2010年9月定例議会に関する申し入れ
福島県知事
佐藤 雄平 様
日本共産党福島県議会議員団
団 長 神山 悦子
副団長 宮川えみ子
幹事長 藤川 淑子
はじめに
参院選直前に民主党菅直人首相は、消費税増税について自民党が提案した「10%」の税率が「参考になる」と発言しました。しかし、参院選挙の結果は、消費税増税に対して「ノー」の審判を下したものです。
財政再建に消費税増税が必要という論理が出されていますが、借金の大本は過大な大型公共事業にあることは明らかであり、本県の場合も同様です。消費税増税に頼らなくとも、財源は軍事費などムダ遣いの一掃と行き過ぎた大企業・大金持ち減税の見直し、内需振興による税収増で確保できます。日本共産党は大企業減税の穴埋めの消費税増税には絶対反対です。
民主党は、米海兵隊普天間基地の問題でも、沖縄県内への「移設」を明記した日米合意を進めようとしています。
自民党政権と交代した鳩山前政権が国民の期待を裏切り、みずからの公約にも違反してわずか8カ月余で退陣することになったのも、アメリカと財界いいなりの政治を抜け出せなかったからです。消費税問題でも普天間基地の問題でも、アメリカと財界いいなりの政治からの転換なくして将来への展望は開くことはできません。
8月6日、知事はプルサーマル実施を正式に受け入れることを表明しましたが、これは県政上の大転換であり、県が2002年の「中間とりまとめ」で指摘していた「7つの疑問点」について、何一つ解明もなければ、問題の解決もされないままに強行されました。
同時に、県民の声を聞く点でも、最後まで公聴会などの場を持とうとせず、「7つの疑問点」を後景に置いたまま、「3つの技術的条件」をクリアしただけで受け入れ表明をしたことは、県自身の到達点を知事自身が投げ出したといわざるをえません。
一方、県民の暮らしをめぐっては、7月30日に福島労働局が発表した雇用失業状況では、県内の有効求人倍率は前月を0.03ポイント上回って0.43倍となり、持ち直しの動きがつづいているとされていますが、依然として雇用情勢は厳しい状況です。
また、7月末の新規高卒者への求人数は673件、2089人で、前年同期に比べ74件202人増えているものの、リーマンショック以前の08年度との比較では418件、2039人も少なくなっており非常に厳しい状況です。
貧困と格差の広がりが進むなかで、児童虐待は2009年度に全国の児童相談所が相談を受けた児童虐待の件数が約4万4千件と過去最多を更新して増加傾向にあり、いっそう深刻になっています。
9月定例県議会にあたっては、ますます深刻となる不況のもと、貧困と格差の解消とセーフティネットの拡充に力を尽くし、(1)不要不急の大型プロジェクト見直しの徹底、(2)地域での雇用確保をはかり、経済活性化にも資するようにすること、(3)県民の暮らしを守り、市町村が個性ある地域づくりにとりくめるよう市町村支援を強めることを基本に、以下の項目を要望します。
1、来年度予算編成について
民主党菅政権が掲げた消費税率の引き上げについては、今年7月に行われた参議院選挙で国民の厳しい審判が下っています。しかし、地方財政の厳しさを反映して、地方消費税率の引き上げを求める声があがっていますが、もし消費税を引き上げれば県民の消費動向や地域経済に与える影響は多大です。
地方消費税に頼らなくても、不要不急の無駄な大型開発に大胆にメスを入れて歳出を抑制するとともに、雇用の安定化、社会保障の充実で家計を応援し、さらに中小企業、農業、環境産業など地域循環型の経済基盤を強化することで県税収入の確保につなげれば、健全な財政運営は可能です。
こうして、県自身の財政運営のあり方を見直すとともに、国に対しては地方交付税の確実な配分を求め、社会保障関係費の増額を要求すること。
(1)公共事業のあり方について
- 不要不急の大型開発事業はきっぱり中止すること。
- 小名浜港東港地区建設は、現知事のもとで毎年事業費が拡大され、石炭船専用の港湾に位置づけようとしていますが、石炭を燃料として使用することは、県の地球温暖化対策の面からみても整合性がありません。
- 福島空港については、閉鎖に向けて検討に入ること。
- 県の建設事業への市町村負担を全廃すること。
- 流域下水道事業への県補助率を元に戻し、市町村を支援すること。
- 公契約条例を制定し、県発注の公共事業で働く建設労働者や、県の委託事業所で働く(出版・清掃・給食など)全ての労働者の賃金の最低基準額を条例で保証し、県民の安定雇用と県民サービスの質を守り、「官製ワーキングプア」をつくらないこと。
(2)農業や土木災害に対しては、速やかに対応すること。
- 緊急の災害による直接補助にとどまらず、被災農家の再生産を保障できるしくみをつくること。また、異常気象にともなう極地的な災害が頻発していることから被害額等の補助基準の引き下げを行うこと。
