日本共産党福島県議会議員団
団 長 神山 悦子
副団長 宮川 えみ子
幹事長 藤川しゅく子
はじめに
10月31日投票で行われた県知事選挙は、過去最低の投票率になりました。県民のくらしがますます困難となるなかで、マスコミでも「県政の『オール与党化』に対し、県民が厳しい審判を下したともいえよう」(11月1日付け「福島民友」)と指摘しています。
12月3日に臨時国会が閉会しましたが、今国会を通じて民主党・菅政権の「自民党返り」ともいうべき様相がいっそう明白になりました。国民に約束した後期高齢者医療制度の廃止は、新たな差別医療制度として改変されようとし、労働者派遣法の抜本的な改正も見送られました。そのうえ、日本の農林水産業に壊滅的な打撃を与えて、日本の国土と社会そのものを破壊するTPP(環太平洋連携協定)への参加に大きく足を踏み出しました。日米同盟第一で、普天間問題では辺野古への新基地建設の日米合意を推進して、アフガンへの自衛隊派兵までいいだしました。民主党政権が「米国・財界中心」の古い政治の強力な推進者となったともいうべきものです。
一方、県民の暮らしをめぐっては、11月30日に福島労働局が発表した雇用失業状況によれば、有効求人倍率は、前月と同率の0.45倍、全国第5位であり、県内の雇用失業情勢は依然として厳しい状況にあります。
党県議団は、11月15日に11月定例県議会に向けて2つの要望書(11月県議会に向けた要望書、来年度予算編成について第一次分)を提出しました。要望内容は、県知事選で訴えた、大型開発の無駄づかいを中止し、住宅リフォーム助成制度や子どもの医療費を中3までの無料化、米価下落対策へ県として1俵千円の下支えなどを求めました。
また、菅内閣がすすめようとして大問題になっているTPPに反対し、県内の農業や関連業を守るため国に働きかけるよう求めました。
11月定例県議会は、11月29日から12月14日までの16日間の会期で開催され、冒頭、知事は二期目に向けた所信で、知事選で訴えた「活力」、「安全・安心」、「思いやり」をあげ、さらに4つの基本姿勢を明らかにし「県民の視点を大事にする県政」、「県民とともにつくる県政」」、「総合力を発揮する県政」、「最小で最大の効果を生み出す県政」をめざすとしました。
開会日の本会議では、職員給与を引き下げる人勧関連議案の採決が行われ、神山悦子県議が反対討論に立ちました。
11月県議会に提案された補正額は、約51億7千3百万円と議会中に国の補正予算成立に伴って約68億円6,200万円が追加され、合計約120億円の大型補正予算となりました。他に条例改正13件、国土利用計画の全部変更など条例以外の議案16件、合計46議案が提案されました。
一般質問には、宮川えみ子県議が立ちました。12月14日の最終本会議では、09年度決算認定議案に対して藤川しゅく子県議が反対討論に立ち、神山悦子県議が議案の討論に立ち、補正予算など20件に反対しました。議案第1号、3〜6号の補正予算以外では、第8号 森林環境税条例の一部改正、第12、29号は農地法がらみの議案、第16、31、32、34〜36号は障害者施設や教育施設と県営住宅(株式会社へ)など県の施設の指定管理者の指定議案5件、第36号 県国土利用計画の全部変更について、第37号 県の建設事業の一部を郡山市に負担させる議案、第40〜44号 県営住宅の家賃滞納者に明け渡しを裁判所へ訴訟する5件など、以上の20議案に反対の理由を述べました。
また、人事案件8件が提案されましたが、内堀雅雄副知事の再任については、県民の安全・安心にかかわるプルサーマル受け入れを知事とともに県政の大転換を進めたことから同意しませんでした。
1、わが党の質問と代表質問・一般質問の特徴について
◆ 一般質問(宮川えみ子議員)
12月7日、一般質問で登壇しました。情勢として北朝鮮問題、千島列島等の固定化を狙うロシアの新たな動きに対して共産党の見解を述べました。
二期目にあたっての佐藤雄平知事の政治姿勢及び予算編成について質問。知事選での過去最低の投票率をどのように受け止め、今後の県政運営にどう生かし県民の暮らし支援をしようとしているかを質問しました。知事は、結果は真摯に受け止める、県民の視点を常に大事にする、子どもからお年寄りまで幅広く耳を傾け、市町村の声を聴くと答弁しました。
その他の質問は、(1)市町村支援問題では、医療費一部負担金減免制度の基準策定の助言、市町村が国保税及び医療費の一部負担をした時の財政支援、(2)住宅リフオーム制度の創設、(3)農業問題、(4)木質バイオマス事業、(5)指定管理者制度のあり方、(6)県営住宅の明け渡し裁判、(7)原発問題でした。
医療費の一部負担金減免基準については改めて市町村に助言するとし、国保税の減免と医療費の一部負担金の減免については、国の方向も見て県独自の市町村支援含め対応すると答弁。
