はじめに
昨年6月発足し、9月に改造したばかりの菅直人政権が、再び内閣の改造をおこないました。3カ月ごとの改造とは異例です。急ごしらえでおこなった改造が、追い詰められた結果であるのは明らかです。
行き詰まりを深める菅政権が、頼みの綱とする財界とアメリカのために、消費税の増税や環太平洋連携協定(TPP)への参加、日米同盟の「深化」など、どの面でもその要求の「忠実な執行者」としての性格をいっそう強めていることは重大です。
とりわけ、TPPは県内の首長の8割以上が反対し、地域経済を破壊するものであり、断じて許せません。民主党菅政権がすすめる法人税引き下げ、年金引き下げ、消費税増税への本格論議の開始などは、日本経済と国民の暮らしを破壊する危険な方向であることは明らかです。
また、民主党菅政権がすすめる「地域主権改革」は、かつて自公政権がすすめた地方切り捨ての「地方分権改革」を丸ごと引き継ぎ、「住民の福祉と暮らしを守る」という自治体の原点を壊し、自治体が自治体でなくなるという事態をいっそう深刻にしています。
福島労働局が昨年12月28日に発表した県内の雇用失業情勢では、有効求人倍率は、前月を0.01ポイント上回る0.46倍となり、県内の雇用失業情勢は、依然として厳しい状況にあります。
とりわけ高校生や大学生の就職問題は、いよいよ深刻になっています。高校生の就職内定率は、12月31日現在で77.5%で、私立高校生の場合は55.7%、専修学校生徒の場合は57.1%と極めて異常な状況です。
県民生活も一段と困難を極めています。生活保護世帯の激増と所得が生活保護水準以下の世帯がふえています。各地で、国保税などを納めることができない状況が広がり、医療費を払えないために医者にかかるのを我慢した結果、手遅れになって病院に運び込まれ死亡した痛ましい事件すらおきています。
来年度の県予算編成にあたっては、地方自治体の本来の役割である「住民の安全と福祉の向上」を基本にして医療・福祉・教育の充実をはかること。ムダと浪費、不要不急の大型開発を抜本的に見直し、広域自治体として「イコールパートナー」の市町村を励まし支援することが強く求められます。
県政には、以上の観点に立って、次の具体的施策の実施を要望します。
1、地場産業を生かした地域活性化で、雇用の創出を
地域の雇用を支え、県内企業の9割を占める中小企業が危機に瀕しています。知事を本部長とする県緊急経済・雇用対策本部において、県外企業の呼び込み方式による誘致企業に依存した産業集積のあり方を見直し、県自らが地域に仕事を作り出し、県の施策と予算の方向を地域の中小企業に振り向け、地域経済循環型に切り替え、地域経済を活性化することを求めます。
(1)就職を希望している全ての新規高卒者に対する就職支援に全力を尽くすこと。また、就職できなかった卒業生に対し、月10万円の資格取得や職業訓練のための支援を行うこと。
(2)農業と地域経済を破壊し、労働者にも大きな影響を与えるTPPに参加しないよう国に強く求めること。
(3)緊急経済対策として、すそ野が広い建築関連産業への仕事おこしにつながる「住宅リフォーム助成制度」を早急に創設すること。
(4)学校の耐震化を促進することや、入所施設が不足している介護・福祉施設を増設し、仕事と雇用の場をつくること。再生可能な自然エネルギーや食品残さの堆肥化事業などの環境産業を支援し、その事業化にふみだすこと。
(5)県として小規模修繕登録制度を創設し、中小零細業者の仕事を確保すること。
(6)基幹産業である農林水産業の振興を図ること。県独自の農産物の価格保障制度と国の所得補償制度を組み合わせ、生活できる農林水産業を確立し、後継者を増やすとともに、県内の食料自給率を引き上げること。
また、米価暴落への対策として、県独自に1俵1000円の価格補償を行うこと。
(7)県土の7割を占める森林の整備については、計画的かつ重点的に間伐をすすめるなどして森林の保全と木材利用につなげる事業をさらに促進すること。
(8)「公契約条例」を制定し、県発注の公共事業や委託契約において、労働者の低賃金やワーキングプアを生まないようルールづくりをするとともに、中小零細業者の経営と生活を守ること。
2、医療・福祉・教育・子育て支援を優先する予算編成を
<予算編成のあり方について>
(1)小名浜東港建設は、費用対効果からみても今後の港湾利用からみても過大な投資となることは必至である。早期に事業中止を決断すること。
(2)縦横6本の道路軸の構想を見直し、生活道路、通学路の歩道や自転車道の整備に重点を移すこと。
