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2012年11月15日
福島県知事
 佐藤 雄平 様

日本共産党福島県議会議員団
団 長  神山 悦子
副団長  宮川えみ子
同   阿部裕美子
幹事長  宮本しづえ
政調会長 長谷部 淳

2013年度県予算編成に関する申し入れ(第一次)

はじめに

 東日本大震災・原発事故から1年8ヶ月が経過しました。いまだに16万人の県民がふるさとを離れ避難生活を余儀なくされています。
 除染や賠償、インフラ整備が進んでおらず、帰還の見通しは立っていません。原発事故は、自然災害とは「異質の危険性」を持ち、くらしと生業の再建にも大きく立ちはだかる障害となっています。
 日本共産党が9月25日に発表した「『即時原発ゼロ』の実現を―日本共産党の提言」は、政府に対してすべての原発からただちに撤退する政治決断を行い、「即時原発ゼロ」を実現することを強く要求しました。
 一日も早く原発の危険を除去する必要性と緊急性がいっそう切実になっており、国民世論も大きく変化し、「原発ゼロ」をめざす声は、国民多数になっています。
 また、原子力規制委員会が発表した重大事故時の放射能拡散予測で、30キロ圏外にも基準を超える100ミリシーベルト(7日間累積)の被害が広がることも明らかになりました。
 「即時原発ゼロ」を決断してこそ、原発事故の危険性から抜け出し、再生可能エネルギーの爆発的な普及と持続可能な社会への前進を開始することができます。
 一方、国によって警戒区域の見直しが進められ、新たな「線引き」によって、県民の分断と支援の打ち切りが押しつけられようとしています。警戒区域などの見直しに応じない自治体の住民には、住宅や土地などの財物賠償の交渉さえ認めないということまで起きています。どこに住んでいようが、受けた被害を全面的に賠償するのが当然であり、被災者・被害者のくらしと生業が再建できるよう支援すべきです。
 本県の来年度予算編成にあたって以下の項目の実現を求めます。

一、2013年度県予算編成方針について

 本県は、昨年発生した大震災・原発事故という未曾有の苦しみを1年8カ月たった今も受け続けています。震災前から全国レベルからみて低い本県の医療・福祉・教育の遅れが、災害弱者といわれる障がい者、高齢者、1人親家庭、子どもたちにいっそう多大な犠牲を負わせる結果になったことは明白です。
 1人ひとりの暮らしと生業の再建なしに、本県の真の復興はありません。これまでの大型開発中心から県民誰もが安心して住み続けることができる福祉型県政へ転換するため、予算編成のあり方についても抜本的に見直すよう求めるものです。

  1. 医療・福祉・教育を県予算の中心にすえること。あわせて、医師・看護師など医療スタッフ、介護職員、福祉関係職員の増員、正規教員を大幅に増員すること。
  2. 国に対し、復興予算の流用の中止を求め、その大本にある復興基本法を改正するよう求めること。
  3. 大企業向けの企業立地補助金を見直すとともに、県民の雇用を支えている中小企業への支援に力点を移した予算配分とすること。
  4. 放射能汚染から県民が安心して暮らせる福島県を取り戻すためには、除染も賠償も健康支援も今後も長期にわたり必要です。そのための財源確保を国に強く求めること。
  5. 低線量被曝を受けている子どもたちが、安心して成長できるよう、子育てや教育分野の予算を大幅に増やすこと。
  6. 今後も長期に及ぶ賠償はじめ、除染、健康支援等の必要経費は、国民の税金ではなく、電力業界、原子炉メーカー、大手ゼネコン、鉄鋼セメントメーカー、大銀行など、これまで原発で巨額の利益をあげてきた「原発利益共同体」に応分の負担を求めるよう国に要請すること。

二、県内全原発の廃炉、原発ゼロの発信を本県から

 原発事故は「収束」するどころか、その被害は拡大し、被災者の多くは先の見えない苦しみのもとにおかれています。汚染水の漏水がしばしば起こるばかりか、廃炉作業に大きな影響を与えかねない登録作業員数の誤り、下請け作業員のピンハネなどの問題が次つぎと発生しています。全10基廃炉を明言させ、確実な収束へ向けた作業に責任をもつよう、引き続き国と東京電力に「オール福島」で求めていく必要があります。

