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2005年11月臨時・12月定例県議会を終えて
2005年12月19日
日本共産党福島県議団
団長 神山 悦子
長谷部 淳
はじめに

 マンション等の耐震強度偽装問題が深刻な被害をもたらし大きな社会的波紋を呼んでいるが、これは1998年の建築基準法の改正を行い、民間に検査権限をゆだねた「官から民へ」の規制緩和政策が根本にあることは明らかである。また、「勝ち組、負け組」などの風潮にのって、「勝つためには何をしてもかまわない」という企業のモラルハザードが極限に至っていることを示すものでもある。
 広島、栃木の両県で小学1年生が下校時に、京都で小学6年生が塾で殺害されるなど痛ましい事件が連続して発生し、子どもの安全をめぐる問題が注目されている。
 これらの深刻な事態は、小泉内閣の「構造改革」路線によって、日本の社会がゆがめられ、人間がともに支えあう社会のありようを否定し、弱肉強食の寒々とした社会をつくりだしていることに根本的な原因がある。
 また、自民党は結党50周年を期して「新憲法草案」を発表した。その最大の焦点が第9条2項の削除にあることが、自民党の関係者から表明されるなど、憲法をめぐって緊迫した情勢となっている。12月定例県議会でも、自民党は代表質問で、「新憲法草案」を決定したと宣言し、憲法改悪に向けた危険性をあらわにした。
 党県議団は、11月9日、12月定例県議会にむけた「知事申し入れ」と「06年度予算編成に係る申し入れ」を行ない、アスベストや原油高騰対策、雇用の創出・確保、農家への支援策、福祉・教育の充実、原発の安全性、人事委員会勧告に基づく職員給与改定、「福島県ピンクビラ等の規制に関する条例」などについて要望した。
 また、12月6日には、「ゆきとどいた教育を実現する全国3000万署名運動実行委員会」が署名88,743名を添えて請願18件を提出し、年金者組合、新日本婦人の会などもそれぞれ切実な要求をもって請願を行った。

11月臨時県議会について

 11月臨時県議会は、11月22日に開催され、県人事委員会の勧告にもとづく県職員の給与引き下げ条例案が提案された。
 長谷部淳県議が反対討論に立ち、第一に、マイナス勧告が労働者の要求と意見に背を向け、人事院勧告制度の役割を放棄していること。第二に、不利益不遡及の原則を平然とふみにじっていること。第三に、この削減が県職員の暮らしを直撃するだけではなく、県民の暮らしの悪化、県内経済の悪化にもつながり、社会の流れに逆行するものであること。第四に、来年度からの給与改定を含め、小泉「構造改革」を国民に無理やり押しつける手段として利用されていることを指摘した。
 長谷部県議は、「構造改革」の考え方に共通するのは、「公務員労働者と民間労働者」、「労働者と自営業者」、「働く女性と専業主婦」など、意図的に国民のなかに「対立」をつくり、くらしを壊す政治に反対する勢力や運動を、「既得権益」を守るための「利己的」行動とえがいて攻撃することを常とう手段としていることであり、県が、「住民との連帯」「民間との連帯」を言うならば、文字通りパートナーとしての公務にたずさわる県職員の立場に立ち、公務員労働者攻撃の本質を明らかにし、反撃する立場に立つべきことを求めた。
 県職員の給与引き下げの議案に対して、反対したのは日本共産党県議団の2人だけであった。

12月定例県議会について

 12月定例県議会は、12月1日〜19日までの19日間の会期で行われた。3億8千6百万円の一般会計補正予算案をはじめ、指定管理者の選定、県長期総合計画「うつくしま21」の重点施策体系の見直し、ピンクビラ等の規制に関する条例など67議案が提出され、さらに人事案件5件が追加提案された。
 12月9日に神山悦子県議が一般質問を行い、15日には全議員(議長、副議長を除く)で構成された長期総合計画審査特別委員会が設置され、一問一答方式の質疑を長谷部淳県議が行った。
 提出された議案に対して、補正予算案、ピンクビラ等の規制に関する条例案、県単建設事業への市町村負担の追加を求める議案、航空測量談合問題に関する和解案、人事案件で教育委員の再任など5件に反対し、請願2件に賛成を求め、最終日長谷部県議が討論を行った。企業会計決算認定議案5件には、意見書のまとめには反対としたが、企業会計決算認定そのものには賛成した。
 また、県長期総合計画の重点施策体系の見直し案については、掲げた内容は評価できるとしても、県の基幹産業である農業の位置づけが盛り込まれていないなど不十分であること、「長計」の本体そのものが、縮小したとはいえ無駄な大型事業を温存し続けているという県の基本姿勢が見直しされたわけではないため、今回掲げた重点施策も実行性が危ぶまれる。こうした立場から採決にあたっては態度を保留し退席した。
 また、国勢調査の速報値が出たことや市町村合併の進行をうけて、議員定数問題検討委員会が設置され、神山県議が委員となった。12月定例県議会中に2回の会議を行い、2月定例県議会で結論を得るために議論を重ねることとなった。
 請願、意見書は、新規請願「放課後児童対策の充実について」(3千万教育署名実行委)と継続請願「重度心身障がい者医療費補助事業の『見直し』をやめ、入院給食費を自己負担とすることの撤回を求めることについて」(6月議会提出)は、わが党のみの賛成少数で不採択とされ、「児童扶養手当の見直しに関する意見書」、「建築確認制度及び建築士制度の改正を求める意見書」、「公益的機能を有する森林整備に向けた具体的施策の実施を求める意見書」の3件が全会一致で採択された。

