はじめに
8月の総選挙で政権交代した鳩山内閣の下で、政権発足後初の臨時国会が開かれていますが、雇用、社会保障、沖縄の米軍基地など内政・外交面でこの政権の重大な問題点が浮かび上がっています。
雇用状況は、過去最悪の水準で推移しているのに対し、鳩山政権の緊急雇用対策は旧自公政権時の対策と変わらず、わが党が失業給付の延長や雇用保険の特例措置を求めても実施しないとの態度をとっています。
自公政権のもとで削減され続けてきた社会保障の拡充も新政権に期待されていますが、子育て支援策としての「子ども手当て」の財源は、配偶者控除、扶養控除の廃止などの庶民増税で充てようとしています。保育所の待機児童解消が求められているのに、認可保育所の設置基準を廃止する勧告が出され、保育の質の低下が懸念されています。高齢者を差別する後期高齢者医療制度については、即時撤廃が国民多数の声です。民主党自身も昨年の国会で「いったん元に戻すことが非常に重要」「戻した上で旧老人保健法制度の問題点を是正する」と言明してきたはずですが、「混乱を生じてはいけない」などと答弁し、旧自公政権と同じ反対理由で制度の撤廃を先送りする姿勢を示しました。
加えて、鳩山首相の「偽装献金」問題、小沢幹事長の政治資金パーティーの偽装記載疑惑についても、司法任せにして自ら真相解明をしようとしません。これでは従来の政権と何ら変わりがないものです。
10月20日、厚生労働省が「貧困率」を公表しましたが、これによると、2006年時点の貧困率は15.7%、17歳以下の子どもの貧困率は14.2%でした。政府が公表したのは初めてです。ただし、この数字はあくまでも便宜的な数字であり、生活保護以下の世帯数を示すものではなく、相対的なものに過ぎませんから、県として貧困の実態を把握する必要があります。
こうした中で10月に発表された政府の概算要求額は約95兆円と過去最大となっていますが、高速道路無料化に6000億円の予算、軍事費は、米軍への思いやり予算を含め従来と同じ「聖域」扱いとしています。その一方で、行政刷新会議では来年度予算要求の約3兆円削減をめざして、「事業の仕分け」の対象として447項目(約210〜220事業)を決定しました。地方交付金、診療報酬、福祉関係事業や公立学校施設整備事業、義務教育国庫負担金、国立大学法人運営費交付金なども見直しの対象とされていますが、超大型公共事業や大企業優遇事業についての項目はなく、政党助成金も対象となっていません。
県の来年度予算編成にあたっては、本県財政への影響や県民の医療・福祉・教育へしわ寄せがないよう国政をチェックしつつ、本県の県民福祉の充実のために適切な予算配分を行なうことが求められます。県の財政状況は、国の偽りの「三位一体の改革」による影響を受けたものの、県債の発行や基金の取り崩し、定員削減や給与引き下げ等による人件費抑制を行ない、さらに歳出のシーリングを医療・福祉・教育分野まで行なった結果、財政力指数では健全財政となっています。したがって、財政再建は中長期スパンで対処することとし、県は広域自治体として地方自治の本旨である県民福祉の向上のため、県民と市町村を支援することを求めます。
また、新しい総合計画を実行する初年度にあたることから、その具体的を図る予算配分を適切に行なうことを求めます。
1、大型開発事業を中止し、県民のくらしと市町村を応援する予算編成に
経済・雇用状況の悪化に伴う厳しい県民生活の支援と市町村を応援することを予算編成の基本とし、新しい総合計画の具体化を図るためにも以下の点を求めます。
(1)経済・雇用対策とセーフティネットの充実を
県内の人口の流出を抑え、安心して住み続けられる福島県にするため、雇用と中小企業の仕事確保、住環境等への支援を求めます。
(1) |
新規高卒者の就職支援を強化し、もし就職できなかった高卒者に対する職業訓練に月10万円の支給を行う制度を創設すること。 |
(2) |
県内の誘致企業に対し、リストラをやめて雇用と地域経済を守らせること。 |
(3) |
必要な人への生活保護の早期適用をさせること。職も住居も失った人に対するワンストップの相談窓口を市町村へ設置するよう支援すること。 |
(4) |
介護や医療現場、農林業分野での雇用拡大を引き続き行うこと。 |
(5) |
最低賃金を時給1000円以上に引き上げること。 |
(6) |
県が自ら雇用創出を図るため、公務・公共分野の雇用枠を拡大すること。障がい者雇用についても雇用創出を図ること。 |
(7) |
公共サービスの質の確保を図り有能な人材を確保する観点からも、マンパワーを必要とする医療・福祉・介護・保育・教育分野の定員を拡充すること。
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(8) |
