1、はじめに
8月30日に投開票がおこなわれた衆議院選挙で、国民の暮らしや平和を壊してきた自民・公明政権が、国民のきびしい批判を受け歴史的大敗を喫し、自公政権は退場することになりました。自民党は、119議席へと公示前の勢力を3分の1に激減させ、公明党も31議席から21議席へ大きく後退しました。
わが党は、どんな問題でも自公政権と真正面から対決をつらぬき、今度の選挙では、「自公政権を退場させよう」と訴えつづけてきました。有権者・国民が下したこの審判を、日本の政治にとっての大きな前向きの一歩として歓迎するものです。
今後わが党は、新しい政権に対し「建設的野党」の立場で、「良いものには協力、悪いものにはきっぱり反対。問題点はただす」という立場をつらぬき、国民の要求に基づく政策を積極的に提起して、労働者派遣法の改正や後期高齢者医療制度の廃止、障害者自立支援法の応益負担をやめさせ、高校の授業料無償化などの実現に力を尽くします。
県内経済は、生産活動において「低水準ながらも足下で明るい動きが見られる」とされていますが、一方では、雇用の急速な悪化と個人消費の低迷が続くなど深刻な状況が続いています。
福島労働局が10月2日に発表した8月の県内の雇用失業情勢は、有効求人倍率が0.33倍と過去最低を更新し、依然として改善の兆しが見えません。9〜10月には、会津地域で富士通マイクロエレクトロニクス、スパンション・ジャパンなどで1000人規模の人員整理が強行されるなどさらに深刻な事態となっています。また、新規高卒者への求人状況についても前年度比で半分以下に落ち込むなど、一段と深刻な状況です。
9月7日に9月定例県議会に向けた知事申し入れを行い、当面の施策への要望をしました。また、党県議団と党県委員会は、9月25日知事に対して緊急経済・雇用対策(第5次)を申し入れました。
9月18日には、福島原発でのプルサーマル計画導入をめぐるエネルギー政策議員協議会が開催され、原子力安全・保安院と東京電力の説明に対し、宮川県議が意見を述べました。
9月定例県議会では、一般質問に神山悦子県議が立ちました。決算特別委員会が設置され、党県議団からは、宮川えみ子県議が委員に選出されました。また、9月議会最終日の10月15日、今議会に提出された470億8100万円の一般会計補正予算など知事提出議案31件のうち、議案第1号「平成21年度一般会計補正予算」、議案第17号「県の行う建設事業に対する市町村の負担の追加および一部変更について」の2議案に反対して藤川しゅく子県議が討論を行いました。反対討論で、不要不急事業の小名浜東港について、人工島構想の歴史的編変遷を明らかにするとともに、取り扱い貨物量からみても必要性はないこと、優先すべきは厳しい高校生への就職支援策であると指摘しました。
「天皇陛下即位20年に関する賀詞奉呈決議(案)」が自民党から提出され、党県議団は退席しました。また、7件の意見書が全会一致で可決されました。
2、わが党の質問と他党質問の特徴
◆ 一般質問 (神山悦子議員)
質問の冒頭に新政権の誕生をどう受け止めているか知事の認識を問い、佐藤知事は、「新政権の誕生は、社会保障制度の充実や将来の生活の安定や変化を求めたいという国民の気持ちが表れたもの」と答弁しました。
雇用状況はさらに悪化しており、特に、来春の高卒者への求人が昨年の半分以下と深刻になっていることから、卒業と同時に失業者という事態をくい止めるために、資格取得経費の補助や職業訓練の機会を保障することを求めたほか、もし就職できなかった場合に月額10万円を支給する制度創設を提案しました。
また、会津若松市の富士通マイクロエレクトロニクスは、多額の内部留保金や配当金を出す体力がありながら、正社員を次々と解雇している一方で、離職者支援と称して介護施設を立ち上げ、その人件費を県の雇用対策基金事業から税金で手当てされる問題を指摘。
子どもの貧困解消をテーマに、特に、高校生1人に係るPTA会費など授業料以外の教育費の負担軽減を求めました。また、県立高校の授業料免除基準を生活保護の1.3倍(世帯年収350万円)まで拡充すべきと質しましたが、県教育長は、再三の追及に教育費負担の実態把握は検討すると答弁したものの、減免基準を拡充する考えはないと答弁。
