1、東京電力福島原発事故を受けて
日本共産党の神山悦子です。今回の被災者と亡くなられたすべてのみなさまに心よりお見舞いとお悔やみを申し上げます。
今回の福島原発の過酷事故を受けて、事故の収束は前提ですが、日本のエネルギー政策を原発から撤退し、「原発ゼロの日本」をめざすこと、「原発からの撤退」を政治決断することがまず求められます。
去る6月13日、私たち日本共産党は、菅首相に対し「5〜10年以内を目標に、原発から撤退するプログラムを政府が策定すること」を提案しました。電力不足による社会的リスクはさけなければなりませんが、安易な火力発電などに置き換えることはすべきでありません。そのためにも自然エネルギーの本格導入と低エネルギー社会への転換にむけてあらゆる知恵と力を総動員し、最大のスピードでとりくむ必要があります。
今議会、自民党は代表質問で、「安全神話を信じて推進しきたことを深く反省し、今後一切原発は推進しないと」と述べ、また、各議員からも「脱原発」を求める発言があいつぎました。一方、国政において民主党政権は原発が環境によいなどと地球温暖化対策の切り札として原発を推進しています。そのうえ、海江田経済産業大臣は「原発安全宣言」まで出して、全国の原発を再稼動させようとしています。この「安全宣言」は、政府がIAEAに提出した今回の原発事故の「教訓」に照らしても極めて不充分なものです。
まず、県はこうした原発再稼動の政府の動きをどのように受け止めているのかお尋ねします。
今回の福島原発事故を受けて、世界でも日本でも原発撤退を求める世論が大きく広がっています。ドイツ、スイス、イタリアなどが次々に原発からの撤退を決め、日本でも世論調査で82%が廃炉に賛成という結果にあらわれています。
県の復興ビジョン検討委員会が「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」を基本理念にすえ、「脱原発」を明記したことは「世界のフクシマ」となった本県の今後の復興をめざすうえで大いに評価するところです。
県が自らまとめ、県民的議論のうえに到達した02年の県エネルギー政策検討会の「中間とりまとめ」ですが、これは過去のことだけを言っているのではありません。
「中間とりまとめ」では、原発に依存した地域づくりからの脱却、核燃料サイクルの見直し、原子力安全の推進機関からの分離・独立などを明らかにしています。この県の到達点に立ち、さらに今後は「脱原発」へ歩み出すことが求められます。
知事は、今議会の代表質問に対し、「原子力に依存しない社会をめざすべきであるという認識をもった」と自らの思いを述べていますが、第一原発5号機、6号機、第二原発1〜4号機の廃止を含めての「脱原発」なのか、知事の見解をお尋ねします。
私は、知事が危険な原発と決別し、「脱原発」を自らの言葉で県内外に宣言してこそ、本格的に本県の復旧・復興に向かうことができると思います。
2、放射能汚染から県民と子どもたちの健康被害を低減させるために
ところで、本県のみならず、いま全国民を日々不安にさらしているのが原発放射能汚染による被害です。特に、内部被曝への不安は大きく広がっています。
警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域などの12市町村に加え、特定避難勧奨地点、いわゆるホットスポットとよばれる局地的に放射線量の高い地点が、次々と明らかになっています。
特定避難勧奨地点とよばれる線量の高い住民に対する健康支援や避難する場合も県の支援が求められますが、県の考えをうかがいます。
放射線汚染の「空間的」影響という点では、東北、関東圏、静岡県でも放射能核種が発見されるなど広範囲です。海洋汚染に至っては、その調査がほとんど行われていないため、どこまで拡散しているのかも分かっていません。
空気も水も食料も土壌も海も、放射能によって汚染されてしまった福島県の美しい自然を少しでも取り戻し、安全に福島県に住み続けられ、県外へ避難した人も安心して戻ってこられるようにするために、県としてあらゆることを行なう必要があります。
そのためには、生活空間すべての土壌汚染の除去をただちに県が先行して行うとともに、国家プロジェクトで実施するよう国に求めるべきと思いますが、県の見解を求めます。
すべての放射性物質の核種を全面公開させること。原発から20km圏内の警戒区域も含め空間放射線量と土壌汚染の調査をメッシュできめ細かに調査し、汚染マップで県民に公開していくことを求めますが、県の見解をうかがいます。