住宅リフォーム制度については、大きな経済効果をあげている秋田県への視察を踏まえ、地域に与える経済効果を示し、県の制度として創設するよう求めました。土木部長の答弁は後退したものでしたが、自民党と共産党がそれぞれ紹介した請願も提出されました。
農業問題については、環太平洋戦略的経済連携協定・TPPについて、実施された場合、県内の米及び他の農産物に与える影響、総合計画との関係、県内他分野への影響を質し、TPPは国にきっぱり反対するよう求めました。
米価下落対策では、備蓄米のさらなる買い上げを政府に求めること、県独自の米の価格保障対策や米の消費拡大等を求めました。イノシシ被害対策では、被害がかなり増大している事等が示されました。
木質バイオマス供給施設と利用施設支援については、原町火発(東北電力)が、石炭に国産の木質バイオマス燃料を混合して燃焼することで、国からの経済対策費を活用して4億円を原町火発の設備費補助に、2億160万円をチップ材製造の民間会社に補助する内容です。雇用は70人増え、2億9千万円の経済効果、4万トンの木質チップは森林約1200haの間伐材に相当し、約5万6千平方メートルの木材需要につながると答弁。県内の他の火発への利用要請も求めました。
指定管理者制度では、福祉・教育施設へはやめること、県営住宅家賃滞納者に対しての明け渡し裁判に当たっては、慎重な対応を求めました。
原発問題については、プルサーマル実施以降、重大事故が起きている問題を指摘したほか、7、8号機の増設を求めた自民党の代表質問を批判し、きっぱり増設に反対することを求めました。
◆ 他会派の代表質問、一般質問の特徴
自民党と県民連合の代表質問では、知事を持ち上げたり、その一方で自分たちの要求をストレートに質問したり、オール与党の県政が始まっています。
特に、自民党は、代表質問でプルサーマルを今年8月に受け入れたばかりなのに、原発を新しく建設すれば1基4千5百億円、2基で9千億円の公共事業になるとし、景気対策のためにもやせ我慢せずに東電福島第一原発の7、8号機の増設を求めるべきなどと再質問までして迫りました。
大型の補正予算が組まれたものの、人件費のさらなる削減を主張し、経済対策といえば公共事業の積み増しと融資面での支援策しか求めず、県民の暮らしが深刻になっているなかで、雇用問題や県民のくらし応援、内需を拡大させる具体的な経済対策にふれる質問はほとんどありませんでした。
TPPについては、県民連合の代表質問では拙速に進めるべきではないとしたものの、自民党も含めてきっぱりと参加すべきでないと表明した質問はありませんでした。
3、各委員会審議について
◆ 企画環境常任委員会(神山悦子議員)
○ 企画調整部
補正予算は、給与改定に伴う人件費の減額補正などが主な内容でした。他に県国土利用計画を全部変更する議案、新エネルギービジョン改定の骨子案が示されました。
2001年3月に改定された現行の県国土利用計画を全部変更し今後5年間の計画案が提案されました。改定は、人口減少や土地需要減少などの社会経済情勢の変化に対応するためとしましたが、無秩序な土地利用が行われないよう、農地や森林の利用に関して県の広域調整の役割の大切さを強調しました。
県の「再生可能エネルギー推進ビジョン」を改定するための骨子案が示され、導入コストの負担軽減、環境・エネルギー産業の育成を図るとされたが、具体的な施策展開がみえていないことを指摘しました。また、原発増設問題について県は具体的答弁を避けました。双葉町の財政が悪化していることをみても、原発頼みの振興策で良い結果はつくれなかったことを指摘し、7、8号機は1基138万kwの大型の原発(本県最大級)であり増設には反対すべきと求めました。
○ 生活環境部
補正予算には防災ヘリの修繕経費が含まれていること、会津乗合バスが12月2日に(株)企業再生支援機構による支援が決定したこと、第一原発5号機でのトラブルや山木屋地区の産廃処分場への対応などについて説明がなされました。
さらに、県の環境施策に係る地球温暖化対策推進計画など6つの計画の骨子が示されましたが、国の数値目標待ちとしている姿勢を批判し、県自ら削減目標を積極的に示さなければCO2の伸びが全国一になった本県の課題はクリアできないと強調しました。
災害対策では、天栄村の湯本地区に新たに地震計を設置することが示され、約1,300万円の経費に対する県の補助を求めました。
◆ 商労文教常任委員会(宮川えみ子議員)
○ 労働委員会
9月以降、10月に実施した「職場の労使困りごと相談」も含めて、11月末までに103件の相談があったとのこと。主なものは、賃金未払い・解雇問題ですべて労働者側からとの事。
○ 商工労働部
