【はじめに】
昨年11月12日に新年度予算編成の基本的あり方について申し入れたところであるが(第一次)、その基本は、小泉政治のもとで県民生活の厳しい実態から、「県民のくらし・地域経済を応援する立場を貫く」ことを強調した。この間、景気回復の兆しがみえているというが、それは輸出関連の大企業だけが、強力なリストラや法人税減税などをテコに収益をあげているからであり、県内の企業の大半を占める中小企業はますます厳しさを増している。
そんななか、小泉内閣が昨年末2004年度政府予算案を決定した。その内容は、年金制度の大改悪をはじめ、来年度にとどまらない一層の負担増と給付減をおしつける7兆円規模の「連続負担増予算」となっている。その一方で大企業には更なる減税で奉仕し、大型公共事業のムダ遣いと軍事費を温存して、ここまで借金を膨張させてきた枠組みを今後も続けようとしている。
地方自治体にとっては「三位一体改革」の名のもとに、1兆円の国庫補助負担金の廃止・縮減をはかり、それに伴って所得譲与税として4,249億円を地方に交付するとしているが、決して「地方税財源の充実確保の具体的第一歩」(総務部長)などといえるものではない。「三位一体改革」の本質は、国庫補助負担金と地方交付税の削減による福祉・教育の切り捨て・地方への押し付け・国民負担増であり、その出口には増税がまっているものである。国に対して地方税財源を確保し、地方財政計画による地方交付税と臨時財政特例債の削減を取り消すよう強く求めるべきである。
県の財政運営は、「財政構造改革プログラム」が見込んだ以上の歳入落ち込みで厳しい状況となっていることを強調しながら、「収支均衡をめざす」というプログラムの目標にしばられ、歳出への切り込みをいっそう強めようとしている。大規模公共事業をそのままにして、県民生活関連へ大きな影響を与えることは必至であり、その破たんは明瞭である。知事の唱える「いのち・人格・人権の尊重」に反するものとなることも明らかである。プログラム期間を弾力的に見直すことを含め、プログラムそのものを見直すべきである。
こうした点から来年度県予算の編成にあたっては、(1)当初の見通しより歳入の落ち込みが厳しいことを踏まえ、大型プロジェクト見直しのいっそうの徹底をはかり、首都機能移転誘致事業もやめること (2)公共事業の内容を福祉・医療・教育・環境など生活関連型に大きく転換し、地域での仕事確保をはかり、経済活性にも資するようにすること (3)ともに県民の暮らしを守り個性ある地域づくりにとりくめるよう、市町村支援をつよめること・・・の3点を強調するものである。
以上の基本方向をふまえられ、厳しい財政の中でも県民のくらし応援のため工夫を凝らした予算編成となるよう、第一次申し入れ事項に加え、以下、各部局ごとの重点事項を要望する。
【総務部】
(1) 「いのち・人格・人権の尊重」を県政の基本とする立場から、帝京安積高校現職教員銃撃事件の正常な解決のため、適切な指導を行なうこと。
(2) 県立大学がその役割を発揮できるよう、法人化については、関係者全体の合意が前提であることを明確にし、急がないこと。とくに教育・研究内容へ行政が介入することなく、十分な運営費および研究費の確保を図ること。
(3) 市町村合併について、国による「上からの押し付け合併」を促進するような支援策は行なわないこと。合併を選択しない市町村への支援策を具体化すること。
【企画調整部】
(1) 地域循環型社会形成へ向けた「超学際」的取り組みへの支援は、新エネルギー導入を含めた県民、またはその運動をも視野に入れたものとすること。
(2) 北海道との交流促進について、これまでの北海道事務所を通じた交流実績を県民に明らかにしたうえで、今回打ち出した交流事業の位置づけを明確に示すこと。
(3) 首都機能移転誘致のための予算計上はしないこと。
(4) 大学(学部)開設は、県民の就学機会の拡充や地域振興の点からも全県的課題であり、県としては県内私立大学への支援をバランスよく実施すること。
(5) 「電源地域の振興」については、その実態把握を含め、総務部・農林水産部・土木部など関係部との総合的調整を図ること。「地産地消の推進」についても同様。
(6) 福島空港の利活用促進については、航空会社への助成中心では県民にとっては意味のないことであり、長期的視点で魅力ある県内産業と観光振興にこそ力をそそぐこと。
(7) 「官から民へ」「自助と自立の精神」などを基本として国が主導する「地域再生」には慎重に対処すること。住民の暮らし・福祉・教育など日常生活に真に資する地域再生が図れるよう県は市町村へ具体的支援を行なうこと。
【生活環境部】
(1) 「県民一人ひとりが尊重され、その参画と連携により豊かさを実感できる社会の実現」のための施策を遂行するにあたっては、福祉・教育・労政などとの連携を十全に図り、状況を把握すること。
(2) 異物混入や水漏れトラブル、その報告の遅れなど、原発再稼動を容認した根拠は根本からくつがえされており、今後の再稼動は認めないこと。
(3) 環境行政推進の柱に、「環境科学研究学習センター」(仮称)づくりを位置づけること。
(4) 青少年を取り巻く社会環境の整備のためにも、条例の改正とともに、県政として、民主的社会形成・社会的道義形成を社会全体へ呼びかけること。
(5) 「野生動植物の保護に関する条例」(仮称)策定にあたっては、この運動にとりくまれてきた方々を始め関係者の意見を十分に反映させること。
(6) 産廃税の検討にあたっては、「県外もの」流入を実効的に防ぐ視点ですすめること。
【保健福祉部】