また、夏秋野采や果物の出荷に間に合うよう、農産物の安全を計測する機器を緊急に増やすこと。それに必要な職員も大幅に採用増員することを求めますが、考えをうかがいます。
また、「時間的」影響という点では、放射能汚染による影響は長期にわたって続くことから、県民、とりわけ特に影響が大きい子どもたちの健康被害が心配です。
県は、今議会の追加議案で子どもたちの健康被害を低減させるための補正予算を計上し、やれることはすべてやるという県の姿勢を明らかにしました。しかし、放射線量計の配布については、高校生まで広げるべきです。また、ホールボディカウンターを急いで増やし、子どもたちや避難区域の住民を優先しつつも、県内の主要都市に配置していつでも県民が測れるようにすること。県外避難者については県外で検査できるようにすべきです。
さらに、県民健康管理調査については、今後30年以上の長期にわたるため、既存の健康診査も活用しながら調査を継続していくべきと思いますが、県の考えをうかがいます。
ところで、原発事故の収束作業にあたっている原発作業員の被曝事故が次々と発生し、女性社員も被曝しています。東京電力の労働者に対する安全管理は、あまりにもずさんです。原発作業員・関係者は、今後長期化する収束に向けた重要な役割を担っています。
今回の原発事故で被曝した作業員の数は何人になるのでしょうか。県は、東京電力に対し、下請けを含めた原発作業員の被曝低減の徹底を求めるべきです。被曝した作業員については、ホールボディカウンターによる被曝測定と、長期にわたる健康診査と医療費負担を支援するよう東京電力と国に求めるべきと思いますが、以上県の考えをうかがいます。
3、避難住民への支援について
次に、避難者への支援についてですが、放射能の不安に加えて、住まいと雇用不安は深刻です。こうした被災者、県民の不安によりそい、しかもこれまでの発想をこえたあたたかい県の支援が求められます。避難住民は、県内、県外を含めて県が把握しているだけでも約10万人ですが、自主避難者の実態がわかりません。まず、県は避難所にいる住民だけでなく、県内、県外の自主避難の全体像を把握すべきと思いますが、県の考えをうかがいます。
次に、子どもたちへの支援についてですが、
心のケアや子どもたちの生活全体をケアするスクールソーシャルワーカーの役割が見直され、国は県内に17人配置するようですが、子どもたちのケアは長期に求められます。また、避難している自治体からは、子どもたちの教育を通して地域コミュニティを取り戻していきたいとの要望もあがっています。
役場ごと避難している自治体の子どもたちが、元の学校単位で学習できるようにしたいとの要望に対し、県が支援すべきと思いますが、県教育委員会の考えをうかがいます。
ところで、深刻なのは、住民と同じように避難を余儀なくされている教員の問題です。避難が広域に及んでいることから、毎日片道数時間もの通勤を余儀なくされている教員も少なからずおり、子どもを抱える教員の家族が勤務地の関係でバラバラに生活させられていることがないように配慮すべきです。児童・生徒の教育の質という観点からみても教育的とはいえません。
さらに、来年度の教員採用を見送ったことについても、地元の大学からは他県に人材が流れてしまいかねないと危惧する声があがっています。
本県の人材確保の面からも、教員の新採用のあり方を見直すべきと思いますが、県教育委員会の考えをうかがいます。
また、文部科学省は、児童・生徒数に合わせた教員定数配置にとどめず、心のケアができるよう教員の加配ができるとしています。
本県は、他県にはない原発放射能被害という特別の事情をかかえています。原発事故がなかったら、県内や県外へ1万人以上ともいわれる子どもたちが避難することもなかったし、役場ごと避難することはなかったはずです。
被災県の子どもたちの教育を受ける権利を十分保障し、今後長期にわたることも予想されることから、本県の原発事故という特別事情を考慮した教職員の確保を国に求めるべきと思いますが、県教育委員会の考えをおたずねします。
また、雇用問題は深刻です。
被災地をはじめとした県内の失業者に対する仕事興しなど、雇用につなげるよう支援すべきですが、県の考えをお尋ねします。
次に、避難住民の「仮設住宅」や「民間の借り上げ住宅」に関してですが、
自主避難を含め、県外に避難した「民間の借り上げ住宅」がなかなかすすまず、困難な状況が続いています。県外に避難しても県内と同じように住宅の借り上げができるよう県の支援を求めますが、県の考えをうかがいます。
