2011年6月定例県議会に関する申し入れ
はじめに
3月11日の東日本大震災、原発事故からまもなく3ヶ月が経過しようとしています。しかし、原発事故はいまだ収束の見通しも立たず、計画的避難区域からの避難など、さらに避難者が増えるという事態にあります。
6月2日、自民・公明・たちあがれ日本の3党から提出された菅内閣不信任決議案の採決が行われました。国難ともいわれる状況のもとで、先の展望を示せないままでの不信任案の提出は党略的で無責任と言わざるを得ません。わが党は、これだけの危機的状況(大震災、原発事故)が続くもとで、賛成する態度はとれません。同時に、菅政権に対して信任できないという政治的評価はいささかも変わっておらず、採決には棄権しました。
国会で審議が開始された「復興基本法案」は、「基本理念」をあげていますが、中身がありません。復興の基本理念というならば、最低限の大原則として、第一に、1人ひとりの被災者が自分の力で再出発できるように生活基盤の回復を国の責任で行うこと、第二に、復興プランの策定にあたっては、あくまで住民の合意を尊重し、国はその財政責任を担うことを明確にすることが必要です。
さらに同法案は、「復興構想会議」を法的に根拠づけていますが、同会議では議論が始まる前から「復興税」が提起されたり、復興の進め方でも「上からのプランの押し付け」が目立っています。こういう会議に権限を与え、その提案を政府が受け止めるやり方について徹底審議で問題点を明らかにしなければなりません。
同法案では、原発事故に関する合議制の協議機関をつくるとしていますが、この合議制の機関の議論はあくまで復興構想会議の審議の結果に基づく枠内に限定させることを明記しています。未曾有の原発事故からの復旧・復興、賠償問題などに一元的・一体的に対処するには、現行法の枠内には納まらない取り組みが求められています。
また、原発事故の被害の広がりは、あらゆる産業、分野に及び、生活を維持する上でも、緊急の対策、賠償問題での早急な仮払いの実現が必要です。
警戒、計画的避難、緊急時避難準備のいずれかの区域に設定された9町村と3市町の一部地域内には約5500の中小企業と約6万人の雇用があり、その大部分が一挙に失われる深刻な事態です。県をはじめとした自治体による直接雇用も含めた大規模な雇用対策が強く求められます。
東日本大震災と原発事故の被害に苦しむすべての県民に寄り添い、その苦難の軽減に行政の持てる力を余すことなく発揮することが切実に求められています。
県政には、以上の観点に立って、次の具体的施策の実施を要望します。
1、特別立法制定と原発からの撤退を明確に
(1)原子力災害から県民のいのちと生活を守る特別法の制定と全面賠償を
- 今国会で議論されている震災復興基本法案は、知事が求めてきた原発事故問題についての合議制の協議機関をおくことができるとしたものの、原発事故をあくまで復興構想会議の審議結果に基づく枠内に限定させようとしています。これについての県の考え方を政府に対して示すこと。
- 前例のない大規模な原子力災害にみまわれている本県だからこそ、原発に起因するあらゆる賠償を全面的に補償させるため、また原子力災害の緊急対策、復旧、復興に一体的・総合的に対応できる特別法を制定することを引き続き国に強く求めること。
- 現行法のもとでも最大限の対応をすみやかに行なうよう国に求めること。
- 5月末に政府の原子力損害賠償紛争審査会における「第二次指針」が示され、風評被害や精神的被害への賠償も認められましたが、政府が指示した避難区域や出荷規制への損害などに限定しています。
いずれも原発事故がなければ受けなくてもすんだ被害であり、国の勝手な線引きで対象を狭めるのではなく、避難区域以外の自主的な避難や風評被害、精神的被害をふくめ、原発事故にともなうあらゆる被害について全面的な賠償を国に求めるとともに、東電にも責任を果たさせていくこと。
- 県として個人を含めあらゆる賠償の窓口を設けること。
(2)原発からの撤退を決断し、原発をゼロにする期限を切ったプログラムの作成を
今回の原発事故は、原発の危険性について深刻な問題点を衆目のもとに事実をもって明らかにしました。
いまの原発技術は、本質的に未完成で危険なものです。莫大な量の放射性物質=「死の灰」を内部にかかえる原子炉は、それを内部に閉じ込めておく絶対かつ完全な技術は存在せず、ひとたび大量の放射性物質が外部に放出されればそれを抑制する手段が存在せず、被害は空間をどこまでも広がり時間的にも将来にわたって、地域社会全体の存続そのものを危うくするものであることが明らかになりました。
- あらゆる英知を総動員し、原発事故の早期収束を国と東電に強く求めること。事故から2ヶ月以上もたってからメルトダウン=炉心溶融・落下していたことが判明するなど、東電まかせでは「工程表」はすすまないことは明白です。国の責任で原発収束の戦略と展望について、原発に関するあらゆるデータを直接掌握し、裏づけと根拠をもって明らかにするよう求めること。
- 今回の原発事故は、「安全神話」にどっぷりつかり、必要な耐震対策と津波対策をとってこなかった「人災」であることを東電と国に認めるよう求めること。