温暖化対策については、新政権が90年比25%削減の中期目標を掲げたことを評価しつつ、県のCO2排出量の増加が全国ワーストワンとなっていることから、石炭火発のLNGへの燃料転換、削減義務を伴う企業との協定、再生可能エネルギーの大胆な導入を求めました。また、原発がCO2を出さないエネルギーなどとする論調に対し、問題点を指摘し反論しました。
◆ 他会派の代表質問、一般質問の特徴
総選挙の結果、政権が交代したことを受けて、各会派の代表質問や一般質問を通じて新政権への認識と補正予算の執行停止による影響等に関する質問が多く出されました。
自民党は、新政権に対する自らの政治的スタンスを示さず知事の認識を問うだけで、歴史的大敗の原因や分析が聞こえてきません。また、代表質問では、原発のプルサーマル計画を推進せよと知事に迫りました。
各会派が共通して取り上げたのは、新規高卒者の就職問題や新政権が90年比25%削減の中期目標を示したことから、温暖化対策についてです。しかし、温暖化対策では、本県の深刻な排出実態を踏まえたものや、原因者の産業界へ規制を求める質問はありません。
県当局の答弁も、新政権のもとで政治が変わり始めているにもかかわらず、従来とかわり映えのしない答弁に終始しました。
3、各委員会審議について
◆ 企画環境常任委員会(神山悦子議員)
国の追加経済対策を受けた補正予算と基金を積み立てる条例案が提案されました。
生活環境部の審議では、原発からの温排水の環境への影響や、原発の耐震問題について質問。今年8月11日に発生した駿河湾地震(M6.5)によって、浜岡原発5号機で設計値を超える地震動が観測され、その原因が地下構造にあったことが指摘されていると指摘。また、原子力保安院を経産省から分離することについて他会派議員が改めて質したところ、担当課長と部長の答弁が微妙に違うことが明らかになり、「分離を求めることが本県の立場」と当局と確認する場面もありました。
本県の消費生活センターは、関係者の努力によって継続・維持されてきたが、国会で消費者庁が創設されたことから、今年度当初に基金事業を活用し、多重債務相談や振り込めサギなどの相談に弁護士や行政書士などの専門家が委嘱されている。今後はさらに、食品安全相談員や建築士と金融・保険の専門家を委嘱し、相談体制の充実を図ることになりました。
企画調整部の審議では、県の新しい総合計画が策定中で、中間整理案に対する県民、市町村、県議会の意見等をふまえ、最終案が12月県議会に提案されます。なお、各分野別の計画は、年度末までに示される予定です。
国の国土利用計画が改定されたことを受けて、本県も来年度10年ぶりに改定します。その際の観点を質したところ、県は全国平均より高い人口減少傾向や高齢化率、全国トップ級の耕作放棄地など、本県の地域事情に対応した計画を策定することや、これまでの面積などの量的管理から居住空間の向上など質的な転換を進めるとしています。改定作業は、来年1月から総合計画審議会に諮問してすすめるとしました。
◆ 商労文教常任委員会(宮川えみ子議員)
商工労働部の審議では、8月の有効求人倍率は0.33と過去最低の水準となり、県内の失業者は国のモデル値(調査)では、4月〜6月で完全失業者は5万8000人と報告されました。雇用状況が最もひどい会津でスパンション・ジャパンは1100人が510人に、富士通マイクロソフトは2000人が年内に約1200人になると答弁。首を切っておいて80人の雇用を増やす介護施設を作るだけで税金を3年間で8億3千万もやるということを取り上げ、これ以上の首切りをやめるよう要請せよと求めました。
論議は、雇用・中小企業対策に集中しましたが、全体に出口のない元気のない状況でした。昨年の金融不況で麻生総理が日本は大した影響は受けないなどと言っていたが、アメリカやヨーロッパよりひどい状況になってしまった、政策に問題があった、大企業に雇用を守らせることが重要と指摘しました。
教育庁の審議では、補正予算では高等学校の図書購入費にかかわって、専任の図書館司書の役割を強調。その中で「図書館の充実のための計画を出してもらい学習指導要領の中に位置づける」と答弁。あぶくま養護学校の増築に係わって、二本松、田村市の船引、須賀川・鏡石地域に分校の検討が必要との指摘に対し、検討課題になるとの考えが示されました。
議案以外の一般事項では、「学校の現状と(先生の)不祥事防止のための対応策」が報告された。この中で教員の研修の充実という項目があったが、講師の研修は難しい、1421人いるが763人が研修できただけ(講師は動くので)との答弁だったので、教員間の交流・仕事のバランスも含め講師を少なくする方向を求めました。
