【はじめに】
5月12日に発生した中国の四川大地震は、死傷者が10万人を超える大災害となっています。余震も依然として続いており、2次災害も心配されています。被災者へのお見舞いと同時に県としてできる限りの救援活動を求めるものです。
この大地震で被害を拡大したとされるのが学校校舎の倒壊です。本県の学校校舎の耐震化率は5割余と非常に遅れた事態となっています。早急に耐震診断の実施と耐震化の促進に全力をあげることが課題となっています。
原油価格、穀物価格の暴騰によって、新年度に入って諸物価の軒並み値上げ、5月からのガソリン代の再値上げなど県民生活は困難さを増し、県内の景気動向も後退感が明確になっています。
4月1日から実施された後期高齢者医療制度に怨嗟の声が巻き起こっています。後期高齢者医療制度には、福島県議会をはじめとして581の地方議会から反対の意見書があがり(5月16日現在)、国会では野党4党が廃止法案を参議院に提出しています。この制度は長引けば長引くほどそのゆがみは拡大するばかりで、解決するには廃止する以外にありません。
小泉政権からの「構造改革」路線のもとでの労働法制規制緩和こそ格差と貧困の根源です。2月の日本共産党・志位委員長の国会質問で流れは大きく変わり、財界・大企業が進めてきた労働法制の規制緩和路線が事実上破綻し、御手洗日本経団連会長のキャノンやいすゞなど製造現場で派遣労働を解消する方向に大きく動き出しています。
消費税は実施から20年目に入りました。「庶民に増税、大企業・大資産家に減税」という「逆立ち」した税金のありかたをただすことが課題になっています。経済財政諮問会議は社会保障を我慢するか、消費税増税かを国民に迫っています。空前の利益を上げている大企業には減税、高齢者ら国民には福祉切り捨てと増税を押し付ける異常を正し、行き過ぎた大企業・大資産家減税と軍事費という「2つの聖域」にメスを入れることが求められています。
日本共産党は3月、「食料自給率の向上を真剣にめざし、安心して農業にはげめる農政への転換を」と題した「農業再生プラン」を発表しました。食料自給率の50%台への回復を最優先課題とする農政への転換、そのために、価格保障・所得補償などで農業経営を守ることが必要です。
地球温暖化対策を主テーマとして神戸で開かれた主要8カ国(G8)環境相会合は、温室効果ガス削減の2020年までの中期目標について、具体的な数字を示しませんでした。日本政府は自国の中期目標を示さず、会議でも議長国としてのイニシアチブを発揮しませんでした。この姿勢では、温暖化問題が最大のテーマとなる7月の北海道洞爺湖サミットもみるべき成果のないまま終わりかねません。
6月定例県議会にあたっては、広がる貧困と格差の解消に力を尽くし、(1)大型プロジェクト見直しのいっそうの徹底、(2)地域での仕事確保をはかり、経済活性化にも資するようにすること、(3)県民の暮らしを守り、市町村の個性ある地域づくりにとりくめるよう市町村支援を強めることを柱に、以下の項目について要望するものです。
1、公契約条例の導入について
県発注の公共事業や業務委託、請負、指定管理者制度による「管理の代行」を含め、県が行う業務で全ての公契約を結び、その業務に従事する労働者を対象に、労働者の公正・適正な賃金労働条件を確保し、公共事業・公共サ―ビスの質を担保できるよう求めます。
(1)県の入札制度改革について
- 県が発注する工事や委託契約において、「事業に従事する労働者の賃金は二省協定賃金を下回らないこと」を明記するなど、契約時の積算単価に適切な賃金・労働条件が確保されるよう、契約業者等を文書で指導すること。
また、その実効性を確保するため、元請から末端の下請労働者に至るまで、支払っている請負金額及び賃金額を発注者に書面で報告させること。
- ダンピング受注を防止するため、契約にあたっては、最低制限価格制度を活用するとともに、工事の品質を確保するため、県の「総合評価入札」の要件に、適正な賃金・労働条件、労働関係法令遵守、男女共同参画、身障者雇用率、環境など企業の社会的責任を果たさせるようにすること。
- 業務委託や指定管理者の契約については、業務の専門性、熟練性を考慮することや、「労務単価基準」を設定、公表すること。
(2)指定管理者制度について
06年度から県が導入した指定管理者制度の見直しの時期を迎えていますが、そもそも指定管理者制度になじまない社会福祉施設や教育施設については、県直営に戻すことを再検討すること。
(3)受注者の責任と義務、賃金額、労働条件、監督と制裁などを明記した「公契約条例」を制定すること。
2、県立病院改革について
県立病院の経営赤字を理由にすすめている県立病院改革については、赤字の原因が、国の診療報酬の削減策と医師不足にあるのであり、公的病院の役割に照らしてこれ以上の統廃合は行わないこと。
3、新潟の震災や中国四川省の大地震災害を教訓に、県内の震災対策を強めること
