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2012年2月定例県議会一般質問

2012年2月29日 日本共産党 長谷部 淳県議

一、原子力発電所事故対応について
 日本共産党の長谷部淳です。
 私はちょうど7年前のきのう、2月28日、この場でこう言いました。「大地震や大津波があったときに、原発が大事故を起こして大量の放射性物質を外部にまき散らすことで、地震災害と大規模放射能災害とが増幅し合う人類未体験の破局的災害は何としても避けなければなりません」。
 これは当時、すでに地震学者や原発にかかわる学者、市民運動の人たちが警鐘を鳴らし続けていたことであり、原発事故は、これらの指摘を省みなかったことによる明らかな人災です。この事故がなかったならば、16万人の避難者を生み出すこともなく、また、受けるはずのなかった精神的苦痛、風評被害、自主避難に要した経費を含め、事故によるあらゆる被害を全面賠償させることは当然のことであります。
 そこで確認いたしますが、県としては、全県民対象の賠償を求めていくにあたり、原発事故が明らかな人災と認識しているのか、知事の考えをお聞かせください。

 あの原発事故後、第一原発の30km圏内に北部の一部が入るいわき市は、全市的にパニックになったといっても過言ではありません。全市的に屋内退避を呼びかける市の広報車が回り、市内の各職場に出勤できない人びとが生まれました。
 いわき駅前を拠点に営業運転しているあるタクシー運転手は、事故後、しばらくは駅前の人気(ひとけ)はほとんどなくなったと語っていました。津波被害で避難所にいたあるかたは、事故後、東電の社員たちはいわきから避難していると避難所内でまことしやかに話され、その本人の親族の東電社員から「いわきから遠くに行ったほうがいい」と言われて避難し、高速道路途中のサービスエリアでは、双葉郡の人たちも多かったのでしょうが、いわきナンバーの車が圧倒的だった、と話してくれました。またあるかたは、事故後も避難するつもりはなかったものの、親族の知り合いの東電社員から、「原発は最悪の事態になりうるからいわきから逃げたほうがいい」と言われ、避難した、と言う人もいました。
 また、団地や住宅街のかたがたからは、「避難した家族が圧倒的で、夜になると街中は真っ暗だった」「ヨウ素剤を配るにも、自治会役員の多くが避難されていて、どうしようもなかった」という声をあちこちで聞きました。
 いわき市としても、事故後、どれだけの市民が避難したかは把握しておらず、10万人は避難されたかもしれない、という推測すら言われています。現実はいまだにわかりません。
 私は、この現実を明らかにしてしっかりと後世に残すべきだと思います。30km圏内に一部入るいわき市において、市民がどういう情報をもとに、どういう行動をとったのか、原発を立地した県として、大学や研究者、市との協力で、全住民を対象にした調査をし、二度とこうした事態を招かないよう後世にその記録を残すべきだと思います。その実施を求めますが、見解をお示しください。

 また、事故原発の状況はいまだ不透明であり、東電自身が「損傷した燃料が圧力容器及び格納容器のどこに存在しているかを正確に把握することは難しい」、様ざまな測定値についても「正しく測定されていない可能性の計測器も存在している」と言っているにもかかわらず、国は昨年12月に「収束宣言」をし、県民の不安を広げました。東電自身が事故原発の現状をつかめていないことは、汚染水漏れがしばしば続くことや、先週のマスコミへの構内公開の取材でも明らかです。国として監視機関が存在していないといわなければなりません。事故後の原発の状況について、東電は県に連日報告をしているようですが、作業の進捗、発電所内の放射線量、放射性物質の放出量など、県民に分かりやすく、住民目線で県としても知らせるべきですが、見解をお示しください。また、県内原発の廃炉へ向けた作業について、国内はもちろん、国外を含め、原発推進に批判的な専門家を含めた英知を結集したチームなどによる監視・点検を国に求めるべきですが、県の考えをお聞かせください。

 こうして、事故未収束の事態を前に、事故再発への不安は消えていません。第一原発にかかわる地域防災計画原子力対策編は、県と10km圏内の4町が持っていたわけですが、大事故は起きないという前提だったため、なんの役にも立ちませんでした。そして今、10km圏からはるかに離れているいわき市内においても、もしもの時にいつでも避難できるように準備していると、高齢者施設や住民から聞いています。ところが最大の不安は、避難が必要になった場合、行政としての避難計画がないことだと、一様に訴えられます。仮に事故再発がないとしても、地域防災計画原子力災害対策編を持っていなかった市町村の避難計画を作成しておくことは住民の安心にとっていまや不可欠です。県として避難計画作成への支援を急ぐべきですが、考えをお聞かせください。

