福島県知事
佐藤 雄平 様
日本共産党福島県議会議員団
団 長 神山 悦子
副団長 宮川えみ子
幹事長 藤川 淑子
はじめに
政府は10月29日、5兆円規模の補正予算案を国会に提出しました。分野別に見ると「雇用・人材育成」に3,199億円、「新成長戦略の推進・加速」に3,369億円を計上しました。「子育て、医療・介護・福祉」1兆1,239億円、「地域活性化、社会資本整備、中小企業対策等」に3兆706億円などとなっています。
新成長戦略の推進・加速では家電エコポイントに777億円、イノベーション(技術革新)拠点立地支援303億円の名で大企業の設備投資に補助金を出し、さらに、海外大型買収に100億円を出資するなど大企業応援策が中心です。
また、「新卒者就活応援プログラム」の実施に500億円を計上し、3年以内の既卒者を正規雇用した企業に6カ月後に100万円を支給するなどします。「超氷河期」といわれる学生の就職難に真剣に取り組むなら、巨額の利益をため込みながら人件費削減に執着する大企業の姿勢を変える必要があります。
子育てでは「安心こども基金」に1,000億円を拠出し、保育所整備を実施するとしています。しかし民主党政権の保育政策は保育の最低基準を引き下げて子どもを詰め込み、市町村の保育実施義務も撤廃して保育への公的責任を大きく後退させる方向です。保育の安全を脅かすやり方では安心して子どもを託せません。
民主党政権の経済対策には、痛めつけられてきた家計、内需を底上げするまともな戦略がありません。日本経済は長期にわたって家計、内需が低迷し、国内総生産が10年前よりも落ち込むという異常事態に陥っています。その大もとにあるのは、世界でも異例の“賃金下落の常態化”です。
国税庁の調査によると1998年以降、延々と民間給与の下落傾向が続いています。この間の給与所得者数は横ばいなのに給与総額は28.6兆円も減り、1人当たりの平均年収は61万円もの減少となりました。他方で大企業は244兆円もの貯蓄(内部留保)をため込み、使い道に窮しています。
労働者派遣法の抜本改正や有期雇用の乱用を防ぐ規制、正社員との均等待遇、中小企業と大企業との公正な取引ルールの確立などを通じて、大企業の過剰な貯蓄を社会に循環させる経済構造に転換していくことが求められます。
社会保障の拡充や農林漁業の振興とあわせて、家計・内需を土台から温める戦略が必要です。
さらに、民主党政権の「地域主権」は、国の役割を限定し、地方自治体と県民に負担を求めようとしています。これは地方切り捨てと道州制につながるものであり、地方自治体の形を大きく変えることになります。憲法に基づいてすべての国民にナショナルミニマムを実現するため、「地域主権」構想を見直すよう国に強く働きかけるべきです。
こうした国の動向のもとで、本県の来年度予算編成にあたっては、県民福祉の充実のために適切な予算配分を行なうこと。また、広域自治体として地方自治の本旨である県民福祉の向上のため、県民と市町村を支援することを基本に、以下の項目の実現を求めるものです。
1、大型開発事業を中止し、県民のくらしと市町村を応援する予算編成を
県内の経済・雇用情勢は依然として厳しい中にあることから、県民生活と市町村を応援する予算編成を基本とするよう求めます。
(1)公共事業のあり方について
(1)小名浜東港建設は、費用対効果からみても今後の港湾利用からみても過大な投資となることは必至である。早期に事業中止を決断すること。
(2)福島空港は、閉鎖を視野に検討すること。
(3)大規模林道建設を中止し、森林の手入れや伐採などの作業道を整備することや、県産材の利活用・加工等への助成を大幅に拡充すること。
(4)県の建設事業への市町村負担を全廃すること。
(5)流域下水道事業への県補助率を元に戻し、市町村を支援すること。合併した市町村の流域下水道事業は、引き続き県事業として行うとともに、制度改正を国へ求めること。
(2)経済・雇用対策とセーフティネットの充実を
依然として厳しい県内の雇用状況を打開するために、あらゆる手立てをとって県が支援すると同時に、セーフティネットの充実も必要です。
(1)新規高卒者の就職支援を強化し、就職できなかった高卒者に対し、事業所への雇用支援にとどまらず職業訓練や生活支援として、月10万円の支給を行う制度を創設すること。
(2)県内の誘致企業に対し、リストラをやめて雇用と地域経済を守らせること。
(3)職も住居も失った人に対するワンストップの相談窓口を市町村へ設置するよう引き続き市町村を支援すること。
(4)最低賃金を時給1,000円以上に引き上げること。
(5)青年、障がい者、高齢者等の雇用対策は緊急かつ重要課題となっている。介護や医療、農業・林業分野での雇用支援を引き続き行うと共に、厚労省が高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第5条と40条で認定されている非営利で中高年の就労促進を行っている団体へ就業機会を提供できるよう支援すること。
(6)公共サービスの質を損ないかねない公共サービス部門のアウトソーシングをやめ、むしろマンパワーを必要とする医療・福祉・介護・保育・教育分野の職員を増員すること。