さらに、県内の仮設住宅へ移動がすすまない背景には、食料や光熱費の負担が大変になるという状況があります。高齢者や介護、障がい者などへ必要な食事の提供も求められますが、日弁連が指摘しているように、仮設住宅に移動しても生活費の援助が行えるようにすべきですが、県の考えをうかがいます。
また、避難住民の携帯電話通話料の負担も小さくありません。災害救助法を適用させるなどして、被災者の負担軽減を図るよう求めますが、県の考えをうかがいます。
また、避難住民の誘導のあり方や避難者への対応については、今後総合的な検証がおこなわれると思いますが、今回の大災害で、避難途中に亡くなった方は少なくありません。
厚生労働省は、今年4月30日に、2004年の新潟県中越地震で長岡市が作成した「災害関連死」の認定基準を各都道府県に示し、各市町村にも周知するよう求めています。
本県は、「災害関連死」にかかる災害弔慰金等の厚生労働省の通知について、どのように対応しているのか、考えをお尋ねします。
4、賠償問題について
次に、原発事故損害賠償問題についてうかがいます。
今回の事故は、地震と津波による原発施設の損壊と全電源喪失による過酷事故であることはまちがいありません。この危険性は複数の有識者が指摘してきたものであり、政党としては日本共産党も国会でも県議会でも、この議場で繰り返して取り上げ、東京電力にも直接申し入れを指摘してきました。しかし、残念ながら対策はとられませんでした。つまり、国も東京電力も、今回の事故の危険性を分かっていたにもかかわらず対応をしてこなかった、それゆえに発生した事故です。まさに人災というべきものです。
今回の事故は、さまざまな警告を無視し、必要な対策をとってこなかった「人災」といえますが、県の見解をうかがいます。
放射能汚染への不安とあわせて、いま県民にとって一番の不安は、原発事故被害の賠償がきちんと支払われるかということです。原発事故による被害によって、自らが長い年月をかけて培ってきた希望を奪われた須賀川のキャベツ農家、相馬の酪農家が自ら命を絶つという、悔やんでも悔やみきれない事件がおきています。これ以上の犠牲者を出してはなりません。被害が進行している中で、賠償が遅れる分だけ被害はより深刻になっていきます。被害が全面賠償されるという確約と安心感を与えてこそ、あすへの希望、将来への展望がわいてきます。
今回の原発事故の賠償額は、最低でも数兆円とみられており、金融機関の中には8兆円〜11兆円との試算もあります。これまでの調査では、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県の農漁業関係団体がまとめた損害賠償請求額は約172億円。それに対して仮払いされたのは約11億円にすぎません。この背景には、東電が、原子力賠償紛争審査会の「指針」に基づいて賠償を行うなどとして、指針に明示されていないものは仮払いさえしていない問題があります。
県は、本県の原発事故の賠償額をどのくらいになると考えているのか。また、原発事故がなかったらあったであろう収入と現実の収入との差をすべて賠償するという全面賠償の原則を基本にすえることが大切ですが、この考え方を市町村にも徹底させるべきです。県の考えをうかがいます。
そのためには、県も単なる相談窓口での対応にとどまらず、1つの課を設置するくらいの本格的な体制を構築すべきです。また、それに必要な職員も採用することを求めます。県の見解をお尋ねします。
また、実務にあたる市町村の窓口も相当な人員が必要となります。県の市町村への大幅な人的支援を求めますが、県の考えをお尋ねします。
さらに、「自主避難」をせざるをえなかった県民が多数にのぼっていますが、原発事故がなかったら、全く必要がなかったことです。「自主避難」も当然賠償の対象になりうると思いますが、県はどうお考えでしょうか。
さらに、原発からの距離や放射線量との違いによって差別すべきではありません。県や市町村の義援金や東京電力の仮払いを、30km圏など避難指定区域などで配分に差を生じさせることはやめるべきです。県民すべてが被災者という立場に立ち、損害賠償については、原発からの距離や放射線量による「線引き」をただちに解消すべきです。県の考えをお示し下さい。
一方、中小企業に対する東電の賠償金の仮払金は250万円を上限としていますが、これでは従業員の給料にもなりません。中小企業の再建のためには、全面賠償を国と東京電力に求めるべきと思いますが県の考えをうかがいます。
さて、6月25日に政府の復興構想会議が菅首相に提出した提言には、本県が強く求めてきた、原発事故の損害賠償と地域再生に関する「特別法」の制定は明記されませんでした。