(3)大規模林道建設を中止し、森林の手入れや伐採などの作業道を整備することや、県産材の利活用・加工等への助成を大幅に拡充すること。
(4)福島空港は閉鎖を視野に、空港利活用のための税金投入を中止すること。
(5)国直轄事業の負担の中止を求めるとともに、県が行う建設事業に対する市町村負担を廃止すること。
(6)県職員へ財政面からのしわよせをやめ、人件費抑制、定数削減をやめること。管理職等のいわゆる天下りは禁止すること。
<教育・子育て>
(1)中学校卒業までの子どもの医療費無料化年齢引き上げを行う事。県内の自治体の8割近くの自治体が中学卒業まで無料化を行っています。県の制度の対象年齢を拡充し、全県で実現できるようにすること。
(2)子宮頸がん予防ワクチン・ヒブワクチン・小児用肺炎球菌ワクチンの予防接種では、本人負担がないよう県が支援をすること。
(3)県が支援をして、保育所・学童保育所の増設と保護者負担軽減を図ること。
(4)児童養護施設の増設、児童相談所体制の充実を図ること。
(5)特別支援教育の充実を図ること。
(6)小・中学校の給食に地元産品の使用を進めること、また、給食代の負担軽減を進めること。
(7)私立高校の授業料が無償化になるよう支援し、県立高校への諸経費の負担軽減を行うこと。
(8)高校・大学生への給付制奨学金を創設すること。
(9)30人学級・30人程度学級を維持し、講師の正教員化を進めること。
(10)学校の耐震化事業を市町村とも協力して促進すること。
<高齢者・医療等>
県立病院の縮小と社会福祉施設の民間委託をやめ、自治体本来の仕事である福祉の充実の立場を促進すること。
(1)県内で1万人を超える入居希望待機者の解消のために、特別養護老人ホームの建設促進対策を行うこと。介護保険料や利用料、後期高齢者医療保険料など生活保護基準をベースに減免制度を改善すること。
(2)70歳以上の医療費の2割負担の凍結を引き続き国に求め、75歳以上の高齢者の医療費無料、65歳以上の負担軽減策を進めること。
(3)医師・看護師・介護職員の待遇改善をすすめ、必要な人員を確保するとともに、地域医療の支援強化を図ること。
(4)生活保護制度で、申請を受付けない「水際作戦」をやめ、誰もが最低生活を保障されるよう制度周知を図るとともに、丁寧な対応で自立の道を応援すること。
(5)生活困窮者への国保税と医療費の負担軽減策を進めるため市町村国保を支援すること。国保の広域化に反対し、国保税の引き下げのための支援を行い、短期保険証、資格証明書を発行させないよう指導すること。
(6)高齢化社会に対応した、公共交通の確保と利便性向上を図ること。
3、原発行政について
県民の安全・安心を保障し、再生可能エネルギーの活用をすすめる立場から、危険な原発増設路線をやめ、段階的に原発から撤退するエネルギー行政を求めます。
(1)「温暖化対策」を理由とした原発推進をやめること。
(2)検証結果も十分に示さないままで導入を認めたプルサーマル計画の実施を中止し、県として県民の意見を聞く場を設けること。また、安全確認のためのプロジェクトチームは徹底した情報公開をすすめること。
(3)福島第一原発7〜8号機などこれ以上の原発の増設は行わないこと。
(4)東京電力がすすめる福島第二原発3号機の運転期間延長を認めないこと。
4、地球温暖化対策について
地球温暖化対策の深刻な遅れを克服し、「人にやさしく環境を大切にする社会」をめざすことが求められています。そのためには、最大の排出源である産業界に対し、公的削減協定など実効ある施策の実施が必要です。
(1) 県地球温暖化対策推進計画における温室効果ガス削減目標を中長期的に明らかにすること。2020年までに1990年比30%削減を設定すること。
(2)県として事業所単位の温室効果ガスの直接(間接)排出量を把握し、削減を義務化する制度を創設すること。
(3)これ以上の石炭火発の増設をせず、事業者に対し液化天然ガス(LNG)等への燃料転換を求めること。
(4)風力発電や太陽光発電、小水力発電など再生可能なエネルギーの開発へ力をそそぎ、2030年の普及目標を全エネルギーの20%とし、積極的に推進すること。
(5)大型風力発電機、ヒートポンプや熱・電気併用システムのコンプレッサーから発生した低周波被害対策をすすめること。低周波が発生しない製品開発の促進策を行うこと。
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