- 都市型災害ともいえる集中豪雨による市街地での雨水対策を行なえるよう市町村を支援すること。
(3)「地域主権」について
民主党政権の「地域主権」は、国の役割を限定し、地方自治体と県民に負担を求めようとしていますが、これは地方切り捨てと道州制につながるものです。憲法に基づいてすべての国民にナショナルミニマムを共に実現するという責任を、国が放棄することをやめさせ、地方財源の保障、国の責任による福祉・教育の充実を国に強く求めること。
2、プルサーマル実施の中止をすること
政策大転換に対し、県民に対しての明確な説明責任を果たさず、プルサーマル計画を実施したことに強く抗議をするものです。県の到達点である「中間とりまとめ」を後景に追いやり、3条件に矮小化したことは大問題であり県民は納得していません。改めて以下の点について申し入れるものです。
(1)プルサーマル実施受け入れの撤回をすること
(2)県民の意見を聞く場を県として設けること
(3)「中間とりまとめ」の「7つの疑問点」について明確な解答を示し、県民への説明責任を果たすこと
(4)安全確認のためのプロジェクトチームは徹底した情報公開に努めること
(5)福島第一原発3号機での労働者の被曝について、原因の徹底究明と対策を事業者と国に強く求めること
3、若者の雇用の確保をはかるために、緊急かつ系統的な施策を
(1)就職を希望しているすべての高校生が職につけるよう力をつくし、就職できなかった卒業生に対する資格取得や職業訓練のための支援(月10万円)をおこなうなど、直接的な支援を行うこと。
(2)政府に対し、生活支援金付き職業訓練の改善と拡充を求めること。
生活支援金の給付水準が、生活保護以下となっており、国に対して給付額を引き上げるよう求めること
(3)若者に、働く権利と相談窓口があることについて周知・徹底を図ること。
4、県民の福祉・医療の充実を
(1)県の制度として中学校卒業までの医療費無料化を
県内市町村で子ども医療費無料化年齢引き上げが進んでいます。県内の子どもがどこに住んでいても、安心して医療を受けることができるようにすることは広域自治体としての県の役割です。県の子ども医療費無料化助成制度の対象年齢を中学校卒業までにすること。
(2)児童福祉士の増員を図ること
長引く不況は、子育て世帯にも影響を及ぼし、児童虐待が増加傾向にあります。児童相談所の相談件数も増えていることから、専門的な体制強化が必要です。児童相談所の児童福祉士の増員を図ること。
(3)安心して介護を受けられる対策を
介護保険制度は導入から11年目になります。保険料が年金から天引きされ、利用料負担が高齢者世帯に重くのしかかっています。要介護認定が改悪され希望する在宅介護が利用できなかったり、介護施設が圧倒的に不足しているため施設に入れない事態が広がっています。
- 介護保険の利用料軽減策を実施する市町村に県の支援策を図ること。
- 不足している介護施設の増設に向け対策を強めること。
(4)市町村の国民健康保険に県独自の支援策を
国は後期高齢者医療制度に代わる制度として、国保と健保に再編し、市町村運営の国保を県が運営する方針をまとめました。しかし、財源は示されていません。現在、県内市町村は、厳しい国保財政のなか、子ども医療費無料化など先進的な制度をつくり県民生活を支えています。こうした市町村に対して国はペナルティを課しています。県は進んだ施策をとる市町村を励まし、後押しすることが求められています。
- 国民健康保険税減免を実施する市町村に対し、県独自の財政支援を図ること。
- 国民健康保険の一部負担金減免の基準に生活保護基準を適用することを徹底するとともに、各市町村に一部負担金減免を推奨すること。
- 国に対し、国保財政への国庫負担をもとに戻すように求めるとともに、国保の広域化に反対すること。
(5)特別支援教育について
県内の特別支援学校の生徒増加に伴い、教育現場は著しい過密状況となっています。児童・生徒の個性を尊重し、総合的な発達を保障する教育の場にふさわしい条件整備が急がれます。
- 県中地域に特別支援学校の新設を図ること。
- 特別支援学校の教員増を図ること。
(6)学校耐震化事業の促進を図ること
5、米価下落対策について
米価下落は、国が備蓄米を安値で購入したこと、米戸別所得補償制度の実施が米の買いたたきに拍車をかけたことなどが原因です。米価を市場に任せるのではなく政府や行政の対策が極めて重要です。
(1)08年産米を含む30万トン相当の備蓄米を適正価格で買い入れることを政府に求めること。
(2)県として、新潟県で実施されているような、米価の価格保障制度を創設すること。
6、住宅リフォーム助成制度を創設すること
地域経済活性化及び県産材の消費拡大で林業振興をはかるために他県で効果を上げている住宅リフォーム助成制度を創設すること。
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