1、はじめに
(1) 小泉内閣のもと県民の生活と雇用はますます深刻な状態になっている。「経済財政諮問会議」(議長・小泉首相)が今年7月29日に決定した来年度の予算の全体像では、「三位一体の改革」を唱え、地方への税源移譲を「国庫補助負担金の廃止・縮減」や「地方交付税の改革(削減)」と一体ですすめるとしている。しかし、税源移譲については、廃止・縮減する国庫補助負担金の8割程度にすることなどが打ち出された。国庫補助負担金は、その多くが地方自治体の福祉・教育予算に使われ、地方交付税は地方自治体の一般財源に充てられるものであり、結局「三位一体の改革」とは、事実上の地方の福祉・教育の切り捨てを強行するものである。
小泉内閣がすすめる「弱肉強食」の構造改革路線は、生活者の視点が何もなく、県民生活、県内経済活動ともに、より一層困難な状況に追い込んでいる。これまでいわき市の大黒屋をはじめ、郡山市のはまつグループの倒産、加えて県内建設業第2位の滝谷建設の倒産など大型倒産が相次ぎ、年末に向け倒産・失業問題が一層深刻になることは明らかである。
雇用も、9月末時点で高卒就職希望者の内定率が24.9%(福島労働局調べ)となっている。昨年同期を上回っているとはいえ、1987年以降2番目の低さとなっており、県内の求人倍率は0.51倍と依然として厳しい状況には変わりがない。
県内の有効求人倍率は0.62(季節調整値)で前月を0.04ポイント上回り28ヶ月ぶりに0.6倍台となったが、それでも全国を下回っている。9月の求職者数44,986人、それに対して雇用保険受給者は14,515人であり、何の収入もない状態で仕事を探している県民が2万人強になる。仕事探しをあきらめた方も加えれば、失業者は相当の数になると推測される。
また、「社会保障制度改革」も、年金や医療給付の削減や国民負担増をその内容としている。04年度の政府の社会保障関係費は、高齢者人口の増加などに伴って約9,100億円の増額が必要と推計されているが、概算要求では、この「当然増」を約2,200億円も削る内容となっており、3年連続で必要な社会保障予算の伸びが大幅にカットされることになる。加えて、不良債権処理を加速すると称して地域金融機関にも貸し渋り、貸しはがしを強要して地域経済の主役である中小企業をつぶさせるなどは絶対に許せるものではない。県内経済関係者もこぞって異議を唱えている、こうした地域経済を破壊する小泉内閣のやり方に明確な批判を強めるとともに、来年度県予算編成に当たっては県民の暮らし・地域経済を応援する立場を貫き、県政運営を行うことが大切である。
(2) 小泉内閣は、今回の総選挙公約で「消費税引き上げについても国民的議論を行い、結論を得る」としている。消費税は低所得者ほど負担率が高くなる逆累進性を特徴としており、その増税はさらに県民生活へ打撃を与えるものである。また、重大なことに小泉内閣は憲法改悪に踏み出すことを明らかにしている。第2次世界大戦でのアジアで2,000万人、日本人310万人の尊い犠牲のうえに制定された戦争を放棄し、戦力を持たないことを規定した憲法第9条にたいし、軍隊をもつことを認める内容に「改正」することを公然と明らかにしている。
同時に、アメリカの求めにしたがって、イラクへの自衛隊派遣を年内にも強行しようとしているが、イラク情勢は日に日に悪化の一途をたどっており、イラク全土が戦争状態にあることはアメリカの当事者も認めるところである。もし、日本が自衛隊を派遣するならば、知事の言う「戦争が憎しみを生み、憎しみがテロを生み、そしてまたテロが戦争を引き起こす」ことになり、イラク国民の怒りと憎しみの的になり、攻撃対象となることは明らかである。「人的資源」の国際貢献を強調する小泉内閣の認識は、人の生命を「資源」扱いにするものであり、断じて許されない。
これらは、分権・環境・人権尊重の21世紀を目指す知事の政治姿勢に真っ正面から反するものであり、イラクへの自衛隊派兵をやめるよう申し入れるべきであるる。
2、財政構造改革最終年度の予算を県民のくらし応援にするために
(ア)予算編成方針でも述べられているように県内景気低迷の厳しい状況は一向に改善されず、苦しい県内企業や県民生活を反映して、税収が減少し、プログラムの想定を大幅に上回る財源不足となる見通しとなり、加えて「国のいわゆる三位一体の改革がすすめられており、その具体化によりさらに大きな影響が予想される」。こうした見通しであるなら、
(1) プログラム期間を弾力的に見直し、歳出削減による、県民向け施策の後退ではなく充実をはかるべきである
