原発の維持基準導入についての考え方について
福島県議会議長
エネルギー政策議員協議会会長
遠藤 忠一 様
本県にとって、2002年(H14)8月に発覚した東京電力の検査記録の改ざん・事故隠しは、県民の信頼を根底からくつがえす重大な不正事件でした。また国においても、監督官庁である原子力安全・保安院が申告を受けていながら、一切地元に伝えないという背信行為を行っていたことは、二重に県民の信頼を損ねたものでした。
6月20日のエネ協では、原子力安全・保安院と東電から維持基準導入について、その後の経過と対策について説明を受けましたが、以下の3つの角度から、問題点を指摘するものです。
一、 維持基準の検査体制について
30年以上経過した老朽原発が、本県では10基中5基もある中で、老朽原発を酷使しようと維持基準を導入すれば、かえって危険が増大します。しかも、配管等のひび割れが発見された場合に、3段階に分けて対応するとしていますが、その基準も明確ではありません。
また、技術者を養成するPD認証制度を設けたといっても、東電の有資格者はわずか3人であり、膨大な数の配管のチェックは不可能です。保安院も、東電の検査をバックチェックするに過ぎません。
二、原子力安全・保安院が規制機関としての役割を果たしているのか
10項目の意見書を提出した2002年と2005年の2度にわたる意見書で求めた原子力安全・保安院を推進機関から分離することについては、なんら前進はみられず、さらに、05年の意見書で求めた高経年化対策についても進んでいません。
さらに、定期検査の間隔を延長することは、かえってひびなどの進展を見落とす危険が増大することや、原発立地町からも意見が出ているように、高経年化に伴う県民の安全性の確保は担保できません。
三、東電の情報公開と県民に対する信頼回復のとりくみについて
東電の情報公開と信頼回復のとりくみについては、10項目の意見書が提出された02年以降も、06年2月の温排水のデーター改ざんや臨界事故隠し、さらに昨年の柏崎刈羽原発震災では、活断層隠しや断層の過小評価問題が次々と発覚しています。さらに今年6月には、放射線管理区域で18歳未満の少年を働かせていたことも発覚しました。
法令遵守と企業倫理という観点からみても、東電の体質が改善されたとはとうてい認め難いものです。
以上の点から原発の維持基準の導入は、さらに危険が増大するものであり、安心・安全を求める県民の理解は得られないと考えます。
また、予想されない大地震が頻発している中でもあり、慎重な対応を求めます。
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