福島県知事
佐藤 雄平 様
日本共産党福島県議会議員団
団 長 神山 悦子
副団長 宮川えみ子
幹事長 藤川 淑子
はじめに
県内の景気動向は、急激な円高により企業活動に影響が出はじめるなど先行きが不透明となっており、福島労働局が10月29日に発表した雇用失業情勢では、有効求人倍率は、前月を0.01ポイント上回る0.45倍であり、依然として厳しい状況にあります。
10月31日投票で行われた県知事選挙は、過去最低の投票率を記録しました。これは、県民生活の困難がますます深刻化するなかで、抽象的スローガンの繰り返しで切実な願いに正面から応える政策提起がなかったことへの消極的批判のあらわれの結果といえます。
米国など農産物輸出大国を含む環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加問題について、菅直人政権が「協議を開始する」との基本方針を決めました。
すでに日本は世界最大の食料輸入国であり、世界で最も開放されています。例外なき関税撤廃が原則のTPPに参加すれば、唯一自給できるコメも輸入品に置き換わり、日本農業は壊滅的な打撃を受けます。さらに食品関連や輸送など広範な業種で雇用が失われ、地域経済が崩壊します。
TPPへの参加は、農業破壊だけでなく、経済に不可欠なルールを一段と取り払い、国民生活を大きく変えるものです。また、農業の破壊が環境にも大きな悪影響をもたらすことは、水田農業の変化がトキの絶滅の一因だったことをみても明らかです。食料は世界から買ってくればいいという自由化の論理は、世界的食糧不足が叫ばれている下で、食糧安全保障上も通用するものではありません。さらに地産地消が基本の温暖化対策にも逆行します。
TPP参加を「将来の雇用機会」のためとか、日本の取り組みは「遅れている」といった政府の主張は、輸出大企業の利益を最優先にしたまやかしです。国民生活に重大な影響をもたらす政策の大転換を、拙速に行おうとする菅政権の姿勢は許されません。
知事の二期目のスタートとなる11月定例県議会は、選挙で公約した活力、安心・安全、思いやりをどう具体化していくのかが問われます。深刻な不況のもと、貧困と格差の解消とセーフティネットの拡充に力を尽くし、(1)不要不急の大型プロジェクト見直しの徹底、(2)地域での雇用確保をはかり、経済活性化にも資するようにすること、(3)県民の暮らしを守り、市町村が個性ある地域づくりに取り組めるよう市町村支援を強めることを基本に、以下の項目を要望します。
1、TPPに反対して、農業を守る福島県を
(1)福島県農業に壊滅的打撃を与える、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加は絶対反対を表明し、国に緊急に申し入れること。
(2)米価下落に対し、融資だけでなく県独自支援策として1俵1,000円の米価下支えを行うこと。
2、経済・雇用対策について
(1)裾野が広い経済対策として県産材を活用する住宅リフォーム支援事業を創設すること。
(2)雇用状況が改善されない中、医療・福祉・介護・保育・教育など公務分野での雇用拡大を図ること。
(3)年末にあたり中小零細事業者への資金繰り支援、金融機関等に貸し渋り・貸しはがしをしないよう求めること。
3、深刻化している県民生活への対応について
(1)子どもの医療費は、県内市町村の7割が中学卒業まで無料化になっています。県の制度として中学校卒業までの無料化を実施すること。
(2)県営住宅の強制退去裁判にあたっては、子育て・老人・障害者世帯が路頭に迷わないよう配慮すること。
(3)ホームレス自立支援法に基づき、実態に合った支援を行うこと。
(4)私立高校で授業料未納による退学が発生しないよう対応すること。
(5)国保の資格証等のペナルティーは基本的に行うべきではない。雇用が不安定な中、医療や介護を受けられない事がないよう市町村を指導すること。
(6)法的根拠のない地方税滞納整理機構は解散すること。
(7)市町村がおこなう行政サービスの利用を制限する条例は、憲法25条の生存権だけでなく13条・個人の尊重、14条・法の下の平等、26条・教育を受ける権利、29条・財産権等に抵触する恐れがあり、行き過ぎたものは指導助言すること。
4、鳥獣被害対策について
熊の出没が問題になるなど、山の環境の変化は深刻な事態を招いています。また、イノシシの被害も拡大しています。鳥獣被害対策を促進すること。
5、地域経済に重大な影響を及ぼす職員給与の引き下げは行わないこと
6、原発の安全・安心対策とプルサーマルについて
(1)福島第一原発5号機における保安規定違反について
8月16日に定期検査中の6号機のケーブルを外すべきところを誤って5機のケーブルを外した問題は、国の原子力安全・保安院が「保安規定違反」としました。県は国が注意してからやっと歩調を合わせる状況でしたが、県民の安全・安心に責任を持つ立場であれば、国待ちではなく県独自の判断が求められる問題です。早急な根本原因の究明と再発防止策を求めることはもちろん、県民への説明を行うこと。
さらに、11月2日にも同5号機で原子炉が自動停止するトラブルが発生している。いずれも、原発にかかわるトラブルについては、国や事業者の対応待ちでなく、県民の厳しい目線に立って原因究明と県民への速やかな情報公開を行うこと。
(2)プルサーマルは、中止すること。
7、指定管理者制度の選定について
(1)「公の施設」をコスト削減と効率化を目的にすすめている指定管理者制度は、住民サービスに直接かかわるような福祉・教育施設には導入せず県直営とすること。
(2) 事業者選定の際には、単に入札価格の優位性をみるだけでなく、職員の削減や非正規雇用の採用増によって、仕事の専門性や継続性が損なわれたり、利用者の量的・質的サービス低下をもたらしていないかどうかを、県が責任をもってチェックすること。
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