2007年9月知事申し入れ
福島県知事
佐藤 雄平 様
日本共産党福島県議会議員団
団 長 神山 悦子
副団長 宮川えみ子
幹事長 藤川 淑子
9月定例議会に関する要望書
はじめに
7月に行われた参議院選挙では、自民・公明与党に極めてきびしい国民の審判が下されました。これは、有権者が自民・公明の枠組みでは日本の前途はないと判断した結果です。
安倍内閣の10ヶ月は、首相や閣僚の失敗や不祥事、年金対応ミスなどにとどまらず、内政では貧困と格差の拡大、外交では過去の侵略戦争の正当化など悪政を加速させてきました。「憲法改定」を第一の政治目標に掲げ、 “戦後レジームからの脱却”をめざす安倍内閣が挫折したことは、“靖国派”に対する国民の大きな批判の表れです。
さらに、今回の選挙結果は、自公政治に変わる新しい政治の方向と中身を探求する新しい時代、新しい政治プロセスが始まったことを意味しています。今後、国民の声にこたえる新しい政治とは何かという問題が、県政においても問われてくることは明らかです。
7月16日に発生した中越沖地震による柏崎刈羽原発震災への東電や国の対応は、福島県民に大きな衝撃をもたらしました。私たちは、7月24日の東電・県への緊急申し入れに続き、8月23日には福島第一原発の現地調査を行い、県民の安全・安心の確保を申し入れました。
一方、2004年の世帯ごとの所得格差が過去最大を更新していることが、8月24日厚生労働省の調査で明らかとなり、「ジニ係数」は初めて0.5を超えました。これは、01年以降小泉内閣がすすめた「構造改革」のもとで、所得格差が広がったことを示すものです。
こうした情勢をふまえ、県は、地方自治体の本来の役割である「住民の安全と福祉の向上」を図り、広域自治体として市町村を励まし支援することを強く求めます。
9月定例県議会にあたっては、広がる貧困と格差の解消に力を尽くし、(1)大型プロジェクト見直しのいっそうの徹底、(2)地域での仕事確保をはかり、経済活性化にも資するようにすること、(3)県民の暮らしを守り、市町村の個性ある地域づくりにとりくめるよう市町村支援を強めることを柱に、以下の項目について要望するものです。
<1> 来年度予算編成について
今年度の県税収入のうち、法人事業税の伸びが当初見込みより伸び悩んでいる状況は、地方の経済が決して上向きでないことの現れです。一方、パート・派遣社員などの非正規雇用の増大、定率減税廃止や老年者控除の廃止による大増税、これにともなって国保・介護の保険料や障がい者負担も増え、県民所得はどんどん落ちこんでいます。
こうした時だからこそ県政が、雇用、地場の中小企業、農林水産業の振興や県民のくらしを応援することを基本に、大規模事業の見直しを中心とする歳出構造の改善を図るなど、来年度予算編成にあたっては抜本的な見直しが必要です。
1、不要不急の大型開発事業の削減を
(1)ムダな大型開発事業の見直しをすすめ、小名浜東港、トラハイは中止すること。むしろ、こうした新しい公共事業の整備よりも、既存の港湾改修や道路・橋梁などの公共施設の維持補修にかかる予算を大幅に増やし、県民の生活密着型にシフトを変えること。
(2)小名浜東港建設については中止すること。建設促進の理由にあげられている「沖待ち」は、石炭の投機買いによるものであり、現港の整備をすすめ、照明灯の設置や作業道路を1本整備、陥没している7号埠頭の改修を直ちに行ない、現場労働者の安全と作業能率を向上させること。
2、「入札制度」改革について
公共事業の質を落さず、下請け保護を視野にさらなる「入札制度改革」をすすめること。また、初歩的ともいえる設計ミスや検査ミスが相次いでいるが、原因の究明と再発防止につとめるとともに、技術者や専門家の育成を行い市町村からの要望にも応えられる体制を確立すること。
3、福祉・医療・教育・消防防災の職員増を
政府がすすめる職員定数削減の自治体リストラ強要に反対し、福祉・医療・教育・消防防災の職員定数を増やし、県民福祉サービスの低下を招かないようにすること。
<2> 地震や災害から県民のいのち・財産を守る県政に