 原発事故原因究明にかかわってうかがいます。福島のような原発事故が、この地球上で二度とあってはなりません。事故原因の究明は不可欠な人類的課題です。福島原発の場合、津波が及ばなかった所にある受電鉄塔が倒壊して外部電力が失われ、その結果、冷却装置が動かなくなったことは明らかになり、そして巨大な地震で施設や機器、配管が破壊された可能性の検証はいまだされていないことを、県としてどう受け止めているかお答えください。
 原発を立地してきた県は、徹底した事故原因究明のために、強い姿勢をくずすべきではありません。県として、あらゆる手段を講じて事故原因の徹底した究明を国に求めるべきですが、見解をお示しください。

二、日本原子力産業協会について
 次に、日本原子力産業協会にかかわってうかがいます。この原産協会は、1956年に発足した日本原子力産業会議=原産が前身です。原子力基本法をはじめとした原子力三法が成立した55年の翌年、日本の主要企業と基幹産業をほぼ総結集して原発推進の体制をつくりました。創立50周年の2006年、「自ら戦略的に行動する団体」になるとして、原産協会に名称変更しました。原発震災後にあっても、日本経団連名誉会長が会長で、東電元副社長が理事長の原産協会はいまだに、「原子力発電は、地球温暖化問題に対応するためにも、安全を大前提にして、引き続き重要な電源であ」り、「社会からの信頼回復に向けた取り組みや、国際交流を通じて安全な原子力発電の定着に資する諸行動を」行なうと、原発に固執し推進する立場を明確にしている組織です。
 そこで、県が原産協会の会員となっていた期間、および入退会の理由をお示しください。

三、健診の無料化について
 次に県民の健康にかかわっておうかがいします。全県民が健康診査を受診することは、県民自身が健康を管理するうえでたいせつなことです。ところがいま健診のしくみは、40歳から74歳までの公的医療保険加入者及びその年齢の被扶養者対象の特定健診、39歳以下で健診受診機会のない人びと、75歳以上の後期高齢者と年齢によって区分され、年齢によっては有料であり、各種のがん検診もまた多くが有料です。内閣官房に設けられた「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」が昨年末に出した「報告書」は、その中身の不十分さは指摘されていますが、「がん対策をこれまで以上に進めること」「非常に低いがん検診の受診率の改善等がんの早期発見のための取組を強化していくことが重要」と強調しています。だれもが安心して健診を受診するには、がん検診を含め、すべての健診を無料にし、安心して受診できるよう県の責任で実施すべきですが、考えをお聞かせください。あわせて無料の健診実施は国策として実施するよう、国に求めるべきですが、お答えください。

四、医療提供体制について
 つぎに、医療提供体制についてです。
 今回の震災ほど、いつでも、どこでも、誰にでも必要な医療が提供されることの重要性を示したことはないと思います。
 昨年11月の「福島県地域医療再生計画」においても、今月の「福島県浜通り地方医療復興計画」においても、医療提供体制の再生、回復、再構築、整備、再整備、強化と何度も出てくる言葉が「医療提供体制」です。
 県立病院が掲げる「自治体病院の倫理綱領」は、「その地域に不足している医療に積極的に取り組むとともに、地域の医療機関や行政機関等との連携を図りながら、公平・公正な医療を提供し、地域住民の健康の維持・増進を図り、地域の発展に貢献する」と言っています。
 いま、この原点に返った県の姿勢こそ求められます。
 これまでの県の姿勢は、震災前の10年間で、県立の9病院1診療所を6病院に減らし、さらなる統合を進めるものでした。この間、県立病院の医師は88人から53人に減り、医師以外の医療従事者も825人から588人に減りました。
 県全体の医師数も、人口10万人あたりでは全国平均との差が広がるばかりで、2010年では絶対数で700人以上も少ない現実です。
 県が率先して医療提供から手を引いてきたなかで、今回の大震災に見舞われ、これまでの姿勢の根本的転換を全国に先んじて示すべきです。
 地域での医療提供についての県の責任を、この大震災を受け、憲法25条に照らしてどう考えるか、見解をお示しください。