  1. 東京電力は、「二人三脚で原子力を進めてきた国のエネルギー政策」を口実に、第一原発5・6号機、第二原発の廃炉をいまだ明言していません。東電、国に対し、県内原発10基廃炉を決断するよう、強く求めること。
  2. 原発震災を二度と起こしてはなりません。「原発ゼロ」を福島から発信し、即時「原発ゼロの日本」を実現する政治決断を国に強く求めること。

三、安心してくらせる福島県を取り戻すために

(1)除染のスピードと規模を飛躍的に引き上げ、安心して住める県土の再生を
 除染重点地域指定の市町村が、早期に除染計画を策定し、本格除染に踏み出せるように市町村を支援するとともに、国に対し、現場主義で除染交付金が交付されるよう柔軟な対応を求め、必要な予算確保に全力を尽くすこと。中間貯蔵施設建設に向けては、関係自治体や住民への丁寧な説明、合意と納得が前提であることを国に求める必要があります。その上に立ち、さらに以下の具体的な点を要望します。

  1. 国、県が責任を持って、より詳細な放射線量調査を行い、県民に情報公開すること。
  2. 放射能の不安が大きい子どもと妊婦のいる世帯を、優先的に除染を実施するよう、市町村を指導すること。
  3. 効果的、効率的な除染方法を早期に確立するよう国に求めること。除染で生じた汚染水は回収して浄化し、河川の汚染を防止する対策を講じること
  4. 汚染土壌の減容化対策で、仮置き場の必要面積減少につながるよう、国にその方法を早期に示すよう求めること。
  5. 県民が、個人的に除染を行ったものについても交付金の対象とし、既に実施したものは直ちに支払うこと。
  6. 除染事業を地元業者に直接発注できるように、市町村と除染協同組合等への支援を強めること。

(2)全ての被災者に対する全面的な賠償の実現を
 原発事故によって県民が被った被害は、経済的損害、精神的損害等甚大であるにもかかわらず、東電はこの間、様々な理由をあげて賠償額を削減する態度を取り続けていることは許されないことです。加害者責任を明確にし、全面賠償を求める県民要求実現に全力で取り組まなければなりません。以下具体的事項について要望します。

  1. 賠償金の支払い事務の迅速化を東電に求めること。
  2. 賠償金は非課税とするよう、国に求めること。
  3. 避難指示区域の見直しと賠償はリンクさせることなく、財物賠償は被災者が生活再建できる再取得可能な基準となるよう見直すとともに、放射線量による財物賠償基準の線引きは行わないこと。
  4. 旧緊急時避難準備区域の避難指示が昨年解除されたものの、帰還したのはごく一部の住民であり、避難生活を継続している世帯が圧倒的に多い現状にあることから、避難指示区域と同様の賠償を継続するよう求めること。
  5. 自主避難を含め避難指示区域外の県民に対する精神的損害の賠償は、子どもや妊婦に限定せず、全ての県民を対象に賠償するよう国と東電に求めること。
  6. 県の原子力損害対策協議会を早期に開催し、県民が受けた損害の全面賠償を「オール福島」の要求として国と東電に求めること。

(3)すべての被災者をもれなく支援し、くらしと生業を取り戻す

  1. 避難生活の長期化が予測される下で、仮設住宅の改善要求に応えること。
  2. 県として復興公営住宅の建設を大幅に増やすとともに、従来型の集合住宅タイプにこだわらず、本県の気候風土と生活様式に見合った建て増しも可能な様々なタイプの1戸建て住宅も取り入れること。
  3. 被災者生活支援法に基づく支援金を漏れなく支給できるよう、市町村へ周知徹底すること。併せて、住宅再建への補助を県独自に上乗せすること。
  4. 一部損壊の住宅に対する助成制度を県として創設すること。
  5. 宅地被害についても、独自の支援制度を創設すること。
  6. 借り上げ住宅に入居する避難者への情報提供についても支援を強化し、孤立を防止すること。
  7. 避難者を支援する県内NPO団体等にも財政支援を行うこと。
  8. 帰還に向けて、インフラの整備を支援するとともに、避難道路や生活道路の整備、公共交通機関の整備を促進すること。

