日本共産党福島県議会議員団
団 長 神山 悦子
副団長 宮川 えみ子
幹事長 藤川しゅく子
はじめに
10月1日に臨時国会が開会し、菅直人首相が行った所信表明では、参院選挙で批判をあびた消費税の増税問題や沖縄・普天間基地の県内「移設」問題などの反省はなく財界とアメリカの要求に応えるものばかりです。
菅首相が「解決すべき課題」の第一としたのは経済成長ですが、日本経済が長年にわたって停滞し、国民の暮らしが悪化の一途をたどっているのは、政府が大企業を応援するばかりで「派遣切り」などに有効な対策をとらず、異常な貧困と格差の拡大など、経済のゆがみをますますひどくしているからです。
来年度予算編成では、財界が要求する法人税減税のため、「年内に見直し案を取りまとめる」というのです。ゆがみは激しくなる一方です。参院選挙で国民のきびしい批判をあびた消費税増税についても、「社会保障改革」にかこつけて、「消費税を含め、税制全体の議論を進めたい」と明言しました。国民の批判に応える立場がないのは明白です。首相が演説で、民意を切り捨てる国会議員の定数削減を持ち出したことも重大です。
一方、県民の暮らしをめぐっては、10月1日に福島労働局が発表した雇用失業状況によれば、県内の有効求人倍率は前月を0.01ポイント下回って0.44倍となり、依然として雇用失業情勢は厳しい状況にあります。
党県議団は、8月30日に9月定例県議会に向けた知事申し入れを行い、当面の施策への要望を行いました。知事が正式に「プルサーマル計画の受け入れ」を表明したことは県政の大転換といえます。さらに、県民の意見を直接聞かないまま推進することは、知事の県民に対する姿勢が問われる重大問題です。国の核燃料サイクルの破綻を直視し、県民の命、安全・安心を最優先にプルサーマル計画受け入れの撤回を強く求めました。
9月9〜10日には来年度予算編成に向けた要望をお聞きする会を開催し、JAをはじめとする経済団体や、私学関係、障がい者・難病関係団体などから切実な要望が寄せられました。
9月定例県議会は、9月16日から10月5日までの20日間の会期で開催され、冒頭、知事は4年間の県政運営をふりかえり、自ら及第点を付けました。
一般質問には、神山悦子県議が立ちました。宮川えみ子県議が、最終本会議の討論に立ち、議案第1号・平成22年度福島県一般会計補正予算(第1号)、議案第10号・福島県立看護師養成施設条例の一部を改正する条例、議案第11号・福島県立病院事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例、議案14号・県の行う建設事業等に対する市町村の負担の追加についての4件に反対して討論を行いました。
1、わが党の質問と代表質問・一般質問の特徴について
◆一般質問(神山悦子議員)
9月28日、一般質問で登壇しました。今議会は、佐藤雄平知事の一期4年間の最後の県議会となったことから、(1)雇用・産業政策について、(2)県の予算編成のあり方について、(3)医療・福祉・教育行政について、(4)原発・プルサーマル問題など、県政の基本問題を質問しました。民主党の「地域主権改革」の問題点と尖閣諸島問題への対応についてのわが党の見解も述べました。
原発・プルサーマル問題では、8月6日に知事が正式受け入れを表明したあとの初の県議会でしたが、MOX燃料を使うプルサーマル計画を始めたばかりの第一原発3号機では、この間トラブルが続出しています。
8月半ばには労働者の放射線の内部被曝事故が発生、9月17日に起動予定がトラブルで翌日に延期となり、さらに9月27日には、本来第一原発6号機で行なうべき冷却系タービンケーブルの取りはずしを5号機で誤って行ない保安規定違反とされた問題など、いずれもヒューマンエラーによるトラブルです。
これでは東電との信頼回復がされたとは到底言えず、県民は不安がつのるばかりです。また、県自身も東電からトラブルの情報を受けていながら、積極的に県民や県議会に情報提供する姿勢がない点も問題だと追及しました。
医療めぐる問題については、医師不足と看護師不足の実態がある中、今議会に県立会津看護専門学院の学生募集を停止する条例改正と県立大野病院の廃止条例が提案されました。いずれも民間があるからとしています。県内には3つの県立病院しか残らなくなり、県の医療責任の放棄につながると指摘し存続を求めました。
そのほか、小名浜東港建設など大型事業を中止し医療・福祉・教育へ予算を回すことや、児童相談所体制の充実、県立養護学校の増設、住宅リフォ-ム支援事業の創設、米価暴落への対策などについても県をただしました。
あぶくま養護学校の教室不足と通学バスで1時間以上もかかる負担を解消するためにも、県中地区に1校増設すべきと求めると、教育長は分校を検討していると前向きの答弁。分校について言及したのは初めてです。
◆他会派の代表質問、一般質問の特徴
代表質問で知事与党の県民連合は、10月からの知事選直前の任期最後の議会ということもあり、知事へ4年間の県政運営を公平公正・県民の声を広く聞いたと高く評価。知事を支援することになった連合福島からも、原発プルサーマル問題では、もっと県民の意見を聞くべきだったという意見が出たとされているにもかかわらず、そのことには全くふれませんでした。