 そのうえで当面の課題です。
 全県での医師体制が困難ななか、研修医の確保・定着は大きな課題です。若手の医師が県内臨床研修病院で生きがい・働きがいをもって研修できる条件の一つは指導医の存在です。指導医自身が日常診療業務に追われ、なおかつ、介護保険の意見書記入、介護保険認定審査会への参加、健診業務に手を回すことすら大変だと、悲鳴を上げています。こうした指導医の負担軽減と研修医を育てることに力を注げるよう、県として、大学・公立・民間を問わず、県外からの指導医クラスの一定期間の支援配置を求め、受け入れ病院の人件費などの新たな費用を生じないしくみを国に求めるべきだと思いますが、お答えください。
 また、医師の県内での絶対数を確保するため、医学生への修学資金について、県内公的医療機関等だけでなく、県内民間病院での勤務期間も返還免除対象期間とすべきだと思いますが、考えをお聞かせください。
 さらに、医学生以外に、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士についても同様の制度を創設すべきと思いますが、考えをお示しください。
 いま県はいわき市での医療提供体制について、「双葉エリアとの連携による双葉エリアの住民への医療の確保」が必要だと言い、「双葉エリアもカバーできる災害に強い医療提供体制」の整備・強化をうたっています。県自らの責任として、いわき市内に県立病院を新設すべきではないですか。お答えください。

五、介護保険について
 つぎに介護保険です。導入から12年たった今日でも、介護認定を受けたのは65歳以上の人たちの2割に満たず、しかも認定されてもサービスを受けるのはその8割程度です。そのうえ、1割の利用料負担があるために、限度額まで使わない人が少なくありません。
 公的保険とは名ばかりで、65歳以上の8割以上の人が1円の給付も受けない掛け捨て保険であることが実態です。
 第五期介護保険事業計画が始まりますが、保険料は、たとえば福島市では月額基準額が5,000円を超え、介護保険開始時の2倍を上回り、いわき市でも1.85倍を超えるなど、県内市町村の多くで引き上げが予定されているようです。
 一方、高齢者の年金は、介護保険導入後、4度にわたって引き下げられ、今もまた「一体改革」の名で給付額をさらに減らし、支給年齢の引き上げすら検討しようとする始末です。
 震災と原発事故後の保険料値上げは、高齢者一人ひとりの生活再建を阻害するだけではないですか。県としての受け止めをお聞かせください。
 私は、これまで県に積み立てられた介護保険財政安定化基金を取り崩し、保険料を引き下げるべきだと考えますが、仮に全額取り崩せるとした場合、65歳以上の第一号被保険者の保険料はどれだけ引き下げられるか、お示しください。
 さらに基金は、県ばかりでなく、各市町村が積み立てている介護保険料からの介護給付費準備基金があります。まさに取り過ぎ保険料であり、高齢者に還元すべきお金です。残高は市町村によって様ざまですが、仮にこれを全額取り崩した場合、第一号被保険者の保険料はさらにいくら引き下げられるかお示しください。
 なお、原発事故の避難区域を除いた被災地の特例措置で、介護保険の負担減免のうち、食費・居住費の減免措置はきょうで終わりとされています。まったく無慈悲と言わなければなりません。食費・居住費の減免措置をあす以降も適用できるよう、国へ求めることを含め、県としての対策をとるべきと思いますが、考えをお示しください。
 この介護保険制度を、介護保障といえるしくみへ作り変えなければ、被災地・被災者は救えないと私は思います。県として、被災後から今に至る介護保険運営の実態をどのように受け止め、どのように分析し、国に対しどんな改善策を求めるのかお示しください。

六、「子ども・子育て新システム」について
 介護保険は、高齢者が民間市場から「自己責任」を基本に介護サービスを応益負担で購入するしくみとして導入されました。同様なしくみが障がい者自立支援法に持ち込まれ、今度は保育の分野に「子ども・子育て新システム」の名で持ち込まれようとしています。
 市町村の保育実施義務をなくし、したがって子どもの「保育を受ける権利」の保障を放棄し、保育を保護者が市場から「自己責任」で購入するものに変えるものです。指定制度の導入で「多様な保育事業の量的拡大」を図るとして民間主導とするのも介護保険と同じです。
 こうして、高齢者、障がい者、子どもたちの権利を保障するはずの社会保障がすべからく自己責任の世界におとしめられ、その結果が大震災と原発震災による悲劇を拡大したことは事実です。
 こんな悲劇の条件を拡大するような「子ども・子育て新システム」について、県はどのような受け止めをしていますか。お答えください。公的責任による保育制度の充実こそ国に求めるべきですが、見解をお示しください。

