日本共産党の神山悦子です。日本共産党県議団を代表して議案に対する討論を行います。
議案第4号「福島県税条例の一部を改正する条例」、議案第5号「福島県税特別措置条例の一部を改正する条例」、議案第16号「県の行う建設事業等に対する市町村の負担の追加について」の3議案について、反対の立場から意見を述べさせていただきます。
今議会に提案された一般会計補正予算は、前年同期比で6.5%増の総額200億6,200万円が提案されました。この中身は、国の追加経済対策を受けた地方財政措置を受けて、過去最低となっている県内の雇用悪化に対応した「緊急雇用創出基金」の積み増しや、県民の安全・安心につながる「新型インフルエンザへの対策経費」、「学校の老朽化した施設の改修等」や「学校の耐震改修の基本計画を1年前倒しして策定する」経費が盛り込まれるなど、県民の期待に応えた予算内容であり評価するものです。
その一方で、議案第4号の「福島県税条例の一部を改正する条例について」のうち、不動産取得税は、今般国会で審議された農地法の見直しに伴うものです。農地の利用集積を目的に創設される農地利用集積円滑化団体を、不動産取得税の免税措置の対象に追加する等のため、所要規定の整備を行うものとされています。
この税制改正の前提としている「農地法の見直し」については、現行法の第1条にある目的を大きく書き換えます。つまり、自ら農作業に従事する「耕作者」の文言を削除することによって現行法の規制を骨抜きにしたうえで、「農地を効率よく利用する」などの言い分で、企業あるいは外資系の企業まで農地の所有を自由にできることになります。しかし、これでは1952年の制定以来維持してきた「耕作するものが所有権を保持する」という自作農主義、家族的な農業経営による農業生産体制が根本から崩壊してしまいます。あわせて標準小作料制度も廃止されます。現行の小作料制度は、農業委員会が地域ごとの農業収益を基礎に定め、農地の借り手、貸し手の双方から高く評価されている制度です。小作料制度の廃止は、農地の賃借関係を不安定にさせ、資本力のある企業による賃借料の吊り上げを使った農地の集積を許すことになります。
さらに、50年にも及ぶ農地の長期賃借権を創設していますが、これは企業による農地利用権を長期に固定化させることを認めることになります。
政府は、耕作放棄地対策を理由に掲げていましたが、これはまったく根拠がないことを大臣自ら認めています。
そもそも日本農業に困難をもたらしたのは、農産物の輸入自由化や農産物の価格引下げ政策などで農業者の営農意欲を奪い、農業では生活できなくなるなど、これまでの自民党農政の失政にほかなりません。
今必要なことは、農地法等の改正や農地の利用集積を促進させることではなく、国際的な食料需要の逼迫に対応し食料自給率をどう向上させるか、米をはじめとした農産物の価格保障と所得補償制度を抜本的に拡充し、日本農業を再生させていくことが、国政においても県政においても喫緊の課題となっているのではないでしょうか。
次に、議案第5号「福島県税特別措置条例の一部を改正する条例」ですが、これは過疎地域や企業立地促進法に基づく集積区域、振興山村区域内、原子力発電施設等立地地域における法人事業税や不動産取得税などの課税免除期間をさらに1〜2年延長しようとするものです。
これらは、過疎地域にも企業の立地をしやすくするなどの企業への優遇税制の1つであり、企業立地促進法には安定した雇用を確保する方針も進出企業撤退への歯止め策もありません。加えて、県への減収分は、翌年度に国の交付金で補てんされることになっていますが、75%しか補てんされないのです。
次に、議案16号「県の行う建設事業に対する市町村の負担の追加について」ですが、これまでも私たち県議団は、一貫して県の県建設事業への市町村負担をやめるよう反対を表明してきたところですが、今般、国の直轄負担金のあり方について、全国知事会等で問題視されたところでもあり、この際、県が行う建設事業に対する市町村負担は廃止すべきです。
あらためて、市町村への負担内容をみてみますと、負担を求める事業は県単事業だけでなく国の補助事業もあり、この中には工事雑費のほか、事務費として職員の給料・手当て・共済組合負担金などの人件費や旅費、補助事業施行のために直接必要とされる庁費として、消耗品などの需用費や電話料等の役務費、自動車等購入費を含む備品購入費、補助事業で取得した自動車重量税の公課費なども含まれています。
また、今回提案されている市町村負担金の合計は、農林水産部では48市町村に対し25事業、約35億円、土木部では26市町村に対し12事業、約86億8,000万円となっています。この負担金を求めることに対し、さる6月10日に県市長会から「県施行工事負担金の見直しについて」の要望書が提出されています。この中で、「地方財政法や道路法等に基づき、現在関係市町村において負担率5%等の負担金を納付している。ため池・かんがい排水整備等の農業基盤整備事業等についてもそれぞれの負担により納付している。今、市町村にあっては未曾有の財政危機的状況にあって、税収の伸びも好転する兆しが見えない状況にある中、これら負担金への対応に苦慮している」と述べています。そして、「現下の厳しい財政環境の中にあって、住民生活に密着した社会資本の整備や少子高齢化に対応した福祉施設の充実など、各種施策を推進していく市町村の負担軽減のためにも、県事業にかかる市町村負担金の縮小または廃止について特段のご配慮を」と要望されています。県は、この要望を真剣に受け止め、市町村負担のあり方を抜本的に見直すとともに廃止を検討すべきではないでしょうか。
もともと、市町村負担を求める根拠としている地方財政法第27条第1項では、「都道府県は、当該建設事業による受益の限度において、当該市町村に対し、当該建設事業に要する経費の一部を負担させることができる」という「できる」規定であり、「しなければならない」というものではありません。
県は、広域自治体として「市町村を支援する」という本来の立場に立ち、市町村負担をやめるべきです。
以上、反対の理由を述べまして、討論を終わります。
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