原子力災害は、長期にまた広域での住民避難、放射線からの県民の安全確保、土壌などの放射能汚染、風評被害等による地域産業への影響は甚大であり、かつ今後も被災地の再生には長期的、恒久的対策が求められます。
県が求めてきた原発事故の損害賠償と地域再生に関する特別法の制定が、復興構想会議の提言に明記されなかったことをどのように受け止め、今後どう対応されるかのかうかがいます。
ふるさとを追われ、避難所を何度も転々とさせられ、放射能汚染におびえて遠く全国の都道府県に避難を余儀なくさせられ、子どもたちを含め10万人以上もの避難者が、今もふるさとに帰れないでいます。本県の原子力災害という「異質の災害」を受けた県民のくらしと命を守るために私たちも全力を尽くします。県も最大限の知恵と力を注ぐよう求めまして私の質問を終わります。
答弁
一、東京電力福島原発事故について
生活環境部長
定期点検で停止している他道県の原子力発電所の再稼働につきましては、それぞれの立地地域の自治体において判断されるべきものであり、国、事業者は、当該立地地域の意向を尊重して対応すべきものと考えております。
知事
県内の原子力発電所についてであります。
東京電力福島第1原子力発電所の事故により、本県は、過去に例のない甚大な被害を受け、多くの県民が避難を余儀なくされ、発電所から遠く離れた地域においても、県民は放射線の不安にさいなまれる日々が続いております。
このような中で、私は、多くの県民が、原子力への依存から脱却すべきという意見をお持ちであるものと考えております。
原子力発電に対する信頼が根底から崩れた今、福島県としては、原子力に依存しない社会をめざすべきとの思いを強く持ったところであります。
二、県民と子どもたちの健康被害の低減について
保健福祉部長
特定避難勧奨地点の住民に対する健康支援につきましては、今後、長期にわたって県民の健康の確保を図るために取り組む県民健康管理調査において、計画的避難区域等の方々と同様に、詳細調査の対象者としてまいりたいと考えております。
生活環境部長
特定避難勧奨地点につきましては、昨日、国が伊達市の四地区、113世帯を設定し、引き続きほかの自治体においても設定が見込まれるところであります。
県といたしましては、国及び該当する自治体との連携を密にし、避難を希望する住民の避難先の確保等についてしっかりと支援してまいる考えであります。
次に、汚染表土の除去につきましては、身近な生活空間における線量の低減が喫緊の課題であることから、まずは、県主導で地域ぐるみでの線量低減活動の全県展開を支援してまいります。
こうした取り組みの成果を踏まえ、県内の汚染状況をきめ細かく把握した上で、国や関係機関と十分連携し、全県全土の効果的・効果的な環境回復を図ってまいります。
次に、調査結果につきましては、調査実施主体が適時適切に公開することが極めて重要であります。
県いたしましては、調査を実施した国・事業者の責任において対応すべきものと考えておりますが、引き続き、国・事業者に対して、迅速、かつ、分かりやすい情報公開を求めてまいります。
次に、県内の空間放射線量調査及び土壌汚染調査につきましては、国が県と連携し、県内全域で行う空間線量率調査や、県内約1800地点における土壌分析の結果を、8月上旬には線量測定マップや、土壌濃度マップとしてとりまとめ、県民に分かりやすい形で公表してまいりたいと考えております。
農林水産部長
農産物の分析体制につきましては、農業総合センターに分析機器を整備したところであり、今後更なる増設を図ることとしております。
また、分析を行う人員については、計画的に養成を行い、その確保に努めてまいります。
保健福祉部長
線量計につきましては、中学生以下の子どもや妊婦に対する配布を想定しておりますが、市町村において、より広く線量計を配付したいという意向がある場合には、県補助金の柔軟な活用についても、検討してまいりたいと考えております。
次に、新たなホールボディカウンターにつきましては、機動的に運用できる車両搭載型で、現時点で早期に納品できると見込まれる機種について、5台を導入したいと考えております。
検査の実施にあたっては、放射線量の高い地域に居住していた方々や、子どもや妊婦を優先に、市町村と協議しながら、県内各地の公共施設等を検査会場として利用するなど、なるべく多くの県民が検査を受けられるよう、計画してまいりたいと考えております。
次に、県外避難者につきましては、市町村との連携や各種メディアの活用により、検査の実施について周知を図るとともに、県外の関係機関による協力や車両搭載機器による主な避難先での検査の実施などにより、検査を受ける機会を確保してまいりたいと考えております。