七、社会保障について
 さて私はあの大震災の翌日、がれきと砂におおわれた道路をふらついて歩く老夫婦に出会い、病院へお連れしました。原発事故から1週間以内に、「逃げられもせず、自宅で飲まず食わずだ」と訴える要介護高齢者夫妻、障がい者親子から電話を受けました。震災や原発の被害は、だれにでも平等にのしかかるものではなく、高齢者、障がいのある人など弱者に重くのしかかることがあらためて明確となりました。
 医療、介護、障がい福祉、子どもなどの分野は、いずれも命と健康にかかわる公共性の高い分野であり、これらの基礎的社会サービスが、公的責任で提供されなければ、人間の尊厳にふさわしい生活を営むことは不可能です。
 人権としての社会保障の責任主体は国と自治体です。国は、社会保障を実施するための全国的な最低水準を設定し、その実施に伴う費用負担の最終的責任を負い、全国的・広域的な管理・運営を必要とする分野についても管理・運営責任を負うものです。市町村は、各地域の実情をふまえ、各サービス提供を実施し、社会保障給付を受ける権利を個人単位で保護する責任を負います。県は、市町村では実施が困難な広域的施設の設置、制度の創設と市町村間の調整および格差是正の責務をもちます。
 こうして国と地方の双方が生存権保障の役割を果たし、自治体の制度の支えによって地域のきずなの結びつきを強め、人々の暮らしを成り立たせ、これが結果として防災に強いまちをつくるのだと思います。
 私は、この観点に立って、知事が、市町村の実情をよく聞き、福島復興再生特別措置法に盛り込まれる、知事の権限を十二分に発揮し、人権の名にふさわしい社会保障のありかたをこの福島から発信すべきと考えますが、知事の所見をうかがいまして、私の質問を終わります。

答弁

一、原子力発電所事故対応等について
知事

 原子力発電所の事故の原因につきましては、昨年末に公表された政府の事故調査・検証委員会の中間報告においては、事故の発生およびその後の対応に関する問題の多くは、津波によるシビアアクシデント対策の欠如、原子力事故が複合災害という視点の欠如、原子力発電という巨大システムの全体像を見る視点の欠如の三点が、大きく影響しているとの指摘がなされているところであります。
 引き続き、原子力安全規制を一元的に担う国の責任において、さらに詳細な調査・検証が重ねられるものと認識しております。
 いずれにしても、原子力損害賠償につきましては、県内全域、全ての県民を対象に十分な賠償が最後まで確実になされるよう、全力で取り組んでまいる考えであります。

生活環境部長
 いわき市民を対象とする調査につきましては、現在、国において、今後の防災家対策の見直しに活用するため避難、屋内待避の対象となった13市町村ごとに住民の一部を抽出し、事故当初の行動について戸別訪問によるアンケート調査をしているところであり、これらの結果はしっかりと整理・保存されるものと認識しております。
 次に、事故後の原発の状況につきましては、引き続き、国及び東京電力に対して丁寧で分かりやすい情報提供を行うよう求めていくとともに、東京電力に対して、定期的に報告を求め、必要に応じて現地調査を実施するなどにより、取り組み状況を確認し、その結果などを、県民に分かりやすく情報提供してまいります。
 次に、廃炉作業の監視等につきましては、中長期ロードマップにおいて、東京電力が個別作業の安全性評価等を行い、原子力安全・保安院が、これを確認・評価することにより、安全を確保することとされております。
 県といたしましては、原子力安全規制を一元的に担う国の責任において、安全性、透明性の確保を図り、中長期ロードマップに基づく取り組みを着実に進めるよう引き続き求めてまいります。
 次に、市町村の避難計画につきましては、県地域防災計画に避難計画を作成すべき市町村の範囲を定めることとされております。
 県地域防災計画については、現在、国で検討されている防災計画の改定状況等を踏まえ、見直すこととなりますが、まずはその動向について情報収集に努め、市町村に情報提供してまいります。
 次に、地震による原子力発電所の事故の可能性の検証につきましては、原子力安全規制を一元的に担う国の責任において、調査・検証されるべきものと考えております。
 次に、原発事故原因につきましては、原子力安全規制を一元的に担う国の責任において、調査・検証されるべきものと考えております。
 県と親しましては、更に詳細な検証がなされるよう国に引き続き求めてまいりたいと考えております。