(4)医療、福祉分野の遅れを取り戻し、先進の福島県をめざす
 県の復興計画は、「全国一子育てしやすい福島県」、「全国一長生きできる福島県」をめざすスローガンを掲げました。その本格実施が問われるのが来年度予算編成です。このスローガンを言葉だけにしないためには、医療、福祉分野のこれまでの遅れを率直に反省し、思い切った財政措置を講じることが求められます。県民の各層、各分野から寄せられた要望に基づき以下の点について要望します。

  1. 震災・原発事故以前から福島県の医師数は全国平均を下回り、慢性的な医師不足に拍車をかけたのが原発事故でした。浜通りを中心にした深刻な医師不足解消のため、国に支援を求めるとともに、県としても手当加算等の処遇改善を含めあらゆる対策を講じて医師を確保すること。
  2. 看護師、介護士不足も深刻であり、処遇改善の特別支援を含めて本県独自の対策を講じること。
  3. 震災と原発事故によって要介護者が増加し待機者が1万2千人を超えていることから、介護老人福祉施設の増設については、介護保険計画を前倒しで実施すること。
  4. あらためて県内7つの生活圏ごとに医療機関、福祉施設を配置できるよう再構築するとともに、必要な医療スタッフと福祉関係の正規職員を増やすこと。
  5. 全ての市町村に福祉避難所の設置を進めるために、指定福祉施設へ県の支援を行うこと。
  6. 18歳以下の子どもの医療費無料化が本年10月から実施されましたが、避難に伴い住民票を移動した県民に対しても適用させて、戻ってきやすい条件整備を図ること。
  7. 19歳以上の県民の医療費も無料とすること。
  8. 県民健康管理調査アンケート票の回収を抜本的に促進するため、国勢調査並みの態勢で取り組むこと。併せて、全県民に県民健康手帳を発行し、県民が健康管理できるようなシステムをつくること。
  9. 子どもの甲状腺検査体制を強化し、丁寧な検査結果返しと説明、二次検査体制の抜本的強化を図り、県民の不安解消に努めること。
  10. 希望する全ての県民がホールボディカウンター検査を受けられるように、検査機器の拡充等体制を強化すること。
  11. 放射線被ばくによる県民の健康不安に対して、がん検診などの各種健診を無料にすること。
  12. 県立子ども病院を設置すること。がん拠点病院を増やすこと。
  13. 県立病院のこれ以上の統廃合は行わず、大野病院の再建を進めるとともに、県内の公的病院の統廃合を許さず、医師体制の強化など医療供給体制の一層の充実を進めること。特に医師不足により売却が懸念されている社会保険二本松病院や、国立病院機構福島病院の存続・充実を求めること。
  14. 全県的な人工透析医療施設の拡充を図るとともに、相双、県南、会津地方での不足を解消するための対策を講じること。併せて、通院交通費補助の上乗せを図ること。
  15. 県として、聴覚障がい者のための情報提供施設を早期に建設すること。
  16. 情緒障がい児短期治療施設の設置を進めるとともに、児童養護施設の発達障害児加算を行うこと。

(5)子どもたちが安心して住み、学べる福島県をつくる
 原発事故による放射線被ばくの不安が多くの県民を襲い、今なお6万人近い県民が県外での避難生活を送っており、その約半数が子どもたちです。
 1年8ヶ月が経っても外遊びもできず、様々な発達を阻害する環境で日々生活している子どもたちの深刻な生活環境を一刻も早く改善するとともに、一人ひとりの子どもたちに丁寧な教育指導ができる教育条件の整備等、福島の子どもたちが抱える特別な困難が長期に及ぶことに鑑み、教員の加配等の特別体制も求められています。以下具体的事項について要望します。

