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2009年6月2日

福島県知事
 佐藤 雄平 様

日本共産党福島県議会議員団
団 長 神山 悦子
副団長 宮川えみ子
幹事長 藤川 淑子

2009年6月定例県議会に関する申し入れ

はじめに

 政府の5月の月例経済報告では、景気の基調判断を前月の「急速な悪化」から「悪化のテンポが緩やかになっている」と修正し、企業の輸出と生産の急減にストップがかかり、「下げ止まり」つつあるとしています。

 その一方では、大企業は雇用破壊の対象を正社員に広げており、月例報告でも雇用について「急速に悪化しており、厳しい状況にある」とのべ、先行きも「一層の悪化が懸念される」としています。県民の暮らしから見れば、上方修正どころではありません。

 いま政府・与党がやっていることは、内需主導への切り替えを妨げ、輸出頼みのレールをさらに固めることであり、この道に未来はありません。暮らしを守り、家計を温める経済政策への転換こそ切実に求められています。

 「追加経済対策」として5月29日に成立した今年度の補正予算は、総額15兆円先にありきで、中身も1年限り・1回限りのバラマキがほとんどです。とはいえ、今回の交付金には、準交付税並みにソフト事業など自由自在に使えるものも含まれているので、ハード事業に充当するだけでなく、生活支援にも大胆に振り向けるべきです。そして、住む家さえ失った派遣労働者への対策や、生活保護の老齢加算・母子加算の復活、後期高齢者医療制度の廃止、国民健康保険証の取り上げ中止など、一番困っている人々を支援することです。

 県内経済は、「下げ止まり」どころか生産活動の減少が急激にすすみ、雇用の急速な悪化と個人消費の低迷が続くなど景気の大幅な悪化が続いています。

 5月29日に厚労省が発表した雇用失業情勢報告では、福島県内でも激しい派遣切りなどが行われていることが明らかとなっています。昨年10月から今年6月までの非正規切りは、県内で7,079人となり、全国6番目、東北ではトップの多さであり、正社員の失業も引き続き増加しています。

 4月の有効求人倍率は0.36倍と1963年に統計を取り始めて以来、最も低くなっています。とくに中通り地区の落ち込みは深刻で須賀川市と二本松市では0.19倍と初めて0.2倍を割り込みました。いま、職を求める人々がハローワークに列をなしています。

 さらに会津では、地域経済に大きな影響力を持っている富士通が、会津若松にある富士通マイクロエレクトロニクスで不当な労働者の「再配置」を強行しようとしており、加えて中心商店街の会津唯一の百貨店の閉鎖も発表されるなど深刻さは重大です。

 6月定例県議会にあたっては、ますます深刻となる不況のもと、貧困と格差の解消とセーフティネットの拡充に力を尽くし、(1)大型プロジェクト見直しの徹底、(2)地域での雇用確保をはかり、経済活性化にも資するようにすること、(3)県民の暮らしを守り、市町村の個性ある地域づくりにとりくめるよう市町村支援を強めることを基本に、以下の項目を要望します。

1、雇用とくらしを守る緊急措置を

(1) 地域経済に大きな影響を持つ大企業の社会的責任を果たすことを大前提に、県知事があらためて富士通本社及び富士通マイクロエレクトロニクスに対し、雇用の確保と強制配転の中止を要請すること。
(2) 9月末に向けいっそうの「派遣切り・解雇」が強行される恐れがあると言われており、県知事を先頭に福島県として関係企業に対し少なくともこれ以上の解雇を中止するよう強く求めること。
(3)

派遣労働者の契約の中途解約は現行法でも明らかな違法であり、少なくとも残る契約期間中の給与支給を行わせるよう関係企業に求めること。解雇された労働者に対し、ハローワーク等を通じ残契約期間の未払給与を受け取ることができることを知らせ、支援すること。

(4) 県の誘致企業に対し、人員削減や企業の撤退については「事前協議」を求め、身勝手な撤退やリストラを行なう場合は補助金の返還を求めること。
(5) 緊急雇用創出基金などの活用で、県や市町村による効果的な雇用創出を図るとともに、6ヶ月をこえても県単独で継続すること。
(6) 「ワンストップ」で対応できる雇用と福祉の総合相談窓口を各地域振興局に設け、市町村での総合相談窓口の設置を促進するよう支援すること。
(7) 離職者支援資金の一時金支給ができる制度の創設を図ること。また、離職者支援資金の貸付要件を緩和し、誰でも使えるよう県独自の対策を講じること。
(8)

知事部局、県立病院局、教員などの臨時職員を段階的に解消し、県臨時職員の正職員化をめざし、県民サービスの質の確保を図ること。また、県内の公務職場で行われている非正規労働者の解雇をやめさせるよう指導すること。

