県の施策に関する要望書
社会的弱者と地方を切り捨てる国の制度改悪のもと、県民の生活、市町村の運営はますます厳しくなってきています。そういった中で県が広域自治体として、県民の命とくらしをまもるために果たすべき役割は大変重要になってきています。県は国の弱者・地方切り捨てを看過せず、県民にとって防波堤としての役割を果たすべきであり、その立場に立って緊急に以下のことを求めます。
【総務部】
1.県が無償で貸与を受けている土地について
郡山市のハイテクプラザ、ビッグパレットなど21件をはじめ、市町村有地を無償貸与で使用している県施設などのあり方を、早急に有償に改めること。
2.水道事業について
福島市の上水道は、福島地方広域水道用水供給企業団の本格給水にあわせて、07年度から必要な水道水の約95%を企業団から購入することとなります。05年4月から値上げとなった福島市の家庭用水道料金は「全国一高い料金」と新聞で報道されるなど、市民にとってこれ以上の値上げは許されません。
必要のない巨大なダムを造った責任は国にありますが、過大な水需要予測をもとに、大規模な浄水施設を持つ企業団を作らせた責任は県にあります。その結果、福島市をはじめ企業団構成の自治体は、市民に高い水道料金を課さねばならないという事態を招いています。次の事項について県の特段の配慮を求めます。
・企業債借り換えの条件を緩和し、利子負担の軽減を図ること。
・「ダム維持管理負担金」「ダム納付金」に対して、県が超長期分として負担した4万9千トンに見合う金額を、県が企業団に助成すること。
【企画調整部】
1.一部郵便局での集配業務廃止について
福島県では普通、特定局合わせて147ある集配局のうち22局(約15%)で集配業務が廃止される計画ですが、今年10月に6局、来年3月に16局が無集配化される予定となっていることが地元紙にも報道されました。(6月28日付「福島民友」)政府は郵政民営化法制定の審議に当たって、地域サービスを低下させないことを明言しています。サービス低下につながる集配業務の廃止の検討をやめるよう、政府に県としても強く要望すること。
【保健福祉部】
1.障害者自立支援法の施行にともなって
障害者自立支援法が4月に施行され、障害者とその家族に、また施設の運営に、さまざまな困難を生じさせています。特に、1割の利用者負担は、障害が重い人ほど負担が増えることとなり、自立支援とは名ばかりで、逆に自立を妨げる実態となっています。
また、小規模作業所では、経過措置があるものの、法人化できない事業所は閉鎖を余儀なくされるのではという不安を抱え、仮に法人化できたとしても継続が可能か不透明だとの声が上がっています。そうしたなかで県の助成を削減したことは大きな問題です。
・1割の利用者負担を見直すことを国に強く求めること。
・負担軽減を県独自にでも行うこと。
・削減された県の助成を元に戻すとともに、廃止された国の運営費補助に見合う助成制度を創設すること。
・児童福祉施設に措置されている障害児については、現在の措置を継続すること。
・10月から実施される諸制度について、職員、保護者、関係者への説明を、ただちに実施すること。
2.医師不足問題について
国の医療制度上の問題による医師不足・偏在と、地方でのとくに公立病院経営の困難さは全国的な問題となっていますが、福島県内の実態は、この2年間で医師の実人数が減少しており、慢性的な県立病院での医師不足をはじめ、地域の中核的病院での医師の退職、欠員が深刻になっています。また県立大野病院での産科医逮捕がこれに拍車をかけています。
例えば国見町の公立藤田病院は、伊達郡市(郡市合計で人口約12万人、面積約500km2)で唯一産科のある病院でしたが、医師不足で現在外来のみになっており、伊達郡・市で出産できるのは医院・クリニックが3軒のみとなっています。
いわき市では地域の中核的病院である福島労災病院で産婦人科が休診。小児科医不足も深刻で、市立病院でも午後の急患診療は、紹介状持参か救急車搬送に限られ、重症の場合は仙台市の病院に運ぶケースも出ています。また同市勿来地域では地域の中核的病院の呉羽総合病院が小児科を休診し、同地域での小児救急対応ができない事態にまでなっています。
また、南会津地域で唯一の「病院」である南会津病院では、整形外科医が非常勤1人体制となったため、手術や入院もできない状況になっています。
この医師不足とあいまって、度重なる医療改悪・診療報酬制度改悪などで、地方の地域医療で中核を担ってきた一定規模の公立病院が大変な経営困難となっており、医療の地域間格差は拡大し続けています。医師不足の解消と医療の格差を是正し地域医療を保障することは緊急の課題です。
・県として医療機関・患者双方からの相談窓口ともなり、医療事故を調査し、原因究明・再発防止に役立てる第3者機関を設置し、同機関に訴訟に至る前に事故原因を明らかにし、裁判によらない紛争解決ができる機能を持たせること。
・医師を一定期間へき地に勤務させることを、財政的にも研修などの体制的にも保障したもとで推奨する制度を創設すること。
・地域医療を保障する観点から、必要な公立病院への医師の派遣体制を県として予算も措置して保障すること。
・社会保険二本松病院は、同地域にとって唯一の公的病院であり、市民生活にとっても必要不可欠な病院となっています。同病院の公的病院としての存続を県としても国に強く要望すること。また現在常勤医師のいない小児科の問題など医師不足も深刻です。二本松病院の果たす公的役割をかんがみて、県の責任として医師を確保・派遣すること。