県の大規模港湾整備事業を見直し、小名浜人工島建設を中止すること。県の公共事業を生活関連型の事業に切り替え、学校耐震化や通学路の整備、維持補修費の予算を増やすこと。 |
(9) |
県発注の公共事業や委託契約において、低賃金や官製ワーキングプアを生まないためのルールをつくる「公契約条例」を制定すること。 |
(10) |
県の入札制度の改善を引き続きすすめ、透明で公平・公正・厳正な入札業務の執行に努めるとともに、行政コスト優先で品質の低下を招かないようにすること。 |
(11) |
県職員、特に県の幹部職員の外郭団体や業界団体への天下りを禁止すること。 |
(2)医療・福祉・教育の充実を
(1) |
後期高齢者医療制度の廃止を国の求めること。 |
(2) |
生活保護制度を充実させ、生活保護の母子加算の継続、老齢加算の復活を国に求めること。 |
(3) |
障がい者自立支援法の廃止を国に求めること。 |
(4) |
国民健康保険税を軽減するため、市町村国保へ助成すること。 |
(5) |
待機児童を解消するため保育所を増やすこと。保育の質を確保するため、保育所の設置基準を引き下げないよう国に求めること。 |
(6) |
介護療養型病床の削減計画を中止し、必要な病床数を確保する事。あわせて、特養ホームや老健施設など、必要な介護基盤整備を行なうこと。 |
(7) |
県立病院の統廃合をやめ、医療過疎・医療格差を生まないよう地域医療の中核として役割を果たすこと。 |
(8) |
子どもの医療費無料化助成対象年齢を義務教育終了まで引き上げること。 |
(9) |
県立・私立高校生の授業料無償化と授業料以外の教育費負担を軽減すること。 |
(10) |
給付制の奨学金制度を創設すること。 |
(11) |
講師を減らし、正教員を増やすこと。 |
2、地域を支える持続可能な産業支援を
(1) |
MA米の輸入を中止するとともに、国内の8割以上の米農家に壊滅的な打撃を与えるアメリカとのFTA交渉を中止するよう国に求めること。 |
(2) |
本県の農産物の自給率を引き上げ、農業で生活が成り立つよう、再生産を保障する農産物の価格保障制度と所得保障制度を創設すること。 |
(3) |
稲ホールクロップサイレージの補助を拡充し、畜産飼料の自給率を引き上げること。 |
(4) |
再生可能な自然エネルギーの導入を促進するため、環境分野の仕事興しを支援すること。 |
(5) |
県産材の活用を図るなど、林業振興を図ること。 |
(6) |
コンパクトなまちづくりをすすめ、高齢者や学生が利用しやすい公共交通機関への支援を充実すること。 |
3、安心・安全な低炭素社会をめざす取り組みを
(1)原発・プルサーマル問題について
(1) |
双葉町の財政問題にみられるように、原発立地地域の振興策については、原発に頼る自治体からの脱却を図れるよう、県の地域振興策を示すこと。 |
(2) |
本県に立地している10基の原発のうち、福島第一原発6基全てが30年以上も経過している老朽原発である。原発の安全性については、従来にも増して県民目線でチェックしていくこと。
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(3) |
高レベル廃棄物の処理方法やコスト問題、加えてもんじゅの再開の見通しもなく、核燃サイクルはすでに破綻している。プルサーマル計画の受け入れは認めないこと。
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(2)温暖化対策について
新政権が、90年比国内CO2排出量を25%削減することを国際公約していますが、本県としても以下の点をふまえて、政府に呼応する削減目標を掲げて具体化するよう求めます。
(1) |
本県のCO2排出量を大幅に増やす原因になっている石炭を燃料とする火力発電所については、CO2排出量が石炭の半分となる液化天燃ガス(LNG)への燃料転換を電力会社に求めること。
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(2) |
CO2排出量の最大を占める産業部門で削減するため、県と企業との間で削減協定を結び、事業所ごとの排出量の明示を求めること。
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(3) |
再生可能な自然エネルギー導入目標を大幅に引き上げ、太陽光、小型水力・小型風力などを設置する県民や事業所への助成を抜本的に拡充すること。
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