二、原子力産業協会について
企画調整部長

 原子力産業協会につきましては、原子力の平和利用の促進などを目的とするものであり、本県は、原子力に関する情報収集のため、昭和35年に入会して以来、51年にわたり会員となっておりました。
 しかし、「原子力に依存しない社会づくりを目指す」との福島県復興ビジョンの基本理念を踏まえ、昨年10月に同協会を退会したところであります。

三、健診の無料化について
保健福祉部長

 健診の無料化につきましては、従来からの特定健診やがん検診については、その実施主体である市町村や医療保険者等の判断によるものと考えておりますが、県が現在進めている県民健康管理調査において取り組む特定健診への健診項目の上乗せや、健診対象者の拡大については、県の負担によって実施してまいる考えであります。

四、医療供給体制について
保健福祉部長

 地位における医療提供体制につきましては、全ての県民が健康で安心して生活をしていく上で、大切な生活基盤の1つであると認識しております。
 本県の医療提供体制は、このたびの震災や原子力災害により、施設設備の損壊や医療人材の流出など、大きな痛手を受けたところであり、県といたしましては、被災施設の復旧や医療人材の確保、医療機関の機能強化などに取り組み、1日も早い医療提供体制の復旧・復興を図ってまいる考えであります。
 次に、県外からの医師派遣につきましては、本県の医師確保を図る上で、臨床研修体制の強化は重要な課題であることから、これまで、指導医養成講習会の開催や魅力ある臨床研修プログラムの充実などに取り組んできたところであり、今後は、さらに、臨床研修病院のニーズ等を踏まえながら、県外からの医師確保についても検討してまいる考えであります。

総務部長
 医学生への修学資金につきましては、地域医療の確保のため、将来県内の公的医療機関等に勤務しようとする者に対し、貸与しているものであり、返還免除対象の拡大については、今後、研究してまいりたいと考えております。

保健福祉部長
 看護師等の修学資金につきましては、看護師、理学療法士、作業療法士について、これまで、勤務先医療機関として、公立・民間を問わずに、返還免除の取り扱いをしてきたところであります。
 なお、薬剤師、言語聴覚士の制度創設については、社会情勢や需給動向を見極めていく必要があると考えております。
 次に、いわき市への県立病院の新設につきましては、いわき市における医療提供体制は、いわき市民はもとより双葉地域の医療を支える重要な役割を担っていることから、市が現在検討を進めている新病院の整備や各医療機関相互の一層の連携を図るための取り組みを支援し、いわき市民における医療提供体制の充実強化に努めてまいる考えであります。

五、介護保険について
保健福祉部長

 介護保険料につきましては、要介護高齢者や介護保険サービス量の見込みなどを踏まえ、市町村が策定する第五期介護保険事業計画において決定されるものであります。
 なお、避難指示区域等となっている10市町村においては据え置かれる見込みであり、被災市町村が行う保険料や利用者負担の減免措置に対する国の財政支援も延長されたところであります。
 次に、介護保険財政安定化基金につきましては、給付費の増加等により、介護保険特別会計に不足が生ずる場合に、市町村に対して資金の貸付等を行うものであり、法律上、全額取り崩すことはできませんが、あえて、今年度末の残高で機械的に試算を行えば、第1号被保険者1人当たりの引き下げ額は、月額250円となります。
 次に、市町村の介護給付費準備基金につきましては、計画期間中の剰余金を積み立て、給付費の増加に備える制度であり、各市町村によって異なる残高を考慮せず、県内一律で全額取り崩すとの仮定は、現実的とは考えられませんが、あえて、昨年度末の残高で機械的に試算を行えば、被保険者1人当たりの引き下げ額は、月額232円となります。
 次に、食費・居住費の減免措置につきましては、国に対して、その延長を要望してきたところであり、今後とも、延長の継続を強く働き掛けてまいる考えであります。
 次に、被災地の介護保険の運営につきましては、全県的に被災後の不自由な生活が続く中で、認知症や体調を崩す高齢者が増えたことにより、要介護高齢者や介護給付費の増加が見込まれ、介護保険財政への影響が懸念されたことから、必要に応じて第5期計画期間中の見直しや、財政安定化基金の有効活用により対応していく必要があると考えております。