次に、県民健康管理調査における既存の健康診査の活用につきましては、検査の重複を避け、受診者の負担を減らすためにも、既存の健康診査やがん検診で得られる検査結果の活用について、検討してまいる考えであります。
生活環境部長
被曝した作業員の人数につきましては、東京電力からの報告によりますと、先月30日現在で、一般的な作業員の線量限度である100ミリシーベルトを超えることが確認されたのは125人、このうち、緊急時の作業員の線量限度である250ミリシーベルトを超えることが確認されたのは7人となっております。
次に、作業員の被曝提言につきましては、事業者が示した事故収束への道筋において、除染施設の設置や、個人線量計の自動化等の対策が盛りこまれております。
県といたしましては、こうした対策の着実な実施を国・事業者に強く求めるとともに、その進捗状況について定期的に報告を求め、必要に応じて現地調査を行うなどにより、しっかりと確認してまいります。
次に、作業員に対する長期にわたる健康診査と医療費負担につきましては、法令に基づき、国及び事業者の責任において、適切に対応されるものと考えております。
三、避難住民への支援について
生活環境部長
自主避難の全体像につきましては、避難指示の対象区域が存在しない市町村が、避難所以外の場所に避難している住民を正確に把握することは困難な状況にあります。 県といたしましては、きめ細かなモニタリングの測定結果を分かりやすく発信すること等により、自主避難者が安心してふるさとに戻っていただけるよう努めてまいります。
教育長
役場ごと避難している自治体の子どもたちが、もとの学校単位で学習することにつきましては、当該市町村が、避難先の市町村と連携しながら児童生徒の把握や施設の確保など、学校を再開するにあたっての条件の整備に努めているところであり、県教育委員会といたしましては、市町村からの相談にきめ細かに応じるとともに、教職員の適正な配置などを通じて、教育環境の充実が図られるよう市町村の取り組みを支援してまいる考えであります。
次に、教員の採用につきましては、今回の震災や原発事故の影響で、8000名を超える公立学校の児童生徒が県外に避難し、来年度の教職員定数の見通しが不透明なことから、小中学校については、平成24年度の採用を見送ったところであります。
県教育委員会といたしましては、今後の児童生徒の動向や教職員の退職者の推移を見極めながら、国に対し、教職員定数へのより一層の配慮を求め、平成25年度には、小中学校の教員を採用できるよう努めてまいる考えであります。
次に、教職員の確保につきましては、震災や原発事故に伴い被災した児童生徒の心のケアや学習支援等のために、過日、文部科学省から定数増の通知を受けたところであり、来年度以降も、教職員の確保について強く要望してまいる考えであります。
商工労働部長
雇用対策につきましては、緊急雇用創出基金事業を活用し、1万人以上の就労機会の確保に努めるとともに、被災した企業等の事業再開や復旧を支援し、雇用の維持を図ってまいります。
さらに、災害復旧工事等において地元企業への発注を進めるなど、県内の雇用の確保に努めてまいりたいと考えております。
生活環境部長
県外での住宅の借り上げにつきましては、避難者の多い近隣県には、県幹部が直接訪問し制度実施をお願いしたところであり、本日までに東北各県、栃木県、新潟県及び沖縄県で実施され、東京都、埼玉県、神奈川県、長野県などでも実施が予定されております。
県といたしましては、引き続き、各都道府県の理解と協力を得ながら、早期の実施に向けて調整を図ってまいります。
次に、被災者に対する生活費の支援につきましては、原子力災害がいまだに継続している本県の特殊な実情を踏まえ、国に対して、応急仮設住宅入居後も災害救助法による食料の現物給付を行うよう求めるとともに、被災者生活再建支援法による支給金額の大幅な拡充についても強く要請しているところであります。
次に、避難者の携帯電話通話料の負担軽減につきましては、被災者の生活全般の支援のため、被災者生活再建支援法による支給金額の大幅な拡充や原子力災害被災者に対する同法による救済等を国に強く要請しているところであります。
次に、「災害関連死」の認定基準及び手続きに係る厚生労働省の通知への対応につきましては、5月4日に各市町村へ周知し、一部の市町村に対しては、必要な助言を行ったところであります。
今後とも、円滑に災害弔慰金が支給されるよう市町村を支援してまいる考えであります。
