2007年12月定例県議会を終えて
日本共産党福島県議会議員団
団 長 神山 悦子
副団長 宮川 えみ子
幹事長 藤川しゅく子
1、はじめに
12月定例県議会は12月4日開会、12月19日閉会の会期16日間で開催された。今議会は、県財政が逼迫した下で、各会派が財政問題を質問で取り上げたが、「財源論」を示すことができず迫力を欠くものであった。原油高騰問題、農業問題など深刻化している県民生活を反映して各会派も共通して取り上げた一方で、財政難を言いながら、県道の改修を求める質問も目立った。また、人勧関連議案は今議会に提出されなかったが、当局は県職員給与を5%削減する意向を示している。今年度から翌年度予算に反映できるようにと県の普通会計決算と企業会計決算審査が前倒しされ、9月議会からの継続審査となり、10月中の審査を経て今議会に決算の認定に関わる継続議案が提案された。また、5月から検討が進められてきた「政務調査費の使途を明確にする」条例案が提案され、来年度から領収書(写し)添付の義務付けと情報公開の対象とすることが全会一致で成立した。
福田内閣は、若干の手直しをしつつ「構造改革」路線を引き継ぎ、社会保障抑制と消費税の導入計画をねらっている。消えた年金問題では、4割近くの1975万件はコンピュータによる照合ができないことが明らかになり、「公約違反」との批判に居直る福田内閣の姿勢は、国民の大きな怒りをかっている。
テロ特措法の期限切れによって、インド洋から給油艦が撤収した。戦前戦後初めて国民の声によって軍隊が撤収し、国民の声で政治を動かすことができることを示した。しかし、福田内閣は、新テロ特措法案をなんとしても成立させるために国会を再延長し14年ぶりの越年国会となり、衆院解散も含めて緊迫した事態となっている。
県民の暮らしは、あいつぐ増税や社会保障の負担増に加え、米価下落で農業所得が激減し農家に打撃を与えており、労働者の非正規雇用の広がりで勤労者所得も低下し、地域経済の疲弊に拍車をかけている。こうした中で、原油価格の高騰が県民生活に重大な影響を及ぼしつつあることから、12月6日、知事に対し、県民生活と営業への影響の調査と対策本部の設置などを申し入れた。
来年4月から始まる後期高齢者医療制度は、世界に例のない年齢による差別医療を持ち込むもので、県民からの不安と批判が高まっている。党県議団は11月17日に、福島市議団とともに「後期高齢者医療制度を考えるシンポジウム」を開催し、会場いっぱいの160人を超える参加者となった。
10月25日に県交渉、11月19日に政府交渉を地方議員団とともに実施し、県民生活の深刻な実態と声を国政・県政に届けた。
また、11月13日の12月定例県議会に向けた知事申し入れでは、08年度予算要望(第一次)と当面の施策への要望を行った。
11月14〜15日に党県議団の県外視察を行い、青森県の障がい者情報提供施設、六ヶ所村の核燃料再処理工場、八戸港のポートアイランド(人工島)を調査した。
12月議会最終日、今議会に提出された補正予算案をはじめとする42議案のうち、普通会計決算の認定に反対し神山悦子県議が討論を行った。また、社会福祉施設の民間移譲に関する条例議案など10議案に反対して藤川しゅく子県議が討論を行った。教育委員と人事案件8件うち、6件は再任のため反対した。意見書2件に賛成し、「地方議会議員の地位の位置づけの明確化に関する意見書」については、政務調査費を「議会活動費」として支出範囲を広げようとする全国都道府県議長会の方針が背景にあり、県民の理解は得られないという理由から退席した。請願9件が全会一致で採択されたが、そのうち、わが党が紹介議員の3件が趣旨採択となった。
2、一般質問について
12月12日の一般質問には神山悦子議員が登壇した。神山県議は、就任1年を経過した知事が、就任挨拶で「格差拡大を是正し、わが国の繁栄の礎となっている地方にも光を当てるのが、政治・行政の役割」、「誰もが安心して暮らせる豊かな福島県を」と述べたことを取り上げ、県民生活の実態との乖離について知事の見解を質した。また、原油高騰や米価暴落で県民生活が深刻となっている中で、「県財政が大変だ」を理由として医療・福祉分野の切り捨てを批判した。