自民党の代表質問では、現知事を支援することを決めていることから、知事が一党一派に偏らないことを評価、自民党のローカルマニフェストを共有しているとの認識を表明しました。また、教育問題では、福島県の学力低下問題を取り上げ、自民党としては学力向上が重要で根本と述べるとともに、次期県政でめざす内容などを知事に質問しました。
しかし、代表質問、一般質問を通じて原発・プルサーマルを正式受け入れしたばかりなのに、日本共産党県議団を除くどの会派もまったくプルサーマル問題を取り上げなかった点は異常ともいうべき議会でした。
3、各委員会審議について
◆企画環境常任委員会(神山悦子議員)
○生活環境部では、東電におけるヒューマンエラーが相次いで発生していることに他会派も含めて質問が集中しました。特に、福島第一原発5号機で発生したトラブルは、9月27日、東電へ保安院から「保安規定違反」の行政指導があったことから、常任委員会として東電を参考人として聴取すべきとの意見があったものの、自民・公明議員が反対したことから、結局、常任委員会での参考人招致をやめて議会のエネ協を開くよう委員会として議長へ申し入れを行うことを確認しました。
この事件に加え、MOX燃料を装荷したばかりの福島第一原発3号機では、8月23日に下請け労働者の放射線による内部被曝事故が発生したほか、9月17日深夜に起動開始予定が、電気系統のトラブルで翌日に延期するというヒューマンエラーが次々と発生していることをみても、東電の体質は改善されていないことを指摘。県もトラブルに伴う県民や議会への情報公開が不充分だったことを追及。さらに、原発作業の現場では、実際は5次下請けなのに3次下請けにされた事例を示し、労働者の安全対策と作業研修の徹底、法令遵守を求めました。
産廃行政については、南相馬市の大甕産廃処分場を建設している(株)原町共栄クリーンに対する県の対応について質問。今年8月5日の裁判では、業者へ工事差し止めの判決が出されていること。県が提出を求めている誓約書も、埋蔵文化財発掘調査にかかる土地所有者の承諾書も提出されていないうえ、相馬市からも市の公害防止協定に基づく環境保全対策基金の設定も履行されず県へ指導を求める要請書が6月1日付けで県に提出されているなどの事実を示し、この業者が産廃業を担う資質に欠けていることをあらためて指摘。県は住民との間で10年間に及ぶ紛争が続いているこの問題を放置せず、積極的に問題解決にあたるべきと強く求めました。この日は、地元の住民団体が委員会を傍聴した後、県へ要望しました。
○企画調整部では、12月県議会に提出予定の県国土利用計画(第五次)「中間整理案」の説明を受け、自民党議員からは、合併した伊達市が策定中の都市計画マスタープランで大型商業施設を見込んで、県と議長へ要望があったことをとりあげ、県のしばりをかけてはならないと質問。これは、中心市街地への大型店を規制している本県の「商業まちづくり推進条例」を見直ししようとする動きに連動しかねないもので注視が必要です。
◆商労文教常任委員会(宮川えみ子議員)
○労働委員会
特に議案はなかったが、6月議会以降の状況では不当労働行為の継続事件1件は和解成立、集団的労使関係調整事件はあっせん不調、個別労使関係調整事件(退職金)は不調、労働条件変更事件は双方合意した。4月〜8月までに53件の解雇や賃金等の相談があったとのこと。
○商工労働部
補正予算は、7億953万4千円で、主なものは基金を使っての事業で、来年度卒業者の就職支援では、正規雇用として採用内定した企業に県制度資金の貸付対象にする事など。未就職の高校生65人(6月末)への支援も入っています。また、緊急雇用対策資金を活用し円高問題への中小企業支援をする等の説明でした。
県内景気は、回復に向けた動きはあるものの、円高の長期化が懸念される、尖閣諸島問題での中国との問題は影響ないなどの説明がありました。
○企業局
新白河複合型拠点の工業の森・新白河C工区に関して、企業の希望があり、3億2032万6千円の補正予算を組んで一旦企業に分譲したものを買い戻し、隣接する土地と合わせて広い土地として売ると言う提案でした。工業用水道事業では、供給先が製紙関係1件減った事等が報告されました。
○教育庁
一般会計補正予算は、1億1千4百10万円で、主なものは学力育成にかかわる調査研究事業費・学校の大規模耐震対策・相馬養護学校の大規模改修工事・須賀川養護学校わかくさ学習棟整備・家庭教育支援事業・美術鑑賞充実事業など。その中で、家庭教育支援事業では家庭教育インストラクターは189人いて県内7ヵ所で実施している。親の姿が大きく変化し子どもを愛せない、自分優先する傾向等があることから、これらに対応できる資質の向上を図りたいと言う説明。
一般事項では、文科省のスーパーサイエンス指定校(福島高校)の未履修問題や全国平均より下回った学力問題等が出されました。その中で学力問題では、学力向上で対応をすることは良いが、そのことで先生がさらに忙しくなる事は学力向上そのものにも背を向けることになる、これらの事も十分に対応をすべきと発言しましたが、教育長は、教師は学力向上に当たるのは当然と言うのみでした。