六、「子ども・子育て新システム」について
子育て支援担当理事

 「子ども・子育て新システム」につきましては、子ども・子育て仮定を社会全体で支援していくために検討が進められているものと受け止めており、今後の国の動向を注視してまいりたいと考えております。
 次に、公的に責任による保育制度の充実につきましては、地方が実施している保育サービス等について地域の実情に応じた形で、地方が裁量と創意工夫をもって実施できる仕組みとすることなどを全国知事会を通じて、国に働き掛けているところであります。

七、社会保障について
保健福祉部長

 社会保障の在り方につきましては、現在、国で議論が進められておりますが、全国知事会始め地方6団体では、国に対して、住民本位の社会保障サービスの提供や地方の社会保障財源の安定的な確保などを強く求めているところであります。
 県といたしましては、今後の動向を注視するとともに、本県の被災者の方々の厳しい現状を踏まえ、震災からの復興を最優先に取り組んでまいる考えであります。

再質問

長谷部淳県議
 まず、知事にですけれども、古市議員からのお話もありましたが、結局、人災かということで、被災者が加害者にきちっと迫ることは非常に大事だと思っています。昨年4月末でしたか、東電の副社長が、飯舘村の方々との懇談の時に、個人的と断りつつ、自分は人災だと思っているとをおっしゃいました。6月にも衆院の復興特別委員会で原子力安全委員会の斑目委員長が、津波が想定を超えたからといって第2、第3の防護策がなければいけない、実際にはそういったことをしてこなかった。こう言って、まさに人災である。こう言ったわけですね。9月には、枝野経産大臣が、この事故は国と政府と東電の人災と思っている、誠実に応えていきたいと言っているわけです。東京電力や国の方が個人的とはいえ、人災だという認識を持ってこのことにあたるということになっているわけですよ。ましてこの原発事故は、絶対起きないという安全神話にとりつかれたなかで、原発が推進されて、だから2008年には東京電力の社内でも第1、第2原発を最大15.7メートルの津波が来るということが報告されていたにもかかわらず、無視をした。また、例えば、数日前の報道でも文科省の津波警戒の報告書の表現に電力会社の方から表現を配慮してほしいという、こんなことがあって、要は地震や津波への備えを意図的に避ける、明らかに意図的に怠ってきたということはどこから見ても、上から見ても、下から見ても、斜めから見ても、人災だということは明らかだと思うわけですね。ですから、なぜ、知事は人災だということを言わないのか、その理由をお聞かせください。
 保健福祉部長にお伺いします。県の財政安定化基金と市町村の介護給付費準備基金すべてとりくずすとおよそ500円になります。これは、65歳以上の県民人口から単純に割り出した数字でしょうが、それでも年間でいえば6000円ぐらいですよね。3年間で見れば、要するに事業計画で見れば1人当たり1万8000円の引き下げが可能ということです。もちろん単純でないということは承知していますが、私はこの介護保険制度の制度設計の誤りだと思っているわけですが、とりわけ大震災、原発震災の被災者など低所得者に対する保険料は、実態に即して減免することを県の姿勢としてもはっきりさせるべきではないかと思います。75歳以上の人たちで見ると福島県の後期高齢者保険料は、また上がるんだそうですね。とにかく被災地の高齢者に対するひどい仕打ちがこの仕組みのもとで進められてきているんですよね。だから県としての姿勢が問われるということで、介護保険の被災後の実態の運営に基づいて、国に抜本的な改善策をどう求めるのかとお聞きしましたので、この点についてもう一度お聞かせいただければと思います。
 それから、子育て支援担当理事にお伺いします。社会全体で保育を支えるという認識をお示しになりました。介護保険導入の時の介護の社会化という言い方と一緒だと思います。はっきりしていることは市町村の保育実施義務をなくして、国と市町村が保育を提供する義務をなくして、保護者が子どもを施設に預けたければ、自己責任で施設と直接契約をしなさいと、こういう仕組みが導入されようとしているわけで、しかも市町村は施設の運営費は、施設の整備費も保障しなくなる。利用者に対する利用料の一部補助だけで市町村の仕事が限られる。こうなりますので、今回の大震災を契機に介護保険みたいな制度を社会保障の各分野に押し広げられるということになると、弱者が大変な事態に追い込まれることが介護保険で証明されているわけですから、しっかりとした見解をもう一度お示しください。