補正予算は、緊急雇用創出基金21億円の積み増しと、その基金1億円を活用して卒業から3年以内の既卒者を対象、企業現場の実践研修等就職実現に向けての取り組み事業実施など。不況下での高校や大学卒業者の就職支援問題が集中的に論議されました。有期雇用でないような雇用を創出する努力が必要との意見もだされました。
今春未就職者が6月末までに65人いたが、その後の状況は不明とのこと。
○ 企業局
企業局が進めようとしている、東北道・矢吹インター近くの林野庁所有の土地26haを買って企業誘致に当てる問題については、赤字が膨大で、多くの売れ残りの土地を所有している企業局が、売れ残っている造成地を売り込む方が先ではないか等の意見が出ました。企業局は最近の企業は、大規模な土地を求める傾向がある、即対応ができるよう土地を買っておきたい事などと説明しました。
○ 教育庁
議案は、いわき少年自然の家を指定管理者に運営させるにあたり野営場に屋根をつけること等の補正予算です。学力向上対応について、(1)少人数を生かした指導方法の改善、(2)市町村教育委員会との協議の場を設ける、(3)少人数学級の特性を生かした学力の向上等を示しました。本会議で少人数学級が学力向上で成果が上がらなかったと言うようなことが出されましたが、「(30人学級の良さを)胸を張って堂々と言うべき」と自民党の議員からありました。教育長は「(少人数教育は)特にいじめ・不登校、学級崩壊も含め全国的にも素晴らしい(成果)、現場や親からは高く評価されている」と答弁しました。学力問題は、深いところでよく見る必要がある、長い目で見るべきと発言がありました。学力向上問題では、定着シートは効果を発揮している、教育事務所や市町村教育委員会との連携強化が必要との執行部の発言に対しては、教育事務所の対応の問題も出されました。
1年契約の常勤講師が、クラスを持たなければならない実態が問題になっている事について、常勤講師は減らしてきていると答弁し、資料を提出しました。資料によると、常勤講師のクラスを持つ割合は昨年度は43.59%、今年度は41.45%です。2006年度(H18)は正教員16733人、常勤講師は2242人で、2010年度(H22)は15994人、常勤講師は1865人となっています。
◆ 農林水産常任委員会(藤川しゅく子議員)
国の予算を活用し、生産基盤などにかかわる公共事業前倒しで、36億1075万円、間伐材利用の木質バイオマス利用施設(東北電力原町火力発電所)に助成する費用4億円、米価下落で収入減少した農家への融資拡大のための債務負担行為など、総額で33億243万円の増額補正が提案されました。
さらに、追加議案で、農山村基盤整備、山地災害防止公共事業関連で18億3449万円の増額補正が提案され、農林水産部予算累計は650億8136万余となりました。
環太平洋経済連携協定(TPP)については、関税撤廃が原則とされていることから、本県や国内の農林水産業・農村漁村の持続的発展の観点から慎重を期した対応を行うよう緊急要望を実施したと報告があり、国に対する要望のみでなく県独自の米農家に対する対策強化を求める意見が出されました。これに対し、農林水産部長は、県内稲作農家対策を強めると答弁しました。
TPPに参加しないことを求める請願(JA県中央会、県農民連、新婦人県本部)が趣旨採択されました。
◆ 低炭素社会づくり対策特別委員会(藤川しゅく子議員)
今議会では、最終の「報告書」をまとめました。
「報告書」には、県の新しい「県地球温暖化対策推進計画」の削減目標は、現在目標を上まわる設定が見込まれており、これまでの施策の再検討が必要なこと、火力発電所については、県内から排出される温室効果ガスに変わりないことから、引き続き排出量を把握・公表し、事業者に実効ある削減努力を求める必要がある、などの意見が付されました。
また、人類や生態系に危機的な影響を及ぼす地球温暖化の原因である温室効果ガス削減の取り組みは、地球環境のために是が非でも成し遂げなければならないことと位置付けました。
そのうえで、地球温暖化対策の条例化を県に求め、産業部門のCO2排出量が県内全体の60%を占めていることから、事業所の温室効果ガス排出等報告制度の導入を提案する内容などがまとめられました。
◆ 新しい観光推進対策特別委員会(宮川えみ子議員)
委員会や県内外調査等を行い、今回で終了しました。8回にわたり委員会や県内外調査等を行い、12月10日終了し、12月14日報告書を知事に提出しました。その内容は、(1)着地型観光では、体制問題・人材育成・滞在型観光の促進、(2)観光誘客の推進については、観光客の受け入れ体制・本県認知度向上と発信、空港と高速道路の利活用等でした。
◆ 議員提出条例検討会(神山悦子議員)
今年度2月県議会に設置され検討してきた「子育てに関する条例案」の最終条例案がまとまり、福祉公安委員会での審査を経て、最終日に議員提出議案「子育てしやすい県づくり条例」案が可決されました。
