1、はじめに
2月定例県議会は2月19日開会、3月19日閉会の会期30日間で開催されました。今議会は、来年度予算を審議する重要な議会でした。
1月18日から始まった第169国会は、道路特定財源の「暫定税率」が3月末で期限切れを迎えることから今国会の大きな焦点となり、わが党以外、知事、県当局、県議会各会派が「道路特定財源堅持」のキャンペーンを展開しました。3月に入り、自民・公明両党が衆議院で徹底審議を確認した1月末の衆参両院議長あっせんをふみにじり、一方的に審議を打ち切って2008年度予算案と、「暫定税率」10年延長を盛り込んだ租税特別法案を含む歳入・税制関連法案の採決を強行し、参院で空転が続いています。
2月19日未明、海上自衛隊のイージス艦「あたご」が、漁船「清徳丸」に衝突・沈没させた事故が発生。「そこのけそこのけ軍艦が通る」といわんばかりに超過密の航路で自動操舵をしていたなど、根本にある政府の軍事優先・隠ぺい体質は、世論の厳しい批判を浴びました。さらに、2月10日沖縄でまたも繰り返された女子中学生への暴行事件は、基地あるがゆえの米兵による犯罪です。米軍基地の撤去と外国人登録免除など米軍に特権的地位を保障している地位協定を改めることが必要です。県議会は、沖縄県議会からの要請に応え、議会最終日「沖縄米海兵隊員による少女暴行事件に関する意見書」を全会一致で採択しました。
一方、政府が4月から実施しようとしている後期高齢者医療制度は、受けられる医療を年齢で制限するという「国民皆保険」の国では例のない世界でも異常な制度です。制度の中身が知られるにつれ国民の怒りが広がり、全国の自治体総数の3割近い530を超える地方議会が「制度の見直し」「中止」を求め、反対署名は500万筆以上になりました。
原油・穀物価格の高騰は、物価の全般的な値上がりを招いて県民生活にさまざまな影響を及ぼしていますが、非正規雇用の激増で勤労者所得は低下し、米価下落による農家所得の減収も続いており、地域経済の疲弊に拍車がかかっています。
昨年末党県議団が求め東北で初めて実現した県の「福祉灯油」は、生活保護世帯を除外したうえ、豪雪地域に限定し、補助限度額は200万円など多くの問題点をもっていたため、県議団、地方議員団、生活と健康を守る会などがくり返し県と交渉。その後、補助限度額が人口別で最高1千万円に引き上げられたものの、抜本的な改善はされませんでした。
2月定例県議会に向けた知事申し入れでは、以上の点を指摘しながら08年度予算要望(第二次)と当面の施策を要望しました。一般質問には、宮川議員(30分)、藤川議員(20分)、総括質問には神山議員が立ち、県民の目線から県政をただしました。
2月県議会に提出された知事提出議案は99件(補正予算13件を含む)で、このうち7日2月補正予算案を全会一致で採択するとともに、副知事を2人体制にする副知事定数条例案を採択(改進の会は反対討論し、人事で退席)しました。
2月議会最終日、当初予算・条例等76議案のうち、08年度当初予算案をはじめ、高校の授業料値上げ等各種値上げ議案や後期高齢者医療制度関係議案など、20議案に反対して藤川しゅく子県議が討論を行いました。県民連合が賛成討論しました。
人事案件4件うち、1件(収用委員会委員)は再任のため反対。なお、副知事2人制については、地方自治法改正によって出納局長を廃止となるため、わが党は知事を含めて三役体制は必要ではないかとの観点から人事も含め賛成。
意見書は新規9件、継続1件計10件採択されましたが、このうち「道路特定財源の確保を求める意見書」には反対。請願は、わが党が紹介議員の継続請願「盲・聾・養護学校の教育条件の充実を求める請願」(ゆきとどいた教育を求める署名実行委)を含む5件が採択されました。
2、08年度県予算の特徴
県の08年度予算は、総額8,407億1900万円(前年度比△105億円、△1.2%)で、大型事業を始める前の93年度とほぼ同じ水準となりました。財政難を理由に緊縮型としており、県債を1,043億9千万円(前年度比+141億円、+15.6%)発行し、県債依存度は12.4%(前年度比+1.8%)、来年度末の県債残高は1兆1,951億円となる見込みです。主要基金125億円を取り崩し、来年度末の基金残高は62億円程度となる見通しです。
一方、借金返済の公債費は1,356億5,500万円(前年度比+100億円、+8.5%)、93年度と比較すると2倍近くになっており、大型公共事業でつくった借金を、国の「骨太の方針」に基づいてわずか5年間で歳入歳出のプライマリーバランスをめざそうとしていることから、借金返済が福祉や教育予算を圧迫するものとなっています。
