東日本大震災・原発事故に関する申し入れ(第21次)
大災害から3カ月が経過、被災者は今なお復興の展望が見えず、不安な日々を送っています。仮設住宅や借り上げ住宅などに移った人からは自立が求められる生活への不安が出されており、被災者生活支援を継続して実施する必要があります。更に、放射能汚染の広がりで、年間積算線量が20ミリシーベルトを超える恐れがある霊山町石田地区などの新たな問題も出ており、県民の不安は増大の一途をたどっています。
こうした中で、国会では東日本大地震震災復興基本法が党略的に十分な審議も行われないまま、今月17日にも採決が行われるのではないかと伝えられています。原発事故という特別な困難を抱え、事故収束抜きには復興は考えられない福島県が原発事故に特化した特別立法を求めているにもかかわらず、東日本大震災復興基本法第13条は、「原発事故の調査審議を行う合議制機関を置くことができる。」としつつも「当該機関による調査審議は、東日本大震災復興構想会議による調査審議の結果を踏まえ委行われなければならない」として、原発事故対策を東日本大震災復興の一部に押し込める内容で復興基本法が決定されようとしていることにも大きな懸念を抱かざるをえません。県として、こうした状況を踏まえ以下の点について対策を講じられるよう申し入れます。
1原発事故災害対策について
(1)前回の申し入れで、現在審議されている復興基本法の下での対応という枠組みに異議を申し立て、特別立法制定を求める県民運動を急いで起こすことを求めてきたが、事態は全く別の方向に向かっている。 基本法の見直しを取り急ぎ強く国に求めること。
(2)県は、放射能による健康被害対策として全ての県民の健康調査の実施を打ち出した。放射能汚染対策を以下のような体系で実施すること
○まず全県を相当きめ細かくモニタリング調査を実施する。福島市は、市内3000箇所、伊達市が650箇所で大気中の線量調査を行うとしており、これを全県規模に広げる必要がある。
○土壌も同じようなきめ細かさで線量調査を行うこと。そのための機器の整備、職員体制の整備を行うこと。
県が土壌調査の実施を打ち出したが、JA県は県内5000か所の土壌調査を実施する方針を表明したことはもっときめ細かな土壌調査が求められていることを示している。
○大気中と土壌の放射線量調査に基づき、全県の汚染マップを作ること
○県民個個人の内部被ばく量の検査(WBC)を実施すること。そのための機器の配備、職員の配置を行うこと。
福島県は、200万人県民の健康調査を実施する方針を決定したが、問診、血液検査だけでは放射線の影響を正確に把握することは困難である。最も的確に被曝量を把握できるWBC検査を並行して実施してこそ、健康への影響を把握し減らすための適切な取り組みも可能となる。
○汚染マップと内部被ばく量検査によって、その結果の持つ意味を住民に分かるように説明することで、正しい理解と取るべき行動が判断できるようにすること。
○このような一体的な調査、対策を実施することによって、県民の理解と納得の下に、避難が必要な地区の判断、汚染された土壌の除染、優先的に実施すべき地区の判断ができるようにすること。
2放射能汚染に起因する全ての損害を賠償させる立場で、県民の生活、営業補償を東電と国に求めること。
国の損害賠償紛争審査会が出した第二次指針は、県民各層の批判と怒りの前に要求を一定反映せざるを得なくなったが、全面補償には程遠い。
農業への仮払い金は、34憶円の請求に対して僅か5憶円に留まり、中小企業には、250万円の限度額が設けられたため、とても事業継続できない。限度額を撤廃して欲しいという切実な要求が寄せられている。農家も自営業者も暮しと営業が成り立つ賠償を直ちに実施するよう審査会、東電、国に求めること。
精神的損害も賠償の対象にするとしているが、避難指示区域以外は具体的には示されていない。しかし、現在の県民を取り巻く放射能汚染による不安の広がりは、原発からの距離や避難指示の有無では到底区別できるものではなく、全県に及んでいる。これら全ての県民の精神的損害の賠償を審査会、東電、国に求めること。
3漁業者への生活支援策について以下の事項を実施すること。
(1) 相馬双葉漁協新地支所から、宮城県との入会権として払ってきた一隻当たり10万円の支払いを凍結して欲しいとの要求が出ている。県として対策を取ること。
(2) 漁に出られない漁民は、瓦礫撤去の作業で生活をつないでいる。この事業が継続されるよう第二次補正予算を直ちに編成して、休漁中の生活支援を行うよう国に求めること。
(3) 船は再建補償の対象になるが、網などの漁具は消耗品扱いで除外されている。網が無ければ出漁できず、この負担が漁業者の復興の妨げになっている。各種の網購入に助成を行うこと。
(4) 船が全損の被害でも、自宅が被災しなければ罹災証明が出ず、各種の支援制度が受けられない。これは漁業者だけでなく、仲買業者や加工業者からも同様の不満が出ている。ある漁業者は大学の授業料が払えず、漁協の組合長がやむを得ず無収入証明書を発行したという。生業の大本が被災した場合も罹災証明を発行して被災者として支援できるよう国に求めること。
(5) 船の保険掛け金の助成、納付の延期を関係機関に働きかけること。
(6) 国の沿岸漁業改善資金の償還凍結、償還期間の延長を図ること。
(7) 漁業者への仮払い金を早期に支払うよう、国と東電に求めること。
4相馬市は工業用地への仮設住宅建設で、その一角に商業施設を作りたいとしている。用地転用の同意を求められる知事は、事態の緊急性に配慮して、申請が出されたら直ちに同意を下ろし避難者の生活の利便性を高めること。
5子どもの放射線対策として、夏休み中希望者を長期的に比較的放射線量の低い地域に避難生活させて、のびのび遊ばせたいとの要求が各方面から出ている。県が事業として実施すること。また、民間の事業に助成すること。
6いわき市は、4月11日12日の余震による被災も加わり、住宅不足が当初見込んでいたより相当数にのぼる深刻な事態になっている。市と協議の上必要数の確保を図ること。
7瓦礫撤去に就労する際の賃金が、一日5000円程度に低く抑えら れ、就労をためらう人すら出ている。自治体が財政面で国の全額負担といっても、一部交付税に算入されるため実際は市町村負担になるとして、業者との契約を低く抑えていることが原因になっている。被災者生活支援の就労事業と言う性格に鑑み、適正な賃金が支払われるように自治体と業者を指導すること。
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