一般質問について

 12月9日の一般質問に神山議員が登壇し、「三位一体改革」、医師不足問題、学校内での事故防止、農業振興策、中国帰国者や外国出身者への支援など18項目にわたって質問した。
 神山議員は、「三位一体改革」の義務教育費の国庫負担の削減について、そもそも教育は、国の責任において行うべきものであり、地方自治体の財政力によって教育水準に格差を生じさせてはならず、40道府県で財源が不足することが明らかになっており、教育の質の低下を招くおそれがあると指摘したが、知事は「地方の義務教育費の負担率は7割を超えており、国のよけいな関与はこの際なくすべき」との持論を展開した。
 国立病院、社会保険二本松病院、公立藤田病院など県内の各病院で勤務医の退職があいつぎ、研修医制度の義務化などの要因も加わり深刻な医師不足が続いていることから、県立医大まかせでなく知事が責任者となって対策をとるよう求めたが、後期研修の充実に努め、国に対し県立医科大学や自治医科大学の入学定員の増員等を要望している、副知事を会長とする「医師確保に関する懇談会」などで検討を行っていると述べるにとどまった。
 また、あいついで発生している学校内での事故を防止するために、教職員の講習会の開催や、事故発生時に第三者機関の設置などによる原因究明、保護者や学校関係者への情報公開の必要性などについて県教委の見解を質し、学校への自動体外式除細動機(AED)の設置を求めた。県教育長は、第三者機関の設置は必要としない、AEDの設置については、有用性を認めながらも明言をさけた。
 中国からの帰国者への通訳者派遣については、国が支援する動きもあって1月から派遣する(1名分)と答弁した。

他会派の質問について

 自民党の代表質問で冒頭に結党50周年で「新憲法草案」をまとめたことを宣伝し、生活バス路線の維持・確保、障がい者福祉、まちづくりの推進、農業の振興などを取り上げた。
 県民連合の代表質問は、生活保護、県職員給与改定、原発、医師確保、県立病院改革、ピンクビラ規制条例などを取り上げた。
 一般質問では、自民党の桜田県議が妊婦一般健診への費用補助について取り上げたが、事業主体が市町村であることの一点張りの答弁。また、民主党の吉田、佐藤(健)両県議は、海外視察への批判を意識してか「成果」を強調した。

議案等への討論について

 12月19日、長谷部県議が議案への討論に立ち、議案第1号の補正予算案について、県人事委員会勧告実施条例と一体となった補正であり、公務員準拠の病院や私立学校関係をはじめとして、民間全体の賃金抑制につながり、庶民家計に新たな打撃的追い打ちの契機になると指摘した。
 議案第16号「ピンクビラ等の規制に関する条例」は、制定の趣旨には賛成であることを述べつつ、既存の法律、条例やその改正によって対処できるうえ、条例案第5条に行為を行う「目的」での所持を禁止することについては恣意的解釈・運用のおそれがあり、第5条とその罰則である第9条3項の削除を求めた。
 議案第65号「和解について」は、県が発注した航空測量業務について関係8社へ損害賠償請求した裁判にかかるもので、公取委が談合と認定したにもかからず業者は談合を認めていないばかりか、業者の和解案どおり最終契約額の10%で手を打ち、1億7,000万円あまりを放棄するものと県の姿勢を厳しく批判した。
 また、請願2件が、障がい者と子どもたちの福祉向上には不可欠な要望であり、県長期計画「うつくしま21」との関係でも道理がないことを指摘し、採択すべきと主張した。

委員会審議について

【商労文教委員会】

<商工労働部>

  • 商業まちづくり条例の施行を前に、駆け込み出店があいついでいることから、条例の趣旨を生かして規制するよう求めた。特に、会津若松商工会から出店反対の要望書が出されている湯川村へのイオン進出計画については、農振除外で規制できることを示し、除外するには9ha以上なので国の許可が必要(4ha以上)となるが、その際県が同意しないよう求めた。
  • 他党からも駆け込み出店への危惧が示されたため、最終本会議の委員長報告書に「条例の趣旨を十分生かせるよう、関係各部の協力を得て、いわゆる駆け込み的な大型店の出店に対して毅然とした対応を求める」との委員会の意見が盛り込まれた。
  • 自立をめざす自治体への大型店出店があいついでいるが、決して税収につながらないうえ、かえってインフラ整備で持ち出しがふえること。雇用増への期待があるが、24時間営業のイオンの雇用実態を示し、非正規社員がふえるだけで月収5〜6万円にしかならないことを明らかにした。
  • 05年11月末までの大型店の届出は、6千㎡以上は14店、1万㎡以上は5店で、占有率は半分を超えている。
  • 「まちづくり条例」への他県からの問い合わせは、この日までに37都道府県、15市、14商工団体からあったとされた。