(1) 特定疾患患者通院交通費助成事業について、実態にあわせて拡充すること。
(2) 「子どもプラン」の見直しにあたっては、その施策に関する指標の目標値を抜本的に引き上げること。
(3) 保育所の整備にあたっては、待機児童とともに「定数以上の入所児童」の解消もはかることを明確にすること。
(4) 児童虐待防止のために、個別にケアする職員や専門相談員の配置、小規模児童養護施設設置など具体的施策を新年度予算で明確にすること。
(5) 国が介護保険制度を「給付削減」のために見直そうとしていることは許されない。県としては、「介護を必要とする高齢者が、良質なサービスが利用できる」ことが実質的に保障されるよう、公費負担を抜本的に引き上げることを国へ働きかけること。同時に県はその姿勢を明確にし、利用料軽減策をとる市町村を支援し、全県へ積極的に広げること。
(6) 障害者施策は、支援費制度のもとで、受けたい必要なサービスが地域格差なく受けられるようにすること。
(7) 県立社会福祉施設を民間委託することなく、老朽施設は建て替えて全体の充実を図ること。
(8) 衛生研究所・保健所の検査体制一元化にあたっては、特に保健所の機能がこれによって縮小されることがないようにすること。また、検査機器の充実と人員の確保を図ること。
(9) 県立病院の役割・在り方の最終提言がこれから、というもとで、「全適」だけを先に決めたやり方は遺憾であり、来年度も「全適」を含めて引き続き検討すること。
(10) 自殺者の激増(昨年1年間で661人、前年比28%・138人増)は深刻であり、県としてその抜本的な防止のために、「(社福)いのちの電話」と連携し、相談者の育成、24時間相談体制がとれるよう、具体的支援をすること。
【商工労働部】
(1) 「新事業創出」の土台は県内産業の振興である。製造業をはじめとした県内産業の実態を把握し、地に足が着いた内発型の具体的新産業創出支援策をつくること。
(2) 「地域企業の再生支援策」は、「相談を通して」といった受身ではなく、県として積極的・具体的支援策とすること。
(3) 「中心市街地の活性化」を含むまちづくりは、土木部など関係部署との連携を図りながら、「広域まちづくり検討会」の論議を生かし、大型店の広域調整など広域地方自治体としての県の役割を果たすこと。
(4) 中国・上海への活動拠点設置については、そのランニングコスト、また県内経済の実情からどのように県経済活性化につなげるのかを明らかにすること。
(5) 雇用対策は、国の「トライアル雇用」への県としての上乗せ、失業者へのつなぎ就労の場を提供する「新しい失対事業」などの具体策を講じること。
【農林水産部】
(1) 政府の「米政策改革大綱」をそのまま県内農家に押しつける「水田農業改革アクションプログラム」は、一定の規模以上の大規模経営農家と法人しか担い手として認めないというすでに破綻した政策をいっそう乱暴に押しつけ、圧倒的多数の家族経営をしめだすものである。価格・所得保障の抜本的拡充と家族経営を支援する県政への抜本的転換を強く求める。
(2) 新規就農者の確保・育成の対策を強化すること。
(3) 地産地消の取り組みを本格的に強化し、学校給食の米飯給食を週4回まで拡大すること。
(4) 中山間地等直接支払制度のとりくみ状況を把握し、本県農業生産と全国一の「耕作放棄地」の解消にどのような影響を与えたか明確にしてとりくみの内容を充実すること。
(6) 浪費型公共事業である大滝林道などの大規模林道の建設を中止すること。
【土木部】
(1) 公共事業のコスト削減と同時に、電子入札の導入も含め、入札制度の改善を急ぐこと。
(2) トラハイの凍結や小名浜東港建設の一期工事中止など大型公共事業を見直すこと。
(3) 「都市計画区域マスタープラン」と「まちづくり」、さらには商工労働部の「中心市街地活性化」との関連をふまえて、大型店規制や住民参加のまちづくりの運動を支援すること。
(4) 道路関係4公団民営化案論議のなかで、結局「すべての高速道路をつくる」ことになってしまい、その一方法として税金を投入して建設する「新直轄方式」が決定された。そのなかに東北中央道路建設(福島・米沢間)が位置づけられたが、不要不急の大型公共事業であり、県の負担が莫大なものとなることは明白でありとりくまないこと。
【教育庁】
(1) 教員不祥事の背景として、「子どもとのふれあいの時間がない」「同僚間の意見交換の時間がない」などの教員労働実態(多忙化)があると指摘されている。その実態解消のための指導策を急ぐこと。
(2) 同時に、教員採用や人事のあり方も大きな背景と指摘されている。試験内容の公開、採用の透明化、人事の民主的改革を図ること。
(3) 「うつしくま教育改革推進プログラム」は教育委員会が策定したものであり、「30人学級の拡充」は県議会の決議である。前者を後者の上に置く姿勢をあらためること。
(4) 「人格の完成」をめざす本来の教育目的から見て、英語教育に偏った中高一貫校でその目的が果たせるのかは疑問である。十分な県民的論議・合意を図ること。
【警察本部】
(1) 警察官不祥事の再発防止には全職員が努力するとともに、市民生活を守る警察任務を果たせる職員配置とすることをはじめ労働条件の改善、民主的職場環境をつくること。
(2) 違法金融被害、DV相談など、くらしのなかの不安や困りごとに親身に応じること。
(3) 「地下に潜行しつつ、県民のくらしに入り込んでいる」暴力団根絶のため、文字通り根本的・抜本的な具体策をはかること。
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