はじめに
昨年の総選挙で政権交代してから8ヶ月、県民の多くの方から「民主党政権には失望した。しかし自公時代への逆戻りはイヤ」との声が上げられています。
民主党が「国外、県外」を公約した普天間基地の移転問題への対応が国民の怒りをよんでいます。普天間基地は沖縄県内の多くの基地と同じように、米軍が太平洋戦争末期に沖縄を占領した際に不法に県民の土地を奪ってつくったもので、基地の無条件撤去は県民の当然の願いであり権利です。
また、廃止を公約した後期高齢者医療制度についても4年間先送りするだけでなく、政府が考える新しい制度では、75才を65才に対象年齢を広げようとさえしています。労働者派遣法の抜本改正についても、2つの大穴を開けるなどしています。
「政治とカネ」の問題でも、小沢幹事長に対し検察審査会は「起訴相当」の結論を出したにもかかわらず、政党としての自浄能力を全く発揮していません。
福島労働局が4月30日発表した「最近の雇用失業情勢について」によると、県内の雇用失業情勢の概況は、前月に続いて「依然として厳しい状況にある」と結論づけています。3月の有効求人倍率は0.38倍で、前年同月と比較して0.01ポイント下回っており、新規求人倍率も0.70倍と、前月を0.02ポイント上回まりましたが、依然としてきびしい状況を脱していません。今年3月の高校新卒者の未就職者は、5月15日現在で147人となっているなど、若者の雇用悪化が社会に深刻な影を落としています。
また、農業分野でも4月下旬に雪が降るなどの天候不順、宮崎県で発生した深刻な口蹄疫の影響なども心配されます。
6月定例県議会にあたっては、ますます深刻となる不況のもと、貧困と格差の解消とセーフティネットの拡充に力を尽くし、(1)不要不急の大型プロジェクト見直しの徹底、(2)地域での雇用確保をはかり、経済活性化にも資するようにすること、(3)県民の暮らしを守り、市町村が個性ある地域づくりにとりくめるよう市町村支援を強めることを基本に、以下の項目を要望します。
1 プルサーマル計画受け入れの撤回を
2月県議会の冒頭で知事が、技術的な3条件をつけたものの事実上の「プルサーマル計画の受け入れ」を表明したことは県政の大転換です。さらに、県民の意見を直接聞かないまま推進するというのであれば、知事の県民に対する姿勢が問われる重大な問題です。
国の核燃料サイクルの破綻を直視し、県民の命、安全・安心を最優先にプルサーマル計画受け入れの撤回を強く求めます。
(1)県民の意見を聞く場を設け、県民の不安や意見に真摯に耳を傾けること。
(2)3つの技術的条件にあげた耐震安全性、高経年化対策、MOX燃料の健全性については、県自身の充分な検証を行なった結果を県民に公表するとともに、これに対する県民意見の聴取を行なうこと。
(3)もともと国の計画になかった既存の原発で毒性の強いMOX燃料を使用するプルサーマル計画は、より問題を複雑化させるだけです。国に対し、核燃料サイクルが破綻していることを指摘すること。
(4)第三者機関による国の原発行政の安全・安心を担保するため、推進機関から原子力安全・保安院を分離するよう、国の組織改編を強く求めること。
(5)東電が、耐震安全性評価で、原子炉建屋の解析に使用した基礎数値に誤りがあったことを昨年9月につかんでいたにもかかわらずすぐに公表しなかったことをみても、事業者による信頼回復のとりくみは未だ道半ばです。ヒューマンエラーを軽視せず、事業者から速やかな情報公開を厳しく求めること。
(6)国と事業者に対して労働者の被ばくを低減することや、下請け労働者の安全や違法行為を厳しく監視するよう求めること。
2 市町村の国民健康保険へ県独自の支援を
企業の非正規切りや正社員の「首切り」などで社会保険から国保への切りかえ加入者が増えています。昨年6月1日現在の県内の国保税滞納世帯は、21%にまで及び5世帯に1世帯以上が国保税を納めきれない事態が広がっています。市町村の国保財政が困難を抱える中、子どもの医療費無料化年齢の拡充や国保税の減免制度をつくって弱者支援を行っています。こうした市町村に対して、国はペナルティさえ課しています。広域自治体として県は、進んだ施策をとっている市町村を励まし後押しすることが求められます。