  1. 子どもたちの健康・発育を支援するため、屋内遊び場の増設や県自然の家の活用を図ること。そのための施設の改善と人員を増員すること。
  2. 子どもやその保護者を含めた心のケアの体制を充実すること。
  3. 児童相談所体制の充実、児童養護施設の増設、障がい児者の福祉施設等の充実を図るとともに、直接処遇職員を大幅に増やすこと。若松乳児院をはじめ老朽化している福祉施設は建て替えること。
  4. 子どもの少人数学級をさらにすすめ、基準を30人以下に引き下げること。
  5. スクールカウンセラーは、複数校の掛け持ちではなく、全ての学校に配置すること。スクールソーシャルワーカーを増員すること。
  6. 学校施設の耐震化計画を前倒しで実施し、安全な教育環境を確保すること。
  7. 県内全ての教室にエアコンを設置するよう、市町村を支援すること。
  8. 私立学校に対する運営費補助金を法律通り2分の1の補助とすること。原発事故に伴う生徒数の減少が、私立学校の運営を直撃している現況を踏まえて、特別の支援を行うこと。また、私立学校が実施した除染経費は、全額交付金対象とすること。
  9. 被災児童に対する就学支援事業を継続するよう国に求めること。
  10. ふくしまっ子体験活動応援事業を県外を含めるなど内容を拡充し、予算も増額すること。
  11. 被災地を中心とする教職員住宅を確保すること。

四、地域循環型の産業復興と育成を

 復興の基本となる労働の維持、雇用拡大と再生産をいかに地域の力を引き出して進めるかが復興への大事なポイントです。従来の大企業中心の産業育成ではなく、利潤が地域に還元し地域の雇用を増やし、地域を元気にする地域循環型の産業育成が求められています。

  1. 医療・介護・福祉を充実させる「福祉・防災のまちづくり」で雇用を増やし、地域の活力を取り戻すこと。
  2. 地場産業、中小零細企業の復興・再生のためにも、グループ補助金等の周知徹底を強め、活用を図ること。
  3. 県単の中小企業等復旧・復興支援事業については、来年度以降も継続して実施すること。
  4. 二重ローン解消に向けて引き続き支援すること。
  5. 「ふくしま産業復興企業立地補助金」は地元の企業優先に活用できるようにすること。
  6. 第一次産業の農林水産業の復興をめざし、支援を強めること。

五、再生可能エネルギーの導入推進へ向けて

 県は、再生可能エネルギーの飛躍的な推進による新たな社会づくりを位置づけました。原発に象徴される「単一」「大型」「集中」のエネルギー供給技術依存から脱し、「多様」「小型」「分散」を特徴とし、文字通り地産地消型である再生可能エネルギー中心へと転換すべきです。この特徴を踏まえた支援策を構築するとともに、「再生可能エネルギー」「省エネ」「効率的な技術革新」を県としてのエネルギー政策の柱に位置づけることを求めます。

  1. 地域の県民が主役になり、地域で生産するエネルギーが地域で消費され、その地域で資金が循環し、利益が還元するしくみを県が主導して構築すること。
  2. 県有施設をはじめ、県内の公共施設について、震災で被災した施設の復旧を含めて、再生可能エネルギー設備を率先して導入すること。
  3. 市町村の再生可能エネルギー導入促進のとりくみをしっかりと支援するしくみを充実させること。
  4. 再生可能エネルギー設備を導入する一般家庭の初期費用の負担軽減を図れるよう、しくみを充実させること。
  5. 大型の再生可能エネルギー生産手段導入にあたっては、設備の規模や土地の改変面積等について県独自の環境基準を設けるなど、地域住民との合意が確認できるしくみをつくること。
  6. 無暖房住宅のような省エネ家屋などの建築技術開発など、省エネを進める県内中小業者の技術開発を支援するしくみを県として構築すること。
  7. 国に対し、大中小の幅広い事業者、市民参加が保障されるしくみ、固定価格買取り制度の充実、送電線の容量不足解消、送電事業者への接続義務やなど、再生可能エネルギーのいっそうの普及促進のための法や制度の改善を求めること。

以 上



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