1、福島原発10基の耐震安全性を確保すること
7月16日発生した新潟中越沖地震による柏崎刈羽原発では設計値を大幅に超える揺れを観測し、原発の耐震性への不安が一気に広がっています。原発炉心被害の詳細はこれからですが、この間明らかになった活断層についての認識の甘さや火災へのずさんな対応等をみても、柏崎刈羽原発の震災から何を教訓にしていくのかが問われています。8月23日私たちが行なった原発の現地調査をふまえ、以下の点で早急な対応を求めます。
(1)東電に求めることについて
(1)自衛消防隊の消火体制は、24時間体制の確立とその機能の十分な効果が果たせるように求めること。
(2)福島原発周辺の断層地質を再調査するとしているが、東電が活断層としていない双葉断層の南相馬市以南をボーリング調査より精度の高いトレンチ(掘削し断面をみせる)調査を行なうよう求めること。
(3)津波による引き潮で冷却水を取水できなくなる問題について、女川原発(東北電力)、浜岡原発(中部電力)で対応しているように、取水管の延長など対応策を早急に進めること。
(2)国に求めることについて
(1)原子力安全・保安院と推進機関を分離すること。
(2)今回の震災の新たな知見を取り入れることや、地質学者や土木学者等の提言を率直にふまえ、耐震新指針を見直すよう求めること。
(3)定期検査の間隔を13か月から24か月ごとに延長することに反対すること。
(4)原発に依存する国のエネルギー政策から、再生可能な自然エネルギーに転換できるよう、そのための開発研究予算を増すよう求めること。
2、避難所となる学校の耐震化、民間木造住宅の耐震化を促進するため、県の財政支援をおこなうこと
3、福島空港の多目的利用は安全優先で
「航空機操縦訓練事業」として大学と民間事業者の飛行訓練のために福島空港を提供するとしているが、地域住民とのコンセンサスを十分取ること、安全に万全を尽くすこと。
<3> 「貧困」から県民のいのち・くらしを守る県政に
1、医療・福祉の充実を
(1)生活福祉資金貸付事業について
今年度から一定の居住用不動産を有する65歳以上の生活保護世帯を対象に、住居を担保に取る「長期生活支援資金貸付制度」を始めようとしているが、この制度の一律適用は生活保護利用者から住居を奪い、自立をうながす生活保護法の精神にも反するものになりかねないため、導入しないこと。
(2)国民健康保険について
定率減税廃止や老年者控除の廃止により、収入が変わらないのに国保税や介護保険料は負担増になるなど、県民生活はますます厳しいものとなっており、国保税減免制度の充実は緊急課題です。
(1)税源移譲による県民税の増収分を活用し、市町村の国保税の軽減を図ること。
(2)独自の減免制度を実施する市町村へ財政支援を行うこと。
(3)資格証明書の発行を行わないことを市町村に徹底すること。
(3)後期高齢者医療制度について
来年4月からはじまる「後期高齢者医療制度」の保険料を確定する11月の広域連合議会まで2カ月余となりました。後期高齢者にとっては、介護保険料とあわせ1万円近い負担となること、年齢による別建て診療報酬体系の導入など制度に対する不安が高まっています。
(1)広域連合が保険料の独自減免を実施できるよう県の財政支援をすること。
(2)保険料を徴収することによって、生活保護基準を下まわる高齢者からは保険料を徴収しないこと、その分を県で補てんすること。
(3)保険料滞納を理由に資格証明書を発行しないことを広域連合に提案すること。
(4)介護保険について
介護の社会化を目的に介護保険制度が導入されましたが、またもや老老介護の悲劇が起きました。介護保険制度の見直し後、通所介護や訪問介護が利用しにくい、レンタルベットが利用できなくなったなどの県民の声が届いています。老老介護の世帯が増加しており、必要な介護を取り上げることは悲惨な事態を招きかねません。
(1)新予防給付実施に伴う利用制限の実態をつかむ全県調査をおこなうこと。
(2)要介護認定者に対する税金の障害者控除認定書の交付を市町村に徹底すること。