学校のインフルエンザ対応では、養護教諭との密な連絡を取ること。また、教育庁の障がい者雇用の推進も求めました。
高校で授業料以外にかかる費用の調査については、どこまでが公費でどこまでが私費か難しいという教育長の答弁だったが、子どもたちが厳しい現実の下で学校に通えるようにするために実態を調べることから始めるよう求めました。
◆ 農林水産常任委員会(藤川しゅく子議員)
農林水産関連補正額は45億6048万円で、新規就農者の確保や耕作放棄地の再生利用を進める予算。森林整備加速化および林業再生基金を増額し、稲ホールクロップサイレージの助成対象面積の拡大、老朽化した施設改修などの予算が提案されました。
新政権の一次補正予算執行停止方針が出され、農地集積加速化事業の先行きが不透明となる事態もあったが、今年度については確保できることがわかり、今後の動向を見つつ必要な要望を行うことを県議全員で求めました。
農業分野の雇用拡大策の、農業法人チャレンジ雇用支援事業は、委託先は9月末で88経営体に委託され82人が就労した。(県補助一人当たり14万1500円・社会保険料2万9000円以内)1月から3月までに新規就労した事例は、イチゴ栽培やアスパラガス作付け、トマト、花の苗の栽培などに95人であり、そのうち64人が継続していることが報告されました。
中山間地直接払い制度の事業実績と今後のとりくみを質問したところ、当局は、国は今年度で事業終了予定だが、重要な制度なので継続実施を国に求めていくこと述べました。
県の行う建設事業に対する市町村負担の一部変更案が出された。市町村負担金に対する他県の対応を質問し、当局は、和歌山県や熊本県などで一部負担金廃止の動きがでていることや、法律上は義務規定でないことを明らかにしました。
◆ 子育て支援対策特別委員会(藤川しゅく子議員)
参考人意見聴取として、白河市企政策課松本雅昭氏、河北新報中島剛氏、東邦銀行斉藤祥子氏、NPO法人ファザーリング・ジャパン安藤哲也氏をむかえ子育て支援策についての意見を聴取しました。
白河市は周辺町と連携し国の補助金も活用し、婚活の取組みを進めていること、晩婚化の要因に男性の低賃金があることも指摘されました。
企業内で初の男性の育児休業取得者の中島氏は、企業や社会の意識の啓発とともに、休業中の給与保障や職場復帰後の保育所拡充、病児保育、障害児保育などの整備の必要性を訴えました。
東邦銀行で育児休業を取得した斉藤氏は、職場内の理解や家族の理解にくわえ、社会全体で子育てを支える体制が不可欠であることを訴えました。
中島氏も斉藤氏も育児休業を取り、子供と向き合う時間が持てたことは親としての心が育まれるとともに、視野が広がり、ひいては仕事にも良い影響がでると感想を述べました。
ファザーリングジャパンの安藤氏は、全国で父親の育児支援活動を展開している経験を述べた。ワークシェアリングをすすめ、父親も育児にかかわれる環境整備必要性と保育所整備など行政や政治の役割についても言及しました。
◆ 安全で安心な県民生活対策特別委員会(宮川えみ子議員)
議会に先立ち、9月28日に開かれた委員会では、雇用問題に関することをまとめ知事に提出することを決めたが、「大企業や誘致企業に雇用守れと要請すること」についての記述を求めて了承されました。
13日、先に審議終了した雇用問題を除いた自然災害〜原発・医療・犯罪・虐待・消費生活など幅広い安全安心対策について説明を受け論議した。各部の連携・地域のコミュニュティが重要であること、予算も伴った推進体制の重要性などの意見が多く出されました。競争社会の中で、弱い所にしわ寄せがいっていることなどを提起しながら、虐待問題では、市町村支援が大事であり、県の役割が大きいこと。特に、公的な責任から民間に移された介護施設で、見えにくくなっているお年寄りの虐待問題の対応の強化を求めました。県としてもネットワークづくりを大事に進めていることや、市町村担当者の対応能力向上を進めていること。しかし、高齢者の虐待問題では匿名の訴えが多く具体的対応が難しいこと、介護では250件の虐待の認定があったと答弁で明らかにされました。
◆「新しい福島県総合計画」調査検討委員会(神山悦子議員)