(9) 農林業のみならず福祉、環境分野などの雇用確保を図るために、生活できる賃金保障を支援すること。

2、中小企業対策について

(1) 中小企業庁は3月27日、中小・小規模企業向け措置を講ずることとし、日本政策金融公庫、商工中金及び信用保証協会において、元本返済の猶予について率先して前向きにとりくむ方針を明確にしました。また、中小・小規模企業の返済負担軽減のため、既往債務の条件変更に積極的に取り組み、ニーズにきめ細かく対応していくことも明らかにしています。この方針を関係機関に徹底すること。
(2) 県が緊急経済対策として創設した「経営安定特別資金」については、この「資金」が過去の融資の借り換えに回されたり、複数回の融資が断られるなど聞き及んでいます。貸し付け実態を調査し、速やかに適用されるよう金融機関・信用保証協会への指導を図り、貸し渋り、貸しはがしによる倒産などの事態をつくらないよう強く要請すること。
(3) 県として県信用保証協会に対し、業者の実態に応じたきめ細かな対応をするよう指導を徹底すること。
(4) 地方税の徴収については、納税者の実情を十分につかみ、差し押さえなどで営業や生活に支障をきたすことのないように徹底すること。また、職員に地方税法の滞納処分の停止要件などを周知徹底すること。
(5) 県の施設の小規模の修繕事業については、入札なしで受けることのできる工事費250万円以下の「小規模修繕希望者登録制度」を創設し、零細業者の仕事を確保すること。
(6) 公共事業の工事費用の積算に含まれる労務単価を時給1000円以上を保障し、受注業者にも徹底を図ること。

3、公共事業の前倒し発注は雇用を増やす仕事を優先にすること

(1) 悪化している県内景気対策として公共事業の前倒し発注をするとしていますが、内容を、歩道や道路補修・排水対策・ガードレールなどの交通安全対策、学校の耐震化などを優先し、不要不急の大型事業は見合わせること。
(2)

県が行う建設事業等に対しての市町村負担を中止すること。

 県事業に対する市町村負担の廃止は、市町村からの強い要望でもあります。広島県が国の補正予算で新設された「地域活性化・公共投資臨時交付金」などで自治体負担分が実質ゼロになる仕組みを創設しました。本県においても、財政難に苦しむ市町村を配慮し市町村負担の廃止すること。


4、セーフティネットの拡充について

(1) 生活困窮者への支援についての厚労省「通達」(3月18日付け)の徹底を図ること。とりわけ、住居の確保を条件として保護適用をすることのないよう徹底を図ること。
(2) 県内のホームレス数は20人としているが、実態は、これをはるかに上回ることが確認されている。ホームレスの全県的実態把握を行い、ホームレス自立支援法に基づく基本計画策定をすすめること。
(3) ホームレスの県営住宅入居については、県土木部の通知(1月23日付)に基づく対応を徹底し、入居抽選を行わないこと。
(4) 県立病院における無料定額診療制度導入を検討すること。
(5) 市町村の介護保険料および利用料軽減に対する県の財政支援を行うこと。
(6) 市町村の国保税軽減に対する県の財政支援を行うこと。
(7) 国の「高等学校授業料減免事業等支援臨時特例交付金」を活用し、高校授業料減免の拡充を行うこと。

5、新型インフルエンザ対策について

 新型インフルエンザの感染者の急増に対し、本県のタミフル備蓄拡充の対応が図られたところです。国及び市町村と連携し、正確な情報を県民に伝えることを基本としつつ、以下の対策を求めます。

(1) 感染の疑いがある人が現れた際には、短時間で感染の有無が確認できるよう国と連携し検査を実施するとともに、県立病院・感染症指定病院を核として治療に取り組むこと。
(2) 保健所の再編と福祉事務所との統合が進められた結果、6保健所体制となっている。感染症予防および公衆衛生における保健所の役割は重要であることから、保健所の抜本的強化を行い、必要な人員を確保すること。
(3)

国に対し、福島空港の検疫官の増員、検疫体制の強化および地方への財政支援を求めること。

(4) 感染すると重篤化しやすい慢性疾患者に対する対策を講じること。とりわけ、人工透析維持施設については、タミフルの優先供給体制を確保すること。

6、東電福島原発でのプルサーマル計画導入を認めないこと

 MOX燃料の使用は、(1)制御棒の効き目を悪くさせ、毒性が強いプルトニウムが労働者の被ばくをひどくさせる危険性を増やす、(2)再処理などに多額の費用がかかり経済的にも資源的にもメリットがない、(3)使用済みMOX燃料は放射能の消滅年数が極端に長くなる、超ウラン元素が増えるため処分が一層厄介になるなど重大な問題と危険性を持つものです。

 青森県六ケ所村の高レベル廃棄物のガラス固化もことごとく失敗しているなど、使用済み燃料の保存処理技術も未確立です。しかも、プルサーマル計画導入予定の福島第一原発3号機は30年以上もたつ老朽原発です。

 また、東電の法令遵守と企業倫理という観点でも、県議会が10項目の意見書を提出した02年以降も、06年2月の温排水のデータ改ざんや臨界事故隠し、07年の柏崎刈羽原発震災では、活断層隠しや断層の過小評価問題が次々と発覚し、さらに08年6月には、福島第一原発の放射線管理区域で18歳未満の少年を働かせていたことも発覚しました。こうした一連の出来事は、東電の体質が改善されたとは認め難いものです。

 原発に賛成の人からも反対の人からも心配の声が上がっており、県は、「白紙撤回」「議論以前の問題」としてきたこれまでの姿勢を堅持し、プルサーマル計画の受け入れないこと。

以上



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