(2) マイナスシーリングによる民生費、衛生費、教育費のカットではなく、「人間・人格・人権の尊重」という立場から充実をする編成方針を明確にすべきである。また、政策として何を重視し、何を見直すのか、編成過程を県民に明らかにしガラス張りの予算編成とすべきである。
(3) 以下の大規模プロジェクトをより一層見直し、事業の優先順位をあらためるべきである。
1) トラハイの凍結
2) 小名浜東港人工島一期工事も中止する
3) 木戸ダムの見直し(使用水量の再検討が必要)
4) 首都機能誘致に関する事業の中止
5) 自然環境保護の点からも大型林道開設の見直しを
6) 公共事業の入札制度を急いで改善し、本県の落札率が95%を超え、全国14位と高止まりになっていることから、その引き下げに努力すること(全国市民オンブズマン連絡会02年度の調査結果)
(イ)県内の厳しい経済・雇用情勢へ的確に対応し、県内中小業者への仕事を増やすためにも、公共事業の内容を県民生活応援型・福祉向上型に切りかえるよう求める。
(1) 介護や保育など、少子高齢社会に対応した福祉施設を急いで整備する
(2) 公共施設や教育施設の耐震化、教育施設の整備を計画的に図る
(3) 福島市をはじめ県内市町村で実施が広がっている「小規模修繕契約登録制度」、いわき市等で取り組まれている「住宅改修への助成制度」を県としても取り組み、地域での小規模事業者への仕事確保をはかる
(4) 公共施設維持修繕基金の積極的利活用で生活幹線道路の改良、危険個所の改修、歩行者・自転車交通の安全対策、冬季交通安全対策に重点を置いた道路整備をすすめる
(5)「新規の施設整備事業は、構想策定を含め、具体的な事業には着手しない」としているが、聴覚障害者のための情報提供・学習機能、難病患者団体の交流・サポート機能を含めた『総合保健福祉センター』や、『環境科学研究・学習センター』(いずれも仮称)などの具体化、周産期医療センターのスペースの拡充と全県的充実、総合療育センターやこども病院、児童相談所の拡充・改修などの検討を開始すべきである
(ウ)県事業の見直しとともに、市町村財政の健全化のためにも県の役割が求められている。
(1) 会津フレッシュリゾート構想の見直し
(2) 拠点都市整備事業の見直し
(3) 工場団地づくりの全県的見直し
(4) 企業局の抜本的見直しと広域用水事業への県の参加
(5) 国営農業関連事業償還金の軽減策
(6) 市町村振興基金の柔軟な活用
(7) 市町村合併については、住民が選択することという基本的立場を貫き、政府の強権的合併を許さない態度を鮮明にすること
3、施策の基本的方向
(ア)中小企業・地域金融つぶし政策に抗し、安心して働ける福島県を
(1) 緊急雇用対策基金の積極的活用を。そのためにも失業者の要望を聞きながら仕事を作る仕組みを市町村とともに検討すること
(2) 新規高卒者を雇用した中小企業へ人件費助成制度を(国のトライアル雇用への上乗せ策を検討すること)
(3) 保証協会への損失補償を全額にした小口のつなぎ資金制度を創設して、中小業者が高利のヤミ金融などに走らなくともやっていける手だてを用意すること
(4) 大手企業の一方的リストラや下請け切り捨てをやめるよう要請すること
(5) 県内企業の技術向上や研究機関の活用による新製品開発への支援、地場産品の販路開拓に力を尽くすこと
(イ)4兆円を超す国民負担増による社会保障の後退を許さず、安心して子育てができ安心して老後をおくれる福島県に
(1) 国保税・介護保険料の負担軽減策をすすめること
リストラや倒産で国保加入世帯が増える一方、加入世帯の3分の1は法定減額の対象者で、滞納世帯が16%(02/6/1)にもなっている。介護保険料がこれにかぶさり生活上の重さは相当のものである。事実上の保険証とりあげとなる資格証明書や短期保険証の発行をやめさせ、県民の生命と健康を守る立場に立つこと。申請率が全国最低レベルとなっている高齢者の高額医療費償還払い制度を徹底させること
介護保険の在宅サービスの利用率が40%にも満たないことは、1割の利用料負担が重いことと、結果として家族介護に頼ることになっているのは介護保険の趣旨にも反するものである。県として高齢者への保険料・利用料軽減を制度化し市町村を励ますこと(県内24市町村で実施)
(2) 介護を必要とする県民が安心してサービスを受けられるように
特養ホームの入所希望者が依然として増え続けている。施設の不足と在宅サービスの両面からの整備を急ぐこと
(3) 乳幼児医療費、重度障害者医療費、一人親家庭などの医療費窓口無料化を
(4) 難病患者、透析患者への通院交通費の拡充。治療研究事業に指定されていない難病患者への医療費助成
(6) 保育所の新増設を進め、超過入所児・待機児童の解消を図るとともに、地域子育てセンターとしての機能を援助すること