四、賠償問題について
生活環境部長
東京電力福島第一原子力発電所の事故につきましては、原子力安全規制を一元的に担う国の責任において、調査・検証されるべきものと考えております。
原子力損害対策担当理事
原発事故に伴う賠償額につきましては、原子力災害が進行中であり、また、国の原子力損害賠償審査会が現在までに示した損害の範囲等も一部分であることから、現時点において、具体的な賠償額を算定することは困難であります。
次に、損害賠償の考え方につきましては、賠償の範囲を幅広くとらえるとともに、県内全域を対象とし、長期的な視点も踏まえ、被災者の実態に見合った十分な賠償がなされるべきであると考えております。
今後とも、市町村と情報を共有し、連携しながら、広範な損害に対し確実に賠償がなされるよう、取り組んでまいる考えであります。
次に、賠償に関する県の体制につきましては、7月の中間指針策定後には、賠償請求等の本格化が予想されることから、東京電力には十分な対応を求めるとともに、市町村、関係団体と連携し、被災者からの相談や賠償請求等を十分支援できるよう、適切に対応してまいる考えであります。
次に、市町村への人的支援につきましては、これまで、東京電力に体制の強化を求めるとともに、全市町村を訪問して、被災者支援について協議してきたところでありますが、今後、賠償請求等の本格化に伴い、市町村における被災者支援の必要性も高まることから、それぞれの市町村の実情に応じた必要な支援を行っていく考えであります。
次に、自主避難につきましては、政府による避難等指示区域を越えた広範囲において放射線の不安にさらされている状況にあって、安全・安心を求めて自主的に避難することは、やむにやまれぬ行動であることから、非難に伴う費用が賠償の対象になるよう、今後も、国等に対し、強く働きかけてまいる考えであります。
次に、損害賠償の線引きにつきましては、精神的損害や風評被害を含む営業損害等においては、政府による避難等指示区域を越えて県内全域で幅広く実際の損害として生じていることから、それぞれの被災者の実態に見合った十分な賠償がなされるよう、引き続き、国等に対し、働きかけを行ってまいる考えであります。
商工労働部長
中小企業の損害賠償につきましては、警戒区域等内にある中小企業に対する仮払い補償が開始されましたが、県といたしましては、上限額の撤廃や二次、三次の早急な仮払いを行うよう国や東京電力に引き続き求めるとともに、国の原子力損害賠償紛争審査会の中間指針に、風評被害を含め、中小企業の損害が幅広く補償対象として盛り込まれるよう強く働きかけるなど、商工関係団体等と連携を図りながら県内中小企業を支援してまいります。
企画調整部長
損害賠償等に関する特別法につきましては、復興構想会議の提言で明確には示されなかったものの、「必要となる法整備」、あるいは「国が最後まで意を用いていくべき」などの文言が盛り込まれ、一定の配慮がなされたものと考えております。
今後は、原子力災害に関する国との協議の場において特別法の速やかな制定を求めてまいる考えであります。
再質問
教育長に、まず、お尋ねいたします。教員の採用の件とそれから教職員の確保についてお答えありましたけれど、私も先ほど述べましたように、今回は原発事故にかかわって、たいへんな避難者が出ている、子どもたちもたいへんな状況にある。しかも、それに伴って先生たちも、教員の方も広範囲な異動もさせられている、勤務地も遠い。これは、他の被災地とは違う特別な事情があると思うんですね。ですから、教育長はこれまでの子どもの数に見合った定数に対して教員の確保をするということで要望されていると思いますが、また、国の方も加配を認めていると思うんですけれども、その考えだけではとても対応できないと私は思うんですね。特別の事情で県がちゃんと教員がほしいと言わないかぎりは国からこないんじゃないですか。来年以降やると言っても今年がそれで乗り切ったら、それ以上くるという保障がないんじゃないかと思うんですけれども。教育は大事ですよ。子どもたちは本当に傷ついていますから。そのためにも、もう一度、教育長のお考えをお聞かせください。