県議会として初めて県の長計に策定段階から関与することになり、5月に設置された県議会の調査検討委員会は9月の検討会をもって終了し、9月29日に県の新長期総合計画の中間整理案に対する中間意見を取りまとめ、メンバー全員で議長へ提出。議長は、10月2日に知事へ提出した。意見の内容は、大きく3項目で、(1)「基本目標」は、わかりやすく県民が取り組めるものとし、インパクトのある表現にすること (2)人口や経済の将来推計値は県民が納得できる根拠を示すこと、重点施策の指標は県の考えが伝わるようなものを掲げる (3)7つの生活圏の考え方を柔軟にすること。
検討委員会では、将来の人口減少への対応や産業構造の転換を求め、掲げる指標についても意見を述べてきたが、これらが一定中間整理案に盛り込まれました。
4、エネルギー政策議員協議会(宮川えみ子議員)
9月議会前の18日、エネルギー政策議員協議会(エネ協)が開かれ、「原子力発電所における信頼回復と安全確保に関する意見書」(2002年10月11日に採択)の10項目のうち、1〜8項目について審議しました。
事務局の経過説明、国の原子力安全・保安院と東京電力のこれまでの取り組みについて説明された。その中で国の保安院は「東電の意図的トラブル隠しの100%チエックは難しい、今の人員では見られない、そもそも国が原発を運転しているわけではない」などと答え、一同唖然とした。6項目の「国の検査機関は、経済産業省の組織ではなく、独立した機関とすること」について議論が集中したが、「保安院をダブルチェックする(内閣府の)原子力安全委員会の機能が強化されている」と答弁。しかし、機能強化した後も、関西電力の美浜発電所3号機の配管破損事故で11人が死傷している。あまりにもひどい答弁に、傍聴していた他党議員からは「原子力不安院だ」と言う声があがったほどでした。
東京電力の説明では、企業倫理相談窓口を充実した(内部告発をしやすくした)というが、説明資料には「相談者が氏名・所属・連絡先を必ず明記」とあり、これではとても内部告発は出来ないものです。また、ヒューマンエラー対策については、最近連続して起きた、放射能を含む排水放出と基準値をオーバーして放射能を浴びた問題を指摘しました。
5、議会広報委員会(藤川しゅく子議員)
2月県議会で実施されている総括審査会は、会場が手狭なため傍聴者人数を制限したり、質疑風景が傍聴者から見えないなど、情報提供上問題があることが意見として出されました。
これを議論し、議会の情報公開性を確保するため、本会議場で総括審査会を開催することを議長に提案した。この改善案は、代表者会議等の議論を経て、議会運営委員会で決定され、来年2月県議会より実施される運びとなりました。
6、請願・意見書について
● 採択された意見書(全会一致)〜7件
◇平成21年度補正予算における地方関連予算の速やかな執行を求める意見書
◇私学助成制度の堅持および充実強化を求める意見書
◇教育予算の大幅な拡充を求める意見書
◇多重債務者対策の推進を求める意見書
◇食品表示制度の抜本的改正を求める意見書
◇日米FTA交渉に関する意見書
◇細菌性髄膜炎から子供たちを守るワクチンの早期定期接種化等を求める意見書
● 党が紹介議員になった請願・意見書の扱いについて
党県議団が紹介議員となった新規6件の意見書提出を求める請願のうち、「細菌性髄膜炎から子どもたちを守るワクチンの早期定期接種化等を求める意見書」(新婦人県本部提出)の1件が採択されました。共産党のみの紹介請願が全会一致で採択されたのはめずらしいことです。自民党が「内容重視で判断しよう」と県民連合に意見し採択の運びとなりました。
「日米FTAの推進に反対し、EPA・FTA推進路線の見直しを求める意見書」(福島県農民連提出)は継続になりましたが、福島県農業協同組合中央会提出の、日米FTAに関する意見書は自民党が紹介し、文言から「断固阻止」をとりトーンダウンした内容で県民連合と合意し採択となりました。
「経済的理由から学びたくても学べない若者をつくらない対策を求める意見書」は、県民連合から高校授業料無償までは良いが大学までは時期尚早と意見が出され継続に、「新規学卒者の就職難に対する緊急対策を求める意見書」、「若者の就職支援の抜本的強化を求める意見書」(以上3件は青年雇用フェスタ実行委員会提出)、「『後期高齢者医療制度』の廃止を求める意見書」(年金者組合県本部提出)も継続扱いとされました。
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