<教育庁>

  • 本会議でも質した学校内事故への対応について質問。県立石川高校と須賀川一中の事故の例から、特に、学校側の「事故報告書」のあり方をただし、被害者の父母が述べてもいない事実と違う文言が記述されていた問題を指摘(マスコミが一斉に報道)し、事故報告書は保護者の意見を義務づけるよう改善を求めたが、県教委は保護者の意見は十分反映されているとした。 
  • 石川高校の制潜水による溺死事故については裁判中を理由に、また、須賀川一の柔道部中の事故でいまだに意識不明の事故については、市町村教委が対応しているなどと自ら調査しようとはしない態度に終始した。

【企画環境委員会】

<企画調整部>

  • 国勢調査の速報集計報告があり、前回(00年)比で人口35,712人(1.7%)の減で209万1,223人、世帯数は増え、1世帯あたり人員は2.9人(前回3.1人)となった。
  • JFAアカデミー福島の選考試験の合格者が全員寄宿舎生活なのか、費用はいくらかを問い、全員寄宿舎で、月8万円の負担があるとのことである。

<生活環境部>

  • 男女共生センターの指定管理者決定と申請における経費削減額をただし、経費削減の大半が人件費であることが明らかになった。
  • 原子力政策大綱案に対する県の意見、とくに保安院の分離を求めたことに関して、補強までして意見を封殺していること。福島県を名指しはしていないが、「地方公共団体」は、国と密接な連携を図ることや地域住民と国や事業者との相互理解をすすめるべきとされ、その一方で「プルサーマルの推進」「2050年ごろからの商業ベースでの高速増殖炉導入」へ向け、「安全余裕の適正化」などとしていることについて県の姿勢をただした。答弁では「県の意見はかえりみられることはなかった」として、引き続き議論の喚起に努めると答弁した。
  • 県民等保護計画の策定状況、現実にあり得る災害防災計画であるのかをただした。弾道ミサイルが飛んでくるような想定しようがない事態ではなく、現実に起こりうる災害を想定した計画にすべきことを強調した。
  • 県民の日常生活に必要な交通手段への支援については、「デマンドタクシーなども含め、様々な支援方策をきめ細やかに進める」と答弁した。

【次世代育成支援対策特別委員会】

  • 「新産業技術等指導者養成講習」、県内高校の職場実習(インターンシップ)の実績、思春期・性の正しい知識を普及する事業は、保健福祉部や教員庁がバラバラにやるのではなく、プロジェクト的に一体としてすすめることが必要であるとただしたが、「それぞれの役割分担でやっている」との答弁であった。

【長期総合計画審査特別委員会】

 12月15日、一問一答式の質疑に立った長谷部県議は、県長期総合計画「うつくしま21」の重点施策体系の見直しにおいて、農業の振興がどのように位置づけされたのか、ユニバーサルデザインに彩られた社会における交通システム構築、子どもたちの安全・安心とまちづくりの位置付け、大規模事業(小名浜人工島、トラハイ)の位置づけについてただした。
 農業問題について、この5年間で販売農家数は1割強減少し、耕作放棄地は面積全国一、農業就業人口14万人弱のうち65才以上が6割近くを占める現状を指摘し、本県の基幹産業である農業を重点施策として位置づけ、振興をはかることの重要性を強調した。
 ユニバーサルデザインでは、歩行者専用エリアなどの交通システムの整備の必要性はどうするか。子どもたちの安全や学校の耐震化で「避難所の体育館が耐震化されていない」など住民の声を紹介して早急な対策を求めた。答弁では相変わらず、「小・中学校の耐震化は市町村が考えること」「趣旨はわかる。市町村に働きかける」として県の役割を果たす立場には立たないものであった。
 小名浜東港人工島やトラハイなどのムダな大規模事業について、重点施策体系上も根拠を持たせ、温存させている点を指摘した。
 党県議団は、委員会の採決にあたって大枠の方向には間違いないが、見直しが不十分として、賛否を保留し退出した。

党県議団が紹介議員となった請願、意見書について

 党県議団が紹介議員となった請願は、「ゆきとどいた教育を実現する全国3000万署名運動実行委員会」から「30人学級のさらなる充実を求めることについて」など18件、県年金者組合から「最低年金保障制度などを求める意見書の提出を求める請願」、新日本婦人の会県本部からは「妊産婦健診の無料化をめざし、県の補助事業の創設を求める請願」など20件であったが、新規請願「放課後児童対策の充実について」と6月議会からの継続請願「重度心身障がい者医療費補助事業の『見直し』をやめ、入院給食費を自己負担とすることの撤回を求めることについて」の2件を福祉公安委員会で他党が不採択としたため、本会議でも共産党のみの賛成で不採択に、その他はすべて継続審査とされた。

以上



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