それから、知事にお尋ねいたします。この議会では知事もだいぶ「脱原発」など、思いは語って一歩踏み込まれました。私は、知事の大きな変化だとは思いますが、しかし、どうも人ごとのようにしか聞こえません。私は、昨年の2月に、福島第一原発3号機のプルサーマル、技術的条件をつけて知事が判断したときにも、もし、事故が起こったら、子どもたち、子孫に対してどう思うんですかと再質問でもお聞きしたことがありますよね、覚えておいでですか。実際にこんな事になってしまったわけですから、知事が決断して福島県には、原発はいらないと。こんなにたいへんな思いをしたその根源にある東京電力の原発はいらないと、「脱原発」を宣言すべきではないですか。それがなければ、復興も復旧もないと思うんですね。それは、みなさん言われていることですよ。知事の明確な「脱原発」をするという答弁があってこそ、県民も安心して今後の復興にも希望がわくのではないですか。もう一度知事のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
そして、もう1つはですね、いま、汚染水の処理もなかなか進まない。原発の収束も見えてきません。汚染水の処理も実は後始末ではなくて、放射性汚染は実は1%しか空中には放出されてなくて、99%が汚染水と混じってあるかもしれない、たいへんな状況なんですね。まだまだ、この原発の放射能対策は必要なんですよ。そういう意味では、原発事故に対する知事の決意が必要なんです。私は、もう一度お答えいただきたいと思います。
それから、企画調整部長と原子力損害対策担当理事にお伺いいたします。特別法の制定が盛り込まれなかった、これからも求めていくと言います。でも、ここが大事なんです。今後の原発の賠償を求める上でも、全面賠償を求めるというには、他の災害にはない特別な対策が必要なんですね。法律も必要なんです、根拠が。そこがなければ全面賠償にもならない。そして理事にもお聞きいたしますが、こういう点でも、そういう理事がおっしゃいますように全面賠償を求めるという立場に立つためにも、一緒になってがんばらなければならないんではないですか。まず、この基本をお聞きしておきたいと思います。
答弁
知事
神山議員の再質問にお答えいたします。県内の原発についてであります。これだけの未曾有の原子力災害が起きた。原発の信頼が損なわれたいま、原子力に依存しない社会をめざす。そしてまた、県内の原子力発電所については、再稼働はあり得ないということでございます。
企画調整部長
特別法につきましては、復興構想会議において、知事が再三、第一次提言に盛り込んでいただくよう要望、意見を申し上げてきたところですが、残念ながら明記はされなかった。ただ、その文言の中には、一定の配慮はされているというふうに評価はしております。ただ、先ほども申し上げましたように、今後も国に対して、引き続き特別法の制定を強く求めていくことはもちろんですが、復興基本法に盛り込まれました原子力災害に関する協議の場などがこれから設けられますので、その中でさらに強く特別法の制定について求めていく考えであります。
原子力損害対策担当理事
全面賠償ということにむけまして、特別法の制定も含めてあらゆる手段を使ってまいりたいと考えております。
教育長
教職員の定数増についての通知を国の方から受けたわけですが、これを受けるにあたりまして、われわれといたしましては、当然のことながら、今回の原子力も含めた本県の特別の事情を十分に訴えた上で認めてもらったということでございまして、議員のおただしのように子どもの数のみでわれわれが判断しているのではないことをご理解いただきたいと思います。
再々質問
教育長、子どもの数だけではないというのは、当然でしょう。だけれども加配できたのは、500人くらいでしょう。本当に、抜本的に増やさなければいけないのではないですか。私は、特別な事情を勘案していないとは言いませんけれども、そこを乗り越えて多くの教員を採用する必要がある。流出を止める。講師も含めて本県にとどまってもらう。ここがなければ本県の教育、充実できないんじゃないでしょうか。もう一度お尋ねいたします。
知事にお尋ねいたします。廃炉を求めていくという、これは5・6、第二原発の4基すべてを廃炉にするという、ここを明確にしていただきたいと思います。
それから、保健福祉部長にお尋ねいたします。放射線量のことですけれども、高校生にまで広げると言いましたが、市町村から要望があれば広げるという話ですけれども、高校生だけでなくもっと他にもですか。それから、補助率はどのくらいになるのか、全部県が持つのか、そこを明確にしていただきたいと思います。私は、高校生なら県が持つべきだと思いますけれども、そこも含めてお尋ねいたします。