答弁

知事
 事故の責任については、原子力安全規制を一元的に担っている国の責任において、更に詳細な調査・検証がなされるべきものと考えており、国に対ししっかりとした検証がなされるよう求めてまいりたいと考えております。

保健福祉部長
 介護保険運営の実態を踏まえて国に対してどういうふうに求めていくのかということでした。基本的には先ほど申し上げましたように、第5期期間中の見直し、あるいは県の財政安定化基金の有効活用が対応の基本となると思いますけれども、今後の介護保険の運営の状況、とりわけ、避難指示区域等の市町村の状況、これをしっかりと見極めながら市町村と一体となって国に対する要望をしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

子育て支援担当理事
 「子ども・子育て新システム」についてでありますけれども、このシステム自体が国において検討過程と申しますか、調整過程にあろうかなと思います。そういう面から、国の動向、検討状況について注意深く見守ってまいりたいと考えております。

再々質問

長谷部淳県議
 まず、知事にですが、私が聞いたのは、知事としての認識をお伺いしたので、知事の認識をお答えいただければと思います。原子力損害賠償法の第3条1項は基本的には無過失責任ということで東京電力に全ての責任があるということなんですが、但し書きがありまして、「ただしその損害が異常に巨大な天変地異によって生じたものである時はその限りではない」と。これを東京電力が「活用」して責任がないんだと言って、いまだに東京電力自身は人災として認めようとしていないんですよね。しかも、この原賠法の但し書きは、この原賠法の目的そのものと表裏一体のものであって、原賠法の第1条は、「損害賠償に関する基本制度を定め、以て被害者の保護をはかる」のはいいんですが、「及び、原子力事業の健全な発展に資する」と。だから東電としては、第3条1項の但し書きと第1条の目的を十二分に「活用」して、いかに賠償を値切るかということをやろうとしているわけです。われわれ被害者としては、被災地の福島県としては、こんなことは絶対に認めることができない。無過失責任が当たり前のことだと、但し書きの適用などは絶対できないぞという姿勢をしっかりと持ってこそ、東京電力に対して誠実で全面的な賠償を迫ることができると思います。改めて知事の認識をお伺いしたいと思います。
 保健福祉部長にお尋ねいたします。福島県の医師数は先ほどいいましたけれども、全国平均からも絶対数でいうと700人以上も少ない。そのうち200人はいわき市なんですよね。人口比での医師数の不足はいわき市は県内7圏域で一番多いんです。しかもいわき市の特徴というのは、病院医師数がその中でも不足している実態です。県内で働く医師のうち、病院勤務医の比率は62%、診療所が38%なんですね。これを全国で見ると病院で勤務するお医者さんが64.5%、診療所で働くお医者さんが35.5%。大体こういった比率です。ところがいわき市では、絶対数が少ない中で病院で勤務するお医者さんが51.5%、診療所で働くお医者さんが48.5%とほぼ半々なんですね。この勤務医不足が救急搬送の患者さんを受け入れることができない実態をいわきで生み出してしまっているわけです。マスコミではよくいわき市の病院が救急搬送の患者さんの受け入れを拒否するということが報じられたりしますが、それは拒否するのではなく、受け入れる条件がないんです。こうした実態は福島県も承知されていると思います。これに拍車をかけたのが、今回の原発震災であります。この事態を打開する責任は広域自治体である福島県にあると思います。まして、県自身がいわき市での医療提供体制の確保、整備、強化をするといっているわけでっすから、その責任を果たすのはいわき市内に県立病院を新たにつくるということが最も分かりやすい責任の取り方だと思います。もう一度、ご答弁をお願いいたします。

答弁

知事
 私の認識としてお答えいたします。事故の責任の所在につきましては、国の責任において、更に詳細な調査・検証がなされるべきものと考えており、国に対してしっかりと検証がされるよう求めてまいります。
 また、損害賠償につきましては、国、東京電力に対して、県民の様々な思いを胸に十分な、確実かつ迅速な賠償を求めていく考えであります。

保健福祉部長
 昨年11月に地域医療再生計画を全県版策定をいたしました。それから、このたび浜通り地方の医療復興計画これを策定いたしました。これを十分に活用して医師の確保、それから施設の整備をふくめ、いわき市の地域医療提供体制の充実にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。



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