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6月定例議会に関する要望書
2006年5月26日

福島県知事
 佐藤 栄佐久様


日本共産党福島県議会議員団
団長 神山悦子
幹事長 長谷部淳

はじめに
 新年度がスタートしてはや2ヶ月が過ぎようとしていますが、4月から改悪された介護保険制度や「障害者自立支援法」がスタートし、利用者や事業所に新たな困難がもたらされています。
 今年4月26日で小泉内閣は発足6年目に入りましたが、小泉政権が壊したのは国民のくらしと平和、アジア諸国との友好と信頼です。しかも、小泉「構造改革」路線はあらゆる分野で「格差」を生み出し、県内でも非正規雇用の拡大、社会保障の破壊、庶民大増税などで、深刻な経済格差と貧困の格差が広がっています。
 ところが、今開かれている国会では、命にまで格差をつける医療改悪法案が衆院で強行採決されました。さらに、日本を再び戦争のできる国にするため、共謀罪、教育基本法改悪、憲法改悪のための国民投票法案まで次々と提出し会期内の成立をねらっています。
 最近、弱い立場の子どもたちに対する凶悪事件が連日のように報道されていますが、格差を生み出す異常な競争社会が、すさんだ人間を作り出していることの表れではないでしょうか。
 こうした点から6月定例県議会にあたっては、県民への冷たい仕打ちをきっぱりとやめ、(1)大型プロジェクト見直しのいっそうの徹底をはかること、(2)地域での仕事確保をはかり、経済活性化にも資するようにすること、(3)県民の暮らしを守り、市町村の個性ある地域づくりにとりくめるよう、市町村支援を強めることを柱に、以下の項目について要望するものです。

1、「三位一体改革」による地方交付税削減について
 小泉内閣は、「構造改革」路線をさらに推し進めるとして、地方交付税の削減を内容とする「新型交付税」の導入を公表しましたが、自治体の人口と面積を基準とする方式に切り替えるという内容は、人口の集中する都市部には有利であっても、地方はいっそう切りすてられます。この間、地方交付税削減が地方自治体の予算に支障を及ぼしていることや、過疎・高齢化の進行などの地方の実情をみない非情なやり方です。
 そもそも私たちは、「三位一体改革」については、知事が主張している「地方分権の推進」は幻想にすぎないこと、本質的なねらいは、国の赤字のツケを地方へまわし、地方への財源を減らすことだと再三にわたり指摘してきました。
 しかも、本来国が責任を負うべき義務教育費や社会保障関係費予算を削減し、地方への補助は5.2兆円削減したのに、それに見合う税源移譲は3兆円、交付税化の0.8兆円と合わせても3.8.兆円に過ぎません。これは、長期的にみれば住民サービスの低下につながる重大な内容です。
 (1) 今回の「新型交付税」を単純に自治体の人口と面積で配分するやり方は、露骨に地方自治体をきりすてるものであり、ひいてはいっそう住民サービスの低下と負担増をもたらすもので認められません。
 国に対しこれを明確に指摘するとともに、地方への削減をやめ、責任をもって地方財源を保障するよう求めること。

2、医療事故の原因究明・再発防止のしくみづくりを
 (1) 医療事故の際の最大の課題は、原因究明・再発防止と被害者補償です。
 2004年12月17日、県立大野病院で帝王切開手術中に大量出血して患者さんが亡くなりました。この医療事故で亡くなられた女性とご遺族に心から哀悼の意を表します。
 この医療事故については、発生翌日には保健所へ報告。2005年1月から3回にわたって事故調査委員会が開催され、3月30日には調査結果を公表しました。この調査に基づいて、県は関係者の懲戒処分を行ないました。
 県警はこの医療事故から1年以上もたった今年2月18日、執刀した産婦人科医を逮捕し、福島地検が3月10日に起訴しました。4月14日には、県警本部がこの医師を逮捕した富岡署に本部長賞を授与したとのことです。
 県警による医師逮捕後のこうした一連の経過をめぐっては、全国の医療関係者から驚きと疑問の声があがっています。
 私たちとしても、今回の県警による対応は、医療事故の原因究明と再発防止になじまず、医療にたずさわる人たちを無用に萎縮させるもので、疑問があると言わざるを得ません。
 今回の事件の背景として、産婦人科医師の深刻な不足、医師の過重労働などの問題が事故調査委員会の報告書を始め、多方面から指摘されています。
 県民が安心してかかれる医療を実現すること、医療事故が発生した場合には、原因究明と再発防止、被害者の救済をすみやかに行なうことがまず求められること、産婦人科医の養成や労働条件の整備などの短期・長期的政策が求められていること、医師個人の刑事責任を追及するのはこうした医療の実現にはなじまないことなど、県民医療を充実させるための認識が共有できるように、知事は県警に申し入れること。
 (2) ひとつの医療事故から教訓を学び、同様の事故を二度と起こさないようにすることは、医療関係者が安全性向上のために率先して役割を発揮するとともに、行政機関あげてとりくむべき課題です。
 医療機関・患者双方からの相談窓口ともなり、医療事故を調査し、原因究明・再発防止に役立てる第三者機関を県として設置すること。
 (3) 医療行為に過失がなくとも、患者の期待と医療結果との不一致による医療紛争は発生し、裁判におよぶことはあります。仮に裁判が長引けば、患者、医療者双方にとって大きな負担となります。
 訴訟に至る前に事故原因を明らかにし、被害者・医療機関の間を調停し、裁判によらない紛争解決のできる機関の設置、および無過失補償制度の創設は、5月8日に福島市で行なわれた衆議院厚生労働委員会地方公聴会でも、医療関係者から強く要望されたところです。
 県として、国へ実効あるこうした機関の設置・無過失補償制度の創設を強く求めること。