- 学校の耐震化を促進すること。
- 少なくとも拠点病院の耐震化を急ぐとともに、県内の病院耐震化を支援すること。
- 木造民間住宅の耐震化の支援制度を充実すること。
4、後期高齢者医療制度について
- 県内27万人の後期高齢者の年金から保険料を天引きし、医療内容に年齢による差別を持ち込む後期高齢者医療制度については「廃止」することを国に求めること。
- 制度が廃止されるまでは、高齢者の保険料軽減のために、県独自で広域連合に財政支援を行うこと。
- 後期高齢者制度に移行しない65歳以上の障害者の重度がい害者医療費は全額助成すること。
5、医療改革について
- 政府が推進する療養病床削減に、国民各層や日本療養病床協会など医療関係者から批判の声が高まっています。医療・介護難民を発生させる療養病床削減をやめること。
- 国の医療給付費削減のためにすすめられる、公的医療保険の都道府県化に反対すること。
6、生活保護について
- 生活保護の移送費の削減をしないよう国に求めるとともに、市町村に徹底すること。
- 生活保護者の県営住宅家賃は、保護費から徴収できるよう市町村、福祉事務所と協議し、追い出さないようにすること。
7、生活バス路線について
- 広域にまたがる生活バス路線に、県独自の補助を拡充すること。
8、労働行政について
- 県労働委員会の委員の任命は、労働省の通牒に基づき、公正な任命をすること。
- 県内で増加する派遣労働の実態調査(聞き取り調査)をおこない、派遣労働者の待遇、労働条件などの相談窓口を設置すること。
- 誘致企業における正規雇用拡大を企業に働きかけ、誘致企業と立地協定を結ぶ際は、県内労働者の正規雇用計画書提出を条件とするとともに、操業後の状況報告を求めること。
9、農業の振興について
米不足が深刻な問題になってきており、各国は米の輸出規制に動いており、政府が義務的に輸入している米(ミニマムアクセス)を途上国支援に回すことが検討されています。こうした中、県民は食糧危機に日本は備えているのか、減反強制で米の生産が継承されるのかと不安を持っています。
県民の不安と疑問に応えるために、以下の点を要望します。
- 食糧自給率を緊急に50%に引き上げるよう国に求めること。
- 減反の押し付けではなく、価格保証・所得補償で米を作り続けられるよう国に求め、米の消費拡大への支援を求めること。
- 稲ホールクロップサイレージ等への切り替え推進がより進められるように県として予算措置をするとともに、国にも要請すること。また、県としても支援を強め、学校給食の米飯給食日数を増やすこと。
10、原発の安全性確保について
- 県原発所在四町協議会から「維持基準」導入について議論の再開を求める要請がありましたが、2002年8月に発覚した東電の検査・点検記録の不正以降も2006年のデーター改ざん・臨界事故隠しがあり、また柏崎刈羽原発の被災をきっかけに活断層隠しや過小評価を続けていたことが明らかになっています。また、国の推進機関から独立した規制機関設置は依然として進みません。よって「維持基準」導入の検討はしないこと。
- 柏崎刈羽原発の地震被災を受け耐震基準の強化を国、東電に求めること。
- 5月30日の原子力安全・保安院の発表によると、全原発の測定回数一回の配管の調査の結果、県内の原発で5年以内に基準より薄くなる箇所が354カ所に上ることが明らかとなりました。県として安全・安心の確保のため、より正確な測定を迅速に行うよう国と事業者に求めること。
11、地球温暖化対策について
洞爺湖サミットの開催に向けて議長国・日本の役割が注目されています。しかしCO2排出の大きな産業界の規制は自主規制になっていてこのままでは日本の役割は果たせません。福島県は1990年比CO2排出量の伸び率と火力発電所のCO2排出量で47都道府県中第1位であり、京都議定書の第一約束期間での8%削減目標達成は困難とも指摘されています。福島県が先進的役割を発揮するには、削減目標を達成にむけて、県民運動の推進とともに、排出量の8割を占める公共部門と産業部門での確実な削減が必要であり、とりわけ企業との公的削減協定締結が不可欠となっています。産業界の規制に関して福島県の役割を果たすこと。
12、組織改革について
庁内の組織改革の推進にあたっては、高齢化・少子化の進展、道路特定財源の一般財源化など長期的見通しを持ち、医療・福祉を県政の中心にすえ、それにふさわしい組織体制とすること。
13、県警察署の再編のあり方について
県警がすすめようとしている組織再編については、県民や各市町村から警察署の存続を求める要望があがっていますが、県民に最も身近な出先体制の弱体化につながるようでは本末転倒です。
組織再編構想ありきとならないよう、県民の声を充分反映することはもちろんのこと、拙速な組織再編は行わないこと。
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