(1)国民健康保険税減免を実施する市町村に対し、県独自の財政支援をはかること。
(2)国民健康保険の一部負担金減免の基準を県の通知どおり、生活保護基準等を適用するよう市町村に徹底すること。
(3)国に対し、国保財政への国庫負担を元にもどすことを求めるとともに、国民健康保険の広域化に反対すること。
3 セーフティネットの拡充と経済・雇用対策について
(1)県の制度として中学校卒業までの医療費無料化を
子どもの医療費無料化は、県の制度の小学校入学前を上回る制度になっている市町村が59市町村中57にまで広がっています。こうした市町村を支援し励ますことが切実に求められています。県内の子どもがどこに住んでいても、同じように安心して医療を受けることができるようにすることは広域自治体としての県の本来の役割ともいえるものです。
県の子どもの医療費無料化助成制度の対象年齢を中学校卒業までにすること。
(2)子宮頸ガン予防ワクチン、ヒブワクチンの無料接種の制度化を国に求めるとともに、県として補助制度を創設すること。
(3)待機児童を解消するため保育所増設への支援を図ること。保育の質を確保するため、保育所の設置基準を引き下げないよう国に求めること。
(4)就職できなかった卒業生に対する資格取得や職業訓練のための支援(月10万円)をおこなうなど、直接的な支援へとふみ出すこと。
(5)景気対策として、新年度から始まった新築住宅への補助制度をさらに前にすすめて、民間住宅リフォームへの助成制度(秋田県や、県内でもいわき市、広野町で実施)をおこなうこと。
4 納税者の権利を守ることについて
(1)地方税滞納整理機構は廃止を
会津地方振興局と会津管内13市町村が参加し、会津地域地方税滞納整機構が設立された。県職員と市町村職員が相互併任方式のもと、個人住民税を中心とした市町村税滞納の回収や整理にとりくむとしているが、この機構は、法律や条例によらない任意組織であり解散を求める。
また、滞納税整理にあたって財産差し押さえは、国税徴収法の75条「生活や学業に欠くことのできない財産は差し押さえることができない」を厳格に遵守すること。
(2)市町村の行政サービス制限条例制定の動きについて
格差と貧困が深刻化するなかで弱者にしわ寄せする税制・社会保障の改悪がすすめられ、不況の中で市町村県民税や国保税を払いたくても払えない県民が増えている。そんな中、県内の市町村において税滞納者に対し、市町村がおこなう行政サービスの利用を制限する条例を制定する事例がでているが、憲法25条の立場から滞納者に対する制裁行政はやめるよう、県として市町村を指導すること。
5 異常低温と口蹄疫対策に万全を期し、農家経営を守ることについて
(1)異常低温と日照不足による農作物被害については、情報提供と技術指導を徹底し、被害が甚大に及ぶ時は農家経営支援策を検討すること。
(2)国内における口蹄疫の発生について、県内防疫対策を一層強化し、関係者への情報提供と、県内で不足している消毒溶剤の確保に努めること。また、県に特別対策本部を設置し総合的な対応を図ること。
6 高校授業料無償化に伴う父母負担の軽減に万全を
高校授業料無償化で今まで授業料と一緒に諸経費が減免になっていた生徒の諸経費が減免対象から外され、父母負担が増える事態となっています。諸経費も含め実質的に無償となるような手だてをとること。
7 格安航空の導入は県民の安全・安心の確保を最優先で慎重な対応を
茨城空港にみられるように格安便の競争が激化しています。県民の安全・安心を最優先に慎重な対応を求めます。
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