あぶくま養護学校大規模化解消と通学時間の短縮問題を考えても、もう1校つくることを具体的に検討すべきと指摘。また、小中学校の専任の図書館司書配置について検討を進めるよう求めました。
◆農林水産常任委員会(藤川しゅく子議員)
補正予算は、米の品種開発や森林整備にかかわる経費のほか、国庫補助内示に伴う増減補正でした。総額1億5412万4千円の増額であり、これにより、予算累計は599億4444万3千円になりました。
米の品種開発費用は、JAからの寄付金を原資とし選別機械を購入するものですが、品種改良費を稲作農家の寄付に頼る姿勢は問題です。
森林整備費は国の基金事業を拡大したもので、増額補正により今年度の県の森林整備目標が達成できます。このことは低炭素社会づくりや林業振興にもプラスになります。林業振興にかかわっては、他会派の県議からも県産材を使用した住宅建設に対する助成は枠も金額も拡大すべきとの意見が相次いで出されました。所管の土木部と農林水産と連携し強力に推進すべきとの意見もあり、これまで、共産党のみが発言してきた内容が委員全体のものとなりつつあります。
米価下落対策について、現状を聞きながら意見を述べました。政府に備蓄米の買い入れや戸別所得補償の支払いを前倒しすることを求めるべきと質しました。政府要望を早急に行うとの回答を得ました。
◆低炭素社会づくり対策特別委員会(藤川しゅく子議員)
県地球温暖化対策推進計画改定版の説明を受け、質疑応答ののち総括的な意見交換をしました。IPCCは、地球温暖化防止対策は人類がやり遂げなければならない課題であると述べていることを引き、改訂版計画の数値目標の考え方に対する決意を質しました。さらに、新しい数値目標は未定だが、政府目標と同等の水準をめざすのであれば、県民運動だけに委ねるのではなく企業活動に規制的手法やルールを用いることが必要であると意見を述べました。本県の特徴である火力発電所が集中立地している問題を再度指摘し、県独自の規制をかけることを求めました。
◆新しい観光推進対策特別委員会(宮川えみ子議員)
障害者・高齢者が利用できるバリアフリー化の促進、四国のお遍路さんのように滞在型の観光地域資源発掘が必要等の意見が出されました。スポーツの里ふたばのようにウィークデーの施設利用促進(社交ダンス・パークゴルフ)や、取り組みの水平展開などの重要性を指摘しました。県が主導権を持って市町村を巻き込んで推進をすること、視察に行った奈良や堺市などはそのことで成功している等の意見が出されました。
◆議員提出条例検討会(神山悦子議員)
条例の名称については、「子育てしやすい福島県条例」に決定しました。また、条例案の前文と本文の最終案がまとまり、今後は法令審査等をへて12月県議会に議員提出条例として提案される予定です。
◆2009年度決算審査特別委員会(藤川しゅく子県議)
決算審査特別委員会が構成され、委員長・副委員長を選任し、閉会中審査することとなりました。党県議団からは藤川県議が委員になりました。
◆議会運営委員会(神山悦子県議)
議会運営委員会で、来年度から本会議場の速記者を廃止することを決定しました。この間、リスクへの対応策について質すとともに、速記者のプロパーが数名在籍している現状からみれば、来年から急いで廃止する必要はないと主張しましたが、多数で廃止を決めました。
4、請願・意見書について
●採択された意見書
◇ 21世紀型の公共投資の推進による景気対策を求める意見書
◇ 完全な地上デジタル放送の実施に向けて円滑な移行策を求める意見書
◇ 地方分権に対応する地方議会の確立を求める意見書
◇ 父親の育児休業取得促進を求める意見書
◇ 口蹄疫被害の復興支援と再発防止を求める意見書
◇ 私学助成制度の堅持及び充実強化に関する意見書
◇ 緊急的な米需給調整対策に関する意見書
◇ 免税軽油制度の継続を求める意見書
◇ 肺炎球菌ワクチンへの公費助成に関する意見書
◇ 日中関係の早期正常化を求める意見書
◇ 認知症高齢者グループホームの防火安全体制強化を求める意見書
◇ 地方財政の充実を求める意見書(党県議団は反対)
◇ 「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」の期限延長を求める意見書(党県議団は反対)
●党が紹介議員になった請願・意見書の扱いについて
党県議団が紹介議員となった新規意見書5件の中で、「肺炎球菌ワクチンへの公費助成に関する意見書」(県保険医協会提出)、「免税軽油制度の継続を求める意見書」(県農民連提出)の2件が採択されました。
そのほか、「EPA・FTA推進路線の見直しを求める意見書」(県農民連提出)、「米価の大暴落に歯止めをかけ、再生産できる米価の実現を求める意見書」(県農民連提出)、「患者の窓口負担大幅軽減を求める意見書」(県保険医協会提出)の3件は継続扱いとされました。
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