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「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉参加に反対する決議」に対する賛成討論
2011年10月20日 神山悦子県議

 日本共産党の神山悦子です。
 今議会には、わが県議団の紹介でTPPへの参加に反対する意見書が提出されていました。私たちは、これまでもTPPへの参加は日本の国の形を大きくかえることになること、また、今回の未曾有の大震災・原発事故を受けた本県がこれから復興に向かう中で、本県の復興を根底から揺るがすことになることから、TPPへの参加に反対を求めてきました。
 私は、今回提出された「TPP交渉に参加に反対する決議」に賛成する立場から討論致します。
 わが県を含む東日本大震災・本県の原発事故の発生で、東北の農業や水産業は壊滅的な打撃を受けました。これに追い打ちをかけるようなTPP参加方針は白紙に戻すのが当然です。
 ところが、野田民主党政権は、11月上旬に開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議で環太平洋連携協定(TPP)への参加を決定しようとしています。TPPは、関税を原則撤廃し、農産物の輸入を完全に自由化するもので、農林漁業と国民の食料に大打撃となります。さらに、「非関税障壁」撤廃の名の下に、食の安全、医療、金融、保険、官公需・公共事業の発注、労働など、国民生活のあらゆる分野での「規制緩和」をねらうものです。
 震災で農地が大打撃を受けた、ちょうどいい機会だから特区にして、企業が入れば大規模化できる。それを全国モデルにして強い農業にすればTPPに参加しても十分太刀打ちできるといいます。しかし、2ha区画程度の農地をつくってみても、アメリカやオーストラリアの1区画100ha、1戸あたり全部で6000haとたたかえるでしょうか。
 TPPは自由参加貿易協定(FTA)の一種ですが、決定的にレベルが違います。ゼロ関税を徹底するとともに、制度やルールの共通化を求めています。つまり、独自のルールを認めない、あるいは公的関与を認めません。
 TPP推進の中心にいるのはアメリカです。アメリカ型の貿易と投資の自由化と市場原理主義を「国際ルール」として押しつけようというのです。
国内では財界が、「国際競争力」「規制緩和」などの名目で雇用を壊し、地方切捨て、国民生活をずたずたにした「構造改革」路線をさらに推し進めるため、TPPを推進しています。
 野田政権は、「国のかたちを変えてしまう」と言われるTPPへの参加を、国民的な議論も交渉内容などの情報開示もせず、強引にすすめるようとしています。アメリカと財界の要求のままにTPPに突き進むなら、国民の生活と日本経済は大変なことになります。
 以下、TPPへの参加がさまざまな分野に及ぼす影響について述べます。TPP参加は、日本の農林水産業に壊滅的打撃を与え、国民への安定的な食料供給と食の安全を土台から崩すものです。自国での農業と食料生産をつぶし、もっぱら外国にたよる国にして良いのか、この国のあり方が問われています。
 農林水産省は、関税撤廃で日本の米の自給率は1割以下、国民が食べる米の9割以上が外国産になり、その結果、食料自給率は現在の39%から13%に落ちるとしています。TPP参加と食料自給率の向上は絶対に両立しません。民主党政権が昨年3月に決定した「2020年度までに食料自給率を50%にする」という自らの計画にも反するものです。
 「第三の開国」とか「農業は保護されすぎている」などといいますが、今でさえ日本の農産物の関税率は11.7%とアメリカに次いで世界で2番目に低くなっています。日本は鎖国どころか、すでに十分すぎるほど「開かれた国」ではないでしょうか。
 しかも、競争相手は世界で最も農産物の安いアメリカとオーストラリアです。日本農業が壊滅的打撃を受けることは避けられません。1戸あたりの耕作面積が日本の100倍のアメリカ、1500倍のオーストラリアと「競争できる強い農業」などというのは、国土や歴史的な条件の違いを無視した暴論にすぎません。
 東日本大震災で大きな被害を受けたわが県の農林水産業にとっては、さらに事態は深刻です。日本有数の米どころの打撃ははかりしれません。本県の基幹産業である農林水産業への大打撃となるTPP参加の強行は、被災地の生活と生業再建の基盤を壊し、復興の希望さえも奪ってしまうものです。
 農林水産業は、環境や国土の保全など多面的役割を果たしています。日本学術会議は、農林水産業の多面的な機能について、洪水防止機能、土砂崩壊防止機能、水質浄化機能、生態系保全機能などで年間約90兆円の効果があると試算しています。TPPは、こうした多面的機能も喪失させます。
 推進派は、「TPP交渉に参加し、その後、加盟か撤退かを検討する」などといいますが、TPP交渉参加の前提条件はコメを含めて関税の撤廃が約束です。実際、カナダは「チーズと家禽類の肉」の関税撤廃を表明しなかっただけで交渉参加を拒否されました。「交渉参加とTPP参加は別」などという先送り論で、国民を欺こうとするのは許されません。
 TPPは、農業と食料だけでなく、くらしと経済のあらゆる分野が交渉対象とされています。政府調達、金融、投資、環境、労働など24作業部会が設けられています。「非関税障壁」の徹廃との名目で、破綻した「アメリカ型ルール」が押しつけられ、「国のかたち」そのものを大きく変えてしまう内容をもっています。特に、食の安全、医療、官公需・公共事業の発注、金融・保険、労働などで、国民の生活や安全を守るルールと監視体制、中小企業を支援する制度などが大きく崩される危険が大問題になっています。
 TPPに参加すれば、食品の安全のための規制も「非関税障壁」とされ、取り払われてしまいます。アメリカ通商代表部は、「2010年外国貿易障壁報告書」の中で、「対日要求」として輸入食品・農産物の検査、遺伝子組み換えなどの食品表示などが、アメリカの規制より厳しいと批判し緩和を要求しています。さらに、今年2月に行われた「日米経済調和対話」でも、アメリカ政府は、残留農薬や食品転嫁物などの規制緩和を要求しているのです。
 アメリカは、民間医療保険や医薬品などの市場を開放することを繰り返し要求し、その障害として、日本の公的医療保険制度を標的にしています。日本医師会は、TPPの参加への懸念として、混合診療の全面解禁で保険のきかない医療が拡大し、所得によって受けられる医療が制限される、株式会社の病院経営への参入によるもうけ本位の医療、不採算部門の切捨て、地域からの撤退などをあげています。これでは「医療崩壊」とよばれるほどの危機をいっそう深刻にするだけです。
 TPP交渉分野の一つである「政府調達」は、政府や地方自治体の物品購入や公共事業で、国際入札を義務づけることなどが検討されています。市町村の小規模な公共事業や物品購入も外国企業への開放が義務づけられ、地元企業への優先発注などは「非関税障壁」として排除される危険があります。地方の建設業界では、外国企業が安い外国の資材や労働力を持ち込んで参入し、「仕事を奪われる」ことが懸念されています。国が「中小企業の受注機会の増大に努める」と定めた官公需法が骨抜きにされ、地方自治体の地元中小企業優先発注や住宅リフォーム助成制度、公契約条例などもやり玉にあげられかねません。
 アメリカ政府は、相互扶助機関として保険商品を提供している協同組合である共済について、金融庁の規制のもとにある外資系保険会社と同じ「規制と競争」のもとにおけと要求しています。在日アメリカ商工会議所は、農協共済を名指しして問題にしていますが、そうなれば、商工団体、業界団体、労働団体など各種団体の自主的な共済も廃止に追い込まれてしまいます。
 アメリカ政府は、「ただ働き残業」を合法化するホワイトカラーエグゼプションの導入や、会社が自由に解雇できる「解雇の金銭解決」、労働者派遣法のいっそうの規制緩和など、アメリカ型に日本の労働法制を改悪することを要求しています。ですから、TPP参加は、労働法制の大改悪に結びつく危険があります。
 国内においては、日本経団連など財界が、「成長戦略」とか「貿易立国」などと言って、TPP参加の圧力をかけています。しかし、「恩恵」を受けるのは自動車、電機などの一部の輸出大企業だけで、農業と食料、地域経済と雇用、国民生活は、犠牲だけが強いられることになります。

