福島県知事
佐藤 栄佐久 様
日本共産党福島県議会議員団
団 長 神山 悦子
長谷部 淳
【はじめに】
昨年は台風や地震などの災害が多発し、あらためて災害への備えと支援のあり方が問われた一年でした。また、アメリカに追随する小泉政権のもとで、憲法の平和原則を踏みにじりイラクへの自衛隊派遣が延長され、ついに郡山と福島の自衛隊駐屯地からも自衛隊員が派兵されました。さらに、小泉内閣による弱者きりすての「構造改革」は、県内経済にも深刻な影響をもたらしています。倒産と失業問題、特に青年の雇用問題は社会の大きな悩みとなっています。
小泉内閣が01年4月の発足後、これまでに決めた国民負担増は、年間約7兆円にのぼります。さらに、05年度政府予算案に盛り込まれた負担増の年間約2兆円を加えると、1997年に橋本内閣が国民に押しつけた消費税増税と医療改悪などによる9兆円の負担増に匹敵します。当時よりも雇用や家計の状況が悪化している中での連続負担増は、消費をいっそう冷え込ませ「小泉大不況」を招くことになるのは必至です。
一方、地方自治体においても、11月26日に示された小泉内閣の「三位一体改革の全体像」で明らかになったように、国の借金のツケを国民と地方におしつけ地方財政を破壊しようとしています。問題なのは、これまで県が自ら作ってきた借金のツケを県民に回す「県財政構造改革プログラム」を昨年10月に「改訂」し、新年度からは各部局への枠配分方式の導入と県立病院の統廃合、社会福祉施設の民間移譲、県立大学の法人化などの三大切り捨てを具体化しようとしていることです。これでは県民はたまったものではありません。
しかし、知事が今年の年頭会見で発表した「新年度からの小中全学年での30人程度学級の実現」については、これまでその実現を求め運動を続けてきた多くの県民と全国の関係者を大きく励ますものとなりました。これに必要な教育予算を確保し市町村を支援することを求めるものです。そのためにも、県の大型プロジェクトは徹底して見直し、広域自治体としての県の役割を発揮すること、県政の重点を福祉・医療・教育・環境などの生活関連型に転換することを改めて強調します。
以上の基本方向をふまえ、昨年の第一次要望に加え、当面の重点事項について以下要望致します。
【総務部】
(1)県の「財政構造改革プログラム」(改訂)では、職員をさらに150人程度削減するとしていますが、県民生活に密着した分野についてはむしろ増員すべきであり、特に医療・福祉・教育にかかわる職員については必要な人員を確保し、県自身による雇用創出を図ること。県民に役立つ人材の育成は今後の県政にとって重要な課題です。
(2)県民に対し一律課税する「森林環境税」の導入については、県民の新たな負担増を招くことになることから導入はやめること。
(3)市町村合併では、合併しない市町村に対しても自立のための実効ある支援を行うこと。また合併する市町村に対しては、将来に借金を残す合併特例債の安易な使い方をやめさせ、慎重に行うよう助言すること。
(4)小名浜東港づくりや首都機能移転誘致事業は中止、トラハイは凍結すること。
【企画調整部】
(1)新年度に予定している「水管理計画」は、利水、治水両面から県が一元的に管理するようにし、県内の水を有効に利活用できるような計画とすること。広域水道用水供給事業に県も参加して責任を果たすこと。
(2)新規産業の創出にだけとらわれず、既存の産業の掘り起こしをすすめ、それらをデータベース化していくことで県内産業の活性化や雇用拡大に資するようにすること。
(3)新エネルギーの導入を促進すること。
(4)首都機能移転誘致事業への予算計上はしないこと。
【生活環境部】
(1)地震発生が頻発していることから、昨年の新潟県中越地震やインド洋スマトラ沖での地震・津波被害を教訓に本格的な地震対策をすすめること。
特に、学校や公共施設の耐震化を急ぎ、個人住宅の耐震化についても財政支援を含め検討すること。
(2)原発立地県として、地震・津波発生を想定したさまざまな対応策(通報体制を含む)を整えること。「高経年化対策」という名の老朽原発の酷使をやめさせ、廃炉計画を明確にさせること。
(3)国や県の補助要件では対応できなくなっているいわき市民の足を確保できるように、「だれもが安全・安心に利用できる公共交通システムの構築」(県のユニバーサルデザイン推進指針)する立場から、生活バス路線の県の補助制度を拡充すること。
(4)男女共同参画プランの見直しにあたっては、農業だけでなく、中小企業で働く女性の地位向上にもつながるようにし、あらゆる分野の男女平等を推進していくこと。
(5)県がすすめる道路建設など公共事業においても、土木部との連携で絶滅危機にある希少野生動物を保護していくこと。
【保健福祉部】
(1)三位一体改革によって国庫負担の削減分が県に税源移譲されますが、市町村国保は不況や経済悪化のもとで滞納世帯が増え続けています。県として、市町村国保会計への財政支援を行うこと。