・療養病床と一般病床を区分し、これまで療養病床を促進しておきながら今度はそれを縮小させることをはじめ、猫の目のように右往左往する医療行政に、命を救う現場が混乱に陥っています。病床区分とそれに付随する診療報酬制度は地方の中核病院の実態にそぐわない「病院つぶし」であり、即時改善することを国に強く要望すること。
3.県中児童相談センターについて
県中児童相談センターを児童相談所として格上げし、県中地域に児童養護施設を設置すること。
4.食肉衛生検査所について
郡山市食肉衛生検査所運営への県費助成を行うこと。
【土木部】
1.下水道事業について
(1) 福島市では、下水道事業債の残高は720億円(05年度末)。一般会計予算にほぼ匹敵する額となっています。これ以上起債を前提に事業を進めるべきではありません。広大な面積の市域と地形を考慮した下水道事業のあり方を検討するべきです。また市の処理施設も老朽化し、建て替えを検討する時期でもあります。
・下水道事業については、市街化区域内の合併浄化槽設置も助成対象とすること。
(2) 猪苗代湖の水質保全のために郡山市で進めている湖南特定環境保全公共下水道に対して、特段の配慮、助成を行うこと。
2.県道整備について
・旧国道114号線「大仏橋」ガード下の排水対策をはかること。
・国道459号線の整備促進をはかること。とくに「舟引〜宮古間」の道路改良、「藤沢〜見頃間」の道路改良および冬期間の通行止め区間の解消をはかること。
・県道「小倉寺・大森線」、「福島・飯坂線」、「渡利・山口線(山崎地内)」の改良、拡幅工事の促進をはかること
・「喜多方・西会津線」慶徳町〜最明寺間の慶徳峠の道路改良整備促進をはかること。
3.阿賀川旧河道の再生について
喜多方市内の阿賀川下流袋原捷水路開削工事により、蛇行部の河川(以下「旧河道」という)が残され、改修前の姿をそのまま今に伝えております。阿賀川改修事業の歴史を後世に伝える資料としても大変貴重なもので、素晴らしい景観を有する場所でもあります。
また、全国的にも有名なヘラブナの釣り場として利用され、多くの釣り愛好者に親しまれてきました。しかし、当該旧河道は取水口がなく、水が流れないことから、近年は水質の悪化が急速に進んでおり、危機的状況にあります。
近年、同様な旧河道再生の事業が各地で行われていますが、阿賀川旧河道の再生が行われれば、水質浄化を進め、漁場として復活するだけでなく、河川環境や景観保全が進みます。ついては、当該旧河道の再生に取り組むこと。
【生活環境部】
1.有害鳥獣被害について
サル、熊、イノシシなどによる農作物への被害が、県北一円に拡大しています。電気牧柵の設置に助成がなされていますが、効果を挙げておりません。駆除隊の出動も大変な状況です。被害の拡大を防ぐ対策が急がれます。
・特定鳥獣保護管理計画を早急に確立すること。
・計画には、「生息区域」「緩衝区域」「捕獲区域」とのゾーニングを設け、効果的な駆除が可能となるような対策を講じること。
【教育庁】
1.「全国一斉学力テスト」について
07年4月24日に、全国一斉学力テスト実施が計画されています。それにともなって、福島県教育庁教育指導領域参事から「修学旅行の変更をお願いする」との通達が出されています。
1956年度に始まった「全国一斉学力テスト」は、模擬テストが横行したり、平均点を上げるために先生が答えを教えたり、勉強のできない子を当日休ませたり、といったことが行われ、社会的な批判が高まって1966年度に廃止されたものです。
学校ごとのテスト結果が公表されない、あるいは流出しないという保障はありません。全国一斉学力テストは、子どもたちの学力向上につながらないばかりか、いっそうの競争をあおり、子どもたちの成長に取り返しのつかない弊害をもたらすものです。
・子どもたちに取り返しのつかない弊害をもたらす「全国一斉学力テスト」に、県としては参加しないこと。
2.「愛国心」評価の通知票について
県内18の学校で、「愛国心」など内心・心情の問題を評価する通知票を使用していたことが明らかになりました。5月24日、日本共産党の志位和夫委員長の特別委員会質問に対し、小泉首相は「これで子どもを評価するのは難しいと思う。あえてこういう項目をもたなくてもいいのではないか」と答弁しています。また、小泉首相に続いて26日の特別委員会では、小坂憲次文部科学大臣が「内心についての強さを評価でABCつけるなどとんでもない」と答弁しています。
・県教育委員会としては、こうした国会での答弁を受けて、市町村教育委員会へ慎重な対応をするよう徹底すること。
【警察本部】
1.民間監視員による駐車違反取締り強化に関して
6月1日から、民間監視員による取締りが全国一斉に始まり、配達・集荷・運送にかかわる業者などから悲鳴が上がっています。また、福島市当局とのやり取りでは、介護保険に関わる駐車許可について、ホームヘルパーは許可車両とされるのに、ケアマネージャーの場合は一軒一軒許可をとらなければならないという事態になっているなどの実態も出ています。
・運送関係者や医療・福祉関係者などが安心して仕事ができるよう、実態に見合った対応をするとともに、必要があれば県条例の改正も行うこと。
・運送業者が「配達中」の表示をすれば、取締りの対象としないこと。
・業務上やむを得ない場合の「許可証」発行を簡略化し、実情に合わせた対応とすること。
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