この条例は前文と12条で構成されており、「前文」には、本県の事例として会津藩士の心構えを定めた「什の掟」の一部が入っています。これは、特に会長(自民)が、福島県らしさを出したいとの意向で主張した部分でした。それに対し、現代にそぐわないものだと意見を述べてきたところです。福祉公安委員会の審査でも同様の意見がでました。こうした経過を踏まえて各条文には、こちらが意見を述べた部分なども入り、「基本理念」には、子どもの権利および利益を尊重することや子育て支援は社会全体で推進されなければならないこととなっています。
◆ 2009年度決算審査特別委員会(藤川しゅく子県議)
閉会中の11月に庁内審査と出先審査を行いました。
普通会計の決算認定については、当初から無駄な大型事業が含まれていることや、深刻化する経済情勢にみ合った中小企業対策が取られなかったこと、失業対策・セーフティネット拡充が弱く、福祉・教育予算の増額もなされないまま執行されたことから、決算認定しませんでした。反対討論に立ちました。
◆ 議会運営委員会(神山悦子県議)
県議会本会議場の会議録の方法を変更するため、県議会会議規則の一部を改正する議案が提出され、最終日に可決されました。これは、来年度から速記者を廃止することによるものです。なお、速記者の廃止することについてはこの間慎重にと意見を述べてきました。
◆ エネルギー政策議員協議会(宮川えみ子議員)
12月3日、エネルギー政策議員協議会(エネ協)が開かれました。今回は共産党も申し入れたために開かれたエネ協で、(1)8月16日に定期検査中の6号機のケーブルを外すわけだったのが間違って5号機のケーブルを外してしまった問題と、(2)同5号機の緊急自動停止問題です。
(1)については、考えられない重大問題で、働く人が今何のために自分が行動しているかの基本がない、いわば上意下達の社風があるのではないかと質問をしました。(2)については、制御棒の水位を管理するポンプのバルブが回らず、水位が乱高下したもので、2つのポンプが両方動かなかった問題です。グリスの劣化が原因といいますが、10年もグリスを交換しなかった事も明らかになりました。また、わずか1年くらい前にテストをしたといいますが、2台も壊れるなんて何を試験したのか、試験に問題はなかったのかと質問しましたが、明確な答弁はありませんでした。
原発という重大装置を扱っているという認識欠如といわざるを得ません。エネ協会長である佐藤憲保議長(自民党)も「信頼を大きく損なうものだ」と厳しく指摘し締めくくりました。
4、請願・意見書について
● 採択された意見書
◇ヒト細胞白血病ウイルス1型(HTLV−1)総合対策を求める意見書
◇脳脊髄液減少症の診断・治療の確立を求める意見書
◇子ども手当財源の地方負担に反対する意見書
◇外国資本等による土地売買等に関する法整備を求める意見書
◇児童福祉施策としての保育制度の維持と改善を求める意見書
◇TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉参加に慎重な対応を求める意見書
※議員提案意見書(自民、県民連合、公明)でしたが、交渉参加を前提とした意見書であるため賛同せず、本会議では退席しました。
● 党が紹介議員になった請願・意見書の扱いについて
党県議団が紹介議員となった新規請願、「ゆきとどいた教育を求める全国署名」福島県実行委員会から提出された「教育予算を大幅に増額し、教育条件の充実と保護者負担教育費の軽減をすること」をはじめとする13件、福島県私学助成をすすめる会提出の「私立高校の生徒の授業料等学校納付金に対する就学支援事業の拡充を求めることについて」をはじめとする3件、福商連婦人部協議会提出の「『所得税法第56条の廃止』を求める意見書の提出について」、県医労連提出の「医師・看護師・介護職員等の大幅増員と夜勤改善による安全・安心の医療・介護を求める意見書の提出について」、県労連・農協労連、新婦人県本部、県農民連から提出された「TPPに参加しないことを求める意見書の提出について」の3件、福商連提出の「住宅リフォーム助成制度の創設について」の計23件を提出。
このうち、「私学に対する運営費補助の増額を求めることについて」(県私教連提出)、「専修学校への補助金増額について」(県私教連提出)、「TPP交渉に参加しないことを求める意見書」(新婦人県本部提出)、「TPP交渉に参加しないことを求める意見書」(県農民連提出)、「住宅リフォーム助成制度の創設について」の請願(福商連提出)の5件は採択(趣旨)されました。そのほかの18件は継続扱いとされました。
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