(2)今後の「介護保険の見直し」によって、これまで行っていた介護サービスさえも後退しかねません。昨年12月議会での知事答弁「家族が過度に保険サービスに依存する傾向がある」との認識は言語道断です。施設、在宅サービスなどの基盤整備も不十分なままです。これらに必要な予算を増やし市町村を支援すること。
(3)障がい者支援については、支援費制度のもとで、受けたいサービスを地域格差なく受けられるようにすること。遅れている基盤整備を急ぐこと。
(4)重度心身障がい者医療費助成制度に自己負担を導入しないこと。
(5)県立社会福祉施設の安易な民間移譲をやめ、存続充実すること。
(6)「地域リハビリテーション支援体制整備推進事業」における必要な人員の配置など県の公的責任を明確にし、実効ある地域リハビリテーション体制を整備すること。
(7)昨年1年間の自殺者は645人と前年より16人減少しましたが、依然として600人を超えています。引き続き「いのちの電話」との連携を強め、自殺予防のための相談者育成と24時間の相談体制を支援すること。
(8)今出ダムを水源とする県中広域水道用水供給事業については、ダム事業そのものを含め県の責任で中止すること。
【商工労働部】
(1)大型店の出店は、周辺環境を一変させ、地元商店街に多大な影響をもたらすことから、04年3月に提出された広域まちづくり検討会の提言にもとづく本県独自の「まちづくり条例」の制定を急ぐこと。
(2)雇用・労働環境をめぐっては、不安定雇用が常態化してきており、特に若年者、中高年、障がい者の雇用に力を入れること。
(3)自営業の女性の地位向上を図ること。
(4)働きながら子育てできる環境づくりと事業者への周知をすすめること。
(5)県内の地場産業、伝統産業、ものづくりなどの情報をデータベース化し、これら県内産業を支える中小企業への支援策を強めること。
【農林水産部】
(1)米の暴落に歯止めをかけ、県産米の売りこみに力を注ぐこと。
(2)大規模農家への支援だけでなく、兼業農家・家族経営農家も担い手の対象とし支援を強めること。
(3)農業土木に7割近く(67.5%、04年度当初予算)をつぎ込んでいるが、農林水産物の価格保障と所得保障に予算の重点を移し、農林漁業者の再生産を保障すること。
(4)浪費型公共事業である大滝林道などの大規模林道の建設を中止すること。
(5)農協系統に加え、農協系統以外についても実態を把握し、生産から流通・販売までを一元的に把握すること。
(6)学校、病院、公的施設等で地元の食材を活用していくためにも、栄養士との連携を図り、地産地消の実効ある推進をはかること。地元産木材活用促進へ財政支援すること。
(7)農業総合研究センターは、研究機関としての専門性や役割を十分発揮できるようにすること。
【土木部】
(1)公共事業のコスト縮減を強めるためにも、入札制度の改善で、不正を排除すること。
(2)大型公共事業を見直し、小名浜東港の中止、トラハイの凍結をすること。
(3)大型店出店のための線引き見直しは、圏域住民の合意のもとに行うこと。
(4)通学路などの歩道の整備や、狭わいな部分改修など生活道路となっている県道の整備をすすめること。
【教育庁】
(1)子どもの全面的な成長につながる教育をすすめるためには、学習集団で分ける少人数指導でなく、30人学級編成が望ましい。小中全学年の30人学級を実施するために、県が責任をもって教員の採用をおこない配置すること。また、教室などの施設整備については、特に都市部での教室不足が予測されることから、市町村まかせにせず、十分な財政支援を行うこと。
(2)地域住民の防災拠点である学校の耐震化計画を明確にし、耐震診断と改築・改修を急ぐこと。
(3)中高一貫教育については、受験競争の激化や選抜競争の低年齢化に拍車をかけるようなものでなく、選抜を排してすべての子どもに高校教育を保障することを大前提とすること。
(4)普通学校における特殊教育、障がい児教育を充実するために専門教師を配置すること。
(5)栄養士を増員し、学校給食に地元の食材を活用できるように取り組みを強めること。
【病院局】
(1)県立病院については、存続を強く求める意見を排除した審議会の答申どおりに実施すれば、会津総合と喜多方病院は統合、猪苗代、飯坂リハビリ、本宮、三春病院が廃止となります。住民の合意が得られないまま県立病院の統廃合や民営化を強行せず、医師の確保と施設の整備の改善・充実を図ること。
【警察本部】
(1)振り込め詐欺など市民が被害を受ける事件が連続して発生しているが、被害を未然に防ぐよう対策を強めること。ITを悪用した犯罪の防止についても対策を講じること。
(2)青少年の健全育成の点からもポルノ自販機については厳しく取り締まること。
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