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6月定例会に関する要望書
2004年5月27日

福島県知事
佐藤栄佐久 様

日本共産党福島県議会議員団
団 長 神山 悦子
長谷部 淳

はじめに

 小泉政治が強行したイラクへの自衛隊派兵は、情勢のいっそうの悪化によって、戦闘地域への派兵という点で憲法に明確に反し、国際的になんの大義も持たないことが明らかとなっている。そうしたなかで憲法9条の改正をめざす危険な動きも強められている。

 小泉内閣は年金制度の大改悪をはじめ、一層の負担増と給付減をおしつける7兆円規模の負担増は、一方で大企業には更なる減税で奉仕し、大型公共事業のムダ遣いと軍事費を温存して、借金を膨張させてきた枠組みを今後も続けようとしている。

 「三位一体改革」の本質は、国庫補助負担金と地方交付税の削減による福祉・教育の切り捨て・地方への押し付け・国民負担増であり、その出口は消費税の大増税がまっているものである。国に対して「三位一体の改革」をやめ、地方税財源の確保を強く求めるべきである。

また、県民生活は、県民所得が300万円を割り込み、改善の兆しが見えるとはいえ全国平均を下回る有効求人倍率、中小企業を取り巻く厳しさ、展望の見えない農業などいっそう厳しい実態となっており、「県民のくらし・地域経済を応援する立場を貫く」ことが県政にとってなによりも大事になっている。

 ところが、県自身が県民に押しつけようとしていることは、歳出への切り込みをいっそう強め、大規模公共事業を温存して、県立病院への地方公営企業法の全部適用と統廃合、県立社会福祉施設の一部民間委譲、県立大学の独立行政法人化という、「3大切りすて」を強行するものであり、県民生活と県民サービスへいっそう大きな打撃を与えるものとことは明確である。このことは、知事の唱える「いのち・人格・人権の尊重」に反するものである。

 こうした点から6月定例県議会にあたっては、「3大切りすて」をきっぱりとやめ、(1)大型プロジェクト見直しのいっそうの徹底をはかること (2)地域での仕事確保をはかり、経済活性にも資するようにすること (3)ともに県民の暮らしを守り、市町村の個性ある地域づくりにとりくめるよう、市町村支援をつよめることことを強く要望するものである。

1、「3大切りすて」をやめ、これまでの浪費県政による借金、財政構造プログラムの事実上の破たん、緊縮財政のツケを、県の直営による医療・福祉・教育に向けることは断じて許されない

1) 県立病院改革について

 県立病院の地方公営企業法全部適用のもとで、経営最優先の病院経営ではなく、多面的で多様な役割が発揮できるよう、県は最善をつくすべきである。

 県民の医療サービスの後退につながる安易な統廃合は行わないこと。

2) 県立社会福祉施設

老朽化した施設については県で責任を持って建て替えたうえ、県として福祉サービス提供面でより充実させることこそ検討すべきである。社会福祉基礎構造改革という名の、福祉における公的責任を縮小・後退させる国の施策にのるべきではない。

3) 県立大学

 県立大学が地方独立行政法人になると、教育内容の自由や大学の自主性が侵される可能性を内包したしくみとなる。県民の期待にこたえる大学として発展するための前提は、なによりも学問の自由と大学の自治が保障されることである。

地方独立行政法人法の附帯決議が言う、「公立大学法人の定款の作成、総務大臣及び文部科学大臣等の認可に際しては、憲法が保障する学問の自由と大学自治を侵すことのないよう、大学の自主性、自律性が最大限発揮しうる仕組みとすること」が生かされるよう、県は責任をもつこと。

2、原発問題

 5月24日、東京電力福島第二原発2号機で、想定外の緊急停止警報が発生した。この号機は4日前の20日、原子力安全・保安院が「安全宣言」している。

 去る1月16日には、第二原発3号機の「安全宣言」がされているまさにそのときに、残留熱除去機器冷却系の水漏れ事故が進行していたのに異常なものを「安全だ」と国は繰り返し言っているのである。「国も東電も同じ穴のムジナ」という事態はなんら改善されてはいない。

 しかも東電は、第一原発5号機の廃液24トンを保安規定に違反して放射能を測定せずに放出した。県民の信頼を失墜している体質の老朽化もきわめて重大である。

1) 老朽化した原発の寿命と安全性を徹底的に検証することに、県は足を踏み出すこと。

2) 県は核燃料サイクル見直しの立場を貫き、東電に対し、原発サイト内へ使用済み核燃料をとどめさせ、満杯になったら原発を止めるよう働きかけること。

3、県の財政運営について

 財政構造改革プログラムを点検するにあたり、県は「概ねプログラムの趣旨に沿った財政運営ができた」と言っている。しかし、3年間の財源確保合計800億円に対し、歳入は593億円の大幅な見込み違い、歳出は、浪費県政のツケを県民や県職員に押しつけることによる321億円の超過達成であり、とても「趣旨に沿った」などと言える代物ではなく、プログラムの破たんである。