(7)県発注の公共事業や委託契約において、低賃金や官製ワーキングプアを生まないためのルールをつくる「公契約条例」を制定すること。
(8)県の入札制度の改善を引き続きすすめ、透明で公平・公正・厳正な入札業務の執行に努めるとともに、コスト優先で品質の低下を招かないようにすること。
(9)災害や地震から県民の命と財産を守るために必要な予算を確保すること。震源地とされる天栄村の湯本地区にも地震計を設置すること。
(10)県職員、特に県の幹部職員の外郭団体や業界団体への天下りを禁止すること。
(3)医療・福祉・教育の充実を
貧困と格差の広がりで県民生活が厳しさを増している今だからこそ、県が医療・福祉・教育を充実させて県民の命を守り、誰もが安心して住み続けられる県政にしていくことを求めます。
(1)県民の医療を守るため、医師と看護職員を増員すること。また、引き続き県内の病院への医師派遣を増やすこと。
(2)国民健康保険税の負担を軽減するため、市町村国保へ独自に助成すること。また、市町村の国保の窓口一部負担金の減免に対する県の助成を行うこと。
(3)国保の広域化に反対し、国の責任で国保事業を支援するよう求めること。
(4)生活保護の適用を速やかに行うこと。生活保護制度を充実させ、生活保護の母子加算の継続、老齢加算の復活を国に求めること。
(5)後期高齢者医療制度の廃止を国に求め、高齢者の医療費負担を軽減すること。
(6)介護療養型病床の削減計画を中止し、必要な病床数を確保すること。あわせて、1万人以上の待機者がいる特養ホームや老健施設など、必要な介護基盤整備を行なうこと。
(7)子どもの医療費無料化助成対象年齢を義務教育終了まで引き上げること。
(8)待機児童を解消するため学童保育所を増やすこと。保育の質を確保するため、保育所の設置基準を引き下げないよう国に求めること。
(9)県中児童相談所の一時保護所は併設とすること。
(10)障害者自立支援法の廃止を国に求めること。
(11)小規模作業所への県の補助制度を継続すること。
(12)聴覚障がい者の情報提供施設を設置すること。
(13)特別支援学校の大規模化を解消するため、分校化ではなく新・増設すること。
(14)県立・私立高校生の実質授業料の無償化と授業料以外の教育費負担を軽減すること。
(15)給付制の奨学金制度を創設すること。
(16)30人学級を継続すること。講師を減らし、正教員を増やすこと。また、小中学校に専任司書を配置すること。
(17)スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの増員、図書購入費や備品などの維持管理費の予算を拡充すること。
2、地域経済をあたためる持続可能な産業支援を
地域経済をあたためる内需拡大策として、本県の基幹産業である第一次産業と県内企業の中心をなす中小企業を支援し、地域経済の活性化と雇用の場をつくるよう求めます。
(1)本県の農産物自給率の引き上げをめざし、また、農業で生活が成り立つよう本県として再生産を保障する農産物の価格保障制度を拡充すること。特に、米価が暴落していることから、県として1俵1,000円の米価の下支えを行うこと。
(2)新規就農者里親制度を創設すること。
(3)新築住宅支援だけでなく、県の住宅リフォーム助成制度を創設し、県産材の活用にもつなげること。
(4)商業まちづくり推進条例を活用し、市町村のコンパクトなまちづくりを具体的に支援すること。高齢者や学生が利用しやすい公共交通網を充実すること。
3、安心・安全な低炭素社会をめざす取り組みを
(1)原発・プルサーマル問題について
(1)高レベル廃棄物の処理方法も最終処分場も決まらず、もんじゅ再開の見通しもなく、高コストも指摘されるなど核燃サイクルはすでに破綻している。プルサーマルは中止すること。
(2)本県に立地している10基の原発のうち、福島第一原発6基全てが30年以上も経過している老朽原発である。原発の安全性については、従来にも増して県民目線でチェックしていくこと。
(3)福島第一原発7、8号機の増設は認めないこと。原発に代わる地域振興策を示すこと。
(4)日本列島全体が地震活動期に入ったとされていることから、原発の耐震安全対策を万全にすることを事業者と国に求めること。
(5)原発トラブルやヒューマンエラーをなくすよう、事業者や国に求めること。
(2)温暖化対策について
(1)本県のCO2排出量を大幅に増やす原因になっている石炭を燃料とする火力発電所については、CO2排出量が石炭の半分となる液化天燃ガス(LNG)への燃料転換を電力会社に求めること。
(2)CO2排出量の最大を占める産業部門で削減するため、県と企業との間で削減協定を結び、事業所ごとの排出量の明示を求めること。
(3)再生可能な自然エネルギー導入目標を大幅に引き上げ、太陽光、小型水力・小型風力などを設置する県民や事業所への助成を抜本的に拡充すること。
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