3、国民健康保険について
 近年、国保税の値上がりによって「払いたくとも払えない」加入者が増え、ペナルティーとして資格証明書や短期保険証が発行され、実質的に無保険者が増加していますが、県民が安心して医療を受けられる機会を奪うことにつながるものです。県のいうように、「実施主体は市町村」としているだけでは県民の命は守れません。具体的な県の対応を求めます。
 (1) 市町村国保財政への県独自の助成をすること。
 (2) 昨年1月31日に厚労省は、失業者が増加しているため、国保主管課(部)長会議で「近年リストラなどによる自発的な離職者が国保の被保険者となるケースが増加しているが、失業や事業所の急廃止等により、収入が激減した被保険者の中には、前年所得を基準とした保険料の賦課が重いといったような声が聞かれる。保険料の減免・徴収猶予は、あくまでも市町村の自主的判断で行うものだが、今の経済状況を踏まえ、できるだけ配慮していただきたい」との見解を示しています。これを市町村へ県が文書で徹底するとともに、地方税法717条で減免対象としている「被災者、貧困により、公私の扶助を受けるもの、その他の特別の事情があるもの」について、県として明確な基準を持つこと。
 (3) 県が交付する調整交付金の算定に、市町村が独自に行う減免実績をふまえるようにすること。単に収納率による交付金の差をつけるようなペナルティーを行わないこと。

4、改定介護保険の実態把握を
 4月1日から改定介護保険が実施されています。国が準備不足のまま見切り発車させたため、自治体でも事業所でも混乱が生じています。その影響が利用者に及んでいることが最大の問題です。
 介護が必要な人を必要な介護サービスにつなげることは自治体の義務であり、権限であることを県も市町村もあらためて認識し、地域における以下の実態をつぶさに把握し、その実態に即した対策をとるよう強く求めます。
 (1) 税制改定による諸控除の廃止で、住民税非課税だった人が課税になって、収入が変わらないのに保険料区分が上がってしまう人はどれほど発生したか。
 (2) ケアマネジャーのケアプラン作成数の変更や報酬減により、民間事業者がケアプランづくりから撤退したことにより、いわゆる「ケアマネ難民」がどれほど発生しているか。
 (3) 通院介助・福祉用具貸与が新予防給付では保険対象外になったことにより、「貸しはがし」にあった人はどれほど発生しているか。
 (4) 昨年10月から施設での居住・食費が保険からはずされたことにより、施設からの退所、ショートステイやデイサービスなどの在宅サービスの制限といった影響がどれほど発生しているか。
 (5) 各市町村が、介護保険のかなめであるケアマネジャーやホームヘルパーの人数・勤務形態などを十分把握し、やりがいを感じて働けるよう、必要な支援策を県とともに実施できるしくみがどうなっているか。

5、「障害者自立支援法」施行について
 昨年10月末、国会で「障害者自立支援法」が成立し、今年の10月から本格施行となりますが、すでに利用者負担は4月から始まりました。この法案は、国の財政支出を抑えることが目的ですから、対象者を減らし、サービス利用を抑制させるしくみになっています。
 それにしても現段階においても準備不足、応益負担導入による負担増、報酬切り下げによる事業所の経営難など、大変な困難がもたらされています。すでに郡山市内の3つの作業所が閉鎖に追い込まれました。
 また、障がいが重いほど負担が増える応益負担が導入されたことから、実施を目前にした3月の時点で、母親が無理心中を図って障がい者の娘を殺害するという痛ましい事件も発生しています。
 (1) 市町村の基盤整備を県も支援すること。
 (2) 小規模作業所の国庫補助廃止を撤回するよう国に求めること。
 (3) 小規模作業所への県単加算分の単価補助を元に戻し、補助の削減をやめること。
 (4) 利用者負担の減免策を県としても行うこと。
 (5) 重度心身障がい者の入院時食事代の自己負担分を全額助成対象とすること。

