以上は65才以上の高齢者であり、耕作放棄地面積は全国一となっている現状をみれば、担い手をどう確保するのかは大きな課題です。自民党農政のもとで、農産物の価格補償がなく、米まで市場原理にゆだねられた結果、米価は暴落し、いまや大規模農家でさえ『経営が成り立たない』と悲鳴を上げているのです。本県の新規就農者は少しずつ増えているとはいえ今年は165人、認定農業者は昨年5,362人で、2000年と比較しても813人増加しているに過ぎません。県は、本県の基幹産業である農業の「担い手」をどのように考えているのか伺います。また、生産と経営を下支えするために本県独自の価格補償・所得保障政策を確立すべきと思いますが、どうお考えでしょうか。
<中国帰国者や外国人出身者への支援について>
さて、戦後60年の今年も間もなく終わろうとしています。戦争中、日本が国策として「満蒙開拓団」を中国へ送り、中国に置き去りにした「残留孤児」問題は、72年の日中国交正常化まで放置され、ようやく本格的な肉親探しが始まったのは9年後の81年3月でした。さらに、永住帰国が本格化したのは86年からです。今年3月、厚生労働省が公表した調査によれば、全国に2,489世帯、9,115人とされています。県内には、03年4月93人と報告されていますが、いずれにしてもこの数は、帰国一世だけで、よびよせた二世から三世、四世までふくめれば、相当な数にのぼるはずです。まず、県内に在住している中国からの帰国者・家族数について伺います。
また、厚生労働省がおこなった今年3月の生活実態調査によれば、帰国後の大きな問題は“言葉の壁”でした。中でも日常会話が全くできない人は8.4%もおり、特に帰国時期が遅いほど日本語の理解が困難になり、帰国後5年以内では、半数以上が片言程度しか話せません。すでに50代後半から70代近くになっている人が新たに日本語を覚えるのは至難の業ではないでしょうか。県内の中国からの帰国者は、郡山市在住者が多く、帰国当初は、福島県帰国者自立支援研修センターで日本語指導もありましたが、02年8月に閉所されてからは一般市民として扱われ、生活面や精神面などで行政面のサポートもなく、日本語が話せないためにストレスによる体調を崩す人も多くなっています。家族に子どもがいれば、学校を休んで病院につきそい、意味が理解できているかどうかは別にしても病院側との通訳までさせられているのが実態です。現在ボランティアの方々でさまざまなサポートを行なっていますが、県としての支援が必要です。
長野県は、県単独で中国帰国者への支援事業を拡大し、今年度からは新たに医療通訳者派遣事業を予算化しています。本県でも中国帰国者の実態調査を行ない、ボランティア団体が行う帰国者が孤立しないための交流会等に対する支援や、帰国者や家族の通院、介護保険などの行政手続きを行う際に、通訳者を派遣する事業を実施するとともに、通訳者養成も図るべきと思いますが、県の考えを伺います。
また、県の「女性のための相談支援センター」では、外国人女性のDV被害者が増え、その通訳費用が年間の予算をオーバーする事態となっているとのことですが、予算の拡充が必要と思いますが、これはどう対応されるのか伺います。
さらに、県内には、外国人登録者も増えており、04年12月で12,779人、県人口の0.6%を占めています。中国が36%と最多で、フィリピン、韓国、朝鮮、ブラジルなどの出身です。これら県内の外国出身者に対する日本語学習への支援、及び外国人児童生徒等への対応も必要と思いますが、どうお考えでしょうか。
以上、県の見解を伺いまして質問を終わります。
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