(7) 障害者の自立・共生アクションプログラムを見直し、県内各地域で支援できるよう拡充すること
(8) 災害時緊急の透析医療体制など、難病者への対応策を検討すること
(9) 小規模作業所への助成制度の改善を図ること
(10) 県立病院の医師確保を図り、小児救急医療、女性専門診療科など、地域医療を担うための機能充実に努めること
(ウ)憲法、教育基本法の改悪の企みをやめさせ、安心して学び、全ての子どもの人格人権が大切にされる福島県の教育を
(1) 県民がおおいに歓迎している30人学級を全学年に拡大すること。特に中学2年生の実施を急ぐこと
(2) 複式学級の解消、中学校での免許外教員、教員の多忙化解消のためも正規教員を配置すること
(3) 学校図書館活動を重視して司書を配置すること
(4) 高校の統廃合計画を見直し、地域における高校の位置づけを大切にした地域づくりに資すること。小規模校の募集定員を30人にすること
(5) 教員採用方法、管理職登用のさらなる改善を図り、教師集団の自主的共同による学校の教育指導力向上、父母との共同による地域の教育力を意識的に作る取り組みを重視すること。教師の自主的研修を重視すること
(6) 学校現場での判断、市町村教育委員会の創意を尊重し、教育行政の分権化を進めること
(7) 自販機の撤去など子どもを取りまく文化・情報の自己規制と、文化やスポーツ、体験活動など放課後の居場所づくりを中高生までを対象にした地域環境整備をはかること
(8) 学童保育設置目標を見直し、地域での障害児を含めた子どもを育む場として急いで整備すること
(9) 男女平等推進条例の具体化を総合的に進めること
(エ)新たな米政策をはじめ農業つぶしの政策をやめさせ、食料供給県として多面的な農林水産業の発展に全力をあげる県政を
(1) 食料自給率の向上をめざし、農産物の輸入を規制するよう求めるとともに、農業土木事業に60~70%も使うのではなく、農家の所得補償につながる支援策と価格保障に予算の重点を移すこと
(2) 減反拡大をやめ、転作条件の整備(特に転作作物の価格補償と販路の確保)を進めること
(3) 果樹、野菜、菌茸、花卉の「青果物価格補償制度」(県単)の県負担割合を4分の1から2分の1に引き上げること
(4) 農業被災者支援のためにも共済制度の改善に努力すること
(5) 中山間地直接支払制度のさらなる活用を図ること。そのため事務手続きを簡略にし、減反を前提にしないこと
(6) 林業公社を中心に、間伐はじめ山の手入れを拡充し、造林事業と県産材の利活用促進のために助成制度を拡充すること
(7) 食の安全のための検査人員を確保し、体制を充実すること。BSEの感染ルートを含め徹底究明を求めること
(8) 県産品の販売奨励など地産地消とあわせた多面的な取り組みを強めること
(9) 沿岸漁業振興のための人工漁場拡大、養殖事業の充実強化に努めること
(オ)プルトニウム循環方式(核燃料サイクル)に固執する政府・電力事業者の一方的政策に抗し、県民の安全・安心と、真の地域振興のためにがんばる県政を
(1) 県の中間とりまとめで指摘した「核燃料サイクルの見直し」が、実際に具体化されるよう知事を先頭に、県民あげての運動を。県民を実験台にするプルサーマルは絶対に認めないこと
(2) 一連の損傷隠し、検査偽造などの不正行為について、全貌の解明と責任の所在、とりわけ政府の検査・規制機能を推進機関から独立させるよう求めること。安易な維持基準の導入に抗議すること
(3) 原発に関わる事故隠しが一向に改善されていない。下請け企業まで含めた情報の共有とインシデント報告制度を確立し、県民の安全を優先すること
(4) 地球環境にやさしい再生可能でクリーンな自然エネルギーの普及に努めること。そのための条例制定を検討し、県の助成を拡充すること
(5) 原発の新増設は認めず、立地地域の多面的な振興を図るための総合的計画を住民とともに策定すること
(カ)開かれた警察行政で県民の安全を守る役割を十分に発揮すること
(1) 凶悪犯罪が多発しており、検挙率を高め県民の安全を守る役割を強めること
(2) 交通事故死の多発に鑑み、安全対策を施設・設備面(信号機の設置など)と街頭指導を強めること
(3) 県民からの相談、特に違法金融被害、DV相談などに親身に対応すること。
(4) 子どもを対象にした連れ去り事件や性犯罪などが多発している。青少年犯罪防止のため関係機関との連携を強め、健全育成の社会づくりに力を尽くすこと
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