県民の命、安全・安心を守る立場に立ちプルサーマルの受け入れは撤回を
福島県知事
佐藤 雄平 様
日本共産党福島県委員会
委員長 久保田 仁
日本共産党福島県議会議員団
団長 神山 悦子
県民の命、安全・安心を守る立場に立ちプルサーマルの受け入れは撤回を
福島県が示した、プルサーマル計画受け入れの技術的3条件について、経済産業省原子力安全・保安院は、「問題なし」とする検証結果をまとめ県に報告しました。日本共産党は、「プルトニウム利用政策」(「核燃料サイクル」)が、危険なプルトニウムを大量につくりだす政策であり、技術的に確立されていないことから、これを強行するならば、県民の命と安全、ひいては地球環境にとっても極めて重大な禍根を残すことになると考えます。以下の点について十分検討されて、知事がプルサーマルの受け入れを撤回されるよう重ねて求めるものです。
1.プルトニウム利用政策(「核燃料サイクル」)は技術的に確立していない
高速増殖炉「もんじゅ」の事故は、人類がプルトニウムを管理することのむずかしさを教えました。「もんじゅ」が14年5ヶ月ぶりに運転再開したからといって技術的な問題が解決されたわけではありません。青森県六カ所村に建設されている再処理施設についても政府の言葉とは裏腹に見通しはなく、高レベル放射性廃棄物の最終処分も見通しはありません。プルサーマルをとりだすところと、それを処分するところがともに破綻している、すなわち「核燃料サイクル」はサイクルとして確立していません。特に、使用済みMOX核燃料の処分先も処分方法も決まっていない中で、福島原発敷地内に保管・蓄積を続けざるを得なくなる問題は県民にとって受け入れがたい問題です。
プルサーマルは、MOX燃料の加工、輸送、運転の全過程で、ウラン燃料よりはるかに大きな被爆を伴うこと、「制御棒の効きが悪くなる」、「燃料融点が低下し、燃料破損の危険性が高まる」など炉工学的にも安全性の大きな問題があります。
プルサーマルをおこなうことによって、自然界には存在しない、長期にわたり大量に放射能を放出する物質を生み出します。これをどうやって管理するのかは、現在の人類の科学の到達では不可能です。
経済的にみても、プルサーマルはコストが高くて経済効率が悪く、大きな矛盾をかかえています。
2.「中間とりまとめ」が指摘している7つの問題点が何ら検証、解明されていない
前知事のもとで、長期の検討がおこなわれ、まとめられた、福島県エネルギー政策検討会の「中間とりまとめ」(2002年9月)が指摘している「7つの問題点」=(1)核燃料サイクルは現段階で必要不可欠なものと言えるのか、(2)核燃料サイクルは資源の節約、ひいては安定供給につながるのか、(3)経済性に問題はないか、(4)プルトニウムバランスはとられているのか、(5)高速増殖炉の実現可能性はどうなのか、(6)再処理は本当に高レベル放射性廃棄物の量を大幅に削減できるのか、(7)使用済みMOX燃料の処理はどうするのか、については、政策検討会の中でも「『中間とりまとめ』で問題提起したものに、国に真っ正面から答えてもらったことはない」とのべているとおりです。現知事のもとでこれらの問題点が検証されたとはとてもいえません。
昨年7月に再開された福島県エネルギー政策検討会議では、主に政府内閣府、資源エネルギー庁、東京電力などから報告を受けることが中心におかれ、結果として国や東電の言い分をうのみにしたものとなりました。
知事は今回、受け入れの条件として技術的な3つの点を示しましたが、これらの条件は、原発を運転するうえでは当然の前提です。問題は、「中間とりまとめ」が提起した7つの疑問に対して知事から納得ある見解が示されていないことです。子々孫々にかかわる重大な問題について、道理ある見解を示さないまま方針を転換することは到底認めるわけにはいきません。
3.県民の意見を聞かないで見切り発車しようとしている
昨年、エネルギー政策検討会議を再開する際には、会議を原則公開でおこなうとともに、「検討の過程においては、県民からの意見の聴取にも努める」ことを確認していました。しかるに、県民に対する直接的な説明の機会は一度も設けられてきませんでした。これほど重大な県政の方針転換が、内容の面でも手続きの点でも県民を無視しておこなわれようとしていることは許すことができません。
今からでも決して遅くはありません。県民に説明し、意見を聞く場を設けるべきです。
以上の問題に加えて、今回、本県でプルサーマルが実施されれば、全国では3例目となりますが、製造してから13年以上を経たMOX燃料を使用するは世界に例がないうえ、沸騰水型原発で実施するのも、30年以上たった老朽原発で使用するのも日本で初めてです。
知事はこれらの点を十分考慮され、県民の命、安全・安心を守る立場に立ち、受け入れ撤回の賢明な判断を下されるよう強く要請します。
(注)
福島県エネルギー政策検討会の「中間とりまとめ」(2002年9月)が指摘している7つの問題点
- 核燃料サイクルは現段階で必要不可欠なものと言えるのか。ウラン資源が安定的に供給されるのならば、ウラン資源の消費を節約するために実施される再処理は、現段階で必要不可欠なものと言えるのか。
- 核燃料サイクルは資源の節約、ひいては安定供給につながるのか。検討会において、1回の再処理の場合、高速増殖炉がなければ、10%程度の節約にとどまるとの指摘がされている。この程度の節約で再処理を行うのは再処理コストやバックエンドコストの不透明さなどを考えれば、果たして妥当といえるのか。
- 経済性に問題はないか。核燃料サイクルのコスト問題は、電力自由化が進展する中で、立地地域に大きな影響をもたらす重要な問題であるにもかかわらず、その積算基礎が十分明らかにされておらず、経済性の評価が困難ではないのか。
- プルトニウムバランスはとられているのか。高速増殖炉の実用化の目処がたたず、青森県大間町のフルMOX燃料装加も具体化していいない中で、六カ所再処理施設が稼働すれば、新たな余剰プルトニウムを生み出すのではないか。
- 高速増殖炉の実現可能性はどうなのか。原子力長期計画には「実用化への開発計画については実用化時期を含め柔軟かつ着実に検討する」とあるが、高速増殖炉実用化の目処は立たないのでないか。そのような中で、再処理路線を推し進めることは果たして妥当なのか。
- 再処理は本当に高レベル放射性廃棄物の量を大幅に削減できるのか。再処理のメリットの1つとして、高レベル放射性廃棄物の減容があげられているが、ガラス固化などにより、再処理前の使用済み燃料の半分程度の容積になるにとどまり、さらに直接処分と比べて低レベル放射性廃棄物が桁違いに多く発生するなど、そのメリットも総裁されてしまうのではないか。
- 使用済みMOX燃料の処理はどうするのか。使用済みMOX燃料は、第二再処理工場で処理する方針が打ち出されているが、現在の原子力長期計画においては、その建設目標年次の記述さえなくなっている。その実現可能性は極めて薄いのではないか。
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