歳出では、扶助費(間接的扶助費を含む)が前年度比+32億円、+8.5%と大幅な伸びで財政硬直化につながるとしていますが、そもそも、国の責任でやるべき後期高齢者医療制度などを地方におしつけてきたからであり、そうした認識は地方自治の本旨と大きく乖離するものです。
重点推進分野として8つの柱をあげましたが、企業誘致や定住・二地域居住の推進など活力を外に求めていますが、福島県の基幹産業である農業については、減反の推進や品目横断的経営安定対策の推進など国の下請機関の域を出ていません。
一方で、県民に対しては使用料、手数料26件を値上げし、1億670万円の負担を県民に押しつけます。
世界的にも緊急課題となっている地球環境への対応については、05年の福島県の温室効果ガスの排出量が90年比で127.2%となっている深刻な事態にもかかわらず、県としてのとりくみは、高校生によるCMコンテストの実施、「ふくしま環境・エネルギーフェア」の開催など、もっぱら民生家庭部門や民生業務部門の伸びが大きいとして、県民運動として今後5年間で8%の削減をめざすとしています。しかし、福島県の排出量が27.2%も増えたのは、石炭を主燃料とする火発が数多く設置されており、課税単価が安い火発の稼動率が90年代以降増えているからです。その一方で、石炭輸入船の「沖待ち」を理由に小名浜東港(人工島)建設の根拠にしているなど、環境問題へ根本姿勢が問われます。
土木部の重点事項と対応事業では、道路特定財源を使った「交流を促進するネットワークづくり」として「縦横6本の連携軸整備の促進」=33億6800万円(前年度比+0.85%)、「国際物流を支える港湾機能高度化の推進」として小名浜東港地区の整備に34億円(県費18億円)と昨年の2倍の予算を計上するなど、道路特定財源の堅持とムダな大型公共事業の推進を図る姿勢が続いています。
3、代表質問、一般質問の特徴とわが党の質問について
◆代表質問、一般質問の特徴
各会派は、共通して県財政の厳しさ、環境問題、農業問題などを取り上げました。財政問題では、財政難の要因となっている国の「三位一体の改革」による地方交付税の削減を指摘しても、もう一つの県自身が行ってきた大型公共事業について指摘するのはわが党だけであり、県民負担を押しつける各種使用料・手数料の値上げについて自民、県民連合はふれず、せいぜい、財源不足のもとで今後の予算編成ができるのかどうかを問うにとどまっています。
また、国会で焦点となっている「道路特定財源」についても各会派が取り上げたものの、すべて道路特定財源の堅持、暫定税率維持の立場からの主張であり、社民党、民主党などは「国政は国政、地方は別」と無責任な態度を示しています。その主張は「一般財源化し、暫定税率が撤廃されれば、地方に金が来なくなり道路ができなくなる」という1点であり、当局と一緒になってこの主張を繰り返しました。「道路中期計画」で59兆円を使い切るとし、ムダな道路建設が優先され、身近な生活道路の予算を圧迫していることを正面から指摘するわが党との違いが鮮明になりました。
環境問題、地球温暖化問題では、開会日の前日(2月18日)に県は「地球温暖化防止の環境・エネルギー戦略」を発表。他会派は、県の「戦略」の内容をお伺いするに終始しました。また、自民党の一般質問で、原発増設積極推進の立場から、地球温暖化対策にも有効とする質問が展開されました。
4月から施行される後期高齢者医療制度については、県民連合が代表質問で「凍結・中止」を求める立場からとりあげ、昨年9月県議会に全会一致で採択した意見書が、県議会の共通の認識であることを示し県に迫っています。
農業問題では、コメの作付け過剰が日本一であることから、県が生産調整への協力を求める文書を出し論議を呼んでいること、「米の作りすぎはもったいない」とする東北農政局作成のポスターを県庁内に貼りだしたことについて、「農民の心を侮辱するもの」との声を紹介し批判したのはわが党だけでした。
◆一般質問(宮川えみ子議員、藤川しゅく子議員)
3月3日の一般質問には宮川えみ子議員、3月5日に藤川しゅく子県議の2人が登壇しました。
宮川県議は、県政運営と予算編成のあり方について、予算の軸足を福祉・医療・教育など県民のくらし応援にシフトするよう、知事の見解をただしました。財源確保の具体的提案として道路特定財源の一般財源化や赤字続きの福島空港の閉鎖、小名浜東港建設大型事業の中止を求めるとともに、県民負担を増やす各種手数料等の値上げを批判しました。
また、医師不足によっていわきの救急医療体制が深刻な事態になっていることを訴え、県のかかわりを求めた他、農業問題や地球温暖化対策についても、実効ある提案を示して県の見解を求めました。