(5)県内の医師確保について
県内の医師不足と医療格差をなくす取り組みは引き続きの課題です。奈良県では、医療体制の不備から搬送中の妊婦が救急車内で流産する事態まで起きています。
(1)専門のコーディネーターを配置し(女性医師バンクも含む)、公立・民間医療機関の中核的役割を担うこと。
(2)奨学金返済免除制度は民間で研修した医学生にも適用すること。
(6)子育て支援について
若い世代に派遣や請負労働など不安定雇用が増加し、庶民増税が生活苦に追いうちをかけており、子供を産み育てることが経済的負担となっています。
(1)子供の医療費無料化年齢を中学卒業まで拡大すること。
(2)妊婦検診の無料化を県として第一子から実施すること。
(3)県中児童相談所の一時保護施設を早急に設置すること。
2、県営住宅について
(1)暴力団を排除するという理由で、入居希望者の個人情報を警察に流すことについては個人情報保護の観点から慎重にとりあつかうこと。
(2)入居者の高齢化が進んで孤独死やさまざまなトラブルも多くなっていることから、その対応策を今後検討していくこと。
(3)日雇い派遣などで不安定な暮らしを強いられ住居を失っているネットカフェ難民等への入居を認めること。
(4)県営住宅を増やすこと。
<4> 教育行政について
1、県立高校普通科学区全県一円化について
8月初旬に県内3方部で行なわれた公聴会では「学校間競争の激化で序列化がすすむ」、「家庭の経済力が学力や進学に影響する」、「地域の崩壊につながる」ことや県立高校生による母親殺人事件を懸念する声もあり、慎重あるいは反対意見が多数でした。県教委は、公聴会の意見を尊重し、学区一円化はおこなわないこと。
2、学校災害・事故について
またもこの夏、小学校のプールで死亡事故が発生しましたが、教育現場で子供の命が危険にさらされる状況は緊急に改善しなければなりません。
(1)事故が発生した場合は原因をあいまいにせず、情報公開し、再発防止に万全の対策をとること。
(2)県教育委員会として、情報公開と説明責任を基本とした、安全基準をもうけ各学校に徹底させること。
3、教育予算の増額を
PTA雇用をめぐる問題で明らかになった県立学校費の予算不足など、教育関係予算のあり方が問われています。
(1)学校関係者の自助努力でカウンセラー配置している高校もあり、県立学校におけるスクールカウンセラーの配置を拡充すること。
(2)学校備品や部活用具まで父母負担がなければ学校運営できない現状があることから、県立学校費を増額すること。
4、FISフリースタイル世界選手権猪苗代大会について
大会組織委員会の調査不足により、大幅な積算違いが発生していますが、競技者や地元住民の立場に立ち、検討委員会では、経費縮減の可能性調査なども探り、再検討すること。
<5> 基幹産業としての農業を大切に
本県農業の再建と食料自給率の向上をめざし、国の農業つぶし政策から第一次産業を大切にする県政が求められます。
(1)農業予算を、公共事業から価格・所得保障中心に転換すること。
(2)米づくりが持続できる所得保障を行なえるよう、国に対し輸入米の削減とコストに見合う米の生産者価格(60キロ当たり平均1万7000円以上)の引き上げを求めること。
(3)模経営対象の品目横断的安定対策を中止させ、新たな大豆・麦交付金を創設し、生産費の8割まで助成額を引き上げることや学校給食や地産地消として利用拡大する加工業者への支援を行なうこと。
(4)果樹や野菜の安定生産のために農家負担を減らし、価格安定制度を充実強化すること。
(5)バイオ燃料への穀物使用によって、輸入配合飼料の高騰が畜産農家を直撃しています。経営安定対策を確立させるとともに、飼料自給率の向上をめざし、耕作放棄地や減反水田を利用するなどして、飼料米の生産拡大や稲わらの飼料流通拡大の取り組みを支援すること。
(6)食の安全・安心を確立し、地産地消をさらに推進すること。
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