 TPP参加は、農林水産業や地方の建設業への直接の大打撃となるだけでなく、食品加工、運輸などの関連産業、地域経済と雇用にも被害が大きく及びます。北海道庁は道経済が2.1兆円もの損失を被るとしていますが、その7割は農業以外の関連産業、地域経済が受ける被害です。経済産業省は、TPPに参加しないと81万人の雇用減になるとしていますが、農水省は参加した場合、雇用減は、農業やその関連産業などを合わせて340万人としています。TPPは大きな雇用減をもたらし、国民生活と地域経済に大打撃となるのです。
 今の異常円高で苦しむ日本経済にも大被害をもたらします。一部の輸出大企業が、労働者と中小企業の犠牲のうえに、突出した「国際競争力」を強めて外需頼みの経済にしてきたことが「円高体質」をつくり、国際的な投機マネーが直接の原因になっています。
こ れをいっそう加速させるのがTPPです。一部の輸出大企業だけが巨額の富を蓄積し、国民の所得が奪われ、国内需要が押し下げられ続けた結果、日本経済全体は長期低迷から抜け出せず、「失われた20年」といわれるような日本経済の後退をもたらしているのです。TPP参加は、この悪循環を深刻にするだけであり、日本経済のまともな発展の道を閉ざすものでしかありません。
 今すすむべき道は、国民生活応援・内需主導への政治にきりかえ、日本経済の健全な成長とつりあいのとれた発展をはかることです。
 そして、自国の食料のあり方は、その国で決めるという食料主権、関税などの国境措置の維持強化は国際的な流れです。貿易ルールにおいても食料主権を尊重することが求められます。豊かな発展の潜在力を持っている日本農業を無理やりつぶして、外国から大量に買い入れ、輸入依存を高める、これは国際正義、人類的道義にも反する行為です。
 現在、TPPへ参加を表明している国は、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、ペルー、ブルネイ、シンガポール、ベトナム、マレーシアの9カ国です。アジアでは、韓国、中国はもちろん、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国も参加していない少数派にすぎません。しかし、日本が参加すると、アメリカと日本だけで参加10カ国全体のGDPに占める割合は91%にもなります。TPP参加は、環太平洋諸国、アジアに向かって「開かれた国」になるのではなく、経済主権、食料主権を投げ捨て、経済面でもアメリカの属国になる道です。
 いま、TPP参加反対の声が全国で大きく広がっています。地方議会での意見書採択は、「慎重」「反対」を含めて今年2月から9月末までに11県議会、昨年10月以降では47道府県のうち計42道府県議会で可決されていることが農水省のまとめで明らかになっています。
 本県は、3・11の大震災・原発事故の未曾有の被害を受け、経済活動も農林水産業も大きく疲弊したままです。「国の形を変える」TPPへの参加は、本県がめざそうとしている復興計画とは全く相いれないものです。TPPへの交渉参加も含めて反対することを強く求めます。
 以上の理由から、議案第 号「TPP交渉参加に反対する決議」を採択すべきことを表明し、討論と致します。

以 上



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