藤川県議は、沖縄米兵による少女暴行事件について知事の所感を求めたほか、格差・貧困が進むなか障害者や高齢者、低所得者の人権や生存権が脅かされている問題で、県政が果たす役割について県の対応を質しました。後期高齢者医療制度にともなう重度障がい者医療費補助事業の全額補助を求め、隣県の宮城県をはじめ、全国29都府県(6割)において全額補助を予定していることを示し、「思いやりの息づく」県政を求めました。
◆総括審査会(神山悦子議員)
総括審査会で神山県議は、道路特定財源問題に関わり、パネルを使ってトラハイなどの高規格道路優先を示し、生活道路を優先すべきと求め、さらに、4月から指名競争入札の一部復活を決めた知事の認識をただしました。
県の妊婦健診促進事業を第1子から全妊婦を対象にした場合、約7億円との試算額が明らかになり、環境問題では、火力発電所の石炭消費につながる小名浜東港整備や大規模林道整備は県の温暖化対策に逆行すること、原発がクリーンエネルギーなどといえないことを指摘しました。
4、各委員会審議について
◆総務常任委員会(神山悦子議員)
2月補正予算で131億1,400万円減額し、07年度予算累計は8,371億5,200万円に、来年度県予算総額は8,407億1,900万円。県の市町村振興基金を活用し、本宮市への財政支援のための条例改正がなされました。
2月整理予算、来年度予算編成でいずれも県財政の厳しさが強調されましたが、緊縮財政となった要因2つ(交付税削減と過去の大型開発優先)を指摘し、大型開発事業になぜメスを入れないのか、県民や県職員にしわよせすべきでないと県をただしました。人事委員会勧告で07年度県職員給与は0.49%アップします。08年度から3年間は管理職で5%、一般職で3%カットし、人件費72億円削減します。
一方、副知事2人体制とする条例改正案については、人件費は出納長より156万円増えますが、2人体制にふさわしい役割発揮をと求め、自民党は提案のあり方などで意見を述べ、委員長報告に盛り込みました。
06年度に法人化された県立医大の現地調査を行い、医師不足の中で救急搬送も医大に集中し、勤務医が3日に1回の割合で宿直をし苛酷な勤務環境になっていることや、質の良い医療をすすめるためには看護師の増員も必要なことが明らかになりました。
◆商労文教常任委員会(藤川しゅく子議員)
商工労働部の当初予算は、前年5.3%増の567億7885万円。主な施策は「産業プラン」にもとづく、企業誘致の促進と立地企業の振興策、立地企業に求められる人づくりとしての職業能力開発校のグレードアップ(短期大学校化)です。知事の企業誘致最優先の政策を具体化した予算編成であり、非正規労働が激増する中での雇用対策や、原油高騰および穀物高騰に苦しむ中小業者への対策は不十分なものです。40億円を預託しての中小企業むけ産業ファンドの立ち上げが新しい対策です。また、母子家庭と障がい者の就労訓練予算がついたものの額は少ないものです。県立職業能力開発校の授業料引き上げは、県立高校授業料引き上げと連動してのものであり反対しました。売れない工業団地の負債総額は、年度末には140億円にのぼることも明らかとされ、バブル期の大型開発が財政に負担をかけていることが明らかになりました。
教育委員会の当初予算は、1929億3814万円であり、第5次福島県長期総合教育計画に基づく施策推進予算です。未来を担う人づくりとして、高い学力を持つ高校生への支援策を重点化し、エリートづくりの方向を強く打ちだす一方、県立高校授業料引き上げで家庭の負担を増やし、棚倉高校・東白川農商高校の統廃合、喜多方商業高と喜多方工業高の統廃合をすすめ教育予算の削減をしています。養護学校給食の民間委託化や県立学校の警備費削減は県政の圧縮予算のしわ寄せが教育分野におよんでいることを示しています。
各委員の発言で特徴的だったのは、自民党県議から、行き過ぎた性教育を正すよう求める発言や、道徳教育の実践について求めるものなど教育基本法改悪の影響を受けた発言があったことです。
県立高校普通科の学区について、隣接学区からの通学枠20%に拡大することについては、全県一学区制は次期尚早とし、3年間経過を見たあと改めて議論することが報告されました。
◆土木常任委員会(宮川えみ子議員)
- 土木の一般会計予算は、1,122億円で昨年比3.7%の減です。このうち公共事業費は886億円で4.8%の減です。全体的には減っていますが維持補修費は3%増です。
- トラハイ(あぶくま高原道路)は、新年度50億円で、H20年度で81%の供用開始になります。
- 小名浜東港人工島は、新年度当初34億2050万円で、そのうち県負担は18億1,778万円です。H26年に一部供用開始(1期工事)で、全体工事は730億円でH30年代の早い時期を目指すといいます。