1) プログラム期間を弾力的に見直すことを含め、プログラムそのものを見直すこと。

2) トラハイ・小名浜人工島への支出は中止・凍結すること、首都機能移転誘致事業は中止すること。

3) 公共事業の内容を福祉・医療・教育・環境など生活関連型に転換し、地域での仕事の確保、地域経済活性化に資するようにすること。

4、県民生活と市町村への支援を

(1)市町村合併について

市町村が元気に住民の暮らしを守り、個性ある地域づくりにとりくめるよう、市町村への支援を強めること、その際、合併せずに自立する自治体をめざす市町村への支援を具体化することを、あらためて強く求める。

(2)雇用対策

県内経済と雇用環境は一向に回復せず、正社員の雇用が減り、パートやアルバイト・派遣などの不安定雇用が以前より増えている。県自身が数値目標をもって公共部門の雇用を増やすことがますます求められてきている。

1) 新規学卒者への支援を引き続きすすめること。そのためには各学校へ配置されている就職支援員を就職希望者が多い高校に1名ずつとし、そのノウハウも蓄積するしくみをつくること。

2) 未就職新規高卒能力開発支援事業を使い勝手のよいものに改善すること。

3) 福祉・医療・教育・環境関連の施策を充実し、雇用につなげること。

4) 障害者の仕事を増やし雇用を増やすこと。

(3)国保税

県は市町村国保会計へ独自の財政支援をしていない全国9県のうちの1つである。リストラ、失業、倒産など経済的理由による加入者が増える中、滞納者が17.14%と急増している。市町村では保険料の引き上げを検討しているところがでているが、これ以上県民負担を増やさないようにすべきである。

1) 市町村国保会計を健全化させるためにも、保険料負担を増やさないためにも、市町村の判断で基金を取り崩せるようイコールパートナーの立場で助言すること。

2) 国保は最後の保険といわれるように、県民の命綱である。資格証書や短期保険証の発行をやめさせること。

(4)医療

1) 申請率が全国平均より低い高齢者高額医療費の償還払いを徹底させること。

2) 社保の乳幼児医療費窓口無料化を実施できるように支援すること。

3) 難病支援センターの窓口設置を急ぎ、スタッフの充実を図ること。

4) 小児救急の電話相談体制を早期に確立すること。

(5)子育て環境と教育の充実を

1) 保育所、学童保育をさらに充実すること。

2) 30人学級を全学年で実施すること。せめて、中2への30人学級を実施すること。

3) 県立高校授業料の滞納者を理由にした子どもへのしわ寄せはおこなわないこと。

4) 子どもの読書を推進するために学校司書の増員、学校図書館を充実させること。

(6)人権・男女平等社会の推進

1) DVなど女性のための相談・支援センターが開所したことは大いに歓迎するが、スタッフの増員、弁護士費用などの財政支援をすすめること。

2) 県の男女平等推進条例具体化をすすめ、子育てと家庭の両立支援、性差別をなくすとりくみなど、具体的数値目標をもってあたること。

3) 障害者支援策の充実のためアクションプログラムの見直しをしながらすすめること。

(7)農業

1) 政府の米政策では県内の米農家は立ち行かなくなる。アクションプランやビジョンの作成にとどまらず、本県農業を支える小規模家族経営農家への支援を強化すること。

2) トレイサビリティについては農家負担にならない方策で消費者に安心な農産物を提供できるようにすること。

3) 家畜排泄物処理対策への支援を充実すること。

4) 県の自給率100%への取り組みを具体的目標をもって推進すること。

5) 農家経営を安定させるために県の農産物の価格保障制度を充実させること。

(8)「まちづくり」への支援

1) 今年3月に広域まちづくり検討会から提言された内容にそって、大型店の進出を立地の段階から規制できる実効ある県条例制定に向けた検討をすすめること。

2) 既に立地している大型店については、地元への社会参加を促すことや地元雇用に貢献するなどルールある共存を求めること。

3) 中心市街地の活性化のための支援、既存商店街振興への取り組みを支援し、高齢になっても暮らし続けられるまちづくりをすすめること。

5、警察

1) 全国で警察の「裏金作り」が問題になっているが、本県でもこの問題について自ら公表すること。

2) 消費者をまきこむ犯罪が後をたたないが、未然防止に力を注ぎ、県民の安全を守ること。



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