神山県議は、軍事費の削減や大企業・大資産家の減税にメスを入れれば、国民生活と地方自治体への財源ができること。知事がこの立場に立って国に財源確保を強く求めるべきだと迫った。さらに、大型プロジェクトによる県の借金の返済を「県民サービスを切り捨て、3年や5年の短期でやりくりする」のではなく、「中長期的な視点で、県財政を立て直す発想の転換をし、県民の暮らしと市町村応援をすべき」と求めた。
知事は、「地方交付税の復元・増額を訴えている」とし、軍事費削減や大企業への異常な減税については「コメントする立場にない」と答弁した。
重度心身障がい者医療費助成制度の公費負担を現行のまま維持するよう求めたのに対し、保健福祉部長は「重要な経済的支援策であり、来年度予算編成の中で検討する」と答弁するにとどまった。
原発の耐震安全性については、東電の県内原発周辺の海域再調査における過小評価の問題を質し、「維持基準」の導入については、慎重に対応すべきと県の見解を質したところ、「従来どおり慎重に対応していく」との答弁を得た。
3、各委員会審議について
◆総務常任委員会(神山悦子議員)
閉会中の11月5日に臨時の総務委常任委員会が開かれ、「県の財政状況について」県の説明を求めた。10月末段階の財政見通しは、歳入見込みがマイナス80億円、歳出は県人事委員会勧告どおり引き上げれば17億円の増となり、財源不足額は97億円のマイナスとなる見込みとされた。一方、国の「歳入・歳出一体改革」による地方交付税減の影響で、来年度以降も毎年100億円ずつ不足するという見通しも示された。
しかし、これは、国の地方交付税のあり方としては問題であること。また県自身が作ってきたムダな大型開発による借金のツケを県民にまわすことや、国の歳入・歳出一体改革に従うだけでなく、発想を転換して内発型の地域経済をすすめ、税収確保を図るべきと主張した。
12月定例議会には、約30億円の減額補正予算が提示された。これは、事務的経費の節減と年間所要見込みによる減額とされ、これには同意した。しかし、人事委員会による職員給与引き上げ勧告が実施されず条例案の提出もなかったことについては、委員長から早急に結論をだすよう県へ申し入れた。職員給与5%カットについても労組に提示されているが決着が出ず交渉中。
職員の育児休業等に関する法律の一部改正に伴う条例案、自己啓発等休業制度を導入するための条例案のほか、F・F型行政組織のグループ制の廃止や、観光交流局と文化スポーツ局の設置等が示された。入札制度の最低制限価格のあり方と、看護職員の採用合格者が35名の採用枠に満たず29名だったことについて論議が集中した。
請願審査は、私学関係への予算確保を求める請願のうち、ゆきとどいた教育を求める署名運動実行委員会からの各請願のうち、3件が趣旨採択となった。
◆商労文教常任委員会(藤川しゅく子議員)
企業局の補正額は1631万円余の増額補正予算案であり、これは今年9月の台風9号によりいわき工業用水道の水源である高柴ダムに大量の流木が流入したことによる、流木撤去費用と相馬工業用水道の契約水量の伸びによる給水収益の増額補正などのため賛成した。
商工労働部は1億6891万円の減額補正予算案を提案した。ほとんど各事業の所用額確定によるものであり同意した。原油高騰対策について、知事を本部長とする対策本部を設置し全庁体制であたることが示され、中小企業の「制度資金」借り換え対策や弱者灯油への補助を検討するとした。観光・交流行政はFF体制の見直しで再編成され、空港利活用についても「観光」に含めていくことが質問で明らかになった。赤字の福島空港の利活用を促進する発言があり、無駄づかいの助長とならないよう注意する必要がある。高等技術専門学校の高度化(短大化)に伴う授業料の引き上げが検討されていることも質問の中で明らかとなった。天鏡閣・翁島荘の再度の指定管理者指定の件は賛成した。
教育委員会は8億5264万円の減額補正予算案が提案された。中心は会津学鳳中学校の校舎整備事業などの工事確定に伴う減額と、そのほか所要額確定によるものであった。