- 東港建設の必要性では、石炭船の沖待ちを上げています。このことについて、県の温暖化対策では、火力発電所の排出量の削減が求められていて石炭船の沖待ちはなくなる方向ではないかとの質問に、当面は必要などというお粗末な答弁でした。
- 会津縦貫南道路の整備計画調査費も入っています。
- 那須甲子有料道路の有料化をやめるのに伴って、公社が負債を一括払うために、県が道路公社に債務(借金)31億円保証することなども予算に入っています。
- 一般事項の質問では、
豪雪地域建設設計については実態把握が重要、県営住宅入居者と周辺の地デジ対策については県の責任で対応する、入札問題では一部テレビで批判もある、道路事業は確かに無駄な道路もあるなどの質問や意見もありました。
建設業界は疲弊がひどく対応策が不十分という質問があり、維持補修関係に事業をシフトすべきという意見とともに、だから道路特定財源が必要という意見もありました。私は、維持補修費は、思い切って増やすべきことを強調しました。
◆いのち・人権問題対策特別委員会(藤川しゅく子議員)
人権侵害防止対策について、行政の現状と対策を調査し、議論を深めました。
今回のテーマは(1)児童・生徒に対する人権侵害の状況把握と対策の充実、(2)高齢者に対する人権侵害の状況把握と対策の充実、(3)女性に対する人権侵害の状況把握と対策の充実の3点にわたって意見交換をしました。
児童虐待対策における人的体制強化や教育現場におけるスクールカウンセラー配置増、精神科医との連携をはじめ、人的体制強化を要望する意見が多く出されました。また、市町村の相談窓口との連携強化と市町村への支援の強化を求める意見が出されました。
◆地域産業活性化対策特別委員会(宮川えみ子議員)
地域の特性を生かした特色ある農業、林業、水産業の振興問題を論議しました。それぞれ頑張っている状況が出されましたが、ポイントは流通問題のように見えました。私は、インターネット販売など、県が、県産品のPR販売のリーダーシップを取ることが重要と指摘しました。県の今の状況は、物産プラザふくしまで、11万4千円程度の販売でしかないということでした。農林水産部長も、桃のように優等生がある、消費者といかに連携を取るかということだとの認識を示しました。(このことは、17日の総括審査会でも、知事が福島県の農産物は非常に評判がいい。しかし大阪の倉庫が空になっていたのに送ってもらえないと発言)。
また、どの分野も後継者不足が問題になっていることなどが出されましたが、それぞれ良い事業もあるので生産品の販売促進が進めば後継者も出てくると思いました。
5、議会内検討会について
◆議員提出条例案検討会(宮川えみ子議員)
福島県会開設130年にあたる今年、議会のあり方について議員提出条例案(議会基本条例)が検討されています。宮川えみ子議員が検討会の委員として条例案をつくるためのワーキンググループで作業をすすめ、条例案の形ができつつあります。6月定例議会の制定をめざし今後とも作業が続きます。
◆選挙区区域等検討委員会(神山悦子議員)
次期県議選が、合併後の新しい選挙区で行われるため、議会内で協議する「選挙区区域等検討委員会」が3月7日に設置され、神山県議が委員に入りました。本格的には6月県議会から検討を始め、9月県議会中に結論を出す予定です。
6、請願・意見書について
●採択された意見書(新規9件、継続1件)
◇ 地上デジタルテレビジョン放送の受信対策の推進を求める意見書
◇中小企業底上げ対策の一層強化を求める意見書
◇「バイオマス推進基本法」(仮称)の制定を求める意見書
◇介護労働者の待遇改善を求める意見書
◇沖縄米海兵隊員による少女暴行事件に関する意見書(全会派提出)
◇過疎地域自立促進特別措置法の失効に伴う新たな法律の制定を求める意見書(全会派提出)
◇福島県最低賃金の引き上げと早期発効を求める意見書
◇配合飼料価格の高騰対策を求める意見書
◇取り調べの可視化を実現する意見書
◆地方自治体の安定的財政運営と道路特定財源の確保を求める意見書(共産党反対)
●党が紹介議員になった請願・意見書の扱いについて
今議会で採択された請願5件のうち、党県議団が紹介議員の継続請願「盲・聾・養護学校の教育充実について」が趣旨採択されました。新規請願「重度心身障害者医療費助成制度の制度拡充を求める請願」1件と継続請願は、すべて継続扱いに。「自主的な団体の共済を保険業法の適用除外とすることを求める意見書」は、自民の反対で採択されませんでした。
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