- 県の原発行政の到達点である「中間とりまとめ」の立場に立ち、核燃料サイクルからの撤退を国に求めるとともに、県自身も原発頼みのエネルギー政策からの転換を内外に発信すること。
- 東電は5月30日、耐震設計上考慮していない断層等をようやく公表しましたが、世界有数の地震国であり、世界1、2の津波国である日本に集中立地することの危険性が明らかになりました。全国の原発の安全性の総点検を求めるとともに、特に、福島第一、第二原発の現状を県自ら常に事態を把握するとともに、東電や国からの情報はただちに県民に公開すること。
- 福島第一原発と第二原発全10基の廃炉を明確にすること。
- 原発ゼロへ向かう期間は、危険を最小限にするためのあらゆる安全対策をとるよう国へ求めるとともに、原子力安全・保安院を推進機関から完全に分離・独立させこと。そのためには、強力な権限と体制をもった原子力の規制機関を緊急に確立するよう国に強く要請すること。
- 自然エネルギーの開発普及促進、低エネルギー社会への移行に真剣に取り組むこと。
地域循環型のエネルギーに取り組み、地元中小企業の仕事興し、雇用と就労の場の拡充にもつなげること。
2、放射能汚染対策の強化と県民の健康を守る施策に万全を
- 放射能汚染の計測を綿密におこない、県民に対して、専門的・科学的知見を踏まえた理解と納得のいく説明をおこなうこと。そのために、空間線量・土壌・水・海水の継続調査個所を増やし、検査体制の拡充と検査機器の補充をおこなうこと。また、それらの測定結果から全県の汚染マップを作成し対策を講じること。
- ヨウ素やセシウムだけでなく、ストロンチウムやプルトニウムなど、人体や土壌に影響が大きい全ての放射性核種を公表するよう求めること。
- 海洋に汚染水を流出せないよう、引き続き国と東電へ求めること。
- 子どもをはじめ県民の放射能被害への不安にこたえるため、放射能汚染とその影響を減らすためのあらゆる対策を講じること。
・子どもに関わる施設の除染および空調設備の設置をおこなうこと。
・震災と原発事故により、多くの児童生徒の心身が傷ついている実態があることから、8月1日の教職員異動は現場の実状も踏まえ、加配も含めて市町村教育委員会の意向も踏まえて実施すること。
・自家野菜や自家用地下水の放射能調査ができる体制を作ること。
- 基幹産業である農林水産業の復興に、放射能対策は不可欠である。県内全域の土壌汚染マップに基づき、大規模な除染計画をつくり実施すること。
- 福島県における放射能汚染対策研究費、および本県への研究者派遣を国の経費で実施するよう求めること。放射線アドバイザーを幅広い知見を代表する立場から選び増員拡充すること。
- 県民の健康管理と医療保障のための恒久的対策を国に求め、福島県立医大を放射線医療の拠点として整備すること。県民の内部被ばく量を測定するホールボディカウンターの配備を増やし、放射線量の高い自治体にも配備すること。
- 原発作業員の放射線からの防護の徹底、作業環境、生活環境の抜本的改善と長期戦に耐える作業員の安全確保体制を国に求めること。
3、被災者の生活支援と生活基盤の回復支援について
(1)被災者の救援・2次被害の防止
- 避難所の食事では温かい食事や野菜が不足している。入浴の回数やお金がかかることも解消されていない。間仕切りや医療介護など長期にわたっているので改善をする事。暑さ対策を行うこと。
- 仮設住宅の早期建設を進めること。コミュニティを重視した入居体制を図るとともにコミュニティの場所(集会所等)を確保すること。地元業者に建設の仕事が回るようにすること。
- 避難所から応急仮設住宅に入居することで生活費の負担がすぐ必要になる、民間住宅入居者の実態を把握しながら、仮設住宅入居者ともども食料などの支援物資が届くようにすること。
(2)復興は2つの原則で
- 一人ひとりの被災者が生活の基盤を回復できるように支援すること。
- 上からの押し付けではなく、「計画を作るのは住民合意で、実施は市町村と県・国が連携して、財政の大半は国の責任で」を原則に進めること。
(3)仕事・雇用・産業の再出発の希望が見える施策を
- せめてゼロからのスタートができるよう「債務の凍結・免除」を国の責任で進めるよう求めること。
- 今までの枠組みにとらわれない思い切った支援策を水産業・農業・商工業へ実施すること。
- 当面の生活を支える緊急雇用を実施するとともに、直接雇用も含めた大規模な雇用対策を実施すること。
(4)住まいの再建とニーズに応じた住宅政策を
- 被災者生活再建支援制度では、全壊でも300万円にとどまっている。支給額を抜本的に引き上げるよう国に求めるとともに、二重ローンの負担軽減を求めること。
- 地震で打撃を受けている宅地被害や一部損壊住宅に対しての有効な支援策を国に求めるとともに、「社会資本整備交付金」を活用し、一部損壊住宅を補修できる新しい制度をつくることを市町村に積極的に提起し、県がまとめて国に求めること。
- 被災者のニーズに合わせて低家賃の公営住宅を建設すること。
(5)被災者の生活を支える“公共”の再建を
- 公立・民間を問わず、医療・福祉の支援の強化を図るとともに、国に求めること。
- 学校への通学支援・買い物支援などの公共交通支援を行うこと。
- 自治体の職員も不眠不休の奮闘をしている。大規模な人員強化でスタッフを増やし被災者支援を強化すること。
|