教育長は、爆破予告事件による逮捕者を出したことを謝罪し、県立白河高校の二度にわたる未履修問題を謝罪し、校長および関係者に、厳正な処分をすることを示した。
県立学校における原油高騰対策については、各学校に灯油経費の実態調査をおこない、必要経費は確保することを約束した。
わが党が紹介議員となった、ゆきとどいた教育を求める署名運動にかかわる各請願は、すべて継続となったものの県民連合議員が「採択してはどうか」と後押し発言をした。
◆土木常任委員会(宮川えみ子議員)
主な審議は、いわきアクアマリン前の倉庫群を一般に開放するため利用料を決める(近傍の施設利用料を参考に)条例、債務負担行為で県営住宅指定管理者の指定などであった。
反対したのは、議案第26号県の行う建設事業に対する市町村の負担の追加及び一部変更についてで、急傾斜地崩壊防止対策事業で市町村に負担を課すもの。また、議案第28号〜31号工事請負契約では、あぶくま高原道路(トラハイ)建設を完了させる09〜10年までの工事請負契約を締結する債務負担行為のため、これにも反対した。
最後に建設技術センターに、1月からトンネル・橋梁の県の積算委託を再開したいという報告があった。
◆いのち・人権問題対策特別委員会(藤川しゅく子議員)
県の自殺対策について調査し議論した。総務・保健福祉部・教育・警察の各部署で実施している相談事業の説明のあと意見交換した。多様な相談活動が行われているがすべて連絡先が異なることから、相談者の立場に立って窓口の一元化を求める意見が出された。庁内の総合力を発揮した連携強化が今後の課題であることも明らかとなった。多重債務相談事業が今年から始まっており、金利計算をし直し、過払い金を取り戻せば、生活費にまわせ、自殺を思いとどまることや、同時に滞納している県民税の回収にもつながることを提案した。各議員からは、いじめ問題、雇用問題、うつ病対策など幅広い意見や提案が出された。
◆地域産業活性化対策特別委員会(宮川えみ子議員)
商工労働部長から、下請け取引の円滑化や経営革新などに関する各種相談窓口による支援、制度資金による金融支援、産業人材育成などに取り組んでいるとの報告があり、県の事業説明がされた。その中で中小企業制度資金の説明では、各委員から審査が厳しく借りにくい、原油高で今は特に大変などの質問が相次いだ。企業を生かす観点からの県の対応を求めた。部長の答弁では、きめ細かい対応が必要、詰めた議論をしていくなどの答弁があった。
4、議会改革について
議会改革検討委員会で検討を進めてきた政務調査費の扱いなどについては、今議会に議員提出の条例案として提案され全会一致で成立した。来年度から、政調費は1円以上全ての領収書(写し)等証拠書類の添付が義務付けとなる。
議会改革のもう1つの検討課題として(仮)議会基本条例を策定することになり、各会派から10人が選ばれ作業が始まった。党県議団からは宮川えみ子が選任され、さらに検討会の内部組織としてのワーキングにも参加し作業を進めた。この条例は、議会の基本中の基本に関することを決めるもので、より民主的な議会運営ができるよう作業に取り組んだ。
5、請願・意見書について
●採択された意見書
◇ 民法第772条の嫡出推定に関する運用の見直しを求める意見書
◇ メディカルコントロール体制の充実を求める意見書
◇ 地方議会議員の地位の位置づけの明確化に関する意見書(党県議団は退席)
●党が紹介議員になった請願・意見書の扱いについて
党県議団が紹介議員となった新規請願21件が提出され、「ゆきとどいた教育を求める全国署名運動福島県実行委員会」(62,807人分の署名提出)からの19件のうち、「私学に対する助成の増額を求めることについて」「専修学校への補助金増額について」「私立幼稚園に対する助成の増額を求めることについて」(いずれも「ゆきとどいた教育を求める全国署名運動福島県実行委員会」の提出)の3件が「趣旨採択」となった。その他は、継続扱いとされた。
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