それから、生環部長にお尋ねいたします。放射線量の問題はこれからもつづくわけですから。土壌汚染の問題もまだまだ不十分です。国がやるべき事と、県がやるべき事と棲み分けるかのようにいま答弁されましたけれど、国の知恵も借り、一緒になってこの汚染マップもつくり、そして土壌の除染もしていく。これが大事じゃないですか。そこが少し弱いんじゃないかと思います。そうじゃなければこの汚れたふるさとに戻って来たくとも、戻って来れないじゃないですか。そこは生環部長の決意を求めておきたいと思います。
中小企業の問題では、商工労働部長が仮払金の問題ではまだまだ不十分だというニュアンスでお答えいただきました。私も250万円という上限に本当に腹が立つ思いですね。こんなものでは本当に賠償できません。中小企業は、本当に地元の雇用も守っているわけですから、一緒になってがんばっていただきたいと思うし、それから県自らも雇用をおこさないと。失業者は、それから災害で避難している人は、生活の糧がないんですよ。そこまで踏み込んでもう一度お答えいただきたいと思います。
それから、ホットスポットの関係ですけれども、生環部長ですね。その区域に指定されたり、地点に指定された方は当然私もなると思いますよ。でも、そこから一点でも外れたら、いろんな対象にならないのでは、これは地域コミュニティを逆に壊すことになってしまう。その辺は市町村と相談して、ちゃんと緩和して、地域もコミュニティも守れるようなそういう放射線対策、地点の対策を国に求めるべきだと思うんですけれども。避難民に対する対策もあると思いますけれども、そこがありませんでしたのでお答えいただきたいと思います。
損害賠償の理事にお聞き致します。全面賠償を本当にやっていただきたいんですけれども、そのためには何兆円とも今後予想される、7月半ばから始まるとしても相当な人員と、それから体制がなければみなさんのところの部署だけでは、本当に大丈夫かなと心配ですよ。全面賠償するという立場に立つのであれば、ぜひそこも体制的な構想も構築していくということがなければならないと思いますので、もう一度お答えいただきたいと思います。
答弁
知事
まず、いまの原発、収束が第一でございます。それから繰り返しになりますけれども、これだけの未曾有の原子力災害が起きて、原子力の信頼が損なわれて、原子力に依存しない社会をめざしていくということでございます。
生活環境部長
まず、汚染土壌の浄化に関するお尋ねでございます。現在、県といたしましては、モニタリングを強化いたしまして調査を行い、またモデル事業を実施して、効果の検証を行っているという段階でございます。今後、全県全土の汚染土壌の除去、これは膨大な作業になると考えております。こうした段階に応じて国に関係機関と連携を図って、財政支援を求めるなどしっかりと連携を図りながら、対応をしていくということで検討してまいりたいと思っております。
また、特定避難勧奨地点の指定についてのお尋ねでございます。これは、特定避難勧奨地点の指定にあたりましては、地元市町村の意向を十分に踏まえて、国の方で指定をするということになっております。県といたしましては、指定にあたって地元市町村の意見を聞いて、国と連携を図りながら、地元住民の方の理解が得られるような対応をしてまいりたいと考えております。
保健福祉部長
今回の線量計についての支援事業でございますけれども、基本的な枠組みとしては、中学生以下の年齢の子どもとそれから妊婦を対象と考えております。そういった中で、高校生そのものというよりは、それ以上の年齢というか、中学生以上の年齢まで入れて考えたいという市町村があれば、今回の事業の枠の中でわれわれも柔軟に対応していきたいということでございます。
商工労働部長
中小企業への仮払い補償につきましては、不十分でありますんで、上限額の撤廃、それと、2次3次となります早急な仮払いについて、国、東京電力に引き続き求めていきたいと考えております。
雇用対策につきましては、緊急雇用創出基金事業、あるいは被災した企業さんの支援等を通じまして雇用の確保に努めてまいりたいと思います。
原子力損害対策担当理事
今後の体制についてでありますが、当然状況をしっかりと見据えながら、対応に遅れが出ないように対処してまいりたいと考えております。
教育長
文部科学省が6月24日に各県へのいわゆる加配ということを公表しておりますが、本県は小学校が262名、中学校が190名、特別支援学校29名で義務教育計で481名の加配を受けております。それから高等学校は33名の加配を受けているところであり、その主な理由としては、例えば警戒区域等から分散して避難した児童生徒への支援が大変だとかということも理由としてあげてあります、というところであります。
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