6、老朽原発への対応について
 2月議会閉会前後からだけでも、老朽化による原発のトラブルは後を断ちません。3月14日には沸騰水型原子炉の心臓部である再循環ポンプが自動停止したのを始め、同17日には2-4の再循環ポンプ軸封部トラブルによる交換、同23日には2-3の原子炉再循環系配管で全周にわたってひびが入るというきわめてまれな事態、今月に入ってからも運転再開したばかりの2-4で発電機ダクト部油漏れにより5月15日に再び手動停止、18日に1-2の配管つなぎ部損傷、22日には起動操作中の1-6でタービンの自動停止、翌日同機の主蒸気配管弁から放射能を含む蒸気漏れ、などと続いています。
 (1) 「高経年化対策」という名の老朽原発の酷使をやめさせ、廃炉計画を明確にさせることをあらためて求めます。
 (2) 未知の断層による最大の地震を想定して見直される原発の耐震指針に沿って、事業者がすみやかな調査と再評価に基づき、必要な措置を講ずるよう求めること。

7、農業を基幹産業に位置づけて
 いま国会では、農政改革関連法案が審議されています。この法律は、「品目横断的経営安定対策」という新たな政策をすすめるためのもので、これまで作物ごとに行ってきた価格政策をすべて廃止し、ごく一部の大規模経営だけを対象に助成金を出すという内容です。
 農政改革関連法案は、大きな問題点を含んでいます。第一の問題は、これまで品目(米や麦、大豆、原料用バレイショ、テンサイ)ごとに実施してきた価格対策を廃止することです。第二の問題は、新たな経営安定対策の対象がきわめて限定されることです。第三の問題は、たとえ「担い手」と認定されても経営が安定する保障がないことです。第四に、生産者米価の下落をいっそう促進することです。
 この「対策」が本格的に実施されれば、生産の大半を担う農家経営が大きな打撃を受け、営農を続けられなくなります。田畑が荒れ、食料自給率がいっそう低下するのは必至です。県として以下の対策を求めます。
 (1) 現場に混乱をもたらす「対策」を中止することを政府に求めること。
 (2) いま存在する多様な農家経営を大事にし、できるだけ多く維持する支援策を持つこと。
 (3) 非農家からの新規参入者などに手厚い支援をおこなうこと。
 (4) 地産地消や直売所など消費者・住民との共同を支援すること。
 (5) 担い手支援は、価格保障に所得補償を組み合わるよう政府に求めること。

8、教育基本法の改悪を許さないこと
 教育基本法は、憲法の「理想の実現は、根本において教育の力にまつべきもの」として定められたもので、「教育の憲法」と言われています。今回の改悪案ではこの一番大切な文章を全部なくしてしまいました。
 改悪案は「教育の目標」に「国と郷土を愛する」と書き込みました。「愛国心」は、戦前、子どもと国民を侵略戦争に駆り立てる道具として使われた特別の歴史をもった言葉です。改悪案が教育の目標に「愛国心」や「公共の精神」を掲げ、それを強制する学校につくりかえようとしていることは重大です。
 また、改悪案は教育基本法の「教育は・・・国民全体に直接に責任を負って行われるべき」「教育行政は・・・諸条件の整備確立を目標として行われなければならない」などの条項をすべてなくしてしまいました。そして、政府が「教育振興基本計画」を定め、国会にもはからず進めることができるとしています。これでは競争の強化や学校間格差拡大など、時の政府の思いのままに、教育がすすめられることになります。
 自民・公明両党は、マスコミにも公開せず70回に及ぶ密室での検討会を繰り返してきました。日本の教育の未来を、子どもたちの意見も、保護者や教職員の意見も聞かず、一部の政治家だけで決めてよいのでしょうか。教育の基本を決める大問題です。国民を置き去りにしてつくった改悪案をいきなり国会に提出し、数の力で押し通すことは許されません。
 県に次のことを求めます。
 (1) 教育基本法の改悪に反対することを県として表明すること。
 (2) 教育基本法を学校と社会に生かすこと。

9、商業まちづくり推進条例について
 本年10月からの本格施行に向けて、県の基本方針の中間とりまとめに関する 意見公募(パブリックコメント)には、全体で8,800件寄せられ、そのうち約6,600件の7割以上が賛同意見だったとのことですが、私たちとしては次の点を求めます。
 (1) 10月施行前の駆け込み出店については、県の条例制定の趣旨を生かす立場で厳しく対処すること。
 (2) いわゆる農振法27号計画は、農地転用をしやすくなっていることから、安易な大型店の出店につながる恐れがあります。国に対し「27号計画」の廃止を求めるとともに、県としては農業振興を図る立場から、農振地域への大型店出店は認めないこと。
 (3) 市町村の基本計画づくりを支援すること。 

10、その他
 (1) 県営住宅の退去時の敷金返還については、修繕費の費用を相殺できるようにするなど、利用者に対する柔軟な対応に改めること。
(2) 児童相談所の機能を充実させるために、施設の改善